たゆたえども沈まず

著者 :
  • 幻冬舎
4.05
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  • (3)
本棚登録 : 2023
レビュー : 239
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344031944

作品紹介・あらすじ

19世紀末、パリ。浮世絵を引っさげて世界に挑んだ画商の林忠正と助手の重吉。日本に憧れ、自分だけの表現を追い求めるゴッホと、孤高の画家たる兄を支えたテオ。四人の魂が共鳴したとき、あの傑作が生まれ落ちた-。原田マハが、ゴッホとともに闘い抜いた新境地、アート小説の最高峰。ここに誕生!

感想・レビュー・書評

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  • フィンセントファンゴッホ。ぞっとするほど、すごい画家だ。
    史実と想像が交じる原田作品の醍醐味は健在。とても面白かった。
    「たゆたう」という言葉が好き。意味もいいけど、響きが好き。

    パリで日本美術の為に戦った男、林忠正。どれだけの悲しみ、苦しみ、悔しさをセーヌ川に捨ててきたんだろう。本当の厳しさを知っているから、本当の優しさがわかるのだと思う。ここぞという時の林の優しさに救われる。
    最終章を読んですぐ、最初の章を読み返す。ゴッホ研究家の答えが最初に読んだ時よりずっとずっと寂しく感じた。

    テオという人物にはずっと興味があった。変わり者のゴッホをあそこまで支えたテオとはどんな人物か。ふたりが画家と画商の関係でもあるとは知らなかった(〃∀〃)ゞ
    テオとゴッホは光と闇と思っていた。だけど、闇と闇だったのかも…。闇と闇が支え合いぶつかり合って、真っ暗闇に。
    ふたりにとって絵が僅かな光だった。そして、輝いた「星月夜」!それなのに…。誰よりも深い絆で結ばれた兄弟だった。

    ゴッホと林忠正に交流があったという記録はないらしいけど、同じパリであれだけ浮世絵を愛したふたりが出会わないはずがないと思う。林忠正はパリでゴッホの最高の1枚をずっと待っていたに違いない。

  • ちょっとまえに「北斎とジャポニズム展」を見に行ったとき、日本の浮世絵がパリでブームになったことがあるという浅い知識はもっていたが、まさかここまで当時の印象派に影響を与えたとは思っておらずひどく驚いた。

    その流れもあり、いいタイミングでこの小説。
    ゴッホと浮世絵か、面白そうなテーマだなと手に取ることになった。

    結論から言ってしまうと、ちょっと中途半端かな??
    主人公が架空の人物加納重吉だとしても印象が弱い。
    ジャポニズムブームをけん引したとされる林忠正の生きざまを描くだけでも十分読み応えがあっただろうし、いわんやゴッホもしかり。おまけにゴッホを生涯支えた弟のテオもここでは主要登場人物の一人である。
    マハさんが一番描きたかったのは誰だったのか、なんだったのか焦点がぼけてしまっているのが残念。

    それを抜きにしたとしても、さすがのマハさんなので最後まで面白く読めた。
    ゴッホの有名な絵が小説の至るところにちりばめられていて、その描かれた背景を読むのも楽しかったし、ゴーギャンとの交流も興味深い。
    なによりの収穫は浮世絵うんぬんより、弟の存在かな。
    この弟なくしてはゴッホは画家として大成しなかったんだと思うと感慨深いものがある。良い弟を持って良かったね、ゴッホにいちゃん(笑)

    あと、これは私の問題なんですが、ついマハさんのアート小説を読むとき伝記を読んでる気になってしまうのが悪い癖。
    あくまでもフィクションですよって、わかっちゃいるんですけどね・・・。自分の知識が乏しく、マハさんの緻密な下調べと相まって勘違いしそうになっちゃうんですよ。鵜呑みにしてしまわないように気をつけます。

