夜明けのすべて

著者 :
  • 水鈴社
4.12
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784164010013

感想・レビュー・書評

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  • 良かった。映画も見たい。でも、「夜明けのすべて」ってタイトルの意味が?

  • 発作が急に出てしまうんじゃないかの不安で仕事や交友関係が制限される息苦しさ、みんなみたいに普通になれない劣等感。将来への虚無感。とてもわかる。PMSやパニック障害がこんなに生きづらいものなのか、というのも改めて知った。。(パニック障害の山添くんは瀬尾さんの実体験らしい)


    車に乗れなくても自転車でいけばいい。車に比べて速度はないし、いける距離はたかが知れている。それでも徒歩よりずっといい。車の道中では見れない景色が自転車だからこそ見れるかもしれない。そんな本だった。

    自分とシンクロする部分があるからこそ励まされた。

  • PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなくて大変な美沙と、パニック障害となり生き甲斐も気力も失った山添君。
    大手企業から、ちいさな工場に転職してきた二人は、いつしか相手を助ける事はできると気がつく。
    本当に、ほんわかして、暖かくなるお話。
    ただ、世の中には、実際に病気で生きづらい人生を送る人がいるだろうことを改めて思い起こさせた。

  • めっちゃよかった。
    心身が疲れた時には手に取って一度読んで欲しい。悩んでるときはこの本から答え見つけられるような気がする。
    ダメなときは必ずもう一度読む。
    元気をくれ、前を向かせてくれ、生きる力を与えてくれる本。
    驚くくらい素敵な人しか出てこない。
    藤沢さんの人間性に惹かれ好きになってしまった。
    『そしてバトンは渡された』のように、温かい小説だった。
    瀬尾さんは年々筆力が上がってるし、すごい。
    夜明け前は1番暗い。でも夜が明けると新しい朝がやってくる。
    少しずつでいいから前を向こうと教えてくれる。

  • PMSとパニック障害で人生悲観してたふたりがお互いに頼りあって前進。
    辛いと自分のことばかり考えがち。藤沢さんも山添君も自分が世界で一番不幸だ、くらいの感覚で人生悲観してたとこから、お互いのことをきっかけに周りの人のこと、会社の未来をよくすることまで考えられるようになった。すごく小さなことに思えて、ふたりにとってはめちゃくちゃ大きい前進なんだと思う。

    精神科のお薬、パニック障害のことなど、一度だけ経験ある人に聞いたことあるけど、その時思ったのと同じように私にはそれを理解して寄り添える力がないなと思った。どうしようもないけど申し訳ない気持ち。ありのままで人を受け入れることの難しさかなぁ。

  • もしこんな形で、PMS(月経前症候群)とパニック障害を治していけたら、いいなぁと思った。それは、「現実はこんなにとんとん拍子にはいかないよ」というニヒルな感想ではなく、周りにいる人が助けてくれて、それを自分が受け入れる気持ちがあるような人になりたいな、という気持ち。これから、変わっていくことは、私にもできるんだ。

  • 精神疾患は、病名を聞いたときにツラさのランク付けが無意識的に行われるのは分かる気がする。PMSや生理痛は本人の我慢次第みたいな空気が徐々に減ってきているのはとてもいいことだと思う。

    精神疾患で苦しんでいる人への寄り添い方がよく分かっていなかったけれど、この小説を読んだおかげで想像力が増した分、今後はもう少し役に立てる立ち振る舞いができるといいな。

  • 入社したばかりの俺たちのいることでも「それいいね」「やってみよう」と背中を押してくれ、サポートしてくれた。そして、失敗しそうになるとフォローをしてくれ、うまくいくと自分はまるで無関係のように「すごいなあ」とほめたたえてくれた。俺は辻本課長が大好きだった。

  • 【2022/2/16読了】(感想書き終えました!)
    (まだ読み終えてないんですけども途中経過。

    いま読み終わった部分にコンビニおにぎりについてのやりとりが出てきて、こんな夜中なのにコンビニおにぎり食べたくなって困っております。
    お腹減ってるけど、夜明けはまだ見えない真夜中ど真ん中にて、夜食に手を出す前にいったん寝ようと思います。
    それではおやすみ、また明日…って寝ようと思い、タイムフリーで聞いていたRadikoを消そうスマホを手にしたら、ちょうどかかった曲がZARDの「眠れない夜を抱いて」で…
    タイミングいいんだか悪いんだかわからないけども、Radikoにもタイムフリーにも番組にもZARDにも罪はく、眠れない夜を抱く前に眠気があるうちに今度こそおやすみなさいです。【2022/2/12】)

