オレンジだけが果物じゃない (文学の冒険)

  • 国書刊行会 (2002年6月20日発売)
3.64
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784336039620

感想・レビュー・書評

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  • ウィンターソンの処女作。自伝的な内容らしい。狂信的なセクトの母親とかって、なんかアメリカ的なもののように思っていたけど、イギリス。内容はちょっと辛い。でもそれがすごい作家を生み出すとなると……やっぱり辛い。
    主人公はあくまで何事にも傷ひとつ負わないかのように気丈なんだけど、合間に不意に挿入される寓話めいた創作童話が、傷の深さを語るよう。

  • 2対8の割合で元気づけられ心細くなる。ウィンターソンの作品は2冊目で、主人公の女の子は二人とも強い子だ。語られないことも多いのだろうけれど、腹の据わりかたが違う。この強さはどこから来るのだろう。本来の自分として生きるためなら人間は強くなれるはずなのか。

    物語にして消化するところ、たぶんそれをしないと先に進めないのはわかる。その一方で、自分の編集力を信じるにはどうすればよいのかとも思う。時間をかけることだろうか。

  • 『オレンジだけが果物じゃない』(1985)とは、イギリスの作家ジャネット・ウィンターソンのデビュー作にして半自伝的作品です☆
     作者は現実のインパクトに屈しない、強靭な想像力を持った人物で、最初からすぐれた作家として登場しました。

     ざっくり、あらすじ。孤児だったジャネットを引き取り育てたのは、狂信的なキリスト教徒の夫婦でした。夫の影は薄く、主導権を握るのは妻、ジャネットから見ると母で、この人があまりに鬼気迫るキャラクターで嵐を呼びます★
     自分の都合に合わせて小説の結末を変更するほど、決めつけや思い込みが半端じゃない。養女ジャネットの行く末も勝手に定めて突っ走ります。
     悩みが絶えないジャネットの自立、そして母との和解を、彼女はユーモアをこめて、神話になぞらえて語ります★

     嵐のように激しい人物というのは、遠くから眺める分には面白いキャラですが、直撃を受けた当人が笑ってみせるのは、並大抵のことではないでしょう。
     自身の価値観を押しつける変親・毒親を持つ子どもがどれだけ傷つくか、世界が親の言う通りにはできていないと気づいた戸惑いなどは計り知れず、簡単に笑い飛ばせないと思うのです。
     しかし、それを可能にするのが文学なのでしょう。想像の世界には常に自由がある。必要とあらば架空の世界に逃避する方法だって用意されている。
     著者は、自分に脅威を与えた母親についても切羽詰った調子にならず、距離を置いてまなざしを和らげるのに成功しています。不幸自慢に陥らず、独特の明るさに引き上げて語るたくましさに魅了され、拍手を送りたくなったのでした★

     このフレーズが忘れられません。
    “ひょっとしたら、わたしという人間はどこにもいなくて、無数のかけらたちが、選んだり選ばなかったりしたすべての可能性をそれぞれに生きて、折りにふれてどこかですれ違っているのかもしれない”

     ふいに訪れる救い。まったく奇妙な許しの物語です。

  • 著者の自伝的要素を強くもった小説。
    印象にのこる文体、文章作法であった。突然挿入される、童話の形をとった、現実を映し出す鏡、心象を描いた物語。
    この『物語』部分がすこし取っ付きにくいため、星4つとした。内容だけあげるなら、星5つである。

    最初は奇異な感じがしたが、実に見事な描写の数々であったので、読み進めるうちに『この描写が暗喩する、母親への複雑な感情は何か』と楽しみになってきた。

    主人公の彼女だけが、この小説に登場するレズビアンではない、という点も興味深い。また、登場人物の彩が実に豊かである。
    彼女を守ろうとできるだけのことをしてやる人、公平にチャンスを与えようとする人、惹きつけられる人、心変わりを自分のせいではなく他所に求める人、名に反して徳の欠片も持ち合わせない人。
    こうした彩り豊かなサブ・キャラクターに支えられ、只の私小説ではない、一人のヒトのよろめきながらも歩く人生を描き出した小説が生まれたのだろう。

    性的少数者であることが、これほど糾弾される世界でなかったら、この小説は別の形で、ひょっとすると執筆される必要すらなかったかもしれない。
    評者は自分が性的少数者であるがゆえに、「レズビアン」にとどまらず、あらゆる少数派であることの生きづらさを想う。

    宗教カルトの体裁を取らずとも、この現代日本社会とて同じくらい、少数派には狭量なのだから。

  • ふむ

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/0000209270

  • 3.67/215
    『狂信的なキリスト教信者の母親と、母親から訣別し、本当の自分を探そうとする娘。イギリス北部の貧しい町を舞台に、娘の一人称で語られる黒い哄笑に満ちた物語。寓話や伝説のパロディもちりばめた自伝的小説。』(「国書刊行会」サイトより)


    冒頭
    『たいていの人がそうであるように、わたしもまた長い年月を父と母とともに過ごした。父は格闘技を観るのが好きで、母は格闘するのが好きだった。誰と戦うかは、問題ではなかった。とにもかくにも、自分がリングの白コーナーに立っている。それが大事なのだった。』


    原書名:『Oranges Are Not the Only Fruit』
    著者:ジャネット・ウィンターソン (Jeanette Winterson)
    訳者:岸本 佐知子
    出版社 ‏: ‎国書刊行会
    単行本 ‏: ‎285ページ

    メモ:
    死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  • 距離を置いてしか許せない人は確かにいるけど、それを許そうとする心がある分優しいなと思った

