リーダーシップの旅 見えないものを見る (光文社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334033897

感想・レビュー・書評

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  • リーダーシップという言葉を聞いて、大抵の人が思いつくイメージ(先頭をきって周りを引っ張っていく、率先してまとめ役になる、など)を一掃した上で、人間一人一人に宿る果てしない可能性と、生きていることの幸せを、分かりやすい言葉で記した人生論にも似た書籍です。この種の本で涙を流すとは思いませんでした(最近の私が涙もろくなっているのは差し引いたとしても…)。実際、終章で著者二人から読者になげかけられる言葉の強さは誰の心にも響くはずです。

    この本がテーマとして掲げるリーダーシップに関する議論(偉大な人=リーダーシップという定義)と、リーダーシップ待望論とのギャップを折り合わせることができないことはなぜなのか?時代の急速な変化からリーダーを待望する声が高まっているのはあきらかなのですが、その言葉から想起されるリーダーといえば歴史に名前を残すような偉大な人しか思い浮かべられない…。それはリーダーという言葉への理解や、その理解から想起されるものへの縛りがあるからだと思うのです。著者の二人は、さまざまな事例を引き合いに出しながら、この縛りをほどいていってくれます。

    こうした二人の言葉に、自分の心が共鳴していると感じられるのであれば、既に読者はリーダーであるため(リーダーになるため、ではないことに注意)の旅を始められる準備が済んだといって良いと思うのです。天性、学歴、略歴などがリーダーの素質を形成するのではないことを、できるだけ多くの人に気付いて欲しいと思います、この本を読んで。私の心に響いた文章は数が多すぎるので、解釈をまとめたものを記します。

    ●リーダーはある条件を満たしたり、目指して「なれる」ものではなく、周囲の認知があっていつの間にか自然状態として「ある」ものだ。
    ●「Lead the Self」、「Lead the People」、「Lead the Society」へと進むより広い範囲とかかわりあうようになること。
    ●組織の安定性と持続性を維持するためにはマネジメントが必要であり、組織の変化を生み出すためにリーダーシップは機能する。
    ●事前の不確実性と事後の確実性という異質な2つを、リーダーシップは飛び越える。
    ●リーダーには魅力としての人間性がある。それを要素分解すると、「構想力」「実現力」「意志力」「基軸力」の4つに大別できる。
    ●「カリスマ」に全てを頼り、任せるのは危険だ。ダースベイダーやヒトラーはそうして生まれた。
    ●人についてきてもらったという経験が、自身の原動力を利己から利他にする。自分の夢が皆の夢になる。
    ●社会を構成する個人は、等しく社会に責任を負う。他者とのつながりから生まれる喜びを、その人へではなく別の人や社会に還元することを実践する。Noblesse Oblige(高貴なる責任)の体現。
    ●徳とは、自己の最善を他者に尽くすことである。
    ●人はいつ死ぬかわからない。死生観を内包した人生設計が生きることの喜びと活力の源になる。

    私は、既に両親、祖父母、家族・親類、恋人、恩師、友人、同僚、自然、日本、世界から数え切れない物的・心的ギフトを数多くいただいてきました。そのギフトをいただけた喜びが今の私を大部分を形成している。そのギフトへの返礼も何かしらの形で示したつもりだけど、本当は同じような喜びを他の人に感じてもらう精神、映画『Pay Forward(ペイ・フォワード)』で示されたような、感情の伝播・同期化(シンクロ)の一部になれるように生きていきたいと思います。

    だから、私も「旅」に出ることにします。その「旅」から生還できるように都度努力し、その折にはこの星、この世の中、この社会のどこかにポジティブな形で貢献できていて、リーダーやエリートにいつの日かなれているような、そんな「旅」に出ようと思います。次の質問に、一つ一つ答えを見つけ出しながら…。

    自分は何がしたい人間なのだろうか。
    自分にとって現状を打破する仕事や挑戦はどのぐらいの意味をもっているだろうか。
    それを実現できたらどういう気持ちになるだろうか。
    逆にチャンスを見過ごし、着手さえしなかったら、後でどう感じるだろうか。
    悔やむだろうか。悔やむとしたら、どのぐらい悔やむだろうか。
    では、着手するとしたら、待ち受けている困難はどれほどのものだろうか。
    自分にはその困難を乗り越えるだけの心の準備と気構えがあるだろうか。
    それほどまでしてやり遂げたい仕事や挑戦なのだろうか。
    (196ページより引用)

    現在、著者の一人である野田さんは、経営者や有識者200人以上を巻き込みながら活動しているNPO法人「Institute for Strategic Leadership」を主宰されて活動しています。アカデミックな人間としては、王道というかこれ以上ないキャリアを歩んだ彼が、学校という場所ではなくて、NPOという組織形態を選択して、経営や市場の現場で活躍する人々とダイレクトにやりとりすることを選択したこと。教職というものに可能性を感じている、もしくは実現させたい目標として考えている私には、生き方として学べることの多い方だと思いました。この転身には、多分に彼の親友であるスマントラ・ゴシャール氏の影響を感ぜずにはいられません。

    理念だけでは乗り切れないと喝破する人もいるでしょう。でも、現実を前に立ちすくんでいるよりはよほど良いと思います。理念や理想も形にしていくことで現実になりえるのですから。そんな私は、野田氏が翻訳をされたゴシャール最後の著書・『意志力革命』を読み始めました。こちらの感想文も後日書ければ…。

