たゆたえども沈まず

著者 : 原田マハ
  • 幻冬舎 (2017年10月25日発売)
4.10
  • (117)
  • (162)
  • (65)
  • (4)
  • (3)
  • 本棚登録 :1584
  • レビュー :166
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344031944

作品紹介・あらすじ

19世紀末、パリ。浮世絵を引っさげて世界に挑んだ画商の林忠正と助手の重吉。日本に憧れ、自分だけの表現を追い求めるゴッホと、孤高の画家たる兄を支えたテオ。四人の魂が共鳴したとき、あの傑作が生まれ落ちた-。原田マハが、ゴッホとともに闘い抜いた新境地、アート小説の最高峰。ここに誕生!

たゆたえども沈まずの感想・レビュー・書評

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  • フィンセントファンゴッホ。ぞっとするほど、すごい画家だ。
    史実と想像が交じる原田作品の醍醐味は健在。とても面白かった。
    「たゆたう」という言葉が好き。意味もいいけど、響きが好き。

    パリで日本美術の為に戦った男、林忠正。どれだけの悲しみ、苦しみ、悔しさをセーヌ川に捨ててきたんだろう。本当の厳しさを知っているから、本当の優しさがわかるのだと思う。ここぞという時の林の優しさに救われる。
    最終章を読んですぐ、最初の章を読み返す。ゴッホ研究家の答えが最初に読んだ時よりずっとずっと寂しく感じた。

    テオという人物にはずっと興味があった。変わり者のゴッホをあそこまで支えたテオとはどんな人物か。ふたりが画家と画商の関係でもあるとは知らなかった(〃∀〃)ゞ
    テオとゴッホは光と闇と思っていた。だけど、闇と闇だったのかも…。闇と闇が支え合いぶつかり合って、真っ暗闇に。
    ふたりにとって絵が僅かな光だった。そして、輝いた「星月夜」!それなのに…。誰よりも深い絆で結ばれた兄弟だった。

    ゴッホと林忠正に交流があったという記録はないらしいけど、同じパリであれだけ浮世絵を愛したふたりが出会わないはずがないと思う。林忠正はパリでゴッホの最高の1枚をずっと待っていたに違いない。

  • ちょっとまえに「北斎とジャポニズム展」を見に行ったとき、日本の浮世絵がパリでブームになったことがあるという浅い知識はもっていたが、まさかここまで当時の印象派に影響を与えたとは思っておらずひどく驚いた。

    その流れもあり、いいタイミングでこの小説。
    ゴッホと浮世絵か、面白そうなテーマだなと手に取ることになった。

    結論から言ってしまうと、ちょっと中途半端かな??
    主人公が架空の人物加納重吉だとしても印象が弱い。
    ジャポニズムブームをけん引したとされる林忠正の生きざまを描くだけでも十分読み応えがあっただろうし、いわんやゴッホもしかり。おまけにゴッホを生涯支えた弟のテオもここでは主要登場人物の一人である。
    マハさんが一番描きたかったのは誰だったのか、なんだったのか焦点がぼけてしまっているのが残念。

    それを抜きにしたとしても、さすがのマハさんなので最後まで面白く読めた。
    ゴッホの有名な絵が小説の至るところにちりばめられていて、その描かれた背景を読むのも楽しかったし、ゴーギャンとの交流も興味深い。
    なによりの収穫は浮世絵うんぬんより、弟の存在かな。
    この弟なくしてはゴッホは画家として大成しなかったんだと思うと感慨深いものがある。良い弟を持って良かったね、ゴッホにいちゃん(笑)

    あと、これは私の問題なんですが、ついマハさんのアート小説を読むとき伝記を読んでる気になってしまうのが悪い癖。
    あくまでもフィクションですよって、わかっちゃいるんですけどね・・・。自分の知識が乏しく、マハさんの緻密な下調べと相まって勘違いしそうになっちゃうんですよ。鵜呑みにしてしまわないように気をつけます。

