- Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344425163
作品紹介・あらすじ
こんなはずでなかった結婚。捨て去れない華やいだ過去。拭いきれない姉への劣等感。夫から切り出された別離。いつの間にか心が離れた恋人。…真面目に、正直に、懸命に生きてきた。なのに、なぜ?誰にも言えない思いを抱え、山を登る彼女たちは、やがて自分なりの小さな光を見いだしていく。新しい景色が背中を押してくれる、感動の連作長篇。
感想・レビュー・書評
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家族 恋愛 友情
山登りを通じて自己を見つめ直していくそれぞれの女性の話
短編ごとの表題の挿絵も意味があり楽しみのひとつでした。
自然の壮大さを感じられるとともに、前に進む毎に成長や発見があり爽快感を大いに味わえます。
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湊かなえ2冊目。
人に貰ったので、せっかくだからと読み始めたけれど、タイトル・装丁・あらすじ…どれを取っても面白そうに思えない…。
そんな不安を抱えながら読み始めましたが、低いハードルで読み始めたせいか、意外に面白かったです。面白いけれども、エンタメ的ではないので、そこを期待して読むと、肩透かしを喰らうと思います。
湊かなえと言えば、イヤミスのイメージしかなかったので、そこも構えて読み進めてましたが、そんなこともなく。読んでいると、自分も山に登ってみたいなあと、ぼんやりと思ったりもしました。
連作短編集だけど、時間を空けて読む。なんてことを数回繰り返したせいで、それぞれの登場人物のことを朧気にしか思い出せないので、一気に読んだ方が(なんの本でもそうかもしれないけど)、もう少し楽しめたのかもしれない…とちょっと思いました。
ただ読んでいる間は、終始、「自分も山を登ったりしてみたら、価値観が変わったり、抱えてる悩みがバカバカしくなったり、新しい発見があったりするんじゃないか」という好奇心というか憧れというか、そういう思いを抱いたので、読んで良かったです。
まあ、あらすじは嘘を書くわけにいかないので仕方ないとして、タイトルと装丁はもうちょっと何とかした方が…という印象です。
「湊かなえ」というネームバリューがあるから、ファンの人とかは買うかもしれないけど、そうじゃない人が書店とかで見かけたときに、「面白そう!」とはまず思わないんじゃないか…と思ってしまいました。そう言った意味では、勿体無い気がします。
個人的には、「花の鎖」よりは、こっちの方が好きでした。 -
頂を“征服する”事が目的なのは男たちの登山。
ここに登場する女たちは、目標として頂上は目指すが、むしろ“道程”が大切なのだ。
そして「山」は、彼女たちにとって乗り越えなければならない人生の問題を象徴しているようでもある。
普段見られない景色の中に自分を置いたら、何かを感じる。何かが変わる。
「山女日記」は、作品内に登場する、山好きな女子たちのための情報交換サイトの名前でもある。
“山ガール”が流行っているというけれど、いざ登ってみると若い女の子をそんなに見かけない、というのが登場人物たちの感想。
流行はすぐに変わるし、“流行り”だけでノるには登山は覚悟が必要だからだろう。
その前から、中高年の登山ブームが続いている。
心乱れ、少し息も上がった彼女たちの横を、中高年のグループがしっかりした足取りで楽しげに追い越していく様も描かれている。
年季が違うのかもしれない。
人生も、多分そうだ。
『妙高山』
デパート勤務の律子は、催事の「アウトドアフェア」にヘルプで入って、一足の登山靴に心奪われる。
苦手な同期の子と二人きりで、屈託を抱えたまま妙高に登ることになる。
『火打山』
若い後輩から「バブルを引きずっている」と前世紀の遺物のように言われている美津子。
山に誘ってくれた神埼も、“美津子さんに合わせようと思って”と高級なもてなしをしようとする。
『槍ヶ岳』
事故や遭難に遭う中高年の見本が木村さんです。
ひとりで山に登りたいしのぶは、迷惑するが…
山が好きだった父と、いつも帰りを待つだけだった母を思い出す。
『利尻山』
雨女の希美は、医者の妻となって優雅に専業主婦をしている姉から「北海道に旅行しよう」と呼び出され、はめられて登山することに。
案の定天気は下り坂。
『白馬岳』
希美は再び姉と登山する。
なぜかピカピカの青空だ。
同行した姉の娘、小学校5年生の七花のおかげだろうか。
七花は、パパも一緒に来られなかったことを残念に思っている。
近すぎて見失っているものもある。
『金時山』
律子、由美と同期3人組の舞子。
なんてったって富士山がナンバーワンなのに、行き先にリクエストするたび却下されるとは何事!?
