奇想と微笑: 太宰治傑作選 (光文社文庫 も 18-1)

著者 :
制作 : 森見 登美彦 
  • 光文社
3.69
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本棚登録 : 1477
感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334746926

感想・レビュー・書評

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  • 太宰治を少し違った角度から焦点を合わせた作品。

    「黄村先生言行録」「満願」「女の決闘」「走れメロス」など

    30年ぶりに読んだ走れメロスは突っ込みどころが多かった。メロスは自分勝手極まりない、勝手に妹の結婚式の日取りを決めるし、走って帰る時もわざわざバーベキューかなんかしてるところを横切るし、王様はいい王様になった感じやけどそれま惨たらしいことしているのにとも思う。
    ただこの短さと時代設定になんとなくうやむやにされてしまう。
    つまり、恥ずかしいけど感動する。
    この作品はまたタイトル勝ちなところがある。
    倒置法的に動詞を前に持ってきて主人公の名前を持ってくるのは「桐島部活やめるってよ」くらいまで時代を降りてこなければなかなかない。

  • 森見さんの、太宰治傑作集。
    太宰治は中学の時に読んだ「走れメロス」と「人間失格」ぐらいしか馴染みがなかったので、印象がかなり変わった。
    特に気に入ったのは「畜犬談」、読み終わった後に太宰治のことがちょっと好きになっているから、ずるいと思う。
    最初の「失敗園」→「カチカチ山」→「貨幣」ぐらいまで「これは森見さんが書いたのでは?」と思ってしまうぐらい、文体もその雰囲気もよく似ていた。
    読みやすいもので読者を釣って、「ロマネスク」あたりで太宰治の世界に引き摺り込んで、「黄村先生言行録」あたりから深い沼に沈まされる感じ。
    100年程前の文章だから、読み難い所もあるし、時代錯誤で「ん?」と思う所もあったけど、それも踏まえて当時の様子や景色が見られて面白かった。
    最後に「走れメロス」を持ってきたのもよかった。
    濃い太宰治汁を発散させる、跳ねるような文体は見ていて気持ちが良い、フィナーレにふさわしい。
    ただ、私も森見さんと同じでこの「正義!」っていう感じがどうしても恥ずかしく感じてしまう。

  • 中学校の国語の時間。「走れメロス」の音読テープに耳をふさいだ森見少年は、その後、くっついたり離れたりを繰り返しながらも、太宰の世界に惹かれていった―。「生誕百年」に贈る、最高にステキで面白い、太宰治の「傑作」選。

    太宰作品は思春期のころすべて読破したつもりでいたけれど、今回森見登美彦が選んだ作品の中にはいくつか読んだ記憶にないもの、ユーモアあふれるものがあった。森見の手による編集後記と合わせてこの文庫本を読んだ甲斐があった。自虐と含羞…私が思う太宰と森見に共通するところ。
    (Ⅽ)

  • 太宰世界に迷い込ませられた。
    太宰治という人間を見た心持ちになったけれど、これはきっと選者の森見さんから見えている太宰の一部なんだろうな。

  • 読みやすいものばかり。人間失格のイメージが強かったので、自分にとってよかったです。
    改めて、森見さんは太宰治が好きなんだなと思った。似てる。繊細すぎるところとか、根が優しい優しい感じとか…笑

  • 森見さんが選んだということで普段は読まない太宰治の作品を読んでみた。なるべく暗くない作品を選んだということもあって、暗いというより面白いっていう作品が多かった。人に進められる太宰治な気がする。

  • 2012.11.05 読了

    太宰って素晴らしいなと素直に思った。
    このリズム感は天才の成せる技というかなんというか。
    真似できない。

  • 森見登美彦さんの編集ということで読んでみました。太宰治さんはほんとにとっつきにくくて困る。
    面白い作品とあんまり興味をひかれない作品が極端に分かれるなあと思った。失敗炎、カチカチ山、貨幣、令嬢アユみたいな初心者向けのは私でも面白く読めました。
    入口ひろくどんどん上級者向けになっていくあたりがなんかすごく森見さんらしい。
    猿面冠者なんかは、森見さんのあの作品はこれからインスピレーションを得たのかな?と思ったり。黄村先生も面白かった。ロマネスクは三つ目が面白かった。犬が好きなので畜犬談は太宰先生のあざとさを感じました。

  • 森見登美彦の源流をたどれば太宰治にたどりつくのかもしれない。そう思わされる太宰治の短編集。

  • 太宰のオマージュ作品。作者も編集後記で言及しているように、この小説は太宰の作品の中から「ヘンテコであること」「愉快であること」に主眼を置いて選別されたもの。太宰というと暗いイメージが強いが、この小説では所謂太宰らしい作品は掲載されていない。リズミカルな文章に堅実な構成。特に、これまで太宰を苦手としていた読者に固定観念は捨てて素直に楽しんで欲しい。

著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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