もういちど生まれる

著者 :
  • 幻冬舎
3.60
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本棚登録 : 2018
感想 : 330
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344021051

感想・レビュー・書評

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  • 苦手な仕事に疲れ切った帰り道、ふと見つけたケーキ屋さんのショーケースの中で
    煌めきながら、おいでおいで♪ と手招きしているケーキやタルトのように
    (ああ、ちっとも朝井さん風にならないのが悲しい、この表現。。。)
    やっぱり大好きです、朝井リョウさんの比喩。

    青臭い、少女趣味だ、との批判も多いようですが、だって本当に若いんだし♪
    健やかな細胞が分裂するたびに、ぷるんと湧き出るようなみずみずしい比喩を
    保湿化粧品が手放せない私みたいな読者のためにも、生み出し続けてほしいものです。

    大学生、予備校生、専門学校生と、20歳を迎える5人の男女が
    今いる場所に不安を抱え、ましてや予測もつかない未来には怯えすら抱きながら
    イマドキの若者らしいさりげなさを身に纏ってもがく、いとおしい日々。

    自己嫌悪の塊になっている自分を眩しく見つめてくれている人に気付かなかったり、
    天賦の才能で何でもスマートにこなす魔法使いのような先輩の
    今まで見えなかった、見ようとしなかった必死さに背中を押されたり。
    誰かの目からは頼りなさの極致に見えた人物が
    別の物語では、他の誰かの揺るぎない支えになっていたりと、
    矢印やハートマークを駆使して人物相関図を書きたくなってしまう
    複雑に絡み合った青春模様に、胸がしめつけられます。

    美大の独特の空気感の描写がすばらしく、
    まっすぐな瞳で主人公の抱える問題を見抜き、チャーミングな言葉を残す
    女性から見ても魅力的な結実子さんが登場する
    『僕は魔法が使えない』がとても素敵な、連作短編集です。

    • 円軌道の外さん

      おおぉーっ!!!
      なにげに感じたことを書いただけやったけど(笑)、
      ホンマにハチクロテイストでしたか〜(嬉)(*^o^*)

      ...

      おおぉーっ!!!
      なにげに感じたことを書いただけやったけど(笑)、
      ホンマにハチクロテイストでしたか〜(嬉)(*^o^*)


      コレはなんとしてでも
      読まなければ(汗)


      あははは(笑)
      何をおっしゃいますか〜(^O^)

      食べ物に例えても、
      またそれを美味しそうに、
      読む人がイメージできるように
      うまく言葉にできるのは

      まろんさんが
      豊かな感性と
      それを形にできる表現力を
      持ってるがこそだと思いますよ♪


      朝井リョウさん、
      しかと心に
      その名を刻みました!(^_^)v


      2012/12/07
    • koshoujiさん
      朝井君、取っちゃいましたね。
      八時過ぎから、ニコニコ動画で、生会見するようです。必見ですよ。
      朝井君、取っちゃいましたね。
      八時過ぎから、ニコニコ動画で、生会見するようです。必見ですよ。
      2013/01/16
    • まろんさん
      koshoujiさん☆

      お知らせありがとうございます!
      動く朝井リョウさんを、ぜひ見なくては♪
      koshoujiさん☆

      お知らせありがとうございます!
      動く朝井リョウさんを、ぜひ見なくては♪
      2013/01/16
  •  いろいろぐっときた。

     あせり、不安。私も感じてきたこの感情。過去ではなく、今現在、この感情と向き合っている20歳の5人の男女の物語。

     圧倒的な長さの昼間をもてあまし、平凡な日常と特徴のない自分に飽き飽きし、自分以外の誰かになりたいと憎悪するほど願い、才能の限界を感じつつもそこから目を背けて、私はあなたのようにはならない、と強がる。

     ここに出てくる5人の男女は、すべて、私だ。

     20歳の彼らは、まだ何者でもないらしい。「何者でもない」っていうのは、朝井さんの作品のテーマだなあ、とつくづく思う。
     人って、いつ「何者」になれるんだろう。果たして私は、「何者」かになっているんだろうか。

     ぐっときて、いろいろ考える作品でした。

  • 大学生の群像劇。
    高校生を書いた作品のときほどの瑞々しさは感じなかったけど、やっぱり瑞々しい。
    大学生という時期の微妙な揺らぎが、なんか脆くて儚くてほろ苦い。