自分の足元は見ることができない。
少し離れてみることも大切。
『トンガリロ』
15年前を辿る旅。
すれ違った、でも本当に好きだったのだ。
柚月は思い出の色に帽子を染め、遠くに旅に出す。
『カラフェスに行こう』
単独行が好きという人も多い。
一人で行けば…山は考え事をするのにちょうどいい。
でも、ちょっと山友達もほしくなった希美。 -
湊さんの作品は伏線の回収の仕方と登場人物の本当の姿を徐々に鮮明にする描き方が好き。
ネタバレしない程度に感想を、、、
物語ではあるものの、他人が感じる人物像とその人の本心の部分は違うよなぁ、ということをしみじみ考えさせられる。人の内面や、発言の背景、真意が分かると同じ人物がそれまでとは全く違った人物像として見える。自分にはこういう視点が欠けているな、と改めて思わされる。表面だけを見るのではなく、奥底にある本心をいかに理解できると、自分の発言もきっと変わるのだろう。
読んだ後にちょっとだけ山登りしたい気持ちになる不思議。
#長編小説 #湊かなえ -
たしかに人には色んな悩みがある。
にしてもちょっと悩みがくどいんだよなー
山に登っている時は人と一緒でも基本己に向き合う時間が長いから、“日常を離れて日々の悩み事や自分と向き合う時間”と安易に結び付けられがちな気がする。実際、私の場合は体力的にしんどかったり、天気と睨めっこでこの先の行動をどうするべきかを考えてそんな日常の雑事をゆっくり巡らせる時間はあまりないし、むしろ持ち込みたくないと思ってしまう。
山は解決してくれない。自分の方に気づきがあってもそんなカードをめくるみたいに一気に青空、というのはおめでた過ぎじゃないかなー?
なんか山が好きな分、感想は辛口になってしまったけれど、山雰囲気はすごくあって山にいきたくなる。
2020.7.16 -
本は、その人に必要なタイミングで出会うものだと、以前どこかで耳にした気がする。
山の名前がタイトルについた七編と、文庫化にあたって追加された一編、合計八つの物語で構成された本書『山女日記』は、年齢問わずそれぞれに悩みを持っている主人公の女性たちが山に登るという体験を通して、自分なりに新たな希望を見出していく物語である。
短編集だが、それぞれの話に全く繋がりがないわけではない。各話の登場人物たちが、他の話でも出てきたりする。
湊かなえさんの作品と聞くと、意外に感じる内容かもしれないが、一つの作品としては、本を読みながら色んな場所を旅しているような感覚に陥り興味深かった。
一話一話、ゆっくり、のんびりと丁寧に読んで、それぞれの山の雰囲気を想像しながら読み進めたい本だった。
自分の生き方などに多少の悩みを抱えて日々を過ごしながら、趣味でハイキングや登山を楽しむ私にとって、この本との出会いは必然であったようにも思う。
なんとなく今の自分に不安を感じていたり、山が好きな女性には、この本をおすすめしたい。
-
山登りをする女性が、山を登りながらや山登りに至るまで、山を降りてから先について、それぞれが感じ、考える、それぞれの人生を描いている作品。
山登りが共通したテーマで、オムニバス形式ではありつつも、それぞれの話が繋がっていたりする。けれども、十人十色な人生はみんな違っていて、それでも最後は山を登りきったことで、人間として一つ成長できたり、人との繋がり、結束が一段と強くなったり、もやもやとしていた気持ちがすっと晴れたり、そんな心情変化がとても楽しかった。
高山植物や情景の描写も素敵で、とても元気をもらえる作品。 -
※文庫化される前に単行本で読んだときのレビューです。ご了承下さい。<(_ _)>
冒頭───
午後11時、新宿駅バスターミナルに集合。ここから夜行バスで長野駅に向かう。10分前に到着した。まだ誰も来ていない。いつものことだ。
数メートル先にいるおばさんたちのグループは四、五人集まっていて、切符やアルミホイルに包んだおにぎりらしきものを配り合っている。チェックのシャツに裾をしぼった八分丈パンツ、という姿。足元には、脇にストックを差し込んだ25リットルから30リットルサイズのリュックを置いている。
あの人たちも山に向かうのだろう。「山ガール」とは言えそうにないけれど。しかし、さ来月には30歳になるわたしも、他人のことを言えた立場ではない。おばさんたちは全員お揃いの藍染のスカーフを巻いている。けっこうかわいい。
