いのちの停車場 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
4.15
  • (205)
  • (251)
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  • (9)
  • (4)
本棚登録 : 2723
感想 : 201
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344430815

作品紹介・あらすじ

東京の救命救急センターで働いていた、六十二歳の医師・咲和子は、故郷の金沢に戻り「まほろば診療所」で訪問診療医になる。命を送る現場は戸惑う事ばかりだが、老老介護、四肢麻痺のIT社長、小児癌の少女……様々な涙や喜びを通して在宅医療を学んでいく。一方、家庭では、脳卒中後疼痛に苦しむ父親から積極的安楽死を強く望まれ……。

感想・レビュー・書評

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  • 在宅医療、終末医療、延命治療…
    いつかは向き合わないといけないと思いつつ、
    今まで避けて通ろうとしていました。
    今回たまたまこの本に出会い、人生の終わり方を
    考える機会が持てました。

    「小説」としても読みやすく、テーマは現実的なのに、読んだ後、爽やかな気持ちにもなれて、不思議な感じもします。

    人生の締めくくりに対する本人の希望と、家族の揺れる思い…

    悩ましいけれど…

    とにかく今日を大切に
    覚悟も持って過ごそう。

  • 2024.4.23
    咲和子の患者さんに対する一生懸命さと命との向き合い方、医師として、娘としての姿勢にぐっときました。
    老老介護、四肢麻痺の社長、小児がんの少女、そして脳卒中後疼痛に苦しむ父親からの積極的安楽死の提案。

    ・生命活動を終えようとするとき、胃腸の動きが止まっていくため食べなくなっていく。
    ・セルフネグレクトとは、別名自己放任。介護医療サービスの利用を拒否するなどにより社会から孤立し、生活行為や心身の健康維持ができなくなっている状態。生活環境や栄養状態が悪化しているのにあ、改善の気力を失い、周囲に助けを求めない。ゴミ屋敷や孤立死の原因とも言われる。セルフネグレクト状態にある高齢者は、認知症のほか、精神疾患・障害、アルコール関連の問題を有すると思われるものも多い。
    ・在宅医療とは、最後の日までいかにその人らしく生きるか、そうした毎日を支える存在になろうと、皆がそれぞれに考えている。
    ・すべての患者と家族は、命を救うことを求め、咲和子はそれに応えて生かすことだけを考えて生きてきた。死なせる方法など、考えたことはなかった。

  • 著者が、NHK俳句のゲストで登場した際に内科医であり小説家であることを知りました。実体験をもとに、読者が「終末期医療」について考えるきっかけとなればとの思いで執筆されていることに共感し、父の病気のこともあって読んでみました。
    病院医療と在宅医療とを対比させながら、主人公の苦悩と成長、医療現場の実態、病人と家族との関係性がいくつかのストーリーで描かれています。病気とどう向き合っていけばいいのか、最後をどう迎えたらいいのか、色々と考えさせられ著者の思惑通り、在宅医療、終末期医療の実態を垣間見ることができ、大変勉強になりました。映画もぜひ観てみたいです。

  • 2.8

  • 04月-03。3.5点。
    東京の大学病院で救急センター長を務める、女医の主人公。トラブルの責任をとり、故郷金沢で友人の診療所を手伝う。在宅診療専門の診療所で、いろんな人間模様が。

    面白い。ぐっとっくる話の連作短編。次作もあるので、期待。

  • 在宅医療を行うものとして読み進めさせていただきました。
    どの場面もよく出会い、毎回悩んでいることばかりでした。
    これだけ、個別化した関わり 出来たら良いなぁ。

  • 南 杏子のいのちの停車場を読みました。
    主人公の咲和子は都会の救急医療センターから、実家の金沢に戻り在宅医療を手伝うことになりました。
    救急医療の経験を活かせば簡単にこなせると思ったのですが、実際携わってみると、その大変さに気づきました。
    色々な人がいて、父親の介護も重なりやるせない思いが伝わってきます。
    私の父親も96歳なので思いつまされることが多いです
    切ない気持ちにもなってきます

