サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

  • 河出書房新社
4.34
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309226729

感想・レビュー・書評

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  • 【総評】
    ・人類史を独自の視点で解説することを通じて、価値観を揺さぶってくる良本

    ・時代は中世〜現代。上巻と比べて現在に近いので、理解しやすい部分がある。また、自ずと現代に直結している話が増えるため、示唆に富む部分も多い

    ・冒頭の宗教に関する部分は個人的には入ってこなかった。中盤以降面白くなっていく点が上巻と共通しており、私のようなライト寄りな読者の離脱を招いていそうで勿体無い

    ・科学革命について記した14〜16章がハイライト。「無知の知」から出発し、科学と帝国の共依存関係とそれが世界にもたらした影響、同様に科学と資本主義との関係までを描き切る、特に示唆に富むパート。圧巻。

    ・訳者あとがきが本文に負けず劣らず秀逸。上巻の内容も含めた内容がコンパクトかつ網羅性を持ってまとまっており、ここを読み返すだけで再読したのと同じ効果がありそう。良くも悪くも骨太な本だから助かる。
    興味はあるが迷っている向きはまずこの下巻のあとがきを読んでみるのがよい。


    【特に印象に残った点・疑問点】
    ・科学の萌芽はルネサンスと関係がありそうだが、著者がその点をどう捉えているのかが気になった
    ・絶対悪と見られがちな帝国主義のプラス面について理解できたのは歴史の見方を深めることに繋がった
    ・資本主義の本質(余剰利益の再投資)を個人の人生に当てはめるのは終わりにしたい
    ・家族や地域コミュニティの崩壊については完全に宮台真司氏の「底が抜けた社会」と同じことを言っていると思う
    ※タイムスパン(本書は中世〜近代寄り、宮台氏は近代〜現代)と、対立構造(本書は主に国家と個人の対立構造、宮台氏はテクノロジーの発展に原因を求めている)の描き方は異なる
    ・幸福論については生物学的なアプローチに偏り過ぎている印象を受けた


    ★★★自分的メモ★★★
    歴史は正確な予想をするための手段ではない。歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を広げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもなく、したがって私たちの前には想像しているよりずっと多くの可能性があることを理解するためなのだ。

    科学研究は宗教やイデオロギーと提携した場合にのみ栄えることができる
    →科学が乗っかった主要な要素は帝国と資本主義

    【帝国】
    科学は帝国主義を支えた。
    →両者は相互依存の関係

    ヨーロッパ人が世界を切り取れたのは科学技術の発展もあるが、未知の世界があるという「冒険心」と、そこを征服するという「厚かましさ」、無知の知からくる「科学的好奇心」が原動力

    未来はよくなる⇄世界は緩やかに衰退している
    外の世界の見当がつかない⇄自分たちの世界が全て
    世界は未知で溢れている⇄セカイは理解できている
    ↑こうしたスタンスを形成するにあたり、ルネサンスの影響はないのか?あまり触れられていないが

    帝国主義の影響はポジもネガも多すぎて、それぞれの立場で1冊の百科事典が書ける

    直接的な人種差別は現在は憚られるが、文化にその由来を変えて生き残っている

    【資本主義】
    古代シュメールの時代から信用取引はあったが、「世界はもっと良くなる」という意識(拡大するパイという幻想)がなかったためあまり行われなかった。過去が良く、将来は今より悪くなるかせいぜい現状維持だと思っていた

    資本主義は念仏のように「生産利益は生産増加のために再投資されなければならない」と唱える
    (気づき)
    この考え方が個人の人生まで浸透した結果、貯金が生き甲斐の人が増え、「DIE WITH ZERO」のような本が出る羽目になった
    →資本主義なしで生きていくのは無理だが、個人の人生まで資本主義に毒されなくてもよいのでないか?余剰利益を再投資し、常に未来のことだけを考えて生きるのはやめにしたい

    経済成長は永遠に続くという資本主義の信念は、この宇宙に関して私たちが持つほぼすべての知識と矛盾する

    自由市場資本主義は、利益が公正な方法で得られることも、公正な方法で分配されることも保証できない。むしろ逆で、利益しか見えなくなる。

    「資本主義は、強欲と合体した冷淡な無関心から膨大な数の人間を死に至らしめた」

    産業革命は熱を動きに変換したことで、エネルギーの変換ができるという発想を与えたことが重要。人間はエネルギーに囲まれて暮らしており、利用可能なエネルギーはテクノロジーの発展もあり増える一方

