納棺夫日記 増補改訂版 (文春文庫 あ 28-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167323028

作品紹介・あらすじ

掌に受ければ瞬く間に水になってしまうみぞれ。日本海の鉛色の空から、そのみぞれが降るなか、著者は死者を棺に納める仕事を続けてきた。一見、顔をそむけたくなる風景に対峙しながら、著者は宮沢賢治や親鸞に導かれるかのように「光」を見出す。「生」と「死」を考えるために読み継がれてほしい一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 著者、青木新門さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    青木 新門(あおき しんもん、1937年4月11日 - 2022年8月6日)は、日本の作家、詩人。富山県下新川郡入善町出身。日本文藝家協会会員。

    1973年、冠婚葬祭会社(現オークス/当時の社長は奥野博)に入社(専務取締役を経て、2012年現在は非常勤顧問)、納棺専従社員(納棺夫)となる。

    1993年、葬式の現場の体験を『納棺夫日記』として地元出版社の桂書房から出版しベストセラーとなる。

    先頃、85歳にて亡くなられました。


    で、本作の内容は、次のとおり。(コピペです)

    掌に受ければ瞬く間に水になってしまうみぞれ。日本海の鉛色の空から、そのみぞれが降るなか、著者は死者を棺に納める仕事を続けてきた。一見、顔をそむけたくなる風景に対峙しながら、著者は宮沢賢治や親鸞に導かれるかのように「光」を見出す。「生」と「死」を考えるために読み継がれてほしい一冊。

  • 『おくりびと』のあとに、『納棺夫日記』も合わせて読んでみました。
    作者の青木新門さんが、納棺師の現場を綴ったものが第一章。
    『おくりびと』の中の場面はそこかしこに登場します。

    第二章では、仕事をしながら見聞きした様々な死が登場します。
    事故による死、看取るひとのいない死、まだ早過ぎる死。作者は目を背けず切々と書いています。

    圧巻は第三章の「ひかりといのち」です。
    ご遺体を右から左へと物のように扱っても、仕事と割り切ることは可能です。
    あまりに多くの死に出会うと、麻痺させなければやっていけない部分も出てくるでしょう。
    しかし、この作者はそれをしませんでした。

    ひとはどこから来てどこへ行くのか、生きるとは何か、死ぬとは何か、宗教や哲学や詩など様々な引用を用いながら わたしたちに考えさせます。
    ひとつの仕事を通してここまでの境地になれるというのは、やはり希有なことで、映画化されて人気を博すのも分かるというものです。

    わたしのこの本には、水色の付箋がいくつも貼られています。
    心にとまった箇所にこうして貼るのがいつもの読み方です。
    (もちろん自分で購入した本にしかやらないことです)
    後で何度も読み返すためです。
    咀嚼して、反芻して、理解できたと思ったときに、この付箋をはずします。これは、そういう作品です。

  • 映画「おくりびと」の「原作」である。

    小説、つまりお話の形になっているのかなと思ったら、著者が書き連ねていた日記をもとにした、随想のような本であった。後半は宗教書っぽくなり、また話は宇宙物理学にまで及んだりする(死を突き詰めて考えると、どうもそういうところまで行ってしまうらしい)。

    映画では納棺師と言っていたが、なんと「納棺夫」だ。実際、映画のようなきれいな世界ではないし、忌まれる存在であったことは想像に難くない。本にも、(家族などの)素人がいろいろいじっていたら血とか何とかが出て来ただとか、蛆とか轢死体とか、映画ではあり得ない生々しい描写もある(映画でも少しは触れていたけど)。

    さてしかし、遺体を扱うだけに、技術や経験の蓄積みたいな話で済まないところが、この仕事の深さだろう。

    多くの、さまざまな死(と遺族)に向き合っていると、やがて死と生とがひとつながりであることが見えてくる。

    苦しんだ人も、怒りや憎しみを抱いた人も、死に顔はほとんど安らかなものであるという。いまわの際には「ひかり」が見えるともいう(立花隆氏の著書「臨死体験」にもそういうくだりがあったっけ)。著者自身、あるとき、蛆が神々しく光って見えたことがあったそうだ。

    その「ひかり」の前では生への妄執や現世的な欲望などがすっかり浄化され、言ってみれば「悟り」の境地が自然に訪れるらしい。

    なるほど、宗教とは何か、悟りとは何かを正面から論じている本だけに、映画(お話)に納得がいかなかったのも無理はない。

  • 映画『おくりびと』の原作とも言われる作品。映画も悪くはないが、全く別の、もっともっと人間の死に、生に迫った、心の奥に染みる作品。映画を観たから、あるいは映画の内容からの連想で読まないのはもったいない。多くの人に読んでほしい。

