電球交換士の憂鬱 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198640866

感想・レビュー・書評

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  • ★電球の美徳とは?

    【感想】
    ・失われゆくもの。交換すること。永遠であること。「交換」とはいったいどういう行為であるのだろう?

    【一行目】
     「道には詳しいのに、自分の行き先がわからないもの、なあんだ?」

    【内容】
    ・電球交換士という世界でも唯一と思われる仕事をしている十文字の周辺でおこるさまざま。なにやら暗躍している気配もあり。

    ▼簡単なメモ

    【青空軒】名古屋の北の方にある揚々町のカレー屋。「死ぬまでに絶対食べたいカレー・ベスト5」に入る。食べたときはそうでもないが後になって、人によっては翌日になってから辛さがよみがえってくるのが病みつきになる理由。
    【アスカ】ヤブの妹。患者を研究対象としか考えていない精神科医で絶世の美少女。
    【猪原佐和子/いのはら・さわこ】ショールームの派遣社員。十文字好みの美人。
    【腕時計】十文字は三十六時間仕様の腕時計をつけている。ホンコン製。
    【エデン遊園】中村百貨店の屋上にある遊園地。地下一階地上四階の小さな百貨店の四階までエスカレーターで上がり文房具売場脇の階段を昇るとたどり着く。
    【考える】《考えてなんらかの答えが見つかったとして、それが自分にとって快い答えであるとは限らない。》p.96
    【神崎】十文字の高校時代の友人。高品質で有名だったカンザキのランプで有名なメーカーの今は社長。あまり売れなくなったがなくしてしまうことを神崎は惜しがった。
    【銀星座】映画館。館主のカザマには十文字が子どもの頃からお世話になっている。スキンヘッドに黒い眼帯、顔のいたるところに傷がある。「あしたのジョー」のおやっさんのイメージ?
    【答え】《最初にきっぱり云っておくが、おれは答えのないものが好きだ。》p.44
    【コブラ・ブラザーズ号】十文字のオートバイ。サイドカーつき。
    【コブラ・ベイビー】十文字愛用の携帯電話使用
    【西園寺剛/さいおんじ・ごう】自称刑事。本当ならば世界で一番頼りにならない刑事だ。
    【笹島/ささじま】引っ越す前に電球を交換してほしいと依頼してきた青年。十文字はかれの笑顔にほだされた。
    【シャテバー】射的場のお婆ちゃんの略。ほぼ「スナイパー」の意味。
    【十文字扉/じゅうもんじ・とびら】主人公の「おれ」電球交換士。バー「ボヌール」の常連だが下戸。早死にの一族だが扉は(たぶん)不死身。その証拠に? 背中に薔薇のかたちをした痣がある。『それでも世界は回っている』にも登場。
    【十文字の父】サーカスで軽業師として働いていた。芸名は十文字一号。ちなみに扉は十文字二号。
    【十文字ランプ】十文字が交換してくれる高品質だが寿命の短い電球。実はカンザキランプと同じもの。
    【正一】春ちゃんの父。正しいことが好きな一徹者。
    【谷原さん】不死身の先輩。詐欺師かどうかは不明。
    【卵サンド】十文字の得意料理。
    【トンチキ】ミナト町でいちばん安上がりな酒が呑める。
    【西島】理容師。店の名は「西島理容室」なのだが客も西島さん自身も「人生理髪館」と呼ぶ。西島さんはなんでも「人生」という語を交えて話す。
    【橋本さん】愛知県の公民館の受付。美人。
    【八田美枝子/はった・みえこ】S島美術館の学芸員。パンクバンド「8/えいと」の元ボーカル。話さなければ清楚な美女。
    【羽深飛雄/はぶか・とびお】二代目ジョー・ハヤテ。目にもとまらぬ速さで動ける。十文字とはサーカス時代の仲間。
    【春ちゃん】二十歳すぎくらいで活版印刷屋「ミナト町活版印刷倶楽部」をやっている酒豪の美人。
    【檜垣宏一/ひがき・こういち】とんでもなく麗しい青年。マチルダが女装を始めたきっかけ。実家は饅頭屋で生地がところどころ破れ餡がのぞいている「破れ饅頭」が看板商品。
    【フィラメント】《しかるべきときが来たら、フィラメントが痩せ細ってこと切れるのが電球の美徳なのだ。》p.30
    【本物】《私は本物の中庭を見たことがなかったから、五郎さんの話を聞けば、いつでもそこへ行けたの。》p.72
    【マチルダ】以前は男だったが、今はわからない。通称「ピンク通り」の花形?
    【ママ】なんだか大物っぽい。
    【水野五郎/みずの・ごろう】十文字に似ている誰か。「三ツ星シネマ」の館主?
    【水野冬美/みずの・ふゆみ】「三ツ星シネマ」の従業員? 十文字を「五郎さん」と間違えている。
    【三隅慶子/みすみ・けいこ】生まれ落ちたときから博物館の学芸員になることが決まっていたような女性。十文字は自分の内部では「ミス・ミスミ」と呼んでいる。
    【未知】《「未知」を転ばせば「未来」につながる。》p.31
    【無重力寝台】猪原佐和子さんから薦められて十文字が購入した素晴らしいベッド。
    【元木】西園寺のカレー友だち。
    【ヤブ医者】藪という名字だというが本当は矢吹らしい。
    【リュウイチ】十文字のニセモノで電球交換でぼったくっているらしい。
    【路地】「なんていうか、あのころは路地に色気ってもんがあったわよ」p.157

