新装版 世に棲む日日 (2) (文春文庫) (文春文庫 し 1-106)

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  • / ISBN・EAN: 9784167663070

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  • (2015.01.20読了)(2013.06.15購入)
    【杉文とその周辺】
    1854年のペリーの米国艦隊の日本への再訪から1862年の晋作の上海洋行あたりまでが書かれています。
    松陰は、密航を企て、ペリーに拒否されると、奉行所に自首して罪人となった。
    江戸で裁かれ、長州萩に送られた。
    野山獄でしばらく過ごしたのち、自宅蟄居となった。
    そこに門弟を集め、松下村塾をはじめた。多くの塾生と共に学んですごした。
    松下村塾の存続期間は三年。(120頁)
    安政の大獄に連座した梅田雲浜との関係を問われ、江戸送りとなったが、自ら罪を被り、刑死した。
    松陰の死後は、高杉晋作を中心として、話が進められます。
    妻のお雅さんのはなしとか、長州の航海練習船丙辰丸に乗る話とか、信州松代に佐久間象山をたずねる話、最後は、上海へ行く話です。

    【目次】
    死への道
    下田
    必敗
    奇妙人
    晋作
    久坂玄瑞
    野山
    村塾
    奇士
    村塾の人々
    空の青
    評定所
    二十七日、晴
    お雅
    雪の夜
    航海
    信州松代
    福と狂
    毛利敬親
    長井雅楽
    暗殺
    長州人
    上海にて
    戦争と革命

    ●松陰(14頁)
    かれ(松陰)は、その性格の欠陥とさえいえるほどに現実の世の中での立身を望まなかったが、しかし死後の功名には執着した。現実にあっても一番槍、一番駈けといったたぐいの功名はどうも欲しかったらしい。
    ●知識欲(43頁)
    「この事件(松陰の密航)は、日本人というものがいかに強い知識欲をもっているかということの証拠として非常に興味がある。かれらは知識をひろくしたいというただそれだけのために、国法を犯し、死の危険を辞さなかった。日本人は確かにものを知りたがる市民である」
    ●「講孟余話」(80頁)
    松陰はこの書において「孟子」を語るよりもむしろかれの勤王思想というこの当時の危険思想を語ろうとした。松陰に言わせれば日本の中心は天皇であり、幕府ではない。さらに日本人たるものは大名から庶民に至るまで天皇の臣であり、将軍の臣ではない、という幕府がこれを知れば飛び上がっておどろくであろう思想を述べた。
    ●高須久子(90頁)
    「罪は姦淫でございます」
    と、武家言葉でわるびれずにいった。高須久子は三十前で後家になった。そのあと一、二度男出入りがあったために親類一同が協議のすえ、藩にたのんで彼女を五年の刑ということで入牢させた。封建時代の士分社会ではこういう委託刑といったようなことがある。そのかわり食費その他は、親類持ちである。
    ●奥州人江幡五郎のために(101頁)
    「古来、日本で友人のために死のうとした者がひとりでもいたか。義卿(松陰の字)をもってそういう日本人の最初の人物とする。英雄乎非英雄乎などを吉田寅次郎において論ずるのは愚だ。かれは誠実ということにおいて人間ばなれのした人物であり、かれみずからの志もそこにある。」
    ●安政の大獄(153頁)
    松陰の答えは明瞭で、なにも密談などはしませぬ、梅田(雲浜)は以前江戸で一度会った旧知であり、かれは萩にきたついでに拙者方に一応のあいさつに参っただけでござる、その時学問の話や禅の話などをしました、とすらすら答えた。
    ●善のみ(156頁)
    「余は人の悪を察すること能わず、ただ人の善のみを知る」
    ●思想(199頁)
    思想とは本来、人間が考え出した最大の虚構―大うそ―であろう。松陰は思想家であった。
    ●狂(229頁)
    「ものごとの原理性に忠実である以上、その行動は狂たらざるをえない」
    ●強者の道(231頁)
    真の強者の道は自分の天命を知り、自らの運命に満足することであるかもしれない、というものであった。
    ●桂小五郎(233頁)
    桂には思慮深さと同志に対する親切心があり、その点人望があったが、しかしみずから時代の局面をひらくという創造的才能を持っておらず、その点では松陰の気に入りであった久坂玄瑞も同様であった。
    ●上海(285頁)
    文久二(1862)年の初夏、高杉晋作は海をわたって上海へ「洋行」した。
    ●貿易調査(287頁)
    上海への使節派遣というのは、貿易調査が目的であった。幕府はすでに諸外国と通商条約を結んでおり、それをやがては実行しなければならない。ところが港をひらいて貿易をするについてどういう貿易実務をすべきかがわからず、それを上海において見学しようというのである。
    ●西洋文明の正体(292頁)
    西洋文明の正体というのは道具である、と思った。そのモトは、どうやら数学だと、思った。
    ●公的政府(303頁)
    上海での晋作の実感は、
    ―日本に公的政府を作るべきだ。
    ということであった。それには、天皇家をかつぎだすことであった。

