- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784422230443
作品紹介・あらすじ
団体旅行と聞くと、旗を持った添乗員に連れられた、主体性のない旅行者の集団、といったイメージが思い浮かぶ。
近年の観光学もまた団体旅行に対してはネガティブな評価をしがちで、団体旅行の発達によって「旅行のワンパターン化」ないし「旅行の画一化」が拡大されたといった言説が目立つ。
しかしながら、団体旅行の発展によって、誰もが安全に旅ができる「旅の大衆化」が進んだこともたしかであり、むしろ肯定的にとらえることもできよう。旅行機会そのものがまだ少なかった時代にあって、旅が体験できる貴重な手段でもあったのである。
一方で、団体旅行の発展は、交通網の整備、宿や食事の提供といった旅を支える諸条件はもちろん、旅人と旅先とを結びつける仲介者を必要とし、同時代の社会の変化と密接な関係にある。
そもそも、現代の多様化した旅も、こうした団体旅行のノウハウと経験の積み重ねを応用することで成り立っている。こうした点もまた、これまで十分に検討されてきたとは言えず、あらためて考察する意義があろう。
本書では、日本社会に団体旅行が定着していく過程を時代背景とともに読み解き、団体旅行の発展を日本の観光文化史のなかに位置づける。
感想・レビュー・書評
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お伊勢参りからはじまって明治~昭和の修学旅行、会社の旅行、アンノン族まで。幅広く目配りが利いている。
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日本における団体旅行の期限は江戸時代のお伊勢参りとのこと。
みんな行けるわけではないので、代講といて代わりにお参りしてもらうことをしていたらしい。
https://seisenudoku.seesaa.net/article/484236305.html -
1 お参りの旅
2 学びの旅
3 親睦の旅 -
384.37||Ya
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「オンラインブックトーク紹介図書2021」
▼配架・貸出状況
https://opac.nittai.ac.jp/carinopaclink.htm?OAL=SB00540942 -
コロナウイルス感染拡大の影響で、相当な被害を被った業界の1つが観光業だ。何しろ人の動きが制限されてしまい、旅行どころではなくなったのだから。
そんな中で、団体旅行という1つの文化に焦点を当てた今回の本は、旅が人々や社会に与えた影響について知ることができる。
江戸時代のお伊勢参りに始まり、富士参拝、鉄道の出現による旅行のあり方の変化、修学旅行、戦後の海外旅行や新婚旅行、若い女性の旅行への興味などさまざまな視点から旅について取り上げている。
意外だと思ったのは、終戦からわずか1年で修学旅行が再開したことだ。1946年に山口県立厚狭高等女学校が3泊4日で松江・大社方面へ、そして群馬県立高崎商業学校が1泊2日で日光方面へ、米持参で修学旅行を実施した記録があった。
著者は「人間の成長過程において必要な心身鍛錬のひとつであり、遊びとは一線を画するものであるとの認識が持たれていたからであろう」と推察している。
なお、戦前に関しては、1944年3月に決戦非常措置要綱に基づいて、旅行の制限が閣議決定された。遊楽や物資買い出しなどの不要不急の旅行が禁止された。しかし、4月1日の施行を目前にして旅行者が急増した。
当時の人々が戦時中の困難な時代であっても可能な範囲で楽しみを見出しているたくましい姿をかいま見ることができるなあ。
旅は日頃のストレスをいやすいい機会、心のインフラだ。コロナウイルスに感染しないようにできることをやって、旅をして心身ともにリフレッシュしないと今の時代を生き抜いていけないからなあ。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/761101 -
東2法経図・6F開架:384.3A/Y31d//K
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江戸時代のお伊勢参りに始まり、修学旅行、戦後の農協や社員旅行まで日本の団体旅行の系譜をたどる本。戦後の内容については当時旅行代理店で実際に各種団体旅行の販売や添乗員などを務めていた人からの聞き書きが中心。昭和30年代、新宿西口の高層ビル群がなくまだ浄水場があったころ、地方から夜行バスで早朝に新宿についた団体客がこぞって浄水場の空き地で野グソしていたとか興味深い話が多い。
個人的には戦後の団体旅行についてもっと紙幅を割いてもらいたかったかな。(お伊勢参りなどは他にいろいろ本が出てるし)