人間タワー (文春文庫)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167915940

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  • 「人間タワー」朝比奈あすか 著

    1.人間タワーとは?
    運動会でみる、あのタワーのことです。
    人間タワーについて、下記の登場人物のひとたちが、想いを語ります。
    ①つくる人
     6年生
    ②見守る人
     教師
     親
    ③楽しみにしている人
    親戚、学校近隣のシニアのひと。

    2.本書の読みどころ
    現代社会の一面を型取りした小説です。

    ①シングルマザー
    周囲をはばかる気苦労
    ②6年生
    中学受験。自身の意思か?親の意思か?
    立ち止まる時間もなく流れる日常。
    ③教師
    学年主任。
    学年行事を成功させたい想いと、生徒らの交錯する不安、葛藤との落とし所。
    ④共働きの子供
    熱を出しても、親に迷惑をかけたくない一心で、親の出勤後、親に連絡しないで、学校を休まざるをえない子供心。
    ⑤孤独
    妻に先立たれ、施設で暮らす。妻の亡きことを受けいれることができず、影を求める毎日。

    読了後、社会の一面を突きつけられた、そんな印象です。

    #読書好きな人と繋がりたい





     

  • 朝比奈さんは、学校を中心にその周囲を描くのがとても上手いと感じる。
    よくある出来事、人間だからこそ大きな何かは起こらないけれど、自分の今までのことを思い出すきっかけになってくれる。

  • 2023年中学入試で出題された作品の原作を読む。出題されたとき、「翼の翼」の作者と知り、メンタル持ってかれそうだから心が健康なときに読もうと思ってたとおり、心の闇の部分をあらわに描いてた。伝統行事を守る学校と、子どもの意見を尊重したい先生と、学友同士で意見をぶつけあっても解決できないもどかしさが、エンドで別視点から鮮やかに映してた。「人間タワー」自分も昔体験した組体操のことだけど、社会の縮図ヒエラルキーのようだなと感じた瞬間。

  • 二つの小学校合併の象徴として、六年生全員で造る『人間タワー』。運動会の伝統となり、保護者のみならず地域の住民にも楽しみにしている人は多い。しかし、組体操が危険視される風潮の中、昨年は失敗に終わってしまった。
    今年はどうするべきか。保護者、教員、そして当の児童たち。様々な意見に分かれる中、出された結論とは・・・。

    賛成するにも反対するにもそれぞれの理由があり、どちらにも納得できるし反論する気持ちにもなる。実際に参加する子どもたちだってそうだ。上に乗る子、下で支える子、それぞれの立場で言い分がある。
    私は運動は全然ダメなので、団体競技など嫌を通り越して恐怖でしかないけれど、観る分には団体競技の方が熱くなる気がするのは何故なんだろうか。
    こういったことに正解はないと思う。当人たちが納得していればそれでいい。外部が、特に風潮なんて分からないモノが批判するのだけは間違っていると思う。

  • 2年ぶりに再読。2年前は読んでいてふーんとしか思わなかったけど、今は色々と思うことがいっぱいあるかも。沖田先生は教師として公平にかけるし、とにかく厳しくやればいい、いつでも私が正しいみたいな感じで怖い。絶対にこういう人が担任は嫌ですねー。出畑くんは勘がいい。島倉先生はこの本で唯一成長する人だな。
    あえてはじめと終わりが学校に直接的に関わらない人なんだなーと思う。
    澪はすごく賢い。こういう子が令和には求められると思うな。小学生時代ピラミッドはやったことあるけどタワーはないなぁ。ここまで伝統になっていたらなんかやりたくないかも。伝統的な人間タワーで団結しましたっていうのが気持ち悪いんだよなぁ。いいところは残しつつどんどん時代に合わないところは帰るべきだから澪みたいな子は貴重。

  • 運動会の組体操「人間タワー」をどうするか。教師や生徒、親それぞれの思惑。自分の意見が正しい、自分の意見を通したい、と周りの反対派を批判する人たち。とても気持ち悪かった。アンバランスの危うさ。今の世の中にいっぱいいるなこういう人。耳を傾けどうすれば両方にとっていいか考える数少ない人たちの賢明さが際立つ。鈴子さんや安田さんや大津さんのお母さん。そっちになりたい。

  • 人間が関わって出来ることについて、関わるひとそれぞれの視点で書かれた内容。
    他者に見える自分と自分がわかっている自分のギャップ。何歳になっても人間の本質は変わらない。
    人間関係の中で日々不具合はあるが、向き合ってやっていくことで小さな幸せや達成感が得られることがある。そんな積み重ねが人生を豊かにする。が人間の一生は有限。日々を大切に終わりも豊かにありたいと感じた。

  • 色々な視点から話が進められていて、新しい感覚を味わえた。

  • ★3.5
    桜丘小学校の運動会で毎年六年生が挑んできた新体操「人間タワー」を巡り、生徒、先生、親達の視点で描かれている。

    他人と何かを作り上げるというのは
    本当に難しいことだなと、改めて思う。

    伝統があり、元々そのコミュニティに属している人達には固定概念が根付いている。
    外から入ってきた人には異質に映ることもあるほどに。

    伝統を守る。それは誰のために守るのか。

    六年生になったらやるもんなんだ、
    なんて一喝するのは楽だけど、

    自ら望んでいないにも関わらず、
    伝統を守る責任を負わされている子ども達に対して
    大人たちがすべきことは
    そういうものだと決めつけることでも
    過去の栄光を語ることでもなく
    なぜやるのか、なにを学んで欲しいのか
    子どもたちに理解できるように伝えることではないか。
    (もちろん憧れている子もいるとは思うが)

    学校をテーマにした話だけど、今の自分にも刺さった。
    自分の心に生まれた「モヤッ」を無かったことにしてはいけない。考えることを諦めてはいけない。
    言葉にして、話し合って、作っていくんだ。

  • 朝比奈 あすかさんの長編小説。

    タイトルから今時のカースト制がテーマかと想像していましたが
    タイトルそのままに、小学校で行われる組体操「人間タワー」を描いた連作集でした。

    読み始めの地味な印象から一転、どんどん惹きつけられ途中から夢中になって読みました。

    一時、その危険性が取り上げられた組体操ですが、本作では親や教師、そして組体操の上に立つ子供、下で支える子供達の本音などが丁寧な人物描写で描かれています。

    「人間タワー」が実施されるのか、無くなってしまうのか、
    もし実施される事になったらどんな形で行われる事になるのか、結末が気になり、そしてそこに辿り着くまでの、それぞれの子供達、大人の感情の揺れや思いに寄り添ったり共感したりしながら読み進めました。

    全6話で構成されており、一見独立した短編の様でありながら、登場人物が他の章でリンクしていたり、人間タワー=登場人物の連携と上手く掛けられています。

    テーマ自体も新鮮で初めての感覚を味わえ、読み応えのある作品でした。
    ひとつだけ残念なのはあの形になるまでの過程を読者の想像に委ねられたのかも知れませんが最終話の一つ前で1話増やして描いて欲しい気もしました。

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著者プロフィール

1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2000年、ノンフィクション『光さす故郷へ』を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作を表題作とした『憂鬱なハスビーン』で小説家としてデビュー。その他の著書に『彼女のしあわせ』『憧れの女の子』『不自由な絆』『あの子が欲しい』『自画像』『少女は花の肌をむく』『人生のピース』『さよなら獣』『人間タワー』など多数。

「2021年 『君たちは今が世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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