日本人SF作家の短編集ということで日本の、それも当時の自分と同年代(ティーンエイジャー)が主人公の作品に飢えていた私にとっては宝石箱のような一品であった。
作品のテーマは侵略異星人、宇宙戦争、サイボーグ、異次元世界、タイムトラベル等多種多様。
その中で特に印象に残っているものを二つだけ挙げる。
まずは学校のマドンナにフラれた傷心の男子高生がその女とはまた別の美女と精神が入れ替わる「あばよ!明日の由紀」
男女入れ替わりネタの草分け的作品だが、挿絵でも「心は男、体は女」の脱衣シーンが描かれていて思春期のエロガキの心をがっしと鷲掴みにしてきた。これが逆(心は女、体は男)だったらここまでのめり込まなかったろう。
入れ替わりの原因は近所に住むマッドな科学者の変な機械によるものだったが、本作の魅力は男女入れ替わりという設定そのものにあるので別にどうでもいい。
もう一本は「色盲の町」。
現在出ている復刻版では「色をなくした町」などという歯切れの悪いタイトルに改悪されているが、「色盲」という語が一発変換できない事情と無関係ではないだろう。また言葉狩りか・・・フン。
公害の及ぼす影響で人々の目から色覚が失われていくという話で、クソガキの当時はなんでこれがSFに分類されるのか分からなかった。
今考えれば「破滅SF」というジャンルなのだと分かるのだが、そういう意味で「SF」という概念の窓口を広げてくれた作品であると言える。