    資本主義と消費主義の価値体系は表裏一体であり、二つの戒律が合わさったもの。富める者の至高の戒律は「投資せよ!」であり、それ以外の人々の至高の戒律は「買え!」だ。

    【幸福論】
    最大の社会変革は家族と地域コミュニティの崩壊およびそれに取って代わる国家と市場の台頭
    →あぁもうコレは完全に宮台真司の言っている社会の空洞化(底が抜けた社会)だ。
    もっと昔の中世から語っているところや、スマホに連なる近現代のテクノロジーがもたらす安心・便利でなく国家権力との戦いで描いている点は違うが、同じことを言っている。

    消費行動によって定義される、消費者部族という存在

    有意義な人生は、困難のただ中にあってさえも極めて満足のいくものであるのに対して、無意味な人生は、どれだけ最適な環境に囲まれていても厳しい試練に他ならない

    仏教によれば、苦しみの根源は束の間の快感を空しく追い続けること

  • さいこ!

  • 幸福とは何かという視点から、私達、ホモ・サピエンスが今後どのような進化を遂げていくかを考察している点はとても面白い。また、幸福とは何かという問いを簡単にまとめてくれているので非常に読みやすく理解しやすかった。

  • 人類史の教科書とも言える本

    自分のルーツを知る意味でもこれ以上知的好奇心を沸かせる本はないと思う

    個人的には大学の授業の必須科目にしてもいいのでは?といった具合の内容

    結構難しいので、2周しました。
    思考、考察力を鍛えるにもナイスな一冊

  • やっと現代寄りの話に。資本経済や大量生産、効率化について書かれている。本著で長ったるく解説しているが言いたいのは豊かになったけど幸せか?と話し。今一度幸せとは何かについて考えていく時代なのだと感じた、

  • 15世紀~ヨーロッパの時代へ 中国・インドの衰退
    →①帝国主義②資本主義③科学
    1.ヨーロッパ人の探検心 それを支えるシステムを考案「株式会社」
      貪欲さ モノの収奪 知的好奇心
    2.経済を拡大再生産のダイナミズムへ
      フォード クルマの大量生産システム 給料を高く クルマを安く
    3.科学研究 宗教・イデオロギーへの奉仕 科学だけでは発展できない
      →①帝国主義②資本主義③科学
    4.近代社会の特徴 「変化」
      遺伝子の突然変異→淘汰→進化 が人類発展のプロセス
      Try&Errorが進化の基本 減点主義・不作為は進化を止め劣後させる
      
    5.

  • 貨幣の知識とか、現代に広まっている思想、科学革命について学べた。個人的には上より面白かった。地政学の本で、近代ヨーロッパがどう世界を征服したかというのを学んでいたので、タイムリーな話題が書かれていたのでそこが面白く読めた。
    訳者の後書き「本は視点を広げ、増やしてくれる」とあり、本当にそうだと改めて共感した。読書の良さを改めて再認識できるような書籍だった。
    最高!!

  • 歴史を学ぶことは、未来を予測するためでなく視野を広げるためにあると。本書ではホモサピエンスの誕生から現在まで歩んできたエッセンスが凝縮され、俯瞰的に解説されていた。全てが理解できたかどうかわからないが、少し視野が広がった気がする。

  • 食物連鎖の頂点に立ったホモサピエンス。ホモサピエンスの7万年の物語です。難しいが最高に面白い。さて、人は、幸せになれたのでしょうか?仏教を知りたくて読みましたが、宗教の観点からも面白いです。

  • ホモ・サピエンスの繁栄に重大な影響を与えた歴史上の非連続性は「革命」と呼ばれる。歴史学者は残された証憑からその断絶を観察する。

    この過程から著者が編み出した結論のうち、「科学革命(=無知の革命)」に特に印象的な一節があった。
    「空白のある地図は、心理とイデオロギーの上での躍進であり、ヨーロッパ人が世界の多くの部分について無知であることをはっきり認めるものだった」

    15・16世紀のヨーロッパ人が余白の多い世界地図を描き始めたことには、一神教的価値観からの脱却と、無知を認める科学的思考の発達が顕れているというのだ。
    テクニカルな論点を扱う歴史本も面白いが、遠大な視点から人類史を解釈するのもまた面白い。

    今更ながら読了できたが、やはり噂に違わぬ価値はあったと思う。

著者プロフィール

歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。

「2020年 『「サピエンス全史」「ホモ・デウス」期間限定特装セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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