悪いうさぎ (文春文庫 わ 10-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679163

作品紹介・あらすじ

女探偵・葉村晶(あきら)は、家出中の女子高校生ミチルを連れ戻す仕事で怪我を負う。一ヶ月後、行方不明のミチルの友人・美和探しを依頼される。調査を進めると、他にも姿を消した少女がいた。彼女たちはどこに消えたのか? 真相を追う晶は、何者かに監禁される。飢餓と暗闇が晶を追いつめる……好評の葉村晶シリーズ、待望の長篇!

感想・レビュー・書評

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  • 1月から始まった某公共放送の「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~」というドラマで、若竹七海という小説家のことも葉村晶というアラサー女性私立探偵のことも初めて知った。一目で恋に落ちた、わけではない。最近流行らなくなった言い方を使うと、「推し」になった。

    4人姉妹の末っ子。やっかいな姉から逃れ、転職、転居を繰り返すうち探偵業につくようになった苦労人。頭の回転は速く仕事はできる。なのに、苦労を自ら背負う性分と、何故か要らない「痛い目」に遭うことか多い。今回の葉村晶も、初めての長編に張り切ったわけではなかろうが、冒頭から腹を刺されて、少しずれていたら致命傷だったし右足中足骨二本にヒビも入れている。そのあと何度も痛い目に遭って、生死の境を飛び越えている。TVディレクターの副題の付け方もあながち大袈裟じゃない。

    ところが、私は「一生懸命頑張る女の子」にはつい肩入れをしたくなる悪いクセがある。そんなわけで‥‥あ、いや、小説の中身のことを紹介する前に紹介文が終わりそうだが、実はわざとです。女子高生失踪事件に端を発した、やがてとんでもなくあと味悪い事件に鞍替えするお話。言えるのはそこまで。買った時には気がついていなかった、信じて欲しい。TVの「ハムラアキラ」が今現在ちょうど、全7回のうち3回も使って、「悪いうさぎ」を最終回シリーズとして描いている真っ最中なのだ。ヒントのヒの字も喋れなくなっちまった。

    だから詳しい紹介はよす。

    二兎を追うものは一兎も得ず。

    ハムラアキラは私の推しメンになった。今年はシリーズ読破する、とだけ伝えておきましょう。

    • goya626さん
      小説は間違いなく面白いのですが、ドラマのほうは、いまいちです。せっかくのシシド・カフカさんを生かし切れていない。脚本と演出がダメです。
      小説は間違いなく面白いのですが、ドラマのほうは、いまいちです。せっかくのシシド・カフカさんを生かし切れていない。脚本と演出がダメです。
      2020/02/26
    • kuma0504さん
      こんにちは、goya626さん。葉村晶シリーズ読んでいるんですね。確かに、「悪いうさぎ」の脚本・演出はサイテーでした。どうやったらこんなにも...
      こんにちは、goya626さん。葉村晶シリーズ読んでいるんですね。確かに、「悪いうさぎ」の脚本・演出はサイテーでした。どうやったらこんなにも面白くなく出来るのか。今さっき、録画したのを観ました。そもそも冒頭の腹刺しが無い、3回連載にしては、丁寧な作りでもなく、台詞もかなり変わっている。どうしてスマートに作れないのか。

      それでも、この原作を読もうという気になったのは、カフカの葉村晶がハードボイルドしていたから。こういうタイプの私立探偵見たことなかった。カフカははまり役でしょう。

      テレビドラマオリジナルキャストの岡田管理官が、まさか犯人だったりして。だったら笑っちゃうな。
      2020/02/27
  • 葉村晶が歩けば…の一冊。

    彼女が歩けば不幸に当たるって言いたくなるぐらい初っ端から不幸。

    もう、不幸という言葉は彼女のためにある、そう確信せずにはいられない。

    しかも不幸なのになぜか笑いのツボを押されてしまう、さすがのストーリーに読む手は止まらず。

    前哨戦はほんの序の口だったとは。

    後半戦からの死闘、まさかの"うさぎ"にこちらまで全身鳥肌、あまりの胸糞悪い真相には言葉が出ない。

    この毒は強烈。

    その毒を葉村晶が身体を張ってスカッと一掃してくれた気がする。

    彼女の魅力がマジ増した。
    不幸、毒、葉村晶の魅力、これぞ長編の魅力。

  • 久しぶりのハムラアキラ。
    よくぞ ここまで、の不幸っぷり。
    強さだけではなく人間味溢れていて、どっぷりと感情移入しました。自分なら耐えられないけど。
    そして、対する負の要素満載の大人たち。
    ひと言で言えば、ただただキモチワルイ。
    まさに魑魅魍魎。
    物語もずっとモヤモヤしていますが、しっかり最後まで読ませられました。
    やはりこのシリーズ、面白い。




  • ダークな話とは聞いていたが。。
    のっけから負の塊みたいなのとの衝突と負傷。
    次いで相次ぐ毒親達。
    葉村晶の切れ味なくして、この胸クソ悪さは乗り切れなかったところ。

