違国日記 5 (フィールコミックス FCswing)

  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396767754

作品紹介・あらすじ

《人生の本棚に入る本》としてあなたの心の奥地に届く物語!
人見知りの小説家(35) と 姉の遺児(15)がおくる手さぐり年の差同居譚

「姉がさ、日記を遺してたの朝宛だった」

朝の亡き母・実里は日記を遺していた。
20歳になったら渡す、という娘への手紙のような日記を。
槙生にとっては高圧的な姉で、
朝にとっては唯一無二の“母親”だった実里。
彼女は本当は、どんな人生を生きている女性だったのか?
母の日記を槙生が持っていると知った朝はーーー。

槙生と笠町の“新しい関係”もはじまる
ーー扉が開く第5巻。

感想・レビュー・書評

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  • ──悲しみは果てのない
    長い長い浜辺を歩くようなものだった。

    ずっと先で砂と水と空とが溶け合って
    どこで尽きるかもわからないような美しい浜辺だ。

    一歩ごと足が沈み、

    砂つぶが指の間に入り込み、

    寄せる波に足首が濡れる。

    冷たい怒りが足元を
    濡らすたび はっとして
    かれがいないことを思い知る。

    俺の竜は死んでしまった。

    もういない。

    これからどうすればいい?

    忘れよう。

    いや許せない。

    殺してやる。

    誰を?

    話したい。

    誰に?

    眠っていたい……。

    寄せては返す波ごとに
    ルカの心は小舟のように揺れた。

    この浜辺はどこまで続くのだろう?

  • 朝ちゃんの「あたしが1番じゃないじゃん」って気持ちは分かる。槙生ちゃんが素敵すぎて、どういう風に生きたらこんな徳の高そうな人間になれるのか…。人間ぽくないところ憧れる。

  • 今回もずっしりみっしりした内容でした。
    泣いたよ、、、、そりゃもうわんわんと泣いた。
    とりあえず胸にくる台詞を箇条書き

    ◉『自分が完璧を提出してたら まわりも同じようにできるはずだって思っちゃダメだよ』by笠町くん上司
    ◉『それは大きな穴を覗き込むような作業で その穴の底には本当は母はわたしを愛していなかったのではないか っという怪物めいた恐怖が潜んでいたのだった』朝
    ◉『孤独は彼女に寄り添うのに わたしにはちっとも優しくなかった わたしは絶対に正しい真実を欲しがったのに彼女は決してそういうものを示さなかった』朝
    ◉『なぜわたしの欲しい嘘を知っているのに たとえその場しのぎでも決してくれないのだろう なぜ?』朝
    この最後の台詞で私の涙腺も崩壊、、、

    ファミレスでえみりと朝が話してるのを見て全体的に朝は(当然なんだけど)子供だなあと。
    えみりにひつこく恋話をしてみたり、まきおのことを『変』と縛るのも悪気があるわけじゃないのはわかるけど、、特有の無知さというか。彼女のそういう雑さ無知さは強みにも勿論なるだろうけど、人を傷つけてしまうだろうな。

    笠町くん上司の台詞『自分が完璧を〜』は、頭をガツンとやられた、、。ショックだった。

    後半は朝が母親の日記を読んでザワザワしとるんだけど
    自分に足りない欠けたものにふわっと気づき始めてムシャクシャしよる。やっとやな…
    まきおちゃんと話し合いをするもどうにもおさまらんけど、やっとやっと両親の死を体に落とし込めたように見えた。
    毎回ハッとする台詞と展開で圧倒される、、、
    あー、、感想書いてても重たいわ

  • すごくよかった。子どもの頃は親を単なる「親」として認識しているけど、成長するにつれ「親」もひとりの人間で、人生があって、その人生の途中で自分は産み落とされただけなのだよなとわかってくる過程があると思うのだけど、朝の場合はとつぜんそれを突きつけられた状態で、いろいろ付いていかないだろうな、しんどいだろうなと思った。
    両親がいないのは変、とかいろいろ、今まで自分が「普通」だと思っていたことから外れているのは彼女も多分なんとなく分かっていて、でもその「普通」ってのは実は自分の感覚の話で、誰かから押し付けられたり、誰かに押し付けたりするものじゃないってことはきっとまだ分かっていない。両親がいない自分は普通じゃない、普通じゃないのは変、変なのはよくない、みたいな。でもそれが自分の現状で、しかしこの現状に陥っているのはまったく自分のせいではない。悲しいのと、腹がたつのと、困惑と、でもそういうごちゃごちゃした感情にもならない何かを吐き出すすべを彼女は知らない。そういう子どもが、手では触れられない諸々を言葉にしていく小説家と暮らすことの意味、というのを、この巻になって私はようやく考えた。すごくいい。次巻もたのしみ。

