横浜・山手図書館の書籍修復師は謎を読む (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
3.09
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本棚登録 : 736
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784299035950

作品紹介・あらすじ

『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉としてデビューした著者による最新作! 横浜・山手図書館で書籍修復師として勤務する波々壁(ははかべ)と、アルバイトの小口啓(こぐち・けい)が、書籍修復に携わる一方で、物語に没入しすぎてしまい「物語に囚われてしまった人間」を救うため謎を解く、ビブリオ・ミステリーです。

感想・レビュー・書評

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  •  皆さんは、物語に大きく心を動かされ、読了後、想像の羽を広げて飛ぶが如く、呆然と何も手につかない状態に陥った経験はありませんか? これを「物語に囚われた」と言うなら、私は何度もあるし、いっそのこと、恍惚の人になってもいいな、とも思います。

     さて、本書に登場する図書修復師は、「人と物語の関係性も修復する」という設定になっています。心が弱っている時、体は現実を生き、心が物語に囚われている状況は危険で、その物語の題名を当てて、救わなければならないのだそう…。

     図書修復の仕事の手法や技術の部分には関心をもちました。四話に登場する、物語に取り憑かれたそれぞれの話がやや唐突で、諸々の設定も少々苦しく、本書の展開に没入しにくい印象が歪めない感想をもちました。
     しかしながら、横浜山手周辺の異国情緒あふれる情景が目に浮かぶストーリーに、元町辺りを散策してみたくなりました。

  • 横浜山手が舞台、本が好きな大学生読也が図書館の書籍修復師の波々壁のもとでアルバイトを始めます。
    物語に心を囚われた人の出来事(事件)を何の物語かを見つけて解決します。
    穏やかな気持ちで読めました。続編があるなら読みたいです。

  • 「書籍修復師」というタイトルに惹かれて読んでみたが、中身はファンタジー寄り。
    『物語に囚われている人間を救い出す』という不思議な設定が本筋だった。

    私も結構本は読んでいる方だと思っているが、探偵役である書籍修復師・波々壁(ははかべ)の言う『自分のことが書かれていると感動』し『心は物語に囚われてしまう』ほどの作品に出会ったことはない。
    しかしこの作品を読むと、それは幸運なことのようにも思えてくる。

    キリスト系学園の生徒の異変、図書館周辺に現れる野犬、完成したての図書館での不審死、そして最後は探偵役自身の秘密。
    最終話以外は、探偵役である波々壁とアルバイトの物語大好き大学生・読也が当事者を捉えている物語が何かということを追うことで事件の解決に挑む。

    読也は心優しいキャラクターだが、彼にもまたある秘密があった。
    読也と好きな本が被っている同じ大学の一年先輩・時田千都生(ちとせ)がツンなのにいざとなると助けてくれるところは良いキャラクターだった。

    話としては面白かったし、作中様々な作品が登場するのも嬉しい。有名作家さんや有名な作品でも知らないものがあり、読んでみたくもなった。
    ただちょっと惜しいのが、この『物語に囚われた人々を救う』という設定と書籍修復との絡みが無かったこと。
    書籍を修復することで、人々を救うという展開があればもっと良かったかなと(偉そうですみません)思った。

    書籍修復のやり方も少し知ることが出来たのは良かったし、読也にしても波々壁にしても良い結末となったのは良かったと思う。
    そして千都生が最後に再び彼女らしさを見せたのも良かった。

  • ぱんさんが書いていたように、私も本や、書店、図書館が出てくる物語にワクワクする。しかし、今回のはなんかわからないけど、予想していたのとは全然違ってホラーだった(汗)

    本の大好きなヨミは、本を買うためにもお金が必要ということで大学2年生から山手図書館でアルバイトを始める。そこで出会ったのが、波々壁主任。波々壁は修復に携わる一方、「物語に囚われている人間を救い出す」仕事をしており、一話目から死者が出るなど、びっくりした。(きっと勝手にビブリアの栞子さんのような物語をイメージしていたと思う。)

