菜の花食堂のささやかな事件簿 きゅうりには絶好の日 (だいわ文庫) (だいわ文庫 I 313-2)
- 大和書房 (2017年2月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784479306405
作品紹介・あらすじ
「このあたりでは評判らしいですよ。ちょっとしたヒントから真実を見抜く、日本のミス・マープルだって」グルメサイトには載っていない、だけどとっても美味しいと評判の菜の花食堂の料理教室で靖子先生が教えてくれるのは、ささやかな謎と悩みの答え、そしてやっぱり美味しいレシピ。いつも駐車場に停まっている赤い自転車の持ち主は誰?野外マルシェでご飯抜きのドライカレーが大人気になったのはなぜ?小さな料理教室を舞台に『書店ガール』の著者が描き出す、あたたかくてほろ苦い大人気日常ミステリー、第二弾!
感想・レビュー・書評
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『ちょっとしたヒントから真実を見抜く、日本のミス・マープル』こと下河辺(しもこうべ)靖子先生は、ランチのみの<菜の花食堂>を一人で切り盛りする傍ら、月二度、定休日に料理教室を開き講師を務めている。
そして教室の助手を務めるのが語り手でもある館林優希。無償の助手だが代わりに教室で様々なことを学んでいる。
第一作である前作の終盤、娘のSOSで即行動を起こした靖子先生のその顛末を知りたかったのだが、『いずれ時期が来たら』ということで今回は無し。
代わりに靖子先生のとんでもない過去が明らかになった。
このシリーズ、探偵役である靖子先生が60歳ということで年代としては若いがどうしても吉永南央さんのお草さんシリーズと比べてしまう。
お草さんもかなり壮絶な人生を送られた方だが、こちらの靖子先生もなかなか波乱万丈だ。前作でフランス人と結婚していたが離婚したという驚きの過去が分かったが、今回の驚きはそれ以上。詳細は読まれてのお楽しみに。
今回も様々な事件のなぞ解きをしていくのだが、改めて感じるのはなぞ解きそのものよりも、それとどう折り合いをつけるのかということ。
例えばある事件の犯人が知っている人だったら、あからさまに糾弾するのはかえって拗れる原因になって今後の付き合いにも支障がある。
また人を傷つけたことに気付いていない人にどう気付かせるのかというのも難しい。
人への伝え方、そのタイミング、誰から伝えるのか、どう決着をつけるのか、その難しさと大切さを考えさせられた気がする。
特に昨今ではSNSの発達によりそのトラブルも多くある。私自身も改めて考えさせられた。
靖子先生が優希と一緒に何日もかけて考えたレシピやその料理をアッサリ持っていかれたら『いい気持ちではいられない』どころではないだろう。
同様に、作家さん方が紡ぐ文章も表現も作家さん方が懸命に考え抜いて生み出したもの。
レビュー投稿では作品内の文章を抜き出すときは括弧書き(『』)で囲むよう気を付けているが、改めて大切に扱わねばと気を引き締めている。
作品に戻るが、シリーズとしてはちょっとした動きがある。香奈が新たなメンバーに加わったことで焦る優希だが、彼女には彼女の能力があり生かせる場所がある。
そしてその場が広がった<菜の花食堂>の今後にますます期待したい。
※シリーズ作品
①「菜の花食堂のささやかな事件簿」
レビュー登録あり -
菜の花食堂シリーズの第2弾。
今回も季節の旬のもので丁寧に料理をする下川辺先生。
そして料理だけじゃなく、毎回ながらちょっとしたヒントから真実を見抜くのは、さすが名探偵というしかなくなってきたなぁ…と思える第2弾目。
きゅうりには絶好の日は、自転車の謎をサクッと解決。差し出がましく、口を挟むわけでもなく伝える人とタイミングが大事だと教えてくれる先生。
ズッキーニは思い出すは、母親との思い出がないはずだと…記憶にもないと思っていたが、食べることに関しての全ての記憶は母親が教えてくれたものだったという…ちょっと感涙もの。
カレーは訴えると偽りのウドはどちらも盗まれたという、ちょっと悔しいなショックだなと思えるもの。
ピクルスの絆は、下川辺先生のことが少しずつわかり、食堂に関しても明るい未来を感じる。
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大和書房HP連載のきゅうりには絶好の日、ズッキーニは思い出す、カレーは訴える、の3つの連作短編に加筆修正し、書き下ろしの偽りのウド、ピクルスの絆、を加えて2017年2月大和文庫刊。先生のアシスタントの優希さん視点で語られる靖子先生の名推理が楽しい。優希さんの金銭的報酬無しでのアシスタント仕事はきついと思います。前作でのマネージャー仕事の話はどうなったんでしょう。気になって次巻へ進みます。
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「菜の花食堂のささやかな事件簿」シリーズ2冊め。
食堂のオーナーさんが日常に潜む謎を鮮やかにときます。
「菜の花食堂」は東京郊外の住宅街にある小さなお店。
地元の野菜をたっぷり使ったランチが評判です。
オーナーの靖子先生は、定休日に月2回、お料理教室も開いています。
ひょんなことから助手となった優希は、毎回楽しみに通っていました。
若い優希は主人公というより語り手ですね。
いつも駐車場に停まっている赤い自転車の謎。
近所で催された野外マルシェに出店したところ、ご飯も抜きのカレーだけが売れ始めた理由は?
ウドの料理法を教えてほしいと頼まれて考えたレシピが他で発表されて‥?
犯罪事件というほどじゃないかもしれないけれど、たしかにこれはちょっと問題よね!というケースばかり。
野菜の基本的な扱いからちょっと変わった味付けまで、毎日の食事にすぐ作れるメニューを教えてくれる靖子先生。
おだやかで優しく、知恵の宝庫みたい。
優希が慕うのもわかります。
1冊目では弱々しかった優希も、揺れながら少しずつ成長してくのでしょう。
靖子先生の内心は語られませんが~
最後のエピソードでは、靖子先生自身の問題がちょっと出てくるのが、お約束?
教室にも変化があるかもしれませんね。
続きも楽しみです☆ -
シリーズ第二弾。
前巻では靖子先生が慌ただしくフランスへ旅立ったところで終わったので、本書でその後の話が書かれると思っていたのですが、何事もなかったかのように第一話から第三話と進み、第四話「偽りのウド」で、サラっと触れられた程度でした。相変わらず、謎の多い靖子先生です。
因みに第五話「ピクルスの絆」では靖子先生を“日本のミス・マープル”と例えていましたが、クリスティーのミス・マープルものをコンプリートしている私からみると、扱う事件の質は違うけど、どちらも洞察力の鋭いおばさんということで(ミス・マープルはお婆さんですが)、“わからんでもない”という感じです。
第五話で靖子先生の背景がちょいと明らかになり、それに伴う展開で、菜の花食堂で販売部門も加わるっぽい感じになってきました。新たに弟子入りした香奈さんと優希は上手くやっていけるのかな。。等、今後の菜の花食堂も気になる所存です。 -
靖子先生の料理教室で起こるちょっとした事件。
う~ん、事件とまではいかないちょっとした出来事。
靖子先生が解決してみれば、それは全て”あたたかい謎”
5編の連作短編集
■きゅうりには絶好の日
■ズッキーニは思い出す
■カレーは訴える
■偽りのウド
■ピクルスの絆
どの物語にも、靖子先生のお料理が登場。
それもまた楽しみの一つ。
「ピクルスの絆」では靖子先生の過去がちょっと明らかになって…
新たな展開が期待されるところ。
第3弾も既刊なので、さっそく手に入れなくては。 -
こんな食堂が近くにあれば行くのに~(*゚∀゚)前の巻を読んだ時と気持ちは変わらず、料理教室ではなくランチ通いのために(^^;)しかしお話は料理教室に持ち込まれる「ささやかな事件」を先生と助手が解決だ!と軽い気持ちで読んでいると、最後に資産家の相続問題という殺人事件にも発展しそうな話が出てきてオロオロ(;´д`)結局、殺人事件は起こらなかったけれど、先生の過去が少し明らかに(^^)
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すっごい面白い!
どんどん菜の花食堂の世界に入り込んでしまう!
料理は家事の中でもっとも頭と身体を使う労働
主婦にとっては日々逃れようのない義務なのだ
この文章グッときました
続きもぜひ読みたい!
あの司馬遼太郎も、自己の作品のなかで、『菜の花の沖』という作品が最...
あの司馬遼太郎も、自己の作品のなかで、『菜の花の沖』という作品が最も好きだ、と、語っていたらしいです。
母親が菜の花和えを、季節になると作ってくれますが、春の季節を身体に取り込むような味で、とても清々しいですね。
コメントありがとうございます。
菜の花の川野さんの思い出は、興味深いですね。
作品の舞台が武蔵野ですから...
コメントありがとうございます。
菜の花の川野さんの思い出は、