辞書を編む (光文社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037383

感想・レビュー・書評

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  • 「右」「愛」「萌え」「キャバクラ」・・・。あなたなら、これらのことばをどう定義するだろうか。国語辞典を引くと、語釈の特徴が辞書によってそれぞれ違う。われらが『三省堂国語辞典(サンコク)』は、他の辞書とは違った視点で集めたことばに、誰にもまねのできない語釈をつけたい。でも、どうやって?―『サンコク』の改訂作業に追われる辞書編纂者が、辞書作りの実際を惜しみなく公開、「感動する辞書を作りたい」という情熱を語る。街なかでの用例採集、語釈をめぐる他辞書との競争など、知られざるエピソードを通じて、国語辞典がいかに魅力に満ちた書物であるかを伝える。

    『三省堂国語辞典第7版』(2013年末発行予定)の編纂者の一人、飯間浩明さんが辞書作りの実態を教えてくれます。「編集方針」「用例採集」「取捨選択」「語釈」「手入れ」の各ステップごとに、どんな作業をしているのか、どうやって新たな言葉を選び、既存の言葉を見直し、不要となった言葉を削除しているのかが、小説のようにドキドキするようなストーリーになっています。電子辞書、インターネット辞書、アプリ辞書など現代の状況も踏まえて、紙の国語辞典の未来について著者の思いも語られます。僕は未読ですが、三浦しをんの『舟を編む』を意識したタイトルでもあり、本編に『舟を編む』の一節が引用されたり、三浦しをんも帯文に感想を寄せています。国語辞典の魅力がふんだんに詰まった素敵な一冊でした。
    ちなみに僕の愛用辞書も『三省堂国語辞典』・・・なのですが、日本に置いてきてしまって、今はすっかりインターネット辞書の生活です。やっぱり紙の辞書をパラパラめくりながら言葉の知識を増やすことも大事だと思います。

  •  辞典編纂の内側を知れる本。予想を超える地道な作業。
    以前「新解さんのなぞ」という本を読み、この辞書のマニアックな語釈が話題になったが、三省堂の辞書も「中学生にも理解できる」視点で工夫されたものになっているとのこと。新解さんでは、「右」は時計の文字盤の1~5のある側、と定義されていて、「左」は右の逆とあり、感動した。その手のネタもちゃんと本書にあったのでうれしい。特に言葉そのものには興味がなかったのが、この本のおかげで俄然興味が湧いたことを思い出す。で、本書を10年ほど時を経て読み、つい辞書も買ってしまった。電子辞書でもいいのかもしれないが、自分には紙媒体で「ひく」というのがいい。
     見坊さんという辞書界の神的存在の人も知ることもでき、雑学マニアとして非常に意義のある本でした。

  • 2013 7/13読了。大垣書店で購入。
    「なんて露骨な『舟を編む』に乗っかる商法だ! でもこれたぶん面白い!」と思い店頭で見かけて即購入。案の定面白かった。
    三省堂国語辞典の編纂者の一人が、用例採集・新規収録語の選択・語釈執筆・既存の語釈のメンテナンス等、辞書編纂に関わる作業について、実際に今年末に出る予定の新版の編纂作業にもとづいて解説していく本。
    ・・・なんとまあ、こんなに日常的にずっと辞書編纂に関わり続ける(今まさに編纂している時期以外も、用例採集と語釈改定はずっと続けている)のか、ってところと、あと用例採集は用例欄を書くためだけじゃなくて、そもそもその用例に基づいて語釈を書いたりするんだなあ、ってところが新鮮。