  • 死について深く考えさせられる名著。現代は生きることに重きを置かれすぎている。医者の役割は延命措置である。科学の進歩の多くは医療革新に関心が持たれている。「生」に関心を持つことはいいが、その反動で「死」が無視されていないだろうか?
    死は、生者の視点からでは解決できないと著者は言う。生と死という別々の概念を超えた「生死」の境地でいることでこそ、死を徹底的に見つめて生を輝かせる。そのような境地に達した人間には、光が見える。釈迦や親鸞や、さらには死を悟ってなお安らかに死を受け入れることのできた人の多くがそのような目には見えない光を見ている。
    光を見た人間は、いのちの連続性への奇跡の念と感謝の思いが生まれる。それが、正岡子規の「悟りとは、平気で死ぬことではなくいか何時でも平気で生きることである」という境地につながるのだと思う。
    本書はそれだけでなく、詩の魅力を教えてもらった。金子みすゞ・宮沢賢治の詩などを引用して彼らの死生観と自身の経験とを結びつける著者の感性の豊かさには脱帽した。

  • 映画「おくりびと」から本へ。映画はこの本から「納棺夫」という職業といくつかの小さなエピソードを持ってきているけれど、本の内容とは別物だと思う。ただ、映画もそれはそれですばらしい作品だった。

    著者の経験と、美しい文章と、深い死生観・宗教観、非常に内容の深い本。年を取ってからまた読み返したい。

  • 映画『おくりびと』の原作(というより元ネタ)になった本。ひょんなことから葬儀社に勤めるようになった著者の体験が綴られています。死を扱う生業ゆえに身内からも忌み嫌われ、蔑まれ、社会的にも疎まれているような空気に反発や違和感を覚えながら、人の死と向き合い続ける。それは己の死さえも見詰め、死とは何か?生とは何か?を自問自答し、数々の哲学書、宗教関係の本を読み漁る日々。この真摯な姿勢に感動すら覚えました。どう生きるかも大切ですが、どう死ぬか?もかなり大切なことだと感じました。読み終わったあと、思わず手を合わせたくなる1冊。

  • ※この先、映画「おくりびと」のネタバネも含みます。


    映画「おくりびと」を見て、さらにこの本に行きついた方は少なくないと思う。ぼくもその一人です。
    何かの折に、原作である本書の著者 青木さんが、映画を良く思っていない?ような事を知りました。映画に大変な感動をおぼえていたので、その意図を知りたくてこの本を手に取りました。

    たぶん、それは、原作と映画では中心点がまるで違うからだと感じ取られる内容でした。映画は原作の意図する中心点を含んでいない。映画というものに話を収めるには重たすぎる。親子愛が一番わかりやすく纏まりやすいからなのでしょう。

    さて、中身ですが、単純明快ですが非常に重い。
    ご本人の体験記に始まって、宗教観、増補の体験記そして後書き、と続きます。書いた時期もバラバラなのでしょうけど、言っている核が定まっているので安定していて読みやすい。

    彼のような生き死にの捉え方も一つだなと感じて読了。


    余談ですが、映画もとてもよくて、僕にチェロを習わせはじめるには十分でした。

  • 映画「おくりびと」を見たので、再読。
    葬儀社に勤め、遺体を納棺する仕事に就いていた著者による生と死にまつわるエッセイ。

    ・「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」
    ・親鸞と教行信証

  • 映画は受賞して話題になるより前に観てとても良かったし、サントラCDも買った。
    本書は映画を観た後に購入し、2009年読了、後に処分。
    ★は当時付けたもの。

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著者プロフィール

詩人・作家。1937年、富山県(下新川郡入善町荒又)生まれ。早稲田大学中退後、富山市で飲食店「すからべ」を経営する傍ら文学を志す。吉村昭氏の推挙で「文学者」に短編小説「柿の炎」が載るが、店が倒産。1973年、冠婚葬祭会社(現オークス)に入社。専務取締役を経て、現在は顧問。1993年、葬式の現場の体験を「納棺夫日記」と題して著わしベストセラーとなり全国的に注目される。なお、2008年に『納棺夫日記』を原案とした映画「おくりびと」がアカデミー賞を受賞する。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

「2014年 『それからの納棺夫日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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