- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167815011
作品紹介・あらすじ
女にもてない「私」がようやくめぐりあい、相思相愛になった女。しかし、「私」の生来の暴言、暴力によって、女との同棲生活は緊張をはらんだものになっていく。金をめぐる女との掛け合いが絶妙な表題作に、女が溺愛するぬいぐるみが悲惨な結末をむかえる「焼却炉行き赤ん坊」を併録。新しい私小説の誕生。
感想・レビュー・書評
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いわば人間の屑とでもいうのだろうか。
働きもせず金を無心し、すぐ激昂し、女に手を挙げ、の繰り返し。それも私小説とは。。
現代の話をかようにまでも大正昭和の人が書いたような文体、計算ずくの内心描写を筆致に描き上げる力量は解説者をして天才と言わしめるだけのことがある。
早逝が惜しまれる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いやーおもしろい。隠さずにすべてを晒すことができるのが私小説の良さなのか。
クソみたいな人間に辟易するがなにか愛らしい。
「こんな人間にはなりたくない」「こんな部分が自分にもあるのかも」「自分も角度を変えるとクソなんじゃないか」
よくわからんが、いろんな感情に揺さぶられる。
しかしどんな想いも包み込む文学の懐の深さに何か安心もする。
この人の作品をもっと読みたい。 -
西村賢太さんの小説ってなんでこんなに面白いんでしょう
ド屑を主人公とした私小説、読んでいてヒリヒリしてくるようなやりとり、なのにどこかユーモラスな滑稽さも感じてしまいます
たぶんこれは、主人公を屑として描き、それに対して弁明めいた描写が一切ないからという、そのバランス感覚が上手いんじゃないかなぁなんて思うのです
主人公の内面描写をしっかりと書き、とことんまで自己中心的な思考回路で悪いのはあくまで相手、そんな考え方が徹底されています
でも、主人公の一人称視点という点から見れば自己弁護に徹底しているのだけど、他者が絡んだ時にその屑っぷりを容認するような甘い文章は一切出てこないんですよね
本人の考え方としてはこうだけど、他者から見れば最低な男、と、こういったポイントを第三者的な視点ではきちんと理解して冷静に描いている、そんなところに真顔で演じるコメディのような滑稽さが産まれるのではないかなぁと思うのです
あとは、メディアに出演されていた時のチャーミングなご本人像とか、ちょっとした行動・考え方にどこかあるあるめいた共感を覚えてしまったりとか、私小説とはいえ多少は露悪的に描いているんだろうなとか、なんかもろもろそういった要素とかもあったりはするのだろうけど
……『小銭をかぞえる』の感想というより西村賢太作品の感想文になってしまった(笑 -
最近、あくていを読んだばかりで、罵詈雑言系が続きましたね。ただ、あくていは主人公が女性、こちらは男性。そして、まぁ
クソ野郎。本当に屑男です。上手いなぁ。
本当。これでもかっ!これでもかっ!って次から次へと言葉の凶器、凶器、凶器。
なんか、鋭利な刃物というより、鈍器で
叩き潰す!みたいな言葉の凶器です。
心地良くテンポ良く、悪口に酔いしれました。面白いです! -
こんな男に死後弟子を名乗られる藤澤淸造が可哀想になった。
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藤澤清造も作者に負けず劣らないダメ人間だったみたいですから、良い師弟関係かもしれませんよ(笑)藤澤清造も作者に負けず劣らないダメ人間だったみたいですから、良い師弟関係かもしれませんよ(笑)2023/07/09
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こんにちは。
西村賢太さん好きでいろいろ読んだのですが、声を出して笑ってしまったのは「二度はゆけぬ街の地図」です。「焼却炉行き赤ん坊」も女の...こんにちは。
西村賢太さん好きでいろいろ読んだのですが、声を出して笑ってしまったのは「二度はゆけぬ街の地図」です。「焼却炉行き赤ん坊」も女のままごとぶりと賢太のきれっぷりが面白くて好きです。2012/12/20 -
美希さん
コメントありがとうございます。「苦役列車」だけ読んどけばいいかなーと思っていたのですが、賢太ちょっと面白くなってきました。
次...美希さん
コメントありがとうございます。「苦役列車」だけ読んどけばいいかなーと思っていたのですが、賢太ちょっと面白くなってきました。
次は「二度はゆけぬ街の地図」にします! 笑えそうで楽しみです。2012/12/21
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大なり小なり、意識しているしていない、に関わらず、ここまで先鋭的で分かりやすくなくても、人間て同じようなことしているよなあ。主人公は不自然なくらいに分かりやすくクズとして描かれているけど、実際問題としてここまでクズなのではなくて、普通にいい人ぶっている連中って本当のところはこんなクズと同じなんだと作者は分かりにくく表現しているのかもしれないような気がしてきた。
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文章は面白いけど男がマジ不愉快ですごい。
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西村賢太の破天荒さにびっくりしました。その中でも昔の文学っぽい文章の書き方によって、なぜか奥かしさが感じられて最後まで嫌にならず読めました。破天荒過ぎてエンターテイメント的な部分もあります。
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安定の貫太シリーズ。名前は出てこないですが、秋恵との蜜月の日々を描く本作。二短編は共に貫太の癇癪で破綻に走る事毎度の結末ですが、どうしてこうも西村処作は分かっていても面白い読後感を味わえるのでしょうか。
それは巻末に町田康氏が解説してるように、純文学定形の「苦悩する青年像」と全く異なる方法で物語が描かれ、それも見事な文章と描写を持って成されているからなのでしょう。町田氏の「酢を飲んだような悲しみと同時に愉快に感じる」読後感を西村さんの本作からも変わらず味わえるのです。