  • 面白かった!編纂という仕事を詳しく知る事が出来て、楽しかった。

  • 著者は『三省堂国語辞典』の編纂に携わっており、その編纂過程における話が記されている。
    第1章「編集方針」、第2章「用例採集」、第3章「取捨選択」、第4章「語釈」、第5章「手入れ」、第6章「これからの国語辞典」の全6章構成。
    国語辞典は様々な出版社から刊行されており、購入の際には非常に困っていた。特色がどこにあるのか、どこを見るべきなのかよくわからない。著者も言うように、「販売部数をのばすために、どうしても収録語彙数を宣伝に使わざるをえない」ようだ。では、語彙数が多ければいいのかというと、そうでないことが述べられている。大切なのは「語釈」ということ。
    国語辞典に限らず、所謂「辞書」「辞典」というものは、編纂者による「語釈」がキーだと思う。その語釈をどのように作り上げるのか、ポイントは「用例採集」にあるようだ。
    用例をカード化するという作業は、梅棹忠夫氏の『知的生産の技術』を思い出させる。情報の整理には、ツールが変わっても(紙媒体から電子媒体へ)、方法論はそうは変わらないようだ。
    本書は辞書編纂者の熱い気持ちが反映されているように思われる。
    できれば、日本における「辞書」のあり方の変遷というものも整理してほしかった。明治以降、辞書を使う人はどのような人だったのか。一般家庭に小型辞典が普及し始めたのはいつか。高度経済成長期、百科事典がブームになった時がある。このような「使う側」の変化についても言及すれば、もう少しこれからの国語辞典のあり方について述べられたのではないかと感じる。いずれにせよ年末の『三国』第7版が楽しみになった。

  • 辞書の改訂は世の中で使われている言葉を採取し、追加すべき言葉を厳選する一方で、辞書の編集方針に基づいて載せる必要なしとなったものを削除し、言葉の語釈を吟味し時には改める作業である。

    それはまさにアップルの最近のCMにある「一つ一つの『イエス』の背後には千の『ノー』が存在する」世界である。それぞれの辞書の収録語数がなぜ「あえて」その数になっているのか?なぜそのような語釈になっているのか?それを確信を持ってしっかり説明していることが、いわゆるwiki系の辞書との大きな違いに思えてくる。

    最後の章の「これからの国語辞典」は各国語辞典の立ち位置、電子辞書やwiki系を含むフリー辞書とのすみ分けなど、色々と参考になり、考えさせられる。

    本書を読み終えて、いろいろな辞書を比べ読みしたくなった。クロスリファレンスや、それぞれの優劣を比べるためでなく、作り手の様々な想いを確かめるためにである。ただ、アプリ系だとユーザーインターフェイスの作り込み方にに引きずられるきらいがあるので、紙の辞書での読み比べの方が良いであろう。

  • すごく読みやすい。辞書作りの奥深さがよくわかり、辞書に親近感が持てるようになる。著者さんの言葉に対する愛を感じる。言葉って面白い。

  • 「三省堂国語辞典」の編纂者による辞書改訂の実録。「船を編む」は未読なのですが、普段意識することのない辞書よ作り手の思いや手法を垣間見ることができる。
    個人としてはCASIOの電子辞書を使用している為、広辞苑を使用することが多く、用例などが古典に偏りがちで些か不便だなあと思っていたのですが、編集方針がきっとそうなのでしょうね。三国7版が出たら現代語用に購入を検討してみよっと。

  • 国語辞典編纂の実際を垣間見ることができる。実際にはもっと大変なんだろうけど…。小説『舟を編む』(三浦しをん)で辞書編纂の面白さを知った人には興味深いと思う。

  • 全体を通してソフトな語り口で、とても読みやすい一冊だった。文章から作者のあたたかく誠実な人柄が伝わってきて、固いイメージだった辞書編纂に、親近感がわいた。『三国』が発売されたらぜひ手に取ってみたい。

著者プロフィール

香川県生まれ。国語辞典編纂者。『三省堂国語辞典』編集委員。新聞・雑誌・書籍・インターネット・街の中など、あらゆる所から現代語の用例を採集する日々を送る。著書に『辞書を編む』(光文社)、『辞書に載る言葉はどこから探してくるのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『辞書には載らなかった不採用語辞典』(PHPエディターズ・グループ)、『辞書編纂者の、日本語を使いこなす技術』(PHP研究所)、「日本語をつかまえろ!」シリーズ(金井真紀・絵 毎日新聞出版)など。

「2023年 『けいごって しってる?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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