宇宙・0・無限大 (光文社新書 1261)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334046682

感想・レビュー・書評

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  • 宇宙や素粒子を扱いながらも、哲学的でポエトリーな書である。もしかすると、根源的な思索に対して物理学と哲学の目指す所が一致するからかも知れない。例えば、「オルバースのパラドックス」宇宙は無限に広く、無限の星があるならば、夜空はそれらの星で明るくなるはずだ。しかし実際には、そうではないというもの。夜空は暗い。物理における思考実験の範疇が哲学のそれと重なる。

    大きさがゼロの素粒子は、この宇宙に存在しない。宇宙には、重力、電磁気力、強い力、弱い力が働いているが、これらはすべて遠隔力であり、接触力ではない。物体同士が厳密に接触している事は無いので、物体同士の距離がゼロになることもない。電子は一番エネルギーが低い状態になっても動いている。ゼロ点振動と呼ばれる現象である。この振動のエネルギーのために絶対零度にはなり得ない。つまり、「ゼロ」は思考実験上の産物であり、存在しない。

    本書の中に核心をつくような、しかし詩的な文章がある。引用に著者自身が言葉を付け加えたものだ。

    神は数学者である。
    しかし、神はゼロと無限が嫌いである。
    そして人間はゼロと無限が大好きである。

    人間はゼロや無限にとらわれがちだ。今より更に多くを手に入れようとしたり、幸せな時間の永遠を期待したり。または、ウイルスの根絶、身綺麗な状態などではゼロを。ゼロか百かを求める。数の区切りとしての分かりやすさと序列化の習癖、不安定で半端な状態からの回避欲求があるからだろうか。

    ランダム性こそがゲームであり、デジタル化が進めば人生は予測可能なゲーム性なき世界に突入する。思考実験の産物であるはずの「無限とゼロ」を再現するのは、仮想世界ゆえだ。チート可能な仮想世界で何を見るのだろうか。

  • 無限に1を加えても無限。0で割るとこれまた無限。無限もゼロも人間の考え出した概念だからだ。プランク定数から導かれる最小の時間、長さ等から分ることは、この世界は時間も空間も飛び飛びに存在しているが、人間の目では観測出来ないほど小さい(大きい)ので、連続したなだらかなものとして捉えてしまう。無限もゼロも人間の知覚能力の限界を補う概念上の存在なのだ。

  • 難解であろうテーマを平易に説明していて、大変読みやすい。宇宙のような超マクロな世界から、量子論でしか扱えないような超ミクロな世界まで、'無限大'はあるのか?'ゼロ'は存在しているのか?を追求している。宇宙の創生から終焉まで、本書のテーマの視点から迫っていく。現在の宇宙では観測できる5%の元素の世界しかわからない。この中で、重力、電磁気力、強い力、弱い力と4つの力があるが、いずれも遠隔力であり、距離'ゼロ'にはならない、という説明は斬新であり説得力がある。プランクスケールという現在わかっている物理定数だけでは、'ゼロ'に近づけない限界があり、これは時間やサイズだけでなく、絶対零度(ケルビンで)にもあてはまる、という。当たり前のようにあるものと信じている'ゼロ'が、実は存在できないという。今まであるものと信じてきた固定観念を粉砕する説明には、興味を惹きつけられ、一気に読まさせられた。

  • この宇宙にゼロも無限大も無い。
    宇宙は不思議な存在だ。

  • 東2法経図・6F開架:B1/10/1261/K

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著者プロフィール

1954年北海道旭川市生まれ/東北大学大学院理学研究科博士課程修了・理博(84年 東北大学 天文学)東北大学大学院理学研究科助教授(91年).愛媛大学大学院理工学研究科教授(2006)・同大学宇宙進化研究センター長/専攻・銀河天文学/
主な著書:『現代の天文学 第4巻 銀河』(07年日本評論社;共著),『宇宙進化の謎』 (11年,講談社),『宇宙の始まりの星はどこにあるか』(13年,角川新書)

「2017年 『銀河宇宙観測の最前線』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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