    高校生のときほど世界は狭くなく、社会に出たときほど現実に晒されない。
    モラトリアムを生きてるときって、大げさに悩んだり、くだらないことで嫉妬したり、すぐに前向きになれたり、夢も希望も志もシンプルで、ほんと前途が洋々であり多難であり。
    そういう痛みはちょっと思い出してひりひりする。

    大学のころって、すぐ先の未来の明確な目標を持ってる人と漠然と過ごしている人との差が大きいこともあって、いま思い返せば子どもだったなぁと感じる、じたばたしていた中途半端だった自分を思い出してしまいますな。

    あと、タイトルがいいね。

  • とても好き。泣きそうになる。

    努力してるフリばかりが上手くなって、自分さえも騙されそうになって、でも結果が出ないから、本当はバレてるって怯えてて。

    夢を持つ事は楽しくて苦しい。

    無駄に高いプライド、バカバカしいとわかってるのに手放せない自意識に縛られる、人から見たらくだらない、微笑ましくすらあるモヤモヤを抱えて、必死に生きてる人達の物語を、いつまでもまっすぐに書いていって欲しいな、と思う。

  • 朝井さんの描く若者は、読んでいると"イタい"と感じるようなことが多い気がする。でもその人間くさい、面倒臭いところがまた良いんだろうな。
    人がいるだけ人生があるってことをしみじみと感じたなー。一歩を踏み出すのって大変だよね。

  • それぞれつながりのある、5人の物語のオムニバス。『桐島、部活やめるってよ』の大学生版と考えるとわかりやすい。それぞれの話には、最後にどんでん返しというか、サプライズのあるものも多く、また、各エピソードの話のつながり方も秀逸で、個人的には『桐島』より面白く読めた。大学生(若者)特有の、「何者」かになりたいと思うのに、「何者」にもなれない(ように感じる)もどかしさがよく表現されていると思う。

  • 20歳前の大学生、浪人、専門学校生を描いた短編連作。
    高校生よりはちょっと世界が広く、初めての経験もまだ期待感があって、ゆったりしているような~
    でも、社会に出る日は近づいていて、自分の限界に直面しつつある…
    青春群像というには軽めだけど~優しくて、重すぎない所が、なかなか感じはいいです。

    「ひーちゃんは線香花火」
    R大学に入学して13ヶ月。
    何も成長しない一ヶ月が積み重なっただけのような気がしている汐梨。
    ひーちゃんこと、ひかると、風人の3人で、今日も麻雀。誰が見てもクラスで一番美人のひーちゃんだが、最初の一言でクラスの女子を敵に回した。風人は小型犬系の男子。
    ややはみ出し気味の3人が仲良くなったのだ。
    汐梨には尾崎という彼氏も出来たので、もうこの3人だけでいっぱいいっぱい。
    ある日、寝ている間に誰かにキスをされ…?

    「燃えるスカートのあの子」
    翔多はバイト先の休憩室でハルを見つけ、今日も椿ちゃんの話をせがむ。
    大学で一緒の椿という可愛い女の子に夢中なのだ。椿には彼氏がいるのだが。
    黒髪に青いメッシュを入れたかっこいいハルは、専門学校に通うストリートダンサー。椿とは高校の時に仲が良かったという。
    同じ講義を取っている友達の礼生は、もしゃもしゃの頭に虹色の眼鏡。いくつも映画サークルに入っている。
    椿が、礼生が撮る学生映画に出ることになったと知る翔多。
    なんと、椿が礼生を好きになったかも…?

    「僕は魔法が使えない」
    美大に通う渡辺新は、ナツ先輩に憧れている。
    先輩の絵は美術展で高い評価を受け、一号館のスペースに張り出されている。光が交錯するクラブで踊るダンサーの絵。
    新の父は交通事故で亡くなり、1年後に母が鷹野さんを家に連れてくるようになった。
    新はナツ先輩に人物画がいいと言われ、たまたま下北沢駅で見かけた結実子という女の子にモデルを頼むが…

