自民党 失敗の本質 (宝島社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784299021311

作品紹介・あらすじ

自民党はなぜここまで「劣化」したのか――。
党の内から外から、右から左から、その理由を大検証!

モリカケ問題、桜を見る会、コロナ対策……官邸主導といわれる現在の自民党政権だが、いったい誰のための政治主導なのか。
イエスマンシップの政治家たち、官僚への恐怖支配、メディアへの圧力など、「国民のため」という視点が安倍・菅政権、そして自民党からは消えたように見える。
現役政治家、政治評論家たちがその「変節」の理由を説くインタビュー集。

感想・レビュー・書評

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  • 私の支持政党は自民党だったが、この10年程で堕落しきったと感じ支持をやめた。
    国の未来を託す政治の劣化原因を知り、一票を投じる政治家と政党を判断するため、今月は政治の本を多く読んでいる。

    本書の論客には自民党の現職議員の石破と村上、元自民党で現立憲民主党の小沢、元官僚の古賀と前川が名を連ねている。
    なお、
    古賀茂明は、民主党の菅直人政権の時、東電処理や電力行政を真っ向から批判して経済産業省官僚を退職勧奨された。
    前川喜平は、禁止されていた天下りの斡旋を文科省が組織的にやっていた責任とって引責辞任した。
    二人とも官僚をやめたのは自民党が直接の原因ではないが、内閣にとって不都合な発言が多く、後に安倍政権から陰湿な嫌がらせを受けている。

    「時事放談」の司会で1000人以上の政治家と接した御厨、東京新聞の記者で政権とメディアの関係に詳しい望月もいる。

    自民党および官僚と政治家の関係に詳しく、自民党に忖度する必要がない人達の率直な意見が聞ける。
    論客に河野太郎や小泉進次郎がいればなお良かったが、それができないから本書が出版されている。

    以下の考え(前川談)に納得し頭に残った。
    「日本は国民主権である以上、国民に選ばれた政治家が責任を負い、権限を持つというのが正しい民主主義。」
    「官僚主導はあるべき姿ではなく、最終的に官僚は政治家に従うべき。」
    「同時に、官僚が専門性に基づき自由に意見を言える環境を確保すべき。」← 以前は自由に意見が言えたようだ。

    論客の全員が問題視しているのが、「現在の自民党は議論をしなくなっている」ということ。

    小選挙区制になってから、党の公認候補になれるか否かが大きく選挙の当落に影響するようになった。
    落ちれば無職になるので、自民党の公認を得て基礎票を確保するために政権に忖度し、選挙第一主義で行動するようになった。
    さらに投票率が50%に低下したため、宗教団体の固定票が当落を決めるようになり、結果何が起こったかは周知のとおりだ。

    本来なら国会審議が必要だったり、郵政民営化の時みたいに解散総選挙をして国民の審判を得るべき案件でも議論をしない。
    国民の多くが反対した"集団的自衛権行使容認"という戦争参加に直結する事案でも閣議決定を強行した。
    その結果、安倍内閣の支持率は著しく低下したが、代わり得る勢力がないため支持率も徐々に回復した。
    この教訓を得て、やってはいけないことのボーダーラインがグッと下がった。

    法律違反でなければ何をしてもいい。→ 「法に従って適切に処理している」という答弁頻発
    捕まりそうになったら証拠を消す。→ 公文書改ざん。「桜を見る会」の招待者名簿をシュレッダーにかけて廃棄
    法律違反でも罰則がなければ何をしてもいい。→ 謝罪と是正コメントをしておけばいい
    憲法違反でも都合よく解釈する。→ (いつまでにという期限の規定がないから)臨時国会の早期召集の要求に応じない

    何をしても、選挙すれば自民党が勝つので、国民の支持を得ていることになる。
    国民の怒りを買って小選挙区で落選させても、比例で復活してくるので国民は益々選挙に行かなくなる。
    メディアにも正面切った政権批判ができないように圧力をかけているので国民に真実が伝わりにくい。

    今、自民党の一強になっているのでロシアや中国の政権と同じく、自民党にとっては「失敗」でなく「成功」なんでしょう。

    ###

    本書の、東京新聞の社会部記者である望月衣塑子さんの登場で思った。
    政治の問題を語る女性の論客が少ない。

    政権とメディアが癒着した時、民主主義は機能を停止する。
    朝鮮民主主義人民共和国やロシアを見て感じるとおりだ。
    日本の報道の自由度は、民主党政権が誕生した時に11位まで上げたが、安倍政権以降急落し71位まで落ちている。