    • kaze229さん
      同感です。
      ついつい、フィクションだということを忘れがちになってしまう原田マハ・アート小説。素敵な小説に出遭ってしまうと、ついつい…
      2018/04/12
  • 著者のアート小説は、登場人物たちの作品が表紙を飾り、どれも素敵な装丁で、つい手に取り上げてしまう。そして購入(笑)
    この作品も、表に<星月夜>、裏表紙に北斎の<大はしあたけの夕立>が。それぞれ、小説の中で重要な位置を占めてもいる。
    ゴッホ兄弟は勿論、林忠正も実在の人物であるが、彼らが出会った史実は確かではない。
    しかし著者は、彼らに架空の人物加納重吉という人物を絡ませ、史実とフィクションの見事な融合を果たした「アート小説の最高峰」に仕立ててしまった。
    世紀末のパリを舞台に、ゴッホ兄弟と日本人二人との交流が綴られ、名作<星月夜>の誕生となる。
    孤高の画家ゴッホと、彼を信じ献身的に支える弟のテオ。そんな弟のために、ゴッホがしてやれることは自分がこの世からいなくなることと、思い込んでしまうゴッホ。何という哀しい結論だろうか。
    最終頁を読み終えたあと、巻頭の「1962年」の部分を読み返すと、また一段とこの作品の魅力が増した。

  • 原田マハのアートを題材にした物語を読む時、スマホが手放せない。作中に出てくる絵画を検索するからだ。
    今回はゴッホ。生きている頃には認められず死後爆発的に認められたこと、自らの耳を切り取ったこと、そして自ら命を絶ったこと。わずかばかりの知識で読み始めたゴッホとその弟テオ、何より近しい場所にいた2人の日本人の存在に引き込まれていた。

    『印象派』と名付けられた理由が現在のプラスな認識とは真逆だったのか。『浮世絵』が絵画の歴史に多大な影響を与えたとは聞いていたが天地がひっくり返るほどの衝撃だったのか。こちらの観る意識がまたひとつ変わった。

    相手への尊敬が強すぎるからこそ生まれた信頼と、同じぐらいの比重で狂おしく憎んでしまう。寄り添いながら相手の顔を直視出来ず、彼のひとが逸らした瞬間に横顔を見つめるしかないようなもどかしさが美しく、残酷に感じた。

  • 信念と恐怖、矜持と不安。自分が信じる道をただひたすらに前を向いて歩き続けているように見える4人の男たちにとって、その道ははたで見ているよりもはるかに険しく不安定で細く暗い。
    なのに、なぜそんな道をまっすぐにブレずに歩き続けられたのか。
    この小説を読むまで、ゴッホについての知識はあの強烈な色彩の絵と代表的な絵、浮世絵の影響と彼を支え続けた弟の存在、ゴーギャンとの生活そして耳と狂気と自死、その程度だった。ゴッホのあの絵の後ろに日本人がいたことなど全く知らなかった。
    日本が文明開化の波の中で大きく動いていたその時代に、遠く離れたフランスでも大きな波にもまれたゆたいつつも、沈まぬようにもがいていたゴッホと彼を支え続けた3人の男たち。彼らの夢を、葛藤を、そしてその慟哭を、125年の時を超えて原田マハが鮮やかに蘇らせてくれた。

  • いかなる苦境に追い込まれようと、たゆたえども決して沈まず、やがて立ち上がる…世の中から孤立し「芸術」という名の魔物と闘い、それでも自分の絵をひたすら描き続けるゴッホ。
    そんなゴッホを子供の頃から慕い支え続ける弟のテオ。
    この二人の兄弟と、当時世界の中心とされたパリで運命的に出逢った二人の日本人画商・林忠正と加納重吉。
    これら異邦人4人の奮闘から日本と西洋美術との繋がりが理解できた。
    ゴッホと日本の結び付きを鮮やかに描ききった原田マハさんにお礼を言いたい位、この作品に夢中になれた。

    常に孤独の匂いが染み付き世間から拒絶され不幸な事件を起こしたゴッホ。
    けれど彼が晩年に描いた「星月夜」は清澄で明るく希望に満ち、観る者の心を掴まずにはいられない。
    NY近代美術館にある実物の「星月夜」が観られたら、私も本望である。