    「もういちど生まれる」
    柏木梢は二浪中。
    予備校の堀田先生に恋している。
    梢をこっさんと呼ぶ風人は、幼稚園から高校まで一緒だった~双子の区別が出来る数少ない人間。今は大学で、ひーちゃんに片思いしているという。
    梢の双子の姉の椿は、要領よく推薦で大学に入った。
    読者モデルをしている華やかな椿。
    どこをとっても少しずつ地味な外見の梢は、姉が大嫌いだった。
    濃いメークをすれば、ほとんど同じにも見えるのだが。
    二十歳の誕生日、華やかに祝われた椿の携帯に掛かってきた連絡を見て、思わず…

    「破りたかったもののすべて」
    ハルこと遥は、ダンスが出来てカッコイイと以前から友達や後輩に評価されてきた。
    同級生のとても可愛い女の子・椿は、高校で最初は人気があった。読者モデルとして祭り上げられた頃から友達がだんだんいなくなり、タイプの違うハルに近づいてきたのだ。
    可愛いだけの椿や、部屋にこもって絵を描いているだけの兄のナツは、努力が足りないと思っていたハル。
    だが、自由に踊るロックダンスをしてきたハルは、基礎訓練が出来ていなかったことを痛感している。
    今は後列の端で踊るのが定位置で、大きなステージに上がるダンサーになるのは難しいのだ…
    ハルをカッコイイと思ってくれている翔多には、それらしくふるまおうとするが。
    ある日、兄のナツに、絵を見て欲しいと言われたハルは…

    こういうのって、あるよねえ…
    と何だかちょっと気恥ずかしくなりつつ。
    当人はこの時辛いだろうなと思いつつも、どこかさわやかで初々しい。
    2011年12月発行。
    4作目になるのかな?

  • あの子のようになりたい、あの子と私が入れ替わることが出来たら...上手く生きられない弱い自分を言い訳に、正反対のあの子と自分を比べて私は下を向いていた。あなたにしかない素晴らしいところがあるんだよ、そんな風に誰かに言って貰えて初めて気付くなんて、私は大切なことを見失っていた。ちゃんとありのままの私を見てくれている人がいたのに。上手く笑えなくても、不器用でも、私だって飛ぶことが出来るんだ。今日泣いていても、明日にはまたもう一度生まれた私が笑っている。

  • 切なさを描くのがうまい人だなぁと思った。
    時々表現が「チャラい」と思いつつも全体的にきれいな感じ。
    ただ若者言葉も多いのでお年を召した方は「??」になるかもですね^^;

  • 大学生たちの心情が鮮やかに描かれていて、読んでいて気持ち良かった。
    小さな物事にも特別な心情を描けるのが、朝井リョウさんの凄いところだと思う。
    やっぱ面白い!

  • いや~眩しいほど若い。思い出す、思い出すのだ。

    最初のひーちゃんは線香花火より後半に行くにつれて物語の人物がすこしづつ重なって、多角的に見えて物語がよりじわりと深くなっていく。

    学生時代、あのモラトリアムなあの若い時だからこそ、の苦しみ
    自尊心とか何者になれるかとか特別な自意識そういう息苦しさや他者との関係が、すごく自然に浮き上がってくる。

    昔は本当に周りにいろんな人がいた気がする。
    もっとむき出しあって、ぶつかりあうみたいな交友や考察があった気がする。なつかしいなぁ。

    思い出すってことは、もうその場所に私はいないってこと。

    成長なんてしてるつもりはなくても、すこしづついろんなことを上手によけれるようになるのが大人になるってことらしい。

  • 朝井リョウの作品はなんでこんなに瑞々しいんだろう。過ぎ去ってしまった学生生活が小説の中で息づいているからだろうか。各話の登場人物がリンクした連作短編集。翔多は作者みたいな子なんじゃないかな?と勝手に思ってしまう。なんかイマドキの若者っぽい感じが。表題作が素敵。ただちょこちょこ登場人物の性格が『星やどりの声』と被る。2012/165

  • 19から20歳の若者が主人公の短編集。
    中学校までは義務教育、高校でもまだ進学とか部活とか同じ目標を持って過ごす、でも高校卒業したら社会に向かってよーいドンが始まる。
    ゆるい大学生活の中でもすごいなって思う人がいて、周りに比べて何も考えてない自分に、夢に届きそうにない自分に、焦り、失望し、挫折し、妥協し、それでも挑戦する。
    あの時代があって今がある・・っていうほど頑張ってなかったし立派な大人にもなれてないけど、なんかわかるって気持ちを拾われたような感じがする。
    おもしろかった!出勤前に執筆なんてかっこよすぎるよ、朝井リョウ。