  • 南杏子さん、はじめまして♪
    絶賛長期積読中の作品がありますが、本書は図書館にてお借りした一冊。
    明日が返却期日(平日の為、実質今日が返却期日)、朝から無料LOOPでお気に入りのラーメン屋さんへ。
    開店までの時間に読了しようと思っていましたが、開店時間の1時間前には開けてくださり、実質待ち時間10分程度♪
    当然、読み終えられる訳もなく、図書館にてラストまで読了して返却してきました。
    (ホントいつもギリギリ_( ˙꒳˙ )_セーフ)

    現代の日本が抱える医療の問題。
    我々が生きていくうえで、そしていつの日か死を迎えるうえで、もはや避けては通れない問題です。

    諸外国と違い、日本は全員が保険証を持ち、誰もが当たり前に医療を受けることが出来ます。

    これは素晴らしいことですが、そのお陰もあり、いまや日本は人類が経験したことのない超高齢化社会となりました。

    当然ながら、毎年増える医療費、年金同様に
    現役世代がどんどん少なくなっていく中で、もはや支えられるはずもなく、税金という名の借金で制度を維持しているのが実態でしょう。

    そこで医療の現場では在宅医療が第3の医療として注目されるようになりましたが、人生の最後を自宅で家族に見守られといったプラスの要素がある反面、先程述べたように超高齢化社会で核家族化が進み、在宅といっても実質は老老介護の状態に...

    本書はそんな日本の社会問題を真正面から捉えた作品。

    主人公の咲和子が62歳という設定も実にリアルです。

    幸いなことに嫁の両親も含め4人の親は健在ですが、そう遠くない未来に私にも訪れるであろう介護や終末期医療の問題。

    単なる読み物ではなく、改めて考えさせられる一冊となりました。




    <あらすじ>
    救急医を辞めた62歳の女性医師・白石咲和子が訪問診療医としての新たな人生を歩み始める物語です。東京の救急救命センターを退職した咲和子は、金沢の実家へ戻り、「まほろば診療所」で働くことになります。在宅医療の現場で、老老介護や終末期医療、積極的安楽死など、現代日本の医療制度の問題点に直面しながら、患者やその家族と深い絆を築いていきます。

    咲和子は、在宅医療の難しさと向き合いながら、脊髄損傷で四肢麻痺となったIT企業社長、セルフネグレクトの独居老人、小児がんの6歳女児など、多様なケースに対応します。また、彼女自身も高齢の父が誤嚥性肺炎や脳梗塞を発症し、「これ以上生きていたくない」と願う父の意思と、医師として、また娘としての葛藤に直面します。

    この小説は、医療の現場で働く人々の苦悩と決断、そして患者とその家族が抱えるリアルな問題に光を当て、読者に深い感動と考えるきっかけを与える作品です。

    東京の救命救急センターで働いていた、六十二歳の医師・咲和子は、故郷の金沢に戻り「まほろば診療所」で訪問診療医になる。命を送る現場は戸惑う事ばかりだが、老老介護、四肢麻痺のIT社長、小児癌の少女……様々な涙や喜びを通して在宅医療を学んでいく。一方、家庭では、脳卒中後疼痛に苦しむ父親から積極的安楽死を強く望まれ……。

    著者について

    一九六一年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入し、卒業後、都内の大学病院老年内科などで勤務する。二〇一六年『サイレント・ブレス』でデビュー。他の著書に『ディア・ペイシェント 絆のカルテ』『ステージ・ドクター菜々子が熱くなる瞬間』『ブラックウェルに憧れて』がある。

  • 自宅療養、在宅医療とは一体どんな役目があるのか。医師の目から見た、また患者となった医師の立場から思う、本当の在り方というものがわかった。安楽死を望む人、決して手を下してはいけないと分かっていても、『痛みを取るため死を選ぶことは、生きる希望』という考えはある意味納得させられた。

  • 死と言う概念を前向きに考えられる一冊でした。読了してから何日か経過しましたが「息子さんが見えましたよ」というシーンは非常に胸が熱くなったのを未だに思い出します。心に寄り添う温かさを感じて思わずホロリ。

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著者プロフィール

1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入。卒業後、慶応大学病院老年内科などで勤務したのち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを務める。帰国後、都内の高齢者向け病院に内科医として勤務するかたわら『サイレント・ブレス』で作家デビュー。『いのちの停車場』は吉永小百合主演で映画化され話題となった。他の著書に『ヴァイタル・サイン』『ディア・ペイシェント』などがある。


「2022年 『アルツ村』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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