  • ☆4、5
    誰も知らない、ゴッホの真実。

    天才画家フィンセント・ファン・ゴッホと、商才溢れる日本人画商・林忠正。
    二人の出会いが、〈世界を変える一枚〉を生んだ。

    1886年、栄華を極めたパリの美術界に、流暢なフランス語で浮世絵を売りさばく一人の日本人がいた。
    彼の名は林忠正。

    その頃、売れない画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、放浪の末、パリにいる画商の弟・テオの家に転がり込んでいた。
    兄の才能を信じ献身的に支え続けるテオ。そんな二人の前に忠正が現れ、大きく運命が動き出すーー。


    以上、そんな内容の、ゴッホの半生と芸術家の生き様を描いた作品!
    まずは実際に日本画大好きだったゴッホと、当時パリに実在した日本人画商をフィクションとして結び付けた点が素晴らしく、
    ゴッホの弟と、林忠正の後輩=主人公の友情によって、
    読者はゴッホを身近に感じつつ日本画の素晴らしさを誇らしく思えるように感じる手法が巧みでした!

    また、様々な苦悩の中で作品を産み出す『創作の産みの苦しみ』がリアルに描かれており、
    僕自身も昔、素人ながらに詞や小説を書いた時や、敬愛する芸術的な音楽家のドキュメント本やインタビュー雑誌から感じた『産みの苦しみ』に通じる部分を身近に思い、
    丁度、そういった『苦悩の産みの苦しみ』を経て過去最高の名盤と化した大好きな音楽のニューアルバムを聴きながら今作品を読んでいたので、芸術の真髄を堪能しながら作品を深く楽しめました!

    こういう『産みの苦しみ』があるからこそ、あらゆる芸術作品はより輝きを増し、人々の魂を魅了していきます。
    そんな過程を感じて、より芸術を堪能したい時にオススメな名作であり、
    去年読んだ『かがみの弧城』『AX』に続いて、ようやく本屋大賞ノミネートに相応しい素晴らしい作品を読む事が出来ました(^-^*)/

    • 5552さん
      LUNAさん、こんばんは。
      先程は私の本棚にコメントをありがとうございます。
      本屋大賞候補作を次々に読んでらっしゃるんですね!
      全部人気作品なので図書館の予約が多く、私は大賞発表までに読める気がしません(^-^;
      今年の候補作は一冊も読んでないなあ。
      芥川、直木両賞もそうですが発表までにお気に入りの作品ができると結果が楽しみですよね(^-^)
      マハさんのこちらの作品も面白そうです。
      『楽園のカンヴァス』がもう何年も積読になっているのでそちらの方を先に読まねば!と思っています。積読が消化できなくてアップアップです(^-^;

      それではお邪魔しました。
      2018/02/07
    • LUNAさん
      >5552さん、こんにちは。

      去年、mixiの読書仲間が本屋大賞候補作を制覇した事に影響を受けて去年から制覇するようにしました♪

      今年はたまたま発売直後に本屋で見付けてすぐに購入した『かがみの弧城』がノミネートされた事もあり、尚更制覇に燃えてます(^^)

      やっぱり、そちらの図書館でも予約殺到になりますよね(>_<)
      僕は去年同じ経験をしたので、ノミネート発表の直後に図書館予約し、今日までで8冊制覇し、残り2冊も今月か来月には読めそうです!

      仰有る通り、発表までにお気に入りの作品ができると結果が楽しみでになります(^o^*)☆彡

      マハさんの今作品は、『楽園のカンヴァス』に続く名作でした(^-^*)/
      マハさん作品は4冊目でしたが、最初の 『楽園のカンヴァス』以降はイマイチだったので今作品で再び名作に出会えて幸せです♪

      『楽園のカンヴァス』は屈指の名作なので、いつか是非積読から取り出して読んでみて下さいませ(*^-゜)⌒☆

      僕も昔は積読溜まって大変でしたが、名作以外は部屋に置きたくないと思うようになり、
      基本は図書館で読んで手元に置きたい名作なら改めて購入。先に購入して積む場合も10冊以上にはならないように消化して、手元に置きたい名作以外は定期的にネットオフの買取り1000円アップキャンペーンに出してます♪