  • 初めて朝井リョウ氏の著作を手に取ってみた。
    最初にこの本てのはちょっと失敗だったかもと後悔したりしなかったり。

    所謂群像劇なんだけれども、その関係性の絡み合い方がハンパなくて
    判んなくなっては前のページに戻る、の繰り返し。
    相関図書きながら読んだろか、と本気で思った。書かなかったけど。

    出てくる小道具はイマドキなんだけれども
    狭い世界で揺れてる感じはずっと同じなんだな、と思った。
    そしてそういう感情は正面から見ると眩しくて痛い。
    そう思える自分もまだ捨てたもんじゃないかも、と思っちゃう辺り
    中二病かよと自分に突っ込んでみたり(爆)。
    作中のそこかしこにばら撒かれているきらめくモノたちを
    もう実際に拾い集めることができないという一抹の淋しさと
    自分がいつどこにそういうキラキラを置き去りにしてきたのかという喪失感
    (そもそもそういうきらめきを過去の自分が持っていたか、という問題もありつつ)。
    読み終えてみたら感情の振り幅全開。あー疲れた(爆)。

    文庫版『武士道エイティーン』の解説で有川浩さんが
    「誉田哲也は心に少女を飼っている」と書かれていたが
    今回もうひとり発見しました!!!(嬉)。
    朝井リョウさんも心に少女を飼っているひとだなぁと。
    なんで今まで読んでこなかったんだろう。勿体無かった。

    個人的にはどうしてこの並びなんだろう、と思ったり思わなかったり。
    最後に『破りたいものすべて』の結末では心が痛い。

  • 迂闊だった。
    若者が描く若者の話に、結構いい歳の大人な自分がこれほど胸を打たれることになろうとは思ってもみなかったから。
    ドトールで読んじゃって。
    ボロボロ泣いちゃって。
    見知らぬ人に心配されちゃって。

  • 20歳をテーマにした連作短編集。登場するのは、繊細で、もがき続ける若者たち。特に、双子の姉へのコンプレックスを抱えた浪人生の姿を描いた表題作を面白く読んだ。劣等感を抱え、すねて、ひねくれた妹が、ふと自分の周りの温かさに気づいていく。それを、独特の瑞々しい表現と、鮮やかな比喩で紡いでいく朝井リョウ。知らずに読むと、女性作家かと思ってしまうほど。オノマトペも印象的だし。やわらかいう読後感は、ちょっとおじさんには場違いっぽいけれど、心地よく読めました。

  • 大学生だった時こんな人いたなーっていうのが満載で懐かしかった!大学名は明記されてないけど恐らく地元の大学を目指すヒロインの話が懐かしさをさらに膨らませた、、

  • 見事な連作。さすが朝井リョウ。言葉のセンスにいつも惹かれる。特に「もういちど生まれる」が好きだった。

  • 『もういちど生まれる』
    朝井リョウ
    2011年 幻冬舎

    『桐島、部活やめるってよ』が出版されて読んでおもしろいなと思っていた朝井リョウさん。

    今回の『もういちど生まれる』は短編集だけど、主人公がつながって輪になっているおもしろい構成。
    大学生たちのリアルな感情が素直に伝わってきます。この頃はまだ朝井リョウさんも大学生たちと同世代、年齢も近かったので臨場感もあって。
    中でもタイトル編の「もういちど生まれる」編が胸にささりました。
    50前のおっさんだけど、心にすうっとストーリーや感情が入り込んできて、なんとも切ない気持ちにもなりました。

    それにしても朝井リョウさんはオノマトペが独特ですね。読んでいて?と止まってしまうところもあるけど、冷静に考えると確かにこのオノマトペは状況にあってるなと感心してしまいます。
    しばらく続けて朝井リョウさんを読んでみようかな。

    #朝井リョウ
    #もういちど生まれる

  • 1話目から2話目に移り変わったとき、なんだか物足りない感じがして、まだ同じ世界にいたかったな、と少し寂しくなった.
    だけど読み進めていくと各物語の登場人物が繋がっていることが分かる.
    1人の登場人物を色んな視点から見ることができる.
    自分の中で抱いている、コンプレックスや夢と現実のギャップ、それに正面から向かっていく主人公.
    涙が出ました.

著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

朝井リョウの作品

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