    ☆関連図書(既読)
    「花燃ゆ(一)」大島里美・宮村優子作・五十嵐佳子著、NHK出版、2014.11.25
    「世に棲む日日(1)」司馬遼太郎著、文春文庫、2003.03.10
    「吉田松陰」奈良本辰也著、岩波新書、1951.01.20
    「吉田松陰」古川薫著、光文社文庫、1989.06.20
    「吉田松陰の東北紀行」滝沢洋之著、歴史春秋出版、1992.12.25
    (2015年3月24日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    海外渡航を試みるという、大禁を犯した吉田松陰は郷里の萩郊外、松本村に蟄居させられる。そして安政ノ大獄で、死罪に処せられるまでの、わずか三年たらずの間、粗末な小屋の塾で、高杉晋作らを相手に、松陰が細々とまき続けた小さな種は、やがて狂気じみた、すさまじいまでの勤王攘夷運動に成長し、時勢を沸騰させてゆく。

  • 松陰先生が思ったよりもあっさり亡くなり、高杉晋作が頭角を現しはじめる。とはいえ、自らの方向性を探って見つけたところで終わっているため、彼の本番は3巻以降なのだろう。2巻の時点で既に高杉の魅力にやられつつあるので3巻以降を読むのが楽しみなような怖いようなそんな気持ちでいっぱいです。

  •  司馬遼太郎の作品で、歴史にハマってくれたらと思い、「竜馬がゆく」もいいのですが、明治維新を成し遂げた原動力、やる気を植え付けた松下村塾での学びを実践した高杉晋作の物語にしました。ワクワクします。
    (S.M.先生)

  • いよいよ高杉晋作が歴史の表舞台へ…続きが楽しみだ。

  • 松陰の死からスーパーファンキーボーイ2代目高杉晋作の話。このひとちょっとサイコパスっぽいぞ。おもしろい。

  • 高杉晋作が登場しました。
    物語の中心は吉田松陰から高杉晋作に代わりました。
    高杉晋作は家族思いであるけれど、なかなか思い切りがよく、また彼がどのようにして攘夷への思いを募らせていったかが分かり面白かったです!

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=39376

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA61550144

  • 高杉坊ちゃんなかなかヤンチャで笑った

  • 吉田松陰の志と学ぶ姿勢に圧倒される。その時代の課題感に命を賭して、志を実現するために、学ぶ姿勢が目を見張る。特に命懸けの密航をしてまで外国から学ぼうとする姿が驚異的である。多くの組織が閉鎖的でタコツボ化している現代にもこのような志士が必要であり、自分がそうあれるように学びを怠ってはいけないと強く感じる。

    以下、印象的なフレーズ。
    ・英雄もその志を失えば、その行為は悪漢盗賊とみなされる。
    ・学問とはこういう時期の透明な気持ちから発するものでなければならない。
    ・死は好むべきものにあらず、同時に悪むべきものでもない。やるだけのことをやったあと心が安んずるものだが、そこがすなわち死所だ、ということである。
    ・どんな小さな行動をおこすにしても、死を決意してはじめねばならない。

  • どんな小さな行動を起こすにしても、死を決意してはじめなければならない

    歴史を学ぶって大事やな。事実と異なる部分はあるやろうやけど昔の人が何を感じてどういう考えでどういった行動をしたのか想像は出来る。
    過去日本のためを思って命を賭して活動した人達のお陰で今があると思うと感謝してこの時代も頑張らないとあかんなって思う。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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