気持ちはガールなのかもしれない。(妙高山)
空に向かい歩いてきたはずなのに、星空は地上にいる時よりも、高く遠いところにある。それでも、星の数は地上で見るよりはるかに多い。(火打山)
──────
“イヤミスの女王”湊かなえは、あまり後味の良くない女性のどろどろした物語しか書かないのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
こんな素敵で爽やかな山女小説も書けるのだ。
日本国内六つ、海外一つの山に登る女性たちを描いた七つの連作短編集。
全く独立しているわけではなく、細かいところでリンクしあっており、それを最終章の“トンガリロ”では、見事にまとめあげている。
全体の構成も素晴らしいのだが、登場人物たちが、山に登ったことで日常のしがらみから解放されるせいか、思いのたけを毒舌的に発散する言葉の表現が新鮮で楽しくて笑える。
───例えば
トリカブトに猛毒があることなんて教えなければよかった。不倫相手の奥さんがもし殺されでもしたら、私も協力者になってしまう。(妙高山)
バリバリと仕事をこなすキャリアウーマンとでも思われていたのだろうか。仕事は忙しいが、老人ホームの事務員にキャリアウーマンという言葉は似あわない。そもそも、こんな言葉はとっくに死語と化しているはずだ。では、今は何と呼ばれているのだろう。大人女子? これでは仕事をしている人としていない人の区別がつかない。(火打山)
「私、小学校の時のあだ名が金太郎のキンちゃんだって話したことあったっけ」(中略)
母親の手先がなまじ器用だったため、私の散髪は幼い頃から母がやっていた。しかし所詮は素人芸。バリエーションは縦横まっすぐに切りそろえたおかっぱだけ。小学一年の段階で、(中略)子どもがそんな髪型をしていたら、悪意もなにも関係なく、周りは金太郎を思い浮かべるだろう。
おまけに、町内会主催の「ちびっこわんぱく相撲」に優勝賞品のゲーム機欲しさに参加して、低学年の部で三年生の男子を倒して優勝したのだから、その名は不動のものとなった。(金時山)
等々、もう爆笑である。
読みながら、これまで気付かなかった湊かなえのユーモアセンスに感心したと同時に、表現が綿矢りさに似ていると感じた。
山に登るということは、何かを発見することでもあり、何かを捨てることでもある。
新しい自分になって旅立つために、或いは過去の自分に別れを告げるために。
山に登り、新たな人たちと出会うことや山の頂きへ到達することで、それまで知らなかった自分を見出すのだ。
この七つのエピソードはどれもが起承転結のよく練られた素晴らしい物語だと思う。
それぞれの“山ガール”たちの心情も読者に深く沁みわたってくる。
そして、先に挙げた随所に散りばめられたユーモア表現。
最初から最後までとても面白く、読み終わるのが惜しいとまで思った。
ここ何か月か読んだ本の中で最も私を楽しませてくれた一冊だ。
湊かなえの新しい一面を発見した作品。
第152回直木賞候補作に推薦します!! -
タイトルどおり、山ガールたちの登山にまつわるお話が全部で8編載っています。
一話ごとに主人公が異なりますが、連作なので前に密かに登場していた人が後のお話でクローズアップされていたりするので、注意深く読むことが肝心です。
(私もこの人誰だっけ?とページを戻して読むことがしばしば…)登山は一人で登るのも良し。仲間同士で行くのも良しですが、決して楽な行程ではないので(この本に登場する山も皆、標高のある山ですから)途中人間同士の色々なドラマがあります。下界の生活では分からない姿が見えてくることもあるので、意外性が吉と出るか、凶と出るかその後の人間関係を左右することもあるようです。
人それぞれ色々な荷物を持ちながら登り、帰りは軽くなる人もそのまま抱えて帰る人も、荷物をどうしようかと思いあぐねる人もいて…山に登ると風景も季節ごとにお天気ごとに違ったり登山は当に人生そのものですね〜
前に読んだ北村薫さんの登山小説は、ご自分は全然登らないで書いたそうですが、湊さんは実際に登ったのでしょうか…気になります。
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