  • リーダーシップについての理念、思想、ひとつの理想型を説いている。所属する組織社会はどうにも理不尽だ。あんな上司、社長がのさばっている会社はいずれ立ちゆかなくなるに違いない・・・そうは思って(願って?)いても、存外どこ吹く風の様相を呈しているもの。『究極の利己とは利他である』と引用するが、結果はあくまで結果であり、ある言説が正しいことを決して証明するものではない。よい子は理解しやすい、もしくは理解可能なきれいごとにすぐに飛びつかないこと。そんな私はひねくれ者かしらん。けれど、エピローグで紹介のスティーブ・ジョブズSEO復帰スピーチは感動的。この文章に出会えただけで私には十分過ぎる。

  • マネジメントとリーダーシップの違いが明確にかいてある本。
    リーダーと聞くと、カリスマや憧れの存在をイメージして「自分は違う」と感じてしまうことが多いけど、リーダーシップの旅はアポイントやエマージェントという始まりもあり、結局はそこで自分がどうしたいか、どう振る舞うかで変わってくるのだろうと感じた。

  • 第4章が今の私の心に響いた

  • いい本に出会った

  • マネージャーに昇格してから、なかなか上手くいかない。というモヤモヤ感を持っている中で上司に紹介されて読んでみました。

    他の人も書いていますが、あくまでもリーダーは生まれながらにしてリーダーなのではなく旅を経てリーダーになるのだということ。
    この旅というメタファーが秀逸で、何かにチャレンジして、達成して、生還して来るということが必要だと言う意味を含んでいます。(逃げちゃダメだということですね、反省です。)
    また、リーダーとマネージャーとは何が違うのか、リーダーにはどのような成長段階があるのか、リーダーの要件(構想力·実現力·意志力·基軸力)とは何か、リーダーになった際に気をつけるべきことは何かということが学べます。

    時間をおいて読み返して見るときっと別の気付きが得られると感じられる非常に勉強になる本です。

  • リーダーはすごいという先入観がリーダーシップから遠ざける諸悪の根源になるため良くない。リーダーになろうとしてなる人はおらず、見えないものを見ようとしてあるビジョンを信じて突き進んだ結果、フォロワーがついてリーダーになっている。リーダーシップ論は後付け要素も多い。リーダーはインナーボイスに従順に動く一人称視点が原動力。フォレスト・ガンプの例えは分かりやすかった。(映画の結果としては、突然ガンプは疲れたと言ってフォロワーを置き去りにして家に帰ってしまうのだが…まあそこはリーダーになっていく像の例えとして、納得。)リーダーシップ(見えないものを見ようとし創造と変革を扱う)とマネジメント(見えるものを見て管理し現状維持と少しずつの前進を扱う)は別物。世の多くの企業がビジネスモデルの変更を求められ、創造と変革に取り組むリーダーが必要とされている。一方、ある程度成熟した組織内で大きな非連続変化を起こそうとするリーダーほど軋轢や抑制にあって疲弊し、与えられた仕事をこなす人ほど元気になるという矛盾が加速する。

  • エマージェントリーダーの観点から
    1. リードザセフル
    2. リードザピープル
    3. リードザソサエティ

    へとつながっていくリーダーシップの旅の紹介

    リーダーは「結果として「なるものであるということがこの本の一番言いたいことである。

    またリーダーとマネージャーの違いが言語化されており、霧が晴れるような感覚になった。
    マネージャー
    - 見えるものを扱う
    - 地位に基づいて働きかける
    - モティベートする
    →現状維持

    リーダー
    - 見えないものを扱う
    - 人として働きかける
    - シンクロする
    →創造と変革

    アクティブノンアクションに陥ってしまうリーダーは多いと思うが、ぜひ人をマネジメントする側に立った人にはおすすめしたい一冊。良すぎてAudible版も買っちゃいました。何度も読み、聞き返したい

  • ここで語られている内容は、「リーダーたるべき心構え」だということで解釈しました。
    状況に応じでどのようなLDSを発揮すべきかといった”取るべき行動”としては、科学的なOB的各種理論(コンティンジェンシー理論、パスゴール理論、自己決定理論など)が明らかにされている中で、それらを使いこなすための素地となる考え方なのだと読み取りました。

    リード・ザ・セルフやエマージェントリーダーという言葉から得た第一印象は「主人公感」でした。
    ”気がついたら周りにはフォロワーたち”がいた、という状態はまさに、ジャンプ的主人公のようで、まるで、海賊王になるべく、仲間はもとより他の海賊たちや街の人達を味方に惹きつけながら偉大なる航路を旅する海賊の青年のように思いました。
    キャラクターで例えてしまうと「すごいリーダーの幻想」のトラップに掛かってしまう気もしますが、「意志力」だったり「やり抜く力」など必要な要素はそこに凝縮されていると思います。

    リーダーシップの発現というのは、「見えないもの」のために行動するプロセスを経て、共振現象として姿を現すとのことでした。その原動力たる「見えないもの」を自分の中でどう見出すか?という点に尽きますね

  • 黒澤明 生きる

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著者プロフィール

野田 智義(ノダ トモヨシ)
アイ・エス・エル(ISL)理事長
1959年京都市生まれ。83年東京大学法学部卒業後、日本興業銀行に勤務。88年渡米後、マサチューセッツ工科大学より経営学修士号を、ハーバード大学より経営学博士号を取得。ロンドン・ビジネススクール助教授、インシアード経営大学院(フランス、シンガポール)助教授などを経て、2001年7月に、全人格リーダーシップ教育機関であるISLを創設。財界人、経営プロフェッショナル、大学教授、社会リーダーなど約300名の協力を得て、次世代のビジネス・社会のリーダーの育成に注力している。インシアード経営大学院では「企業変革と戦略リーダーシップ」と題するMBAコースで、過去3年連続で最優秀教授賞を受賞した経歴を持つ。著書に『リーダーシップの旅』(共著、光文社新書)などがある。

「2015年 『アクション・バイアス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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