    近年のNHKは官邸の広報部門みたいになっていて、意見を述べることはまずないと感じている。
    通信社状態になっていて、○○が開催されました。○○氏が○○と発言しました。という表面的なことを伝えて終わり。

    メディアと権力の関係性については、改めて他の書籍で現状認識を深めようと思う。

  • ●かつての自民党は旧自由党系ど旧民主党系が拮抗しつつ、ハト派からタカ派までの大きな振れ幅のなか「擬似政権交代」を繰り返してバランスを保ってきた。
    ●安倍・菅政権の9年間では、国民の疑念に対し説得力のある言葉で答えないと言う政治家の姿勢が顕著になった。
    ●安倍批判。「昨日の週刊文春によると」とか「新聞報道によると」など、検証もせずにマスコミのネタをもとに追求したところで、政権与党は怖くもなんともありません。
    ●世襲制を止め、公募で人材を集めよ。
    ●アメリカを最優先に配慮するナショナリストと言う「ねじれ」
    ●加計学園。国家戦略特区として獣医学部の開設を認めるためには既存の獣医学部では対応できない何かが必要。例えばコロナウイルス対応において研究発表されたり、あるいは治験を実施したり、治療薬やワクチンの研究を進めたり。現在そんな話は全く聞かない。
    ●ふるさと納税の問題点をしてきた総務省の平嶋さんの左遷人事の影響は大きかった。そもそも返礼品目的でのふるさと納税と言うのは、どう考えてもおかしい制度。官制通販のようなことになってしまうのは明白でした。
    ●戦争を知らない世代が増え、自民党の政治家も変質してきたのだと思います。軍事面だけではなく、個人の権利、尊厳を虐げるような方向で権力が暴走することの怖さを知っている政治家が減ったともいえます。
    ●小沢一郎から山本太郎へ。1人の言葉だけではダメです。有権者は「政権を任せられるのは果たしてどこか」と思っているわけですから。政権を取ったら、この人の政策が実現できるかもしれない、と有権者が思えて初めて語る言葉が意味を持つのです。

  • 「お上主導」の意識が抜けない国民に責任があるという小沢一郎の言に賛同。
    つまりは事の本質が見えていないから安倍菅岸田ごときに好き放題やられるのだ。
    メディアも世論調査ばっかりやって責任放棄せず、きちんと報じよ。ビジョンなく評論ばかりしてると読売の後をとぼとぼついていくだけになるぞ。

  • 面白い

  • 政治に関わる関係者による自民党についての考えを述べたもの。どちらかというと自民党に批判的な人たちが多いようだが、良くも悪くも日本の政治をリードしてきた自民党に対しての思いを語っている。とてもタイムリーでおもしろかった。

  • 東2法経図・6F開架:312.1A/I71j//K

  • 政治の良し悪しを判断するのは政治家ではなく、国民です。9年間でどういう状況になったか、反論がここにあります。
    冷静に国民がこれを情報の一部として判断する材料になればよい。

  • 選挙も近いし、ってのはあまり関係なく、ただ敬遠するだけでなく、その実際もしっかり知っておかなければ、ってことで読んだ一冊。もちろん、イエスマンの手になる書を読みたいとは全く思わず、疑義を呈している方面の名前が並ぶ本書を選んだのは、自分的には至って妥当。いわゆる異端かもしらんけど、現党員の名前も入っている訳だし。ほとんどの問題は、官僚からのトップダウン、その故の右へ倣え体質に集約される訳ですな。家族から国家に至るまで、大小問わずいわゆる共同体において、自由にモノ言えぬ空気に染まると、だんだん腐っていきますわな。本書は、党の歴史を絡めて俯瞰的に知るための、分かりやすい入門書でした。

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著者プロフィール

1957(昭和32)年鳥取県出身。慶應義塾大学卒業後、三井銀行(現三井住友銀行)に入行。1986(昭和61)年、29歳で衆議院議員初当選、以来9期連続当選。農林水産政務次官、農林水産総括政務次官、防衛庁副長官、防衛庁長官を経て、2007(平成19)年に防衛大臣、2008(平成20)年に農林水産大臣。自由民主党では過疎村対策特別委員長、安全保障調査会長、高齢者特別委員長、総合農政調査会長代行、政務調査会長等を歴任。2012(平成24)年から自由民主党幹事長を務める。主な著書に『職業政治の復権』、『国防』、『国難』、共著に『坐シテ死セズ』、『軍事を知らずして平和を語るな』、『こんな日本を作りたい』など。

「2013年 『国防軍とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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