- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163913773
感想・レビュー・書評
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心がギューッと苦しくなる終盤。
望む人生を手放して窮屈な田舎に一生縛り付けられる切なさ。ローラがどれほど愛してくれたか。
結局大切なもの全て失ってしまったような感じ。
物語全体を通して胸がジリジリと恐怖で蝕まれていく。
アントワーヌは幸せになれない。
人を殺した人間は幸せになれない。
好きか嫌いかで言うと嫌いだけどすぐ読んじゃった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ピエール・ルメトールの単行本最新刊(2021年5月)です。文庫本では、歴史ミステリー三部作の''天国でまた会おう''、''炎の色''に次ぐ''われらが痛みの鏡''が2021年6月刊行でルメトール最新刊となります。
母親と2人暮らしの少年アントワーヌは、1人で創ったツリーハウスにご満悦だった矢先にアントワーヌが可愛がっていた隣家デスメット家の飼犬オデッセウスが主人デスメットに銃で安楽死させられた、更に彼女エミリーにも冷たくされ、友人達からも浮いていた時に、ツリーハウスの下でレミ・デスメットを撲殺してしまう。
村挙げての捜索が始まったが、記録的な暴風雨が連続して発生し村は壊滅的な被害を負い、一方でアントワーヌが恐れていた痕跡も嵐と一緒に去って行った。
物語は、アントワーヌの心理状態、怯え、錯乱が背骨でその事により彼自身の人生の選択が徐々に狭まって行く、展開は殺人を犯した人間が運によって逃げおおせ学生生活、恋人、家族と普通の人生を過ごすが、運だけでは無くごく身近な人達が作為を行った事も知らされる。彼は今後も死ぬまで一生癒される事はないのだ。16年前の森で死んでいるのだから。 -
少年アントワーヌはカッとなって年下の子を殺してしまった。遺体は森に捨ててきた。そして行方不明の子の捜索が始まる。遺体のそばに時計を落としてきたことに後で気づいた。逮捕されるのではとドキドキする少年の心。
最初、あまり面白くなくて、しばらく放置していた。子供口調があまり好きではないからかも。しかし読み返したら、なかなか面白かった。
揺れる心の描写とラスト近辺の意外性が素晴らしかった。 -
ある日、隣家の子供を衝動的に死なせてしまった十二歳の少年アントワーヌ。罪の意識に苛まれながらも事件の発覚を恐れ続ける少年の心情を残酷に描いたサスペンス。
殺意があったわけではなくいえ半ば事故のようなものなだけに、アントワーヌの苦悩が痛々しいです。彼はどちらかというと心優しい善人なんですよね。自らの犯行を隠すのも、母を思うが故の部分が大きいし。何よりも、時間がたつにつれ罪悪感よりも保身の思いが強くなることに自ら気づいて苦しむさまが、あまりに悲痛です。
幸か不幸か、事件の直後に村を襲った嵐。そして時間の経過により窮地を逃れたかのように見えたアントワーヌに時を経て襲い掛かる新たな危難。ここまでくると読者の気持ちとしては、ぜひとも逃げ切ってくれ、という思いでいっぱいになりますが。さて、いったいどういう結末が待ちかまえているのか……それは読んでのお楽しみです。 -
心理描写が深い、、。アントワーヌの心象風景が描かれるので、基本フラット、事件もルメートル作品にしては可愛いくらいです。でも、ラストで押し寄せる真実に圧倒されました。アントワーヌの心の動きを見てきているからこそ、シンプルな表現がこれでもかと刺さります。新作以降ミステリーはもう書かない、とのことですが、今後こういう作風になっていくんでしょうか。アレックス、、で打ちのめされた私としては、もうあの風景が見られないのは寂しいです。
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読みやすい、が、ルメートルのミステリーではない話は苦手かも、と思った。やはり筆力があるから心情がすごく伝わってくるのだけど、それが逆に辛いというか…。過失とは言え、たった1日の過ちがずっと人生にのしかかってくる主人公と、田舎町と家族とのしがらみと。幸せな人生なんて絶対に築けないんじゃないかという重苦しい感じ…
ラストは思わぬ人が目撃していたことを黙っていて助けてくれていたことがわかったが、かろうじての救いというか…。露骨に目に見える嫌な人間たちの関わりと、愛情や親切を持った人間の目に見えない行為、前者が圧倒的に大きすぎて辛い…。