断片的なものの社会学

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  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255008516

感想・レビュー・書評

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  • 植本一子さんの本に書かれていて読みたいとメモし買っておいた。
    読むまでにしばらくかかってしまったけれど。

    思いもかけない物語の片鱗がとても興味深かった
    いつも目の前にあるのに、目にしながら気づいていないことはたくさんある。

    子ども=しあわせ 概念についても考えさせられる
    子どもは結婚すればできて当然
    子どもがいる人 いない人 で自然と疎遠になっていく
    私たちはそういう、世の中の幸せというものから自然に遠ざけられていく

    私たちは孤独である。
    脳の中では特に。
    どんなに愛し合った恋人同士でもどんなに仲良しの友達でも脳の中までは遊びに来てくれない

    経験則のない話はできないという圧倒的な対象が
    出産、そして育児だ 
    妬みや嫉みがなくても
    産んだ人 産んでいない人
    育てた人 育てていない人
    大きな境界線が敷かれる
    どちらが偉いとか偉くないはない というけれど
    ほんとうにはそう思っていない人は絶対数いるとおもう

    無意味なことはたくさんあるけれど
    その羅列でこの世は出来上がっている という解釈が
    心地よくわかりやすくエピソードがおもしろい
    知らぬ間に読み終えていたような本だった

  • ほとんど完璧な読書だった

  • 本書が示そうとするのは、こうして生きている僕ら一人一人も断片のひとつだ、ということだ。

    著者の岸さんは重度のネット依存症なのだけど、そのうちかなりの部分を普通の人たちの携帯ブログや日記を読むのに費やしている。風俗嬢がホストクラブにはまるさま。ゴミ屋敷に住むシングルマザー。岸さんにとって、「誰にも隠されていないが、誰の目にも触れない」ような文章の数々は、徹底的に世俗的で、孤独で、一つ一つが無意味だが、けれども美しい断片として映る。

    しかし、本当は僕たちの人生そのものも、そんな文章となんら変わりないのではないだろうか。ぼくたちは孤独だ。ぼくたちはいきなり生まれて、生まれたときのことすら思い出せず、世界に生まれ落ちてきてしまった。どんなに仲がよく、愛し合っている友達でも、脳の中まで遊びにはきてくれない。ぼくたちは無意味だ。けれども、そんな僕たちが目の前の断片たちとつながり、語り出すとき、そこに意味が生まれる。

    本書のエピソードを笑い、心が温まったりする限り、僕らの人生にはたくさんの意味がある。これは、どうしようもない僕たち全員を、ささやかに肯定する。社会学とは、そんな僕らの紐帯、つまり繋がりを考える学でもあるけれど、その学問の手前まで僕たちを連れて行ってくれる本なのだ。
    できるだけ多くの人に読んでもらい、いろいろな断片を見出し、再発見して欲しいな、と思う。

  • 伊集院光さんの深夜ラジオの「空脳」コーナーを思い出した。
    私はこんな本に出会うために読書をしている。

  • 友人に薦められて読んだ。
    日常の通り過ぎてしまうかもしれなかった事柄を集めたエッセイ。少し読みにくさはあったが、何度か読み返して読了。
    沖縄についての考察はあたたかくも鋭くて身に沁みた。
    習字の手直しの時に先生との触れ合いについての文章は、昔のことを思い出してじんときた。

  • いい本。たしかになんの答えも解決策も提示されていないが、けっきょくそういうものだよね、という気にさせられる。すごく心に残る。世界はこういう欠片の集まりで構成されていて、そこに対してどういう視点を持つかで、世界の捉え方は全く違うものになるんだと思う。あんまり繰り返し同じ本を読むことはしないが、また読みたいと思わせる本。ストレスがない。いい本に出会えた。