      コメント本当にありがとうございますO(≧∇≦)o
      2018/02/07
  • 久しぶりに読みながら涙が止まらなかった本です。友人との待ち合わせ前にスタバで読み終わり…ぐしゃぐしゃな顔になりました、、。

    やっぱり、人を支えるのは人であり、人を救えるのは人なんだなと思いました。
    人間って本当に1人では生きていくことができないと思います。
    愛する人(家族・友人・恋人)と慈しみ合うことの素晴らしさを改めて感じさせられました。

    ゴッホが"画家ゴッホ"になるところや、
    パリからアルルへのところなど、運命が動き出すところは読んでいてとてもワクワクしました。

    最後はどうなるかわかっていたので、だんだん読むのが苦しくなっていきましたが、
    それでもそれは突然のことで、衝撃的で、とてもとても悲しい出来事でした。

    ガラスの様に繊細なフィンセントとテオ兄弟の、お互いを想い合う姿には胸を締め付けられるほど、痛いくらい心を打たれました。
    2人は本当に半身だったんだなと思います。

    テオが重吉と2人になって泣き崩れたとき、
    フィンセントからテオへの最後の手紙の文章。(美しすぎる言葉です。)
    あの辺りから涙で字が読めなくなりました。

    テオと重吉との友情や、林さんと重吉2人の当時のパリで闘う日本人の描写もとてもとても良かったです。

    また、林忠正という人物の偉大さも知ることができました。
    同じ日本人として、誇りに思います。
    彼についてはいつも重吉目線(たまにテオ)で語られており、そこがまた彼の底知れぬ魅力や内に秘めた力強さをさらに感じさせました。
    (最初、海賊と呼ばれた男の国岡鐡造さんをジェントルマンにした勝手なイメージを持ちました。)
    そんな彼が、セーヌ川で重吉に語った今まで見せなかった苦労や悔しさや葛藤は、彼だからこそ生き抜いてこれたものだと思います。
    "セーヌ川に流せばいい。"
    そうやって何度も壁にぶつかっては最初からまた挑戦し続けたのだと思います。

    タイトルにもなっている、
    『たゆたえども沈ます』
    知らない言葉だったので、最初からずーんと響きましたが、最後にまたこの言葉が出たときはじんわりとした気持ちになりました。

    他にも美しい言葉がたくさんあります。
    出会えて良かったと思える本です。
    深い愛情・愛しさ、活力を貰え、登場人物たちを思うと自分のこれからの人生の行動指針にもなります。

  • 皆さんが高評価の作品、やっと手元に来て読めたけどやっぱり原田さんの本領が発揮されていて気持ち良く読了。フィンセント ファン ゴッホとテオドルス ファン ゴッホの兄弟に日本の画商 林忠正 加納重吉を絡ませた展開に引き込まれ、絵を心で見る重吉と頭で見る林を上手く舞台回し役にしながらゴッホ兄弟の葛藤と愛情と苦悩が語られる。なるほど そうだったのか と納得しそうになるくらいの画家ゴッホの人と成りでした♪

  • 炎の画家。
    情熱の画家。
    そして悲運の画家。

    フィンセント・ファン・ゴッホ。

    命の奥底から沸き出でる熱をキャンバスに描き続けたゴッホ。

    物事を深く考えすぎ、絵を描くこと以外に全く関心を示さず、心の病と闘い続けた。

    日本美術を愛し、日本を理想郷と信じた彼は、日本人になりたいとさえ願っていた。

    だがその願いは叶えられることなく、生き急いだ天才画家は37歳の若さで自ら命を絶ってしまう。


    彼は、弟のテオとその妻ヨーに支え続けられていた。

    「この絵を部屋の中に飾ったら、まるでもうひとつ新しい窓ができるようだわ!」(ヨー)

    画家と画商のゴッホ兄弟に、パリの日本人画商のパイオニア・林忠正とその弟子・加納重吉が深く関わっていく。


    近代絵画の大きな分岐点となったジャポニズムと印象派。


    そこにたゆたえども流れる熱い情熱と友情。

    蕩々たるセーヌの流れが、常に変わることなく見守り続けてくれている。


    アートを通して描かれる、原田マハの人間賛歌。

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