その日、朱音は空を飛んだ (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344430747

作品紹介・あらすじ

高校の屋上から飛び降りた川崎朱音。しかし遺書は見つからない。SNSで拡散されている自殺の瞬間の動画を撮影したのは誰か、そこに映っていた”もう一人”は誰か、そもそも本当に自殺だったのか。朱音の死後行われた、いじめ調査のアンケートから見え隠れするのは、生徒たちの静かな怒り、妬み、欲望。し
かし――真実だけは、決して誰も語らない。

感想・レビュー・書評

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  • 「響け!ユーフォニアム」の作者なので、期待して読んでみた。期待以上の作品で非常に面白かった。
    構成が巧みで、個々の個性・行動に無理がなく、納得がいく。歪んだ依存心が、愛情と考える束縛に変貌していく、ある意味怖い作品。莉苑が一番しっかりしてそうだが、自分が無いようで一番怖い。

  • いろんな承認欲求と自尊心の満たし方がある。
    人間誰しも抱えているし、満たし方や手段は本人しか理解できないものもある。朱音だってそうだ。
    にんげんの心の内がやっぱり1番のミステリーだ。

  • リア充で楽しく毎日を過ごしている人にオススメしたい。毎日楽しく生活を送っているが、そうでない人もいることも忘れないで欲しい。

    朱音が学校で飛び降り自殺する。
    この学校は県内有数の進学校で勝ち組で自分本位の生徒が多いのかも知れない。
    そんな進学校で起きた、6名の生徒の独白形式で朱音の自殺の原因の死の検証をする。

    朱音がかまってちゃんでウザいと思う方も多いと思うが、
    信じられる親友を求めた朱音の贈る言葉を噛み締めて欲しい。

    咲き乱れた勿忘草で朱音と佳純が永遠に仲良く遊んで欲しい。真っ青な勿忘草を。
    そんな朱音の純粋な心も汲み取って頂きたい。
    一人でタイムカプセルを掘り起こしに行く様に涙した。
    好きの反対は無関心だ。
    信じてもらえる友達は大切だ。

    優等生夏川が怖すぎて人を信じるのを辞めたくなる。イヤミスなラスト。

    親友の顔を思い浮かべ、勿忘草の花言葉を噛み締めて欲しい。  

  • 高校の校舎屋上から飛び降り自殺した朱音。遺書もなく、クラスアンケートでもいじめはなく…はたして真実はどこにあるのか?誰が嘘をついているのか。

    JKたちの壮絶な日常ですね。大人顔負けの足の引っ張り合い、嫉妬、いじめ、マウンティング、羨望…嘘。

    友情?恋愛?そんな簡単な言葉では言い表せないカースト制度が、教室内には暗然と、そして厳然と存在するんですよ。そのゲームに負けたら、飛び降りるだけ。

  • 高校生たちが窮屈な世界で必死に生きる描写がお見事! 自殺したクラスメイトをめぐる青春ミステリー。

    クラスメイトの飛び降り自殺をきっかけに、生徒たちの独白を綴りながら物語は進んでいく。少しずつ自殺の真相が見えていき、最後には衝撃的で、なんとも合理的な結論が…

    もちろんフィクションなのでしょうが、いま発生している若者たちの自殺にありそうなお話です。
    自分も現在、高校生とつながる仕事をしておりますが、彼らの世界や思いに完全に答えてあげられることはとても困難です。ただ笑顔になる手伝いができるのであれば、できる限りしてあげたい。でも、あんたに言われたくない「だから、何?」という感じなんですよね。
    大人たちの中途半端な正義感や偽善を鋭利に貫く、心苦しい作品です。

    ストーリーはクラスメイトたちの独白で進められます。正直序盤、中盤は話が展開せず、淡々と青春ものを読まされている感じがしましたが、終盤にかけては不気味な真相が見え隠れしはじめ、物語に没頭してしまいました。

    若者でなく大人ほど読んだ方がよい作品だと思いました。おすすめです。

  • 朱音と遠かった人物からエピソードが始まり、近しい人物で終わる話の構成で、段々と朱音の為人がわかっていった。
    いじめに関するアンケートで近しい人物は何かしら飛び降り事件の原因の手がかりを記載するかと思えば、皆一応に素っ気ない回答ばかり。
    それはそうだろうと思う。いじめはなかったのだから。

    物語上でよく動く人物が夏川莉苑だ。
    莉苑は祖母からの教えられた、
    「世界はね、生きている人のためにあるべきなの。死んだ人間のために今生きている人間が犠牲になることは絶対にいけないことよ。だから、誰かの死のせいで生きている人が不当に傷つけられないよう、人間には真実を曲げる権利がある」
    という言葉通りに、生きているクラスメイトのために嘘の物語をつくっていく。

