夜明けのすべて

著者 :
  • 水鈴社
4.12
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本棚登録 : 12840
感想 : 1085
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784164010013

感想・レビュー・書評

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  • いったいわたしは周りの人からどういう人間だと思われたいか、そんな出だしで始まる作品。

    誰もが思いそうな事だけにそこからして引き込まれました。メインの登場人物の2人が、本人たちにしたらとても厄介な事情を抱えているのに、文調や2人のやり取りが面白くて、重くなり過ぎずに、あっという間に完読です。

    この作者らしく、爽やかな未来への希望といったラストで、気持ちの良い読後感。読んで良かったです。

    そして、PMS、パニック障害という自分には馴染みのなかった症状について知る事もできました。

  • PMSやパニック障害だけでなく、強迫心身症や鬱病や摂食障害などメンタルヘルスケアが必要かつ重要な時代になっている。
    日本経済は瀕死の状態だと言われるが、自己保身や金儲けを先に考える経営もこうした問題を顕在化したのではないだろうか?美紗や山添君が勤めている会社は「いい会社」なんだろう。
    本当の豊かさは、健康な心身の上に心の豊かさがあって成り立つものだと思うのである。

    やりたい事を明確に持っている人はそんなに多くいないのではないかと感じる。私も大きな事は持っていないが、小さな楽しみを味わう事でそれなりに人生を笑顔で過ごせている。心配事は数えればキリが無い。溢れる情報の中から小さな1人の力でも変える事ができることもある。
    美紗と山添君の相手を思いやる気持ちから作者の優しさを感じ、気持ち良くなった。
    そんな事を考えさせられた作品であった。Queenを聴きながら。

  • やさしくて、前向きになれる作品だった。

    PMSとパニック障害。
    わたしも知ってる気ではいたけど、それよりもひどい症状だったんだなと気付かされた。

    それにしても「生きづらさ」の種類って多彩だ。
    人にはそれぞれいろんな事情を抱えている。
    心身ともに迷いなく健康な人ってそうそういない。
    PMSもパニック障害も、そのほか水虫や薄毛や腰痛持ちだって、本人にとってはすごく深刻な悩みであることも大いにある。

    だから、この人は大丈夫だと過信せずに、お互いをいたわりあって日々を生きていかなきゃいけない。
    自分の枠だけに当てはめて、「大したことない」と決めつけない。
    そうすれば、自分に対してもいたわることができる。

    そんなやさしい世界になればいいな。みんなが生きやすい世界に。

  • その人の過去や病気など何も知らずに、少し接しただけでどんな人かを決めつけて判断してしまう。
    そうならないように、先入観や決めつけに囚われず自分で接して、感じてしっかり判断できるよになりたいと思いました。

    主人公の二人が悩みを抱えながらも、いつしかお互いを支え合って少しずつ元気になっていく姿に心温まりました。
    また、二人が務める会社もそこで働く人たちもとてもいい人ばかりでホッコリしました。

  • 2日で一気に読了。PMSとパニック障害をそれぞれ患う2人の交互の語り。ただ単に病気を患っている、という設定ではなくその病気を抱えることの苦しさがとても丁寧に書かれている。身近にパニック障害の人がいるけど、こんなふうに感じて、苦しい思いをしてるんだと自分の病気に対する見方が変わった。それだけでも読む価値あり。PMSも然り。作品を書く前、どんなふうに取材されているのかとても気になる。
    そして何と言っても瀬尾まいこさんの優しさに溢れる作品の1つ。登場人物がちょっとおもしろくて、周囲がそれを優しく包み込んでくれる。主人公2人の関係性がすごいうらやましい。こんなふうに話し合える人って自分にはいないなぁ。それぞれ病気を患っているからこそ、互いのしんどさを理解しようとし、気遣えたんだと思う。何度も心に残るフレーズがあって、こんなふうに表現できる瀬尾まいこさんはやっぱりすごいと思った作品。
    今、映画も公開されてるので映画も観てみたい。

  • サクッと読了。
    PMSと付き合う女性。パニック障害の男性。重いテーマかな?と思ったけど、世の中での生きにくさを感じながらも前を向き、工夫をしながら社会と関わってる姿が良かった。

  • 藤沢さんと山添くん、二人が「働くこと」「暮らすこと」を諦めなかったからこそ出会えた栗田金属という会社。そこに、希望と憧れを覚えました。
    ひとりひとり、何かを抱えて生きている。それでも生活は続く。
    何かを諦めたり得たりしながらも、暮らし続けていけたらいいなと元気づけられました。

  • 寒い冬と柔和な春との間の、まだ肌寒い日の木漏れ日みたいな、少しあたたかくて時間の流れが穏やかなお話だった。

  • 読んだだけで人に優しくなれそうだ。
    私はこの気持ちになるために
    小説を読んでるのかも。

    今回も最後の最後で泣かされた。
    まぁもういつものことだけど。

  • PMSに悩まされる藤沢さんとパニック障害を抱える山添くんが好きとか一切そういう気持ちがなく、お互いの病気を支え合うお話。

    PMSのイラつきが表に出ちゃうのは辛いな…。
    ほんとこの会社の人たちは理解…よりも全て受け入れるという懐の大きさに拍手。中々出来ないことよ。自分で体験していないと。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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