たゆたえども沈まず

著者 : 原田マハ
  • 幻冬舎 (2017年10月25日発売)
4.15
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  • レビュー :109
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344031944

作品紹介

19世紀末、パリ。浮世絵を引っさげて世界に挑んだ画商の林忠正と助手の重吉。日本に憧れ、自分だけの表現を追い求めるゴッホと、孤高の画家たる兄を支えたテオ。四人の魂が共鳴したとき、あの傑作が生まれ落ちた-。原田マハが、ゴッホとともに闘い抜いた新境地、アート小説の最高峰。ここに誕生!

たゆたえども沈まずの感想・レビュー・書評

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  • フィンセントファンゴッホ。ぞっとするほど、すごい画家だ。
    史実と想像が交じる原田作品の醍醐味は健在。とても面白かった。
    「たゆたう」という言葉が好き。意味もいいけど、響きが好き。

    パリで日本美術の為に戦った男、林忠正。どれだけの悲しみ、苦しみ、悔しさをセーヌ川に捨ててきたんだろう。本当の厳しさを知っているから、本当の優しさがわかるのだと思う。ここぞという時の林の優しさに救われる。
    最終章を読んですぐ、最初の章を読み返す。ゴッホ研究家の答えが最初に読んだ時よりずっとずっと寂しく感じた。

    テオという人物にはずっと興味があった。変わり者のゴッホをあそこまで支えたテオとはどんな人物か。ふたりが画家と画商の関係でもあるとは知らなかった(〃∀〃)ゞ
    テオとゴッホは光と闇と思っていた。だけど、闇と闇だったのかも…。闇と闇が支え合いぶつかり合って、真っ暗闇に。
    ふたりにとって絵が僅かな光だった。そして、輝いた「星月夜」!それなのに…。誰よりも深い絆で結ばれた兄弟だった。

    ゴッホと林忠正に交流があったという記録はないらしいけど、同じパリであれだけ浮世絵を愛したふたりが出会わないはずがないと思う。林忠正はパリでゴッホの最高の1枚をずっと待っていたに違いない。

  • ちょっとまえに「北斎とジャポニズム展」を見に行ったとき、日本の浮世絵がパリでブームになったことがあるという浅い知識はもっていたが、まさかここまで当時の印象派に影響を与えたとは思っておらずひどく驚いた。

    その流れもあり、いいタイミングでこの小説。
    ゴッホと浮世絵か、面白そうなテーマだなと手に取ることになった。

    結論から言ってしまうと、ちょっと中途半端かな??
    主人公が架空の人物加納重吉だとしても印象が弱い。
    ジャポニズムブームをけん引したとされる林忠正の生きざまを描くだけでも十分読み応えがあっただろうし、いわんやゴッホもしかり。おまけにゴッホを生涯支えた弟のテオもここでは主要登場人物の一人である。
    マハさんが一番描きたかったのは誰だったのか、なんだったのか焦点がぼけてしまっているのが残念。

    それを抜きにしたとしても、さすがのマハさんなので最後まで面白く読めた。
    ゴッホの有名な絵が小説の至るところにちりばめられていて、その描かれた背景を読むのも楽しかったし、ゴーギャンとの交流も興味深い。
    なによりの収穫は浮世絵うんぬんより、弟の存在かな。
    この弟なくしてはゴッホは画家として大成しなかったんだと思うと感慨深いものがある。良い弟を持って良かったね、ゴッホにいちゃん(笑)

    あと、これは私の問題なんですが、ついマハさんのアート小説を読むとき伝記を読んでる気になってしまうのが悪い癖。
    あくまでもフィクションですよって、わかっちゃいるんですけどね・・・。自分の知識が乏しく、マハさんの緻密な下調べと相まって勘違いしそうになっちゃうんですよ。鵜呑みにしてしまわないように気をつけます。

  • 原田マハのアートを題材にした物語を読む時、スマホが手放せない。作中に出てくる絵画を検索するからだ。
    今回はゴッホ。生きている頃には認められず死後爆発的に認められたこと、自らの耳を切り取ったこと、そして自ら命を絶ったこと。わずかばかりの知識で読み始めたゴッホとその弟テオ、何より近しい場所にいた2人の日本人の存在に引き込まれていた。