  • 読んだ後に目に入るすべてのものが
    なんとなく愛しくなってしまう本というのがたまにあるけれど
    そういうかんじ

  • 意味を求めたところでなんてことはない人生の断片。拾い上げてみたらば全てがキラキラしてる訳ではないが、ひとつひとつ違う形で、ただただそこに存在する断片。

    ふとそれを取り上げてその形を受け止める。ただそれだけのことなのになんだかとても切なかったり癒されたり。

    仏教の教えにも似たある種の諦観と、他者との違いや多様性を受け止める視点は純文学的でもある。


    「普通であること」を普段意識することはない。壁が高すぎて見えないから。

    世の中白か黒か、善か悪か、すべてに分かりやすい正解を求める風潮の中で、何とも意味を付せられない曖昧な感情や物事にただ寄り添うことがもはや贅沢になっている。


    答えはない。

    どんなに愛する恋人も友達も家族も、頭の中までは遊びに来られないから。自分の「答え」と他者の「答え」は同じものでは決してないのだ。


    意味もない。
    無理に意味を見出すことが良いとは思わない。でも生きていく上で何か大切なことはこんな断片に宿っているのかもしれない。

    感想もなんだか断片を繋ぎ合わせた、意味のあるようでないことばかり。

  • 装丁にひかれて購入した。

    一つひとつの話題が、普段の生活の中ではあまり意識しない、ちょっとした歪みを明るいところに出しているような感じがした。目をそむけたくなる記述も少しあった(書かれていることを想像したら辛くなった)し、明るい話題はほとんど出てこなかったけど、読み終えて前向きな気持ちが出てきたように思う。

    私たちは無力で、絶対に正しい存在ではない。だから自分の主張を言わない、のではなく、いつ・どんな風に・誰のもとに届くかはわからないけど、思ったことを発し続けることは必要である。発し続けることで誰かを助けることもあれば、誰かを傷つけることもある。

    結果はどうあれ、まずは言葉を発することが大事なのだと思う。

  • 自分の住んでいる場所より少し離れなところへ行くと、そこに住む人にはその人の暮らしが生活があることをしみじみ思い、なんだか不思議な心持ちになる。

    誰にも隠されていないが、誰の目にも触れない

    そんなたくさんの人のたくさんの人生が詰まっている。
    その中には色んな生き方を選ぶ人がいる。

    でも、それは、
    いいとか悪いとかではない

    ーつくづく、「社会」というものは、たくさんの「良くないもの」を含みながらも、それで成り立って「しまう」ものなのだと思う。

    ー「一般的に良いとされているもの」はそこに含まれる人々と、そこに含まれない人々の区別を、自動的につくり出してしまう。

    ーわたしたちはうまれつき孤独だということ。だからこそもうすこし面と向かって話をしてもよいのではないか、ということ

    著者の倫理観と社会学者として、人としての葛藤が随所に見られる。そういう眼差しを、自分の常識を疑う事ができる強さを感じる。
    そして埋もれてしまう物語りをただただ凡庸な物語りを救いあげる。
    見ず知らずの誰かを通りすがりの人の人生を思わずにはいられない。

    紀伊国屋 人文学賞1位
    2015年 朝日出版社

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著者プロフィール

岸政彦(きし・まさひこ)
1967年生まれ。社会学者・作家。京都大学大学院文学研究科教授。主な著作に『同化と他者化』(ナカニシヤ出版、2013年)、『街の人生』(勁草書房、2014年)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社、2015年、紀伊國屋じんぶん大賞2016)、『質的社会調査の方法』(石岡丈昇・丸山里美と共著、有斐閣、2016年)、『ビニール傘』(新潮社、2017年)、『マンゴーと手榴弾』(勁草書房、2018年)、『図書室』(新潮社、2019年)、『地元を生きる』(打越正行・上原健太郎・上間陽子と共著、ナカニシヤ出版、2020年)、『大阪』(柴崎友香と共著、河出書房新社、2021年)、『リリアン』(新潮社、2021年、第38回織田作之助賞)、『東京の生活史』(編著、筑摩書房、2021年、紀伊國屋じんぶん大賞2022、第76回毎日出版文化賞)、『生活史論集』(編著、ナカニシヤ出版、2022年)、『沖縄の生活史』(石原昌家と監修、沖縄タイムス社編、みすず書房、2023年)、『にがにが日記』(新潮社、2023)など。

「2023年 『大阪の生活史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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