  • なぜだか引き込まれる不思議な物語。ゆるゆるとした登場人物、特に盛り上がるわけでもない構成、でも、引き込まれる。たまごサンドがいい。

  • 電球=タマ=魂っていうロジックが面白い。不死身の十文字氏を語り手に、変化の過程にある街を舞台に。十文字さんモテるな・・・。読んでて特に魅力は感じなかったんだが。卵サンドは食べたいかも。

  • つむじ風食堂の夜を読んだ後手に取った本、同じテイストなんだけど、つむじ風〜の方が面白かったな

  • シルバーメタリック寄りのいぶし銀的なお話。

  • 吉田先生作品にしては、すこしメランコリックというか、ほんのり暗めなおはなし多め。
    まさに「憂鬱」なのかな。

  • あらすじ
    サーカスの軽業師から電球交換士に転職した俺。使用する電球は親友神崎が作る高級電球だけだ。働くのは主に夜で、昼間はヤブという名前の医者に通ったり、仕事の後はバーに行って炭酸水を飲む。美人には弱くて、映画館の未亡人や、博物館の美人学芸員やヤブの妹で精神科医に夢中になったりする。ところが神崎から、切れない電球を発明したと聞かされた。

     吉田作品の中でも好み。登場人物が、ウソかほんとかでまかせか、とにかくマイペースで暮らしているのはいつものこと。電球交換士ってだけでファンタジーな雰囲気が出るよ。そのなかにミステリー要素をすごく細かく入れ込んである。食べ物もおいしそうだなー。今回は卵サンドイッチ。

  • すっごく○○!(おもしろいとか不思議とか)
    ・・・ってのではなく、何かとじんわりくるやつ。

    今度の休みは、たまごサンドを作ろうかな。
    お供は珈琲、もちろん自分でドリップです。

  • タイトルに惹かれました。
    主治医に不死身だと言われた主人公は電球を交換することを生業としている。柔らかに空間を包みこむ電球の正体とは?主人公は本当に不死身なのか?
    いつか切れてしまう儚さと運命を持つ電球をモチーフに人間の時間軸を描きながら、「限りがあるからこそ持ちうる価値」を表現しているように感じた。
    短編連作。せわしさを感じさせないので、睡眠前のひとときにもおすすめ。主人公を取り巻く登場人物もいちいち個性的で楽しめる。

  • また時間の話だ…!
    世界観は好きなんだけど私にはちょっとだけ難しい
    「人を憂鬱から解放して幸福にするのは、限りある時間を生きている、と実感できるときなのかもしれません」
    たまごサンドたべたい

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著者プロフィール

1962年、東京生まれ。小説を執筆しつつ、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作、装丁の仕事を続けている。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞。『つむじ風食堂とぼく』『雲と鉛筆』 (いずれもちくまプリマー新書)、『つむじ風食堂の夜』(ちくま文庫)、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『モナリザの背中』(中公文庫)など著書多数。

「2022年 『物語のあるところ 月舟町ダイアローグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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