    • kaze229さん
      同感です。
      ついつい、フィクションだということを忘れがちになってしまう原田マハ・アート小説。素敵な小説に出遭ってしまうと、ついつい…
      同感です。
      ついつい、フィクションだということを忘れがちになってしまう原田マハ・アート小説。素敵な小説に出遭ってしまうと、ついつい…
      2018/04/12
  • 著者のアート小説は、登場人物たちの作品が表紙を飾り、どれも素敵な装丁で、つい手に取り上げてしまう。そして購入(笑)
    この作品も、表に<星月夜>、裏表紙に北斎の<大はしあたけの夕立>が。それぞれ、小説の中で重要な位置を占めてもいる。
    ゴッホ兄弟は勿論、林忠正も実在の人物であるが、彼らが出会った史実は確かではない。
    しかし著者は、彼らに架空の人物加納重吉という人物を絡ませ、史実とフィクションの見事な融合を果たした「アート小説の最高峰」に仕立ててしまった。
    世紀末のパリを舞台に、ゴッホ兄弟と日本人二人との交流が綴られ、名作<星月夜>の誕生となる。
    孤高の画家ゴッホと、彼を信じ献身的に支える弟のテオ。そんな弟のために、ゴッホがしてやれることは自分がこの世からいなくなることと、思い込んでしまうゴッホ。何という哀しい結論だろうか。
    最終頁を読み終えたあと、巻頭の「1962年」の部分を読み返すと、また一段とこの作品の魅力が増した。

  • 原田マハのアートを題材にした物語を読む時、スマホが手放せない。作中に出てくる絵画を検索するからだ。
    今回はゴッホ。生きている頃には認められず死後爆発的に認められたこと、自らの耳を切り取ったこと、そして自ら命を絶ったこと。わずかばかりの知識で読み始めたゴッホとその弟テオ、何より近しい場所にいた2人の日本人の存在に引き込まれていた。

    『印象派』と名付けられた理由が現在のプラスな認識とは真逆だったのか。『浮世絵』が絵画の歴史に多大な影響を与えたとは聞いていたが天地がひっくり返るほどの衝撃だったのか。こちらの観る意識がまたひとつ変わった。

    相手への尊敬が強すぎるからこそ生まれた信頼と、同じぐらいの比重で狂おしく憎んでしまう。寄り添いながら相手の顔を直視出来ず、彼のひとが逸らした瞬間に横顔を見つめるしかないようなもどかしさが美しく、残酷に感じた。

  • 原田マハさんは大好きな作家さんですが、まだ未読の物も多く、この本でやっと17冊目です。

    『たゆたえども沈ます』
    本当に良い本でした。

    これまでもたくさんの素敵な本に出合ってきました。
    じわじわと感動が押し寄せてくる本。
    思わず涙する本。
    などなど。

    この本は…
    圧倒的な強さで迫ってくる、気迫を感じる本でした。
    そして、ラストでは胸がつまって、思わず感涙。
    心が激しくが震えるような感じ…

    私は美術というものにとてつもなく疎い。
    絵心も全くなく、美術にも興味がありませんでした…
    そんな私の世界を少し開いてくれたのが原田マハさんの【楽園のカンヴァス】でした。
    やっとこさ、入口にたったばかりの私に原田マハさんは、『たゆたえども沈まず』で、”もう少しこちらへ”といざなってくれたのです。

    この本では、ゴッホと弟テオ。
    ゴッホの才能を認めていた林忠正、加納重吉との交流が描かれています。

    フィンセント・ファン・ゴッホの名前は知っていますし、有名な作品をいくつかは知っていました。
    でも、その程度の知識でした。
    弟テオの存在など全く知りませんでした。

    生前のゴッホはその才能を認められることなく、37歳でこの世を去っています。
    そして、ひたむきに兄ゴッホを支えた弟テオは兄の後を追うように33歳で亡くなっています。
    ゴッホとテオは、二人でひとり。
    お互いに必要としあい、離れられないのに、お互いの存在に苦しむ。
    そんな二人の関係に胸がしめつけられました。

