漂白される社会

著者 :
  • ダイヤモンド社
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478021743

感想・レビュー・書評

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  • 368||Ka

  • 最近話題になった「フクシマ論」の著者の手になるものとは知らずに読んでいた。そして、読み終わってから、著者のプロフィールを見て、ずいぶん若い人なんだなと思った。というのも、本書に盛られた12編のルポが、ベテランのルポライターの作品ように思えたからだ。
    著者は、本書について、広い意味での社会学の論文、あるいは社会学的な考察による学術的な意義のある書物として理解されたがっているようだが、(著者も許容するように)ルポルタージュ集として読み、優れたルポだと感じた。ルポの対象は、どれも「周縁的な存在」として位置付けられており、そのようなものであることは十分納得できる。何よりも、自分が知らない世界でありながら、決して完全にアンダーグラウンドというわけでもなく、目に入っても見えないか見えないふりをする不可視化されたものを掘り起こしていて、とても興味深い。

  • 裏の人物ですら存在が希薄化される社会。

  • 現代社会とな何か?そんな大きなテーマを社会の隠された部分=周縁的な存在を浮き彫りにすることで探っていく。売春島、ホームレスギャル、生活保護受給者、違法ギャンブル、ドラッグ、偽装結婚、留学生などなど。平穏を装っているような日常が浮かび上がる。

  • 通勤途中の車から降りて
    道端の草むらにしゃがみ込んで
    その時の空を見上げ゛て
    しばし ぼーっ と
    何もせずに 過ごしてみたら

    本書に描かれたさまざまな人たちの
    息吹が聞こえてくるかもしれない

    私たちが暮らしている この現代の
    同じ空の下に
    このような人たちが 暮していることを
    知っていることは
    「今」を生きていく覚悟につながっているような気がする

  • フクシマ論よりも、断然自分はこちらの方が好き。開沼さんの考え方は、サイードに近い。

  • 本書を読んだのは、NHK「無縁社会」の読了直後。ともに生活保護などの社会保障を切り口の一つとしていたのだが、比較して読むことでスタンスの違いが鮮明になって興味深かった。

    本書を読んで「無縁社会」の読了後のもやもや感の原因が分かった。それは、「無縁社会」では、孤独死=100%の可哀想・悲惨・弱者 という図式に当てはめられた構成として捉えられているという点である。
    誰にも看取られないで死ぬことは本当に可哀想なのか?入るお墓がない事は本当に可哀想なのか?確かに悲惨な事例はあろうが、それがすべてではないと私は思う。別にいいじゃんと思う人もいるだろう。

    それに対して、「漂白される社会」では、絶対的な弱者を取材対象としていない。「漂白された」現代社会の中で、見えないものとして扱われている「周縁的な存在」=「グレーな弱者」を取材対象としている。
    買春島・ホームレスギャル・シェアハウスの暗部・転落したサッカーブラジル人留学生・したたかに生きる中国人エステ店経営者。いずれも漂白された新聞社・週刊誌には取り上げられにくい対象である。本書はアングラ雑誌である実話ナックルズの連載をもとにしているという。実話ナックルズ自体が、出版業界からは「周縁的な存在」として扱われていることが非常に興味深い構図だ。

    傍論になるが、社会学者とジャーナリストは近接した職業領域なのではないか。徹底した取材と真実を追究する姿勢は両方に求められるものである。昔からTVのコメンテーターとして新聞記者の編集委員がよく登場しているが、最近は社会学のバックグラウンドを持った人がコメントをすることも増えている。著者である開沼さんも時々テレビに出てくるし、古市憲寿さんなんかは出ずっぱりである。なかなか面白い現象だと思う。

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著者プロフィール

1984年福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。専攻は社会学。現在、立命館大学衣笠総合研究機構准教授(2016-)。東日本国際大学客員教授(2016-)。福島大学客員研究員(2016-)。
著書に『福島第一原発廃炉図鑑』『はじめての福島学』『漂白される社会』他。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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