日本の路地を旅する (文春文庫 う 29-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801960

感想・レビュー・書評

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  • 当事者である著者でないとできない紀行。そして、いまだに残っているところもあることに純粋に驚く。東京だと、あの辺りが昔そうだった、くらいで今の住人はそんなに関係なく(たぶん)、本人が言わない限り分からない(と思う)。けど、この本を読むと、この地区は何戸、とかあって。戸数が分かるって‥消えてないんだな、と。居住地と名字で地元の人はわかる、と西日本の人から聞いたことはあるけれど、本当にそうなんだ、、息苦しいな、、
    ルポとしては、前半は普通に読んでいけるんだけど、後半になるにつれて事件やヤクザ、著者の前科者の兄の話が出てきて重苦しい。その辺は私小説的。

  • 説明文にはノンフィクションとありますが、私小説的な部分も多々含まれています。今時、あんまないじゃないですか、私小説って。想像していたものとは少し違ったけど、これはこれですごく良い読書体験でした。特に生まれ育った故郷の話や、路地に住む若者についての描写はとても饒舌で、作者の人間愛を感じました。路地についてもものすごく詳細に調べられていて感服。上原さんの本を読むのは今回が初めてでしたが、他の作品も読んでみようと思います。

  • 東2法経図・6F指定 361.86A/U36n/Ishii

  • それなりに面白いが 筆力不足

  • ほとんど知らなかったトピックなので興味深い。

  • 著者が、日本の「路地(=被差別部落)」を巡り歩いた記録をまとめたノンフィクション作品。大半部分が雑誌『実話ナックルズ』に連載されたもので、2009年に発刊(2012年文庫化)され、2010年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。
    著者は自身が大阪・更池の「路地」(被差別部落を最初に「路地」と呼んだのは和歌山・新宮の「路地」出身である中上健次氏)の出身であるが、全国500以上の路地を歩き続け、かつ「路地」の人々と機微に触れるコミュニケーションを積み重ねてきた。そして、自ら「路地を書くにあたって、あらゆる角度から検討した。技術的にはもちろん、“心情的”にも手直しを繰り返した。心情的というのは、路地は残念ながら出身者でないとわからない独特な繊細さをもつため、その点の配慮が必要なのである」と語る繊細さをもって、本書を世に出したという。
    著者によれば、自身の訪れた「路地」の人々の思いは、今や、年齢や地域などにより区々であり、著者はそのひとつひとつについて強く肯定も否定もせず、自らが見た「路地」の風景とともに淡々と記している。しかし、終章では、「路地の歴史は私の歴史であり、路地の悲しみは、私の悲しみである。私にとって路地とは、故郷というにはあまりに複雑で切ない、悲しみの象徴であった」と語っており、「路地」を訪ねる旅は、自身と、犯罪を起こして沖縄の離島に逃れ住む実兄のアイデンティティを求める、壮絶なものであったのだろう。
    また、著者は「私はどんな悪いことであっても、路地が取り上げられるのは良いことだという“信仰”をもっている。日本人の心の闇、隠されてきた文化を明らかにすることで、日本人そのものが明らかにされると思うからだ」とも語っており、私は本書で初めて路地のことを詳しく知ったのだが(30年以上前の義務教育で「同和」について学んだことはあったが)、そうした観点からも本書の持つ意義は大きいと言えるのだろう。
    (2015年7月了)

  • 路地(被差別部落)出身の作者が全国の路地を旅するノンフィクション。

    小中と同和教育が盛んな学校に私は通っていて、ずっと何故盛んなのか不思議に思っていた。

    積年の謎が少しだけ解けた。

  • 東京生まれ東京育ちの自分は、ほぼ同和問題とは無縁の生活を送ってきたが、何故か、惹かれる。不謹慎なのは承知してるが、怖いもの見たさや、知らない世界を教えてくれるような気がする。

    人間の本質なのか、人より優位に立ちたいという思いが、差別を産み、より弱いものいじめに走る。なんともやりきれない。

    作者は、何を求めて「路地」をさまようのか。本書を読んでも分かるような分からんような。仕事柄、「路地」に行くこともままあるが、そこでの対応には、やはり気を使うこともある。同和も人権も言葉としてはあまり好きではないが、要は、差別する人の心の有り様が問題なんだろう。今の国際情勢は差別がものすごく進んでいる気がするが、何れも、自分の正当性を声高に叫んでいるのだろう。

    日本が、国内的に真の解放を成し得ることが出来れば、世界的にも今の情勢を変え得る処方箋を示せるかもしれない。

  • 被差別部落のことを「路地」と呼んだのは、作家の中上健次だそうです。
    この本は、被差別部落出身の作者が、全国各地の被差別部落を訪ね歩いたルポルタージュです。
    残念ながら私は中上作品は読んでいませんが、中上自身も和歌山の被差別部落の出身なのだとか。
    恥ずかしながら、この本を読むまで作者の上原善広氏のことを全く知りませんでしたが、「橋下徹研究」で結構有名人だったんですね(^_^;)
    さて、橋下氏のことも含め、被差別部落のことをいろいろ書いてきて賛否両論ある作者のようですが、このルポルタージュ自体はなかなか良いと思いました。
    エピローグで作者自身が語っているように、この旅は、作者自身の生まれた「路地」を探して再発見するためのものなのは明らかです。
    こと更に差別の現実を暴き出すのでもなく、それぞれの被差別部落の人々の現在に心を寄せ、共感し、そこで自らのアイデンティティをも見出していく、そんなルポです。
    この本を読んで、自分は被差別部落のことをほとんど知らなかったんだなあ、と痛感。
    中上健次氏の作品も、読んでみたくなりました。

  • 日本全国の被差別部落を歩く旅行記。
    あくまでも現在を知るための本なので詳しい歴史に関しては塩見鮮一郎なんかの本と合わせて読むのがいいかも。

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著者プロフィール

1978年、大阪府生まれ。大阪体育大学卒業後、ノンフィクションの取材・執筆を始める。2010年、『日本の路地を歩く』(文藝春秋)で第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年、「『最も危険な政治家』橋本徹研究」(「新潮45」)の記事で第18回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞。著書に『被差別のグルメ』、『被差別の食卓』(以上新潮新書)、『異邦人一世界の辺境を旅する』(文春文庫)、『私家版 差別語辞典』(新潮選書)など多数。

「2017年 『シリーズ紙礫6 路地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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