    林忠正は19世紀末、パリに拠点を置き、日本美術の普及に尽力した人物。
    ゴッホと交流があったかどうかは定かではないようですが…

    原田マハさん自身
    「今回は、ミステリーやホラーといったジャンルの要素を極力排してみました。直球勝負の物語が読者に届くと本望です」
    「誰もが知るゴッホの悲しい生涯を思うとき、この作品をいまの私たちが美術館に足を運びさえすれば見ることができるのは、本当に奇跡としか言えません。そのことに勇気づけられて、この作品を書くことができました」
    と、インタビューに答えています。

    少し前にテレビで桂南光さんが『たゆたえども沈ます』を紹介されていました。
    ちょうど京都国立博物館でゴッホ展が開催されているときでした。
    展示作品も紹介され、日本に居たら行きたかった…

    原田マハさんの言葉にもあるように、私たちは”見ることができる”。
    いつか機会があれば足を運びたい。
    そして、”見ることができる”幸運に浸りたい…
    今、強く願っています。

    この本の中で胸に刻まれた言葉たち。
    パリに拒絶されていると感じるゴッホに忠正が言った言葉。

    セーヌに受け入れられないのなら、セーヌに浮かぶ舟になればいい。
    嵐になぶられ、高波が荒れ狂っても、やがて風雨が過ぎ去れば、いつもの通りおだやかで、光まぶしい川面に戻る。
    だから、あなたは舟になって、嵐を過ぎるのを待てばいい、たゆたえども、決して沈まずに。
    そして、いつか私をはっとさせる一枚を書き上げてください。
    そのときを、この街で待っています。

    悩むテオに重吉が言った言葉。

    考え込んでも、どうにもならないことだってあるさ。どんなに嵐がやって来ても、やがて通り過ぎる。それが自然の摂理と言うものだ。
    嵐が吹き荒れているときに、どうしたらいいのか。ーーー小舟になればいい。
    強い風に身を任せて揺れていればいいのさ。そうすれば、決して沈まない。…だろう?

    タイトルの「たゆたえども沈まず」は、パリ市の紋章に刻まれている言葉

    Fluctuat nec mergitur

    ラテン語で どんなに強い風が吹いていても、揺れているだけで沈みはしない という意味。
    日本語の「たゆたう」は
    物がゆらゆら動いて定まらない。ただよう。
    心が動揺する。ためらう。
    たゆたう…
    美しい言葉ですね。

  • 信念と恐怖、矜持と不安。自分が信じる道をただひたすらに前を向いて歩き続けているように見える4人の男たちにとって、その道ははたで見ているよりもはるかに険しく不安定で細く暗い。
    なのに、なぜそんな道をまっすぐにブレずに歩き続けられたのか。
    この小説を読むまで、ゴッホについての知識はあの強烈な色彩の絵と代表的な絵、浮世絵の影響と彼を支え続けた弟の存在、ゴーギャンとの生活そして耳と狂気と自死、その程度だった。ゴッホのあの絵の後ろに日本人がいたことなど全く知らなかった。
    日本が文明開化の波の中で大きく動いていたその時代に、遠く離れたフランスでも大きな波にもまれたゆたいつつも、沈まぬようにもがいていたゴッホと彼を支え続けた3人の男たち。彼らの夢を、葛藤を、そしてその慟哭を、125年の時を超えて原田マハが鮮やかに蘇らせてくれた。

  • いかなる苦境に追い込まれようと、たゆたえども決して沈まず、やがて立ち上がる…世の中から孤立し「芸術」という名の魔物と闘い、それでも自分の絵をひたすら描き続けるゴッホ。
    そんなゴッホを子供の頃から慕い支え続ける弟のテオ。
    この二人の兄弟と、当時世界の中心とされたパリで運命的に出逢った二人の日本人画商・林忠正と加納重吉。
    これら異邦人4人の奮闘から日本と西洋美術との繋がりが理解できた。
    ゴッホと日本の結び付きを鮮やかに描ききった原田マハさんにお礼を言いたい位、この作品に夢中になれた。

    常に孤独の匂いが染み付き世間から拒絶され不幸な事件を起こしたゴッホ。
    けれど彼が晩年に描いた「星月夜」は清澄で明るく希望に満ち、観る者の心を掴まずにはいられない。
    NY近代美術館にある実物の「星月夜」が観られたら、私も本望である。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    19世紀末、パリ。浮世絵を引っさげて世界に挑んだ画商の林忠正と助手の重吉。日本に憧れ、自分だけの表現を追い求めるゴッホと、孤高の画家たる兄を支えたテオ。四人の魂が共鳴したとき、あの傑作が生まれ落ちた―。原田マハが、ゴッホとともに闘い抜いた新境地、アート小説の最高峰。ここに誕生!

    大胆な人だなと思っていましたが、夢枕獏さんに近い位に大胆です。
    何しろゴッホの人生と、当時現地で日本美術を輸入していた人物とを結び付けて、現実と溶け込んでどこが区分けか分からない小説を書いてしまうんですから。
    そもそも絵画に素養が無い僕のような人間を、毎回楽しめる本を書いてしまう原田さんの筆力は尊敬に値します。都度絵を確認しがら読むのですが、本物を見てみたいと思わせる熱があります。
    暗幕のゲルニカや楽園のカンバスは、現代からの視点と当時の視点の2つが交差して、現代の物語でカタルシスを得ていましたが、今回は兄フィンセント(ゴッホ)と弟テオの死によって終わる事があらかじめ分かっていたのでなんだかとってもメランコリックです。
    ゴッホと日本の関わりをここまで見せられると突然親近感が沸いてきます。これ読んでいると現実と虚構の狭間が分からなくなって脳内で新たな真実が産まれそうで怖いです。この大胆な書きっぷり好きです。

  • 誰もが知っている、有名すぎる画家ゴッホと、彼を兄に持つ画商テオドルス。
    そんな兄弟を支えた日本人画商の林忠正と加納重吉。
    どうやって日本の浮世絵が19世紀末のヨーロッパで認められていったのか、どのようにして印象派からポスト印象派に継ぐ潮流が出来上がったのか、そんな美術史の背景も分かる一冊。原田マハ氏の真骨頂。
    兄フィンセントと弟テオは、どちらも弱かった。でも、切ないほど相手のことを思いやり、自分を犠牲にしてでも相手の幸せを願った。
    明るい黄色の色調で有名なひまわりの絵から連想する人物像とはかけはなれたゴッホ兄弟の生涯に胸が締め付けられる。
    また違う背景を知った上で、もう一度美術館に足を運びたくなる、そんな一冊です。
    そしてそれこそがマハさんの思うツボなんだろうな(笑)
    2018/06

  • 炎の画家。
    情熱の画家。
    そして悲運の画家。

    フィンセント・ファン・ゴッホ。

    命の奥底から沸き出でる熱をキャンバスに描き続けたゴッホ。

    物事を深く考えすぎ、絵を描くこと以外に全く関心を示さず、心の病と闘い続けた。

    日本美術を愛し、日本を理想郷と信じた彼は、日本人になりたいとさえ願っていた。

    だがその願いは叶えられることなく、生き急いだ天才画家は37歳の若さで自ら命を絶ってしまう。


    彼は、弟のテオとその妻ヨーに支え続けられていた。

    「この絵を部屋の中に飾ったら、まるでもうひとつ新しい窓ができるようだわ!」(ヨー)

    画家と画商のゴッホ兄弟に、パリの日本人画商のパイオニア・林忠正とその弟子・加納重吉が深く関わっていく。


    近代絵画の大きな分岐点となったジャポニズムと印象派。


    そこにたゆたえども流れる熱い情熱と友情。

    蕩々たるセーヌの流れが、常に変わることなく見守り続けてくれている。


    アートを通して描かれる、原田マハの人間賛歌。

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著者プロフィール

原田 マハ(はらだ まは)
1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。
馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。
2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞受賞となり話題になった。

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