    これに対して、朱音は自分の死を使って自分を軽んじた人間たちに最大のダメージを与えられるかを模索し、真実を曲げた遺書を残し死んでいった。
    遺書を読んだ莉苑が朱音を止めなければならないという気持ちが微塵も湧いてこなかったのは、この朱音の企みを読み取ったからだと思う。

    莉苑が、朱音は愛のために死のうとしていると考えているところで、初めは細江愛のため?と思ったが、おそらく朱音の自己愛のためが正しいのではないだろうか。
    第四章の莉苑の話の最後で、朱音が愛に込めたメッセージに込めたスイセンの意味について考えている場面がある。
    ここで、勿忘草は今の朱音に相応しいと思えたとあるので、もしかしたら莉音は死ぬ前の朱音にはスイセンが相応しいと思ったのではないだろうか。

    朱音が飛び降りたときに、莉苑が遺書を破り笑うのは、
    朱音の自己愛のために生きている私たちが傷つけられるべきではないんだよと伝えたかったのだと思う。
    莉苑にとっては、朱音が死を決めた時点でこの世界で優先すべき人間ではなくなった。
    なので、ただ朱音はあの日死んだという事実だけでクラスメイトを守ろうとしている。

    最後の「その日、朱音は空を飛んだ。だから何?」はそれぞれのアンケートの筆跡から見て莉苑の言葉ではないかと私は思った。

  • 高校の校舎の屋上から川崎朱音が飛び降り自殺をはかる
    遺書も見つからず
    SNSで自殺の瞬間の動画が何者かに拡散されている
    朱音の側にいた幼なじみの同級生の純佳は
    自殺後から学校を休む
    朱音と仲がよかった莉苑は涙を見せない
    朱音と交際していた中澤は自殺後に朱音の死を知る
    中澤の元彼の愛はクラスメイトから目の敵

    朱音の死後、いじめ調査から見える様々な葛藤と心の内側

    読後が重い
    それだけ力のある深い作品なのだと思う

  • あるとき、朱音が学校の屋上から飛び降りた。その理由を、クラスの皆が色々な目線から知ろうとする話。
    高校生の間では当たり前のように起こっているカースト制、思春期特有の嫉妬、漠然とした正義感、ただ好奇心。様々な人物の目線から朱音の死に対するアプローチが描かれていた。
    すべての人間は、自分が主人公の人生を歩んでいる。でも、自分がいなくなったとしても、他人のストーリーでは自分は主人公でも何でもない、ただの名前の付いた登場人物でしかない。それをよく表現しているし、死人に口無しとはよく言ったものだなと思った。

  • 祝文庫化!

    飛び降りた理由は 『その日、朱音は空を飛んだ』瀧井朝世 | 本がすき。 - 本がすき。
    https://honsuki.jp/pickup/15630.html

    その日、朱音は空を飛んだ | 株式会社 幻冬舎
    https://www.gentosha.co.jp/book/b13639.html

  • 好き
    爽やかな物語でもなくて、綺麗な物語でもないと思うけれど、わくわくして読んだ後ににやっとした
    いいわあと思った。不謹慎かもしれんなあ。
    あと、夏川莉苑がダントツで好きだなと

    一つだけ気になったのは、
    朱音は愛のために死のうとしてる
    というところ
    愛のために死のうとしてるの?
    それがよくわかんなかった。
    読んだ時は、愛=細江さんのことだと思ってたけど。
    愛=loveのことだとしたら。でもなあ。
    と最初はしっくり来なかったけど。
    朱音は愛されたくて愛されたくてひたすら愛されるだけの世界をのぞんでいて、だから自分の死を選んだけど。
    莉苑はそれに気づいた上で、生きる人のために世界はあるのだと思っているから、嘘をついた。
    そんで、朱音に最後にあなたの望む世界は死んだ後にやってこないよって見せつけたのは、死を選ぶことより生きることを選ぶことのがよっぽど綺麗なのに馬鹿だなあって朱音に伝えたってことなのかなあ
    わかんないけど

    うん。この結末、個人的には大好物だな

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著者プロフィール

1992年京都府生まれ。第8回日本ラブストーリー大賞最終候補作に選ばれた『今日、きみと息をする。』が2013年に出版されデビュー。『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』がテレビアニメ化され話題に。同シリーズは映画化、コミカライズなどもされ人気を博している。2020年に『愛されなくても別に』が第37回織田作之助賞の候補に、また2001年には同作で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。その他の著作に、「君と漕ぐ」シリーズ、『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『どうぞ愛をお叫びください』『世界が青くなったら』『嘘つきなふたり』などがある。

「2023年 『愛されなくても別に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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