  • 読み終わって、自分の中の透明度が上がって、その向こうに何か見えそうでもどかしくて、走り出したいような何か始めたいけどそれが形にならない、透明度は上がって今とても澄み渡った気持ちなのに、何かが出てきそう、その何かがわからない そんな気持ち
    ちょっとハリポタの5巻の冒頭思い出す

  • えみりの母親と会うところから。

    意外と仲良くなる槙生。みちさんも丁寧な物腰だけど意外とざっくばらんというか、ぶっちゃける感じで楽しそうな人だった。
    もっと心配性で過保護な親なのかと思った。

    朝が母親の日記を読み、死んだことを実感として理解した件が印象的でした。
    何度か読み返したし、また読みたくなるかもしれないと思いました。

    槙生の、朝がショックを受けて優しくされたがってるのに、求める言葉を言わない強さがすごい。
    自分は自分、朝は朝、と尊重してるんだけど、冷たい感じもしてしまう。
    この時は朝は辛いけど、でも自分の感情を飼い慣らすというか、受け入れるには自分で考えて乗り越えないといけないとは思うから、結果的には朝のためになる行動なのかなとは思いました。
    でも自分では出来ないなー
    辛いよね、とか共感だけしてしまいそう。

  • 約束通りえみりのお母さんと会ってくれる槙生ちゃん、すごい。自分なら会う理由がないと思ってしまいそうだ。
    えみりのお母さんの話を聞いて、彼女は彼女で朝の両親と付き合いがあり、亡くなったことで影響を受けているということに気がつけた。
    序盤では嫌な人かと思っていたが、
    卒業式にも入学式にも来てくれないなんて大丈夫なの?と思うのは、それは彼女が母親であり、
    槙生も朝の母親代わりになると決めたと思っていたからだろう。

    笠町くんがクラウドで記録しておくのを提案してくれるの、とても頼りになる。槙生ちゃんの性格や合理性をきちんと考えてくれている。

    朝は槙生ちゃんを片付けられないというが、一人で暮らしていてずっと家にいる仕事で仕事も忙しくて、となれば部屋は散らかるし片付けなくても死なないから、掃除なんて二の次になりがちだと思う。
    えみりが「発達障害じゃないの」と言うのが無遠慮だ。
    朝は朝で、親の前で恋愛話を始めるのも怖い。

    朝の立場のことを槙生ちゃんが
    「彼女が親から受け取るはずだったものはどうしたって得られない」
    「孤独を絶望を表す言葉をまだ知らないというのは一体どんな苦しみだろう」
    「今までもらったものでやりくりしていくしかない」
    と言っているのが、どの言葉も美しく哀しく
    本当に朝の親になって育てることはできないけれど
    なんとか守りたいと思ってくれているのだ。

    多分朝は自分では気づいていないけれど、母親から
    普通普通と”洗脳”されてきて、自分の思う普通からはみ出した人を「変」と悪気なく断罪してしまうのだろう。

    えみりのお母さんは本当は仕事を続けたい人だったというが
    「どの選択をしてもきっと後悔はしたしいいの」
    と言うのがなんだか良いなと思った。

    笠町くんが鬱になって、泣いて動けなくなるような
    辛い時期を過ごしていたとは。
    そういうことも槙生ちゃんに話せたというのは安心した。
    自分の惚れた女は誰からもモテると思いこんでいるところが可愛いし、
    それについて
    「あんなめんどくせーやつ一部の好事家しか惚れねーよ」
    と言う醍醐さんの愛に溢れた突っ込みも面白かった。
    あの珍獣はめったなことではなつかない、好事家の自覚を持てには笑った。

    手書きのものを読むのにはエネルギーがいる。
    すごくわかるなと思った。
    あとは隠してないのに「隠してるけど桜でんぶが好物」
    なんていう母親の勘違いが微笑ましい。
    自分も里帰りしたとき必ず「あんた好物やろ」
    と唐揚げを作ってくれて、私唐揚げ好物だったんだ。笑と思ったものだ。
    活字中毒なので、目の前にあると読んじゃうというのも共感。

    姉が朝宛の手紙のように日記を書いていたことについて
    「書くのはとても孤独な作業だから」
    「これから5年も生きていたら、渡すつもりで書いていても20歳になったとき渡さない選択肢もあったと思う」
    と思っているところが槙生ちゃんらしいし
    本当にそのとおりだと思う。
    そうなると、故人の為にどうしてあげるのが正解なのか。
    いつ朝ちゃんに教えるべきなのか。
    真摯に考えてくれているとしか思えないのだが
    隠し事をされてむかつくと朝が思ってしまうのは、
    子供扱いされた気持ちがするからだろうか。