  • まず横浜山手という舞台にとても親近感が湧いて、さらに図書館、書籍修復師というワードにとても興味を持ちこの本を手に取らせて頂きました。

    物語に囚われた人を救うという設定が面白いと思いました。
    始めは物語に囚われた人と読んで私だ!なんて思ってしまいました笑(戻って来れなくなってはいないのですが、不安な時や弱くなっている時に、登場人物に自分を重ねて物語を読んで元気を貰ったりしていたので面白い設定だなと思いました。)

    最後の章で波々壁さん自身も物語に囚われていて、読也くん達がその物語を探し出すというところが真相を解き明かしている感じて読んでいて面白かったです。

    あと、読みながら読也くんの『物語の内容が記憶できない』にももしかしたら訳があって、こちらも実は物語に囚われていたのでは?など考えてしまいましたが、こちらは作品上では語られていなかったので分かりませんでしたが、その辺の読也くんのエピソードもあったら読んでみたいなと思いました。

  • 私は本が好きなので、本や図書館、本屋を題材とした作品に出会うととても嬉しく思います。今回本作を手に取ったのは、本屋を目的もなくうろうろとしながらさまざまな本を見ていた際に出会ったからです。

    本が昔から好きなのに何故か“状態が悪くなった本を直す”という概念が今までの私は完全に欠落していたので書籍修復師という単語がとても新鮮で、それでいてなぜ今まで“本を直す”という概念が私になかったのかとても不思議に感じました。

    物語と自分を重ねる経験は私にもあるので「身体は現実に生きながら、心は物語に囚われてしまう」ことが現実世界で起こってもおかしくはなく、すこし怖いです。

    本作では実在する作品に絡めてストーリーが進むので、それらの作品も少し気になります。すでに本作に登場する作品を知っていたら、よりストーリーを楽しめるだろうなと思いました。

  • こういう読書の捉え方もあるのかと、少し驚きましたが、ホラー系はあまり好きではないので、今一つでした。書籍修復に関しては、とても大切なことだと思います。

  • ははかべさん自身も物語に囚われていて少しハラハラしましたが無事に解放されてよかった。とはいえもっと修復師がいないと世の中に物語に囚われたひとの死が身近に多くありそうで心配になります。

  • タイトルからして面白そうで、
    ミステリー系かな?くらいの予想はつけたものの、
    あらすじは一切知らずに読み始めた。

    書籍修復というものは以前テレビで見たことがある。
    修復に使う紙がものすごく薄い和紙だったことを
    これを読みながらなんとなく思い出した。

    そうこうしているうちに、
    この小説の本筋は『物語に囚われている人を救う』
    ということだったと知る。
    死者まで出てしまうというから実に恐ろしい。

    千都生が仲間に加わって、3人体制で続編なのかな?と思ったけど、
    はっきり断られて今のところそれはなさそう。
    よく考えてみると修復は波々壁さん、
    物語の知識は千都生ができちゃったら
    見習いヨミくんの出番がなくなっちゃうか…。

    それにしても、本に関する小説を読むと、
    自分は全く本を読んでいないんだな、と思い知る。
    作中に出てきた小説は一つも知らないし、
    そもそも読むジャンルが偏りすぎている。
    もっと色々読んだほうがいいのかもと思いつつ、
    また次も物語を読むと思う。
    読書が好きな人は皆、本に囚われている。

  • アルバイトの読也と修復師の波々壁が物語に引き摺られている人を救い出す物語。

    ちょっとファンタジーかつホラーっぽい?実際にはないんでしょうけど、でも宗教とか色々囚われるって点では似たような感じはありそう。

    一点だけ…こちらのあらすじにある主人公の名前間違ってません?藤本読也くんですよね?小口さんとは…?

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著者プロフィール

1991年生まれ。茨城県出身。立教大学法学部卒業。第16回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉として、2018年に『三度目の少女』でデビュー。
他の著書に『推理小説のようにはいかない ミュージック・クルーズの殺人』(以上、宝島社)がある。

「2022年 『横浜・山手図書館の書籍修復師は謎を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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