    〜~〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    年齢の近い独身男女を見ると、「付き合っちゃいなよ!」って目でみてしまいがち。
    でもさ、恋人とか友人とか家族とか同級生とかただの知り合いとか、そういう枠に当てはまらない名前のない関係性があったっていいんだよな、っておもえる。

    〜~〜~~~~〜~〜~~~~~~~~~~~~~~~

    藤沢美沙、28歳。
    PMS(月経前症候群)のため、月経のくる前になると身近な人に攻撃的な態度をとってしまう。
    そのことが原因で前職を辞め、栗田金属で働くようになった。

    山添孝俊、25歳。
    突然発症した原因不明のパニック症候群のため、前職を辞めざるをえなくなり、恋人とも別れた。
    電車にも乗れなくなり、徒歩で通える今の職場でひっそりと仕事をしていた。

    恋人でも友人でもなく、強いて言えばお互いのことなどよく知らないただの同僚だった2人だったが、相手の存在が自分の生きやすさにつながっていることに気がついていく…

    〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    いわゆる“年頃”の独身男女である藤沢さんと山添くん。
    栗田金属の人たちからは、「付き合ってるの?」「付き合っちゃいなよ」と言われる間柄です。
    しかし2人の関係性は恋人はおろか友人や同僚というような言葉には到底当てはめられません。
    この「そういう枠に当てはまらない関係性があっても、いいんだよ」とにっこり笑ってつぶやいてくれる感じが、読んでいてすごくホッとしました。

    PMSによって自分ではコントロールできない攻撃性に、定期的におそわれてしまう藤沢さん。
    一方、パニック障害により今まで難なくできていたことを手放さざるを得なくなった山添くん。
    その無力感、喪失感は、おもっている以上に孤独なものでした。

    「やりたいこともやるべきこともない暮らしは死んでいるのと同じだろうか。これでいいわけないとどこかでかんじながら、今の状況に甘んじているのは、自分を失くしているも同然なのだろうか。」(179ページ)


    このモノローグはどちらも山添くんのものですが、はた目からはわからない、けれども山添くんの中にある深い孤独感の描写には、底なし沼に落ちていくような絶望を感じました。
    しかもこのモノローグは、物語の終盤においてのものです。
    物語の終わりが見えている頃でもなお語られる山添くんの孤独感を読むと、「これはこのまま、終わってしまうのかもしれないな…」という気持ちになります。

    しかしこのすぐあと、山添くんはこう語ります。

    「すべてから遠ざかっているような何もない空間。それが俺の家だ。」(183ページ)

    「俺はすべてから切り離された場所にいるわけではない。完全な孤独など、この世の中には存在しないはずだ。」(184ページ)

    「俺はパニック障害なのだ。(中略)そうやって、いろんなことを自分から切り離していた。だけど、好きなことまで遠ざける必要はない。(以下略)」(241ページ)

    パニック障害になり、いろいろなことを諦め、ただ生きていた山添君が、どうしてこんな心境にたどりついたのか。
    その間には、決してドラマチックな出来事があったわけではありません。
    では何があったのか?それはぜひ、本書を開いて確かめていただければ…とおもいます。
    パニック障害やPMSに限らず、いろんな原因で自分の人生に強いブレーキがかかってしまい絶望しているとき、オススメしたい1冊です。

    〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~~~~~

    それにしても「夜明けのすべて」というタイトル、どんな意味なのだろう?と気になりますよね。
    「夜」はきっと、パニック障害やPMSのことをさしているのでしょう。
    でもその「夜」が「明ける」とは?
    パニック障害やPMSがまったくなくなったわけではないのに、「夜明け」なのだろうか??とおもいました。
    でもこのお話の中で藤沢さんも山添さんも、どうにもならない「夜」を経て、道の歩き方を手探りでかえていきました。(半ば強引に進路変更させられたところも含めて)

    それぞれの「夜」は未だにそこにあります。
    けれど「明ける」道もまた、ここにある。
    「夜」をこえて夜明けまでたどりついたよ、どのように夜明けまできたのか、彼らの歩んだ道「すべて」を、ここに書いたよ。
    そんな意味なのかな…と、読み終えた今、ふんわりとおもうのでした。

  • 自分の思い通りに行動できなくて、それに対してもっとつらくなってしまう。そんな2人だったからこそのお話だなと思った。私はPMSも生理痛もほとんどないから、最初は2人がどんな症状なのか具体的にわからなかったし、身近にいたら反応に困るかもしれないと思ってしまった。私は症状を軽減させたりはできないかもしれないけど、栗田金属で働く人みたいにそれを許容できる人で、ありたいなぁと思った。あと、突然パニック障害になるのは怖い。知らなかった。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

瀬尾まいこの作品

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