エバ・ルーナのお話 (文学の冒険シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336035967

感想・レビュー・書評

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  • 「お話には色々種類がある。話しているうちに現実そのものになるものもある。また、記憶の奥底に秘められているお話もある。時間がたつとともに、それらは悪夢の元となっていく。時々記憶から生まれる悪魔を祓うために、物語として話さなければならなくなる」
    中編小説「エバ・ルーナ」の姉妹編。話を語ることを運命付けられたエバが語った物語。本編「エバ・ルーナ」では、彼女が死者のことを話し続けるうちに死者たちが家に訪れ家がいっぱいになった…というような描写がありますが、アジェンテの小説は語らずにはいられなくて語られていった力強さがあります。

    ===
    言葉を売る少女。大佐に選挙に勝つ言葉を売る。大佐は彼女の囁いた二つの言葉に心を奪われる
     / 二つの言葉
    言葉を売り遍歴する人生とはなんだか羨ましい感じもします。

    エバと友人クラリーサとの死後もさらに続く交流
     / クラリーサ

    一人の女を50年間閉じ込め続けた男
     / 心に触れる音楽

    一族から引き離され死んだインディオの娘の魂を天に還す旅に出る男
     / ワリマイ

    女性に結婚の言葉を言うため40年間待ち続けた男
     / 小さなハイデルベルク

    女により身を滅ぼすと予言されたならず者の運命
     / 判事の妻

    父を殺した男に強姦された少女の果たした愛の復讐
     / ある復讐

    エバの恋人のジャーナリストは、災害で死を待つ少女のそばにいた。彼は少女にエバから聞いた物語を話す。
    「あなたは私の元に戻ってきた。けれどももう以前のあなたでなくなった。私はそばにいて、あなたが自分の内面へのたびを終えて、昔の古傷から癒されるのを待っている。あなたが悪夢の世界から戻ってくれば、また以前のように二人で手をつないで散歩できるわね」
     / 私たちは泥で作られている

  • 短編集なのにひとつひとつの話が長編小説のように厚みがあり、心に深くて複雑な感動をもたらす。ゼッタイ「エバ・ルーナ」を読んでから読むこと!

  • 著者の長編小説「エバ・ルーナ」の続編。

    物語の語り手になったエバが、語った物語という立て付けの短編集。

    いくつかの物語で「わたし」という言葉がでてきても、それはイサベル・アジェンデではなく、エバのこと。

    10ページちょっとの短い短編が23作入っている。読んでいるうちに、分かってはいても、この本の著者は、エバという気がしてくる。

    物語の背景は、中南米で時代的にも近現代というところ。たとえば、果てしなく続く内戦、独裁者の狂気、腐敗した政治、キリスト教的な聖性、湿度が高く濃密なジャングル、激しい愛と性、そして死などなどが描かれる。

    こうしたテーマは、中南米の作家に特有のいわゆるマジック・リアリズムという感じで、とても起きそうにもないようなことが次々と日常に起きてくるのは、たとえば、ガルシア=マルケスを思い起こさせる。

    だが、著者が女性のためか?身体性が強く感じられ、そこになんとも言えないリアリティがある。読んだ後も、汗がじわっと残るような感覚がある。

  • 小説に期待することが全部ある、そんな本。酔わせる。つまらぬ御託をならべても、野暮ってもの。
    巻頭の一篇「二つの言葉」は、世界短編ベスト10に数えてもよいと思う。

著者プロフィール

1942年、ペルーのリマで生まれる。生後まもなく父親が出奔、母親とともに両親の祖国チリに戻り祖父母の家で育つ。19歳で結婚後、雑誌記者となるが、1976年、アジェンデ政権が軍部クーデターで倒れるとベネズエラに亡命。82年、一族の歴史に想を得た小説第一作『精霊たちの家』(河出文庫)が世界的ベストセラーとなり、『エバ・ルーナ』(87)、『エバ・ルーナのお話』(89。以上白水Uブックス)など、物語性豊かな作品で人気を博した。88年、再婚を機にアメリカへ移住。その他の邦訳に『パウラ、水泡なすもろき命』(国書刊行会)、『天使の運命』(PHP研究所)、『神と野獣の都』(扶桑社)、『日本人の恋びと』(河出書房新社)など。

「2022年 『エバ・ルーナのお話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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