  • 2021.03.08 図書館

  • キリスト教の理解が足りなくて
    よく分かんないなーと思うことが多かったから
    挿入されてる聖書の話とか寓話も一応読んだけど
    心は 現実の話に早くたどり着きたい!って感じだった。 やっぱキリストだから 性描写は少ないのかな。
    関係ないけど この小説読見終えるまで 少しずつ読んでたんだけど オレンジとグレープフルーツ

  • 図書館で。
    キリスト教も色々な宗派があるんだなぁと改めて実感。今、改宗すると讃美歌と聖書が付いてきますってのは中々面白いな。そして結構女性が実権を握っていた組織っぽいのも面白い。確かに…こういう人達に囲まれていたら頼りない男性よりは女性の方に惹かれるかも…とか思ってしまいました。

    それにしてもこんな厳格(そう)な宗教団体なのに結構手軽に?危険な恋のお相手が見つかるものだなぁとびっくりでした。そして実際近くに居たら大変だろうけれども完全に他人事として本で読むにはお母さまは物凄いキャラクターだと思った。日曜日(安息日!)にお盛んなお隣を制するためにオルガンをかき鳴らして讃美歌を合唱する辺りでは大笑いしました。

    全てがお話、というような形で距離を置いた視点で書かれているので読みやすいのとこの人の意見は共感できるなぁと思いながら読みました。それにしても数奇な人生送ってる人っているものなんだなぁ…

  • 図書館でタイトルを見て、気になっていて、「返却本」コーアーにあったので三回目にして初めて借りたけれど、挫折。
    文芸ものは嫌いではないけれど、宗教色が強くて入りきれない。
    出だしも面白かったのにな…。

  • 私の場合、海外小説って作品それぞれで好き嫌いがパックリ分かれるんですが、これは好きです。会話が面白い。

    ジャネットの葛藤がすごく心にズーンッと来る。似たようなものに悩んだ過去。自分の過去に自然と向き合える感じ。こういう白でも黒でもない灰色の本っていいね。悩んでるのに、穏やかに感じるのは如何してかなぁ…
    オレンジ食べたい(笑)

    母への期待みたいなのが、崩れ去っていった経験ってあると思うんです。誰よりも賢く物知りな両親(特に母親)。でも、気づいてしまう。そこまで、賢くないし、偉くもない。だからって嫌いになんてならないし、軽蔑だってしない。ただ偉くないだけ。自分と同じってこと。特別じゃない。
    そう思ってしまった過去が蘇ってきた小説です。

    暗い話ではない。

  • 毒になる親は世界共通で同じ傾向や思想を持つということが分かった。自分の人生から排除するのが一番良い方法。

  • そこここにユーモアが光るのに読み終わった後の苦味といったら!「さくらんぼの性」があまり好きでなかっただけに驚きだった。「running with scissors」にも似ているけれど、幻想と現実の境界の上に立ってる感じ。

  • カルト宗教の母親と、閉鎖された空間での成長、これが自伝的な物語と知って納得。このリアリティのある現実とアーサー王伝説やジェーンエア、魔法使いの弟子の女の子のお話などなどが響き合って、不思議な味わいのある小説になっている。壁を突き破って飛び出したジャネットがまた母親のところに戻ったりするのが、少し残念。

  • 狂信的な母親に育てられたジャネット。伝道師に育て上げる為、世界は神と聖書しかない世界で生きてきた少女時代。だが、女の子を愛してしまう事により自分自身の世界に疑問を持ち始める。作者の自伝的小説。自分の本心を隠して壁の内側に留まるか、心を守り壁を打ち壊して外の世界に出るか、結局外の世界に出て母親から自立した様に見えたが、結局は母親との絆や愛情は断ち切れないのか。それが不可解

  • [ 内容 ]
    たいていの人がそうであるように、わたしもまた長い年月を父と母とともに過ごした。
    父は格闘技を観るのが好きで、母は格闘するのが好きだった…。
    熱烈なキリスト教徒の母親から、伝道師になるための厳しい教育を叩き込まれた少女ジャネット。
    幼いころから聖書に通じ、世界のすべては神の教えに基づいて成りたっていると信じていた彼女だが、ひとりの女性に恋したことからその運命が一転する…。
    『さくらんぼの性は』の著者が、現代に生きる女性の葛藤を、豊かな創造力と快活な諷刺を駆使して紡ぎ出した半自伝的作品。

    [ 目次 ]


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    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
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    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  「寓話や幻想の断片が、主人公ジャネットの心が血を流すたびにあらわれる」――訳者あとがきのなかの一節がすてきだった。フィクションがひとを救うのはなぜなのだろうというところに、改めて興味が湧く。荒唐無稽で意味がなくて事実でもない物語が、ただそこに「ある」というだけのことに、とてもこころが軽くなるのを感じる。とりわけわたし自身が切実な状況にあるとき、それこそ「心が血を流す」ようなときには。それってどうしてなのだろう、と思うのだけれど、わからないから物語が好きなのかもしれない。わからないものがわからないまま、それでもそこにあること、わからないけどそこに「あってもいいよ」と根拠なく許すこと。物語だからそれができるのではないかしらと思う。

  • 作者の自伝的な物語だそうですが、なかなか面白かったです。キリスト教のカルト宗派に属する継母に引き取られた女の子の成長過程が描かれている。環境によって当たり前のことは違うのだけれど、それが本当にどうかという基準を自分の中で確立していく物語といったところでしょうか。工作で聖書になぞらえたいろいろな作品を懸命につくるのだけれど周囲に認められないあたりなど結構楽しい。

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著者プロフィール

1959年、イギリス生まれ。福音伝道主義クリスチャンの家庭に養女として迎えられたが、女性との恋愛関係を理由に10代で家を出る。1985年に半自伝的小説『オレンジだけが果物じゃない』で作家デビュー。

「2022年 『フランキスシュタイン ある愛の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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