    本筋の女子高校生のきな臭い失踪事件もさることながら、相場みのりの陥った泥沼、事件関係者の抜き差しならない状況、とにかく人間の黒い部分ばかりがまき散らされている今作。
    これまでの作品に出てきた面々が三々五々出てくる展開には、”やっぱりシリーズ物は順番に”だなと思いを強くした傍ら、あの悪魔との対決なのかと思っていただけにそこは肩透かし。
    モジュラー型の様相も呈し、次作以降への伏線も感じつつ事件は終結。

    いわゆる”イヤミス”ってやつなのかな。
    ”読後嫌な気分になる”どころか終始もやつく感じでしたけど。
    次は『さよならの手口』。

  • 葉村晶シリーズで未読だったもの。今までで一番悲惨な目にあったのでは?事件も陰湿で闇深いのに、テンポ良し笑いありのカラッとした話に仕上げる若竹さん素晴らしい!

  • あまりに救いのない悍ましい事件に辟易しながらも、葉村晶のキャラとタフさに惹きつけられて一気読み。

    シリーズ初長編ということだが短編集よりも良いかも。

    ただ個人的には結婚詐欺師のエピソードは不要な気がしました。

  • 葉村晶シリーズ、長編。
    テレビでこれを見たときなんと胸糞の悪い話だろうと思った。
    可愛らしいタイトルそして表紙。
    なのにそこ潜む人間の狂気。
    そう、出てくるすべての人々は、気持ち悪いとしか形容できない。

    物語は家出した少女を見つけるところから始まる。
    いきなり登場するのが、世良松夫。
    こいつの言葉は聞くに耐えない。
    12頁「いつまでもこうしているこたあねえだろ。
    アバズレを野郎の股ぐらから引きずり出し、ケツのひとつもはたいてやって、さっさとあがろうぜ」
    一時が万事こんな感じだ。
    しかもあろうことか家出少女、平ミチルに襲いかかる…。

    さて、なんとかこの男の悪の手から救出した葉村晶であるが、物語はどんどん不穏な方向へ向かっていく。
    ギラギラした二八会の会員たちと、消えた少女たちの謎が次第に近づく。
    ウサギたちを追い詰める。

    人はここまで歪めるのか。
    いや、これは物語だとわかっていて、自分は傍観者だからそう言えることなのかもしれない。
    当たり前だが自分の中には黒いものが渦巻いていてその黒いものはふとした瞬間に外へ漏れ出す。
    匿名ならばわからない、自分だったら何とかできる、変えられる、そんな虚栄心と絶望感と焦燥感と優越感と、ありとあらゆるものが混ざり合う。
    この物語では人が死ぬからひどいと思うが、実際の世界ではどうだろう。
    現実世界では人を殺していなくてもバーチャルな世界で同じように人を殺してはいないか。
    完璧などあり得ない、万能なんかじゃない。
    言葉を使うことの難しさを、他人を理解することの難しさを、痛感せずにはいられない。
    #flowerforhana

  • 『さよならの手口』の葉村晶が31歳だった頃の物語。
    葉村は若い頃から仕事に対してポリシーを持ち、着々と調査をこなしているが、やはりツイてない。
    同時に厄介な事件に次々と巻き込まれるのは運命なのか。
    今回は家出した女子高校生を連れ戻すというもので、初めは難しくなさそうに思えたが……。

    若い頃とあって葉村の感情がよく表れていたように思った。
    人となりが分かり葉村ファンとしては嬉しかった。
    失敗して落ち込んでも、タダでは起きない根性が良い。
    今夜もうさぎの常夜灯のわずかな光の元、安らかに眠れているといいな。

  • 若竹七海『悪いうさぎ』文春文庫。女探偵・葉村晶シリーズの長編作。これまで読んだ中では、主人公の葉村晶が一番、探偵らしく描かれている作品だと思う。

    読み始める前は長編となると一体どんなだろうと思ったのだが、テレビドラマの劇場版のように、非常に豪華で盛りだくさんな物語に仕上がっている。

    女子高生の失踪事件の捜査を発端に葉村晶はとんでもないトラブルに巻き込まれ、物語は全く予想もしなかった方向へと展開していく…

  • 不運すぎる女探偵、葉村晶シリーズ、初期の1作。

    昌は家出中の女子高生、平ミチルを探す過程でミチルの友人滝沢美和、水地加奈らが相次いで姿を消していることに気がつく。
    少女たちは何に巻き込まれたのか? 直感に従い、捜査を進める昌に次々と危難がおそいかかる。

    オーソドックスなサスペンス、なのだと思う。
    探偵の前に提示された情報は断片的。
    誰もが「嘘」をついている。容疑者は複数。
    探偵は突然襲われ、舞台は暗転する。
    どれもハードボイルドや本格推理ものでは定番の展開だ。
    主人公が女性だということで女性がらみの事件に共感しやすく、
    関係する女子高生へのアプローチもスムーズだが、
    基本このオーソドックスなセオリーに従っており、
    推理ものとして実に読みやすい。
    そしてディテールは簡潔にして的確。

    事件の真相はかなり陰惨で気分が悪くなるようなものだけど、
    この展開力、描写力はほかの作品も読みたくなりますね。

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著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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