    朝のお母さんが内縁の妻だったことを知ってしまうと
    朝の名前に込めた願いもまた違った印象を持つ。
    勝手に部屋に忍び込んで日記を探し当て、読んでしまう朝。
    母は母という存在ではなく自分と同じひとりの女で
    不安や迷い、悩みも当然あるというのは子供の時には気が付きにくいことだと思う。

    朝ちゃんを探すの手伝って、と言われて駆けつけてくれた笠町くんが
    思ったより簡単だったろ、人に頼るのと言うのがさりげなくて良い。
    弁護士の先生も来てくれて、大事になって恐縮する槙生ちゃんに「大事にした方が良い」と言うのも、
    笠町くんが舌打ちされた話を聞いて丁寧な口調で
    父親に抗議したい、対話すべきところなのに
    と怒ってくれるところがすごく良かった。
    子供と言うのはたびたび大人を試したがるから、
    何度もやっているならまた違うかもしれないけれど
    初めてのことだし大事にして心配しないと
    それはまた新しい傷になってしまう。
    それに槙生ちゃんも言っているが、親の悪口は中々言ってもらえない。毒親に悩まされて育った人によって、親の悪口を言ってくれる人は救いだと思う。

    朝の憎まれ口に、大事な友人だと思ってる
    そう思われるのは悲しいと言う笠町くんの対応が大人で恰好良い。
    私は朝みたいに我儘も言えないし、槙生ちゃんみたいに冷静な対応もできない気がする。
    「ここで私を傷つけようとしても何にもならない」
    と怒らずに言い、
    「あなたの有り様を見ているとあなたは愛されて育ったのだろうなと私は思う
    もしそうなら姉も幸福だったんじゃないか」
    と言えるところが、本当に槙生ちゃん素敵な人だ。
    言葉選びがとても素敵で、彼女の書いた本を読んでみたくなる。

    何故朝が怒っているのかわからず、
    八つ当たりのように思えていたのだが、
    槙生ちゃんの小説読んで
    なぜ誰も無くしたことがないのにこんなものを書くのだろう
    こんなものを書くのになぜわたしを真に理解しないのだろう
    なぜわたしの欲しい嘘を知っているのにたとえその場しのぎでも決してくれないのだろう
    と思うところで、あぁそうだったのかと思えた。

    悲しみを共有できない、一人一人違うから
    100%同じものを分かち合えないのだから、
    槙生ちゃんの態度はどこまでも誠実だと思う。
    朝ちゃんがやっと泣くことができてよかった。

  • 槇生が部屋に置いておいた母の日記を見つけた朝。とうとう両親が亡くなったことを受け止め始めたか。ほしい言葉をくれない槇生。自分の孤独は自分だけのもので、誰にも踏み入れさせない、という気持ちわかる。簡単な同情はいらないし、まったく同じように悲しんでくれる人はいない。

    気持ちを書くことの難しさ。書いた言葉が文字になると本当ではない気がしてきてしまうの自分にもある。手書きの文字を読むのにエネルギーが要るのもわかる。

    日記というのは本来とても私的なもので、人の日記を読むのはまさに自分の知らないその人の姿を知る行為だ。たとえ将来自分に渡されようとしていたものでも、朝が母の日記を読むのは大変なことだろう。しかも、母は既に亡く、書かれた言葉を確かめることができない。まさに深淵を覗く。

    しかし槇生は手を出さない。あくまで孤独は朝自身が自分で噛み締め、歩くものなのだと。自分の孤独に寄り添うことも許さない槇生だから。

    そんな槇生が笠町に頼れと言われたり、ちゃんと頼ってみたり、そして笠町の方は弁護士を気にして醍醐に探りを入れたり。ここら辺の大人のモゾモゾした動きもいい。笠町のアプローチは不器用なようでとてもまっすぐで、いい。ときめく。

  • 泣いた。
    なんだろう、言葉が胸にしみるってこういう感覚を言うのかな。読んでいて気持ちがあふれて涙となっているようだった。

  • ヤマシタトモコさんの作品初めて読んだのだけど絵と雰囲気と言い回しが絶妙でハマりました。
    子どもでも大人でも関係なくそれぞれ傷付く言葉とか思うことが違ってて、すべてを理解することはできないけど、どんな人にも敬意を持って接していきたいなあと思った。誰にも知られず言葉で傷付いたこともあったけど、傷付くからやめてって言えればよかったのかなとかなんか考えた。言葉って大事だな…

    完全に槙生ちゃん目線での感想になってしまった。とても人間らしくて好きです。
    朝がお母さんの死を自覚して泣いたときはこちらも泣いた。

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