    『印象派』と名付けられた理由が現在のプラスな認識とは真逆だったのか。『浮世絵』が絵画の歴史に多大な影響を与えたとは聞いていたが天地がひっくり返るほどの衝撃だったのか。こちらの観る意識がまたひとつ変わった。

    相手への尊敬が強すぎるからこそ生まれた信頼と、同じぐらいの比重で狂おしく憎んでしまう。寄り添いながら相手の顔を直視出来ず、彼のひとが逸らした瞬間に横顔を見つめるしかないようなもどかしさが美しく、残酷に感じた。

  • 著者のアート小説は、登場人物たちの作品が表紙を飾り、どれも素敵な装丁で、つい手に取り上げてしまう。そして購入(笑)
    この作品も、表に<星月夜>、裏表紙に北斎の<大はしあたけの夕立>が。それぞれ、小説の中で重要な位置を占めてもいる。
    ゴッホ兄弟は勿論、林忠正も実在の人物であるが、彼らが出会った史実は確かではない。
    しかし著者は、彼らに架空の人物加納重吉という人物を絡ませ、史実とフィクションの見事な融合を果たした「アート小説の最高峰」に仕立ててしまった。
    世紀末のパリを舞台に、ゴッホ兄弟と日本人二人との交流が綴られ、名作<星月夜>の誕生となる。
    孤高の画家ゴッホと、彼を信じ献身的に支える弟のテオ。そんな弟のために、ゴッホがしてやれることは自分がこの世からいなくなることと、思い込んでしまうゴッホ。何という哀しい結論だろうか。
    最終頁を読み終えたあと、巻頭の「1962年」の部分を読み返すと、また一段とこの作品の魅力が増した。

  • 信念と恐怖、矜持と不安。自分が信じる道をただひたすらに前を向いて歩き続けているように見える4人の男たちにとって、その道ははたで見ているよりもはるかに険しく不安定で細く暗い。
    なのに、なぜそんな道をまっすぐにブレずに歩き続けられたのか。
    この小説を読むまで、ゴッホについての知識はあの強烈な色彩の絵と代表的な絵、浮世絵の影響と彼を支え続けた弟の存在、ゴーギャンとの生活そして耳と狂気と自死、その程度だった。ゴッホのあの絵の後ろに日本人がいたことなど全く知らなかった。
    日本が文明開化の波の中で大きく動いていたその時代に、遠く離れたフランスでも大きな波にもまれたゆたいつつも、沈まぬようにもがいていたゴッホと彼を支え続けた3人の男たち。彼らの夢を、葛藤を、そしてその慟哭を、125年の時を超えて原田マハが鮮やかに蘇らせてくれた。

  • ☆4、5
    誰も知らない、ゴッホの真実。

    天才画家フィンセント・ファン・ゴッホと、商才溢れる日本人画商・林忠正。
    二人の出会いが、〈世界を変える一枚〉を生んだ。

    1886年、栄華を極めたパリの美術界に、流暢なフランス語で浮世絵を売りさばく一人の日本人がいた。
    彼の名は林忠正。

    その頃、売れない画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、放浪の末、パリにいる画商の弟・テオの家に転がり込んでいた。
    兄の才能を信じ献身的に支え続けるテオ。そんな二人の前に忠正が現れ、大きく運命が動き出すーー。


    以上、そんな内容の、ゴッホの半生と芸術家の生き様を描いた作品!
    まずは実際に日本画大好きだったゴッホと、当時パリに実在した日本人画商をフィクションとして結び付けた点が素晴らしく、
    ゴッホの弟と、林忠正の後輩=主人公の友情によって、
    読者はゴッホを身近に感じつつ日本画の素晴らしさを誇らしく思えるように感じる手法が巧みでした!

    また、様々な苦悩の中で作品を産み出す『創作の産みの苦しみ』がリアルに描かれており、
    僕自身も昔、素人ながらに詞や小説を書いた時や、敬愛する芸術的な音楽家のドキュメント本やインタビュー雑誌から感じた『産みの苦しみ』に通じる部分を身近に思い、
    丁度、そういった『苦悩の産みの苦しみ』を経て過去最高の名盤と化した大好きな音楽のニューアルバムを聴きながら今作品を読んでいたので、芸術の真髄を堪能しながら作品を深く楽しめました!

    こういう『産みの苦しみ』があるからこそ、あらゆる芸術作品はより輝きを増し、人々の魂を魅了していきます。
    そんな過程を感じて、より芸術を堪能したい時にオススメな名作であり、
    去年読んだ『かがみの弧城』『AX』に続いて、ようやく本屋大賞ノミネートに相応しい素晴らしい作品を読む事が出来ました(^-^*)/

  • いかなる苦境に追い込まれようと、たゆたえども決して沈まず、やがて立ち上がる…世の中から孤立し「芸術」という名の魔物と闘い、それでも自分の絵をひたすら描き続けるゴッホ。
    そんなゴッホを子供の頃から慕い支え続ける弟のテオ。
    この二人の兄弟と、当時世界の中心とされたパリで運命的に出逢った二人の日本人画商・林忠正と加納重吉。
    これら異邦人4人の奮闘から日本と西洋美術との繋がりが理解できた。
    ゴッホと日本の結び付きを鮮やかに描ききった原田マハさんにお礼を言いたい位、この作品に夢中になれた。

    常に孤独の匂いが染み付き世間から拒絶され不幸な事件を起こしたゴッホ。
    けれど彼が晩年に描いた「星月夜」は清澄で明るく希望に満ち、観る者の心を掴まずにはいられない。
    NY近代美術館にある実物の「星月夜」が観られたら、私も本望である。

  • 今年の本屋大賞ノミネート作品はどれも面白い本が揃っている感じです。前作「ゲルニカ」のサスペンス性と言うかミステリー性がなくなりましたが、それがタイトルにぴったしの雰囲気の作品になっています。「たゆたえども沈まず」はパリ市の紋章に書かれている「Fluctuat nec mergitur」ってラテン語らしいのですけど、NECに反応してしまうのも自分でも何だかな(笑)。作品はゴッホ兄弟と忠正・重吉の2人の日本人という実在した人物で、その巡りあわせをフィクション化したものです。ゴッホの作品を見る前に読むことをお勧めしますし、読んでいてもゴッホの作品の絵を見ながら読むと楽しさが一層増しますね。

  • まだ無名の若き画家ヴァン・ゴッホ、というか生きている間はほぼ売れなかったけど、と彼を支え続けた弟テオの物語。
    というと「さよならソルシエ」がすっごく面白かったので、すっごくそのイメージでした。
    あれはあれで大胆というか斬新な脚色もあったけど、一気にテオドルスに惚れてしまう、まさにソルシエ(魔法使い)でしたな。
    だからすっごく「さよならソルシエ」が読みたくなった。

    ゴッホに関しては、結構絵を見てて、MoMAの「星月夜」とかアムスのゴッホミュージアムもいったし、パリはもちろんアルルにも行ったことがある。まぁでもアルルでゴッホが絵に描いた橋とか見にいこうと思ったら遠い上に治安に不安があって行かなかったんだよね。まぁそれも思い出!

    この話はパリで奮闘する日本人美術商の目を通して描かれていて、ジャポニズムだとか浮世絵だとか最近すごい北斎ブームだしちょうどこないだまでゴッホ展やってたし今北斎とジャポニズム展やってるしで、とても興味深く読みました。
    彼らが日本人であることに誇りを持ってるってのがかっこいい。

  • パリで画廊をする日本人二人とゴッホ兄弟のお話。ゴッホの絵は好きだけれど、こういった背景があるのは知らなかったな。兄弟愛、日本への思い、支える愛。苦しいねえ。読んだ後にゴッホ展を始め、作品を見たら、印象がだいぶ違ってくるのではないか。たゆたえども沈まずで描いた「星月夜」。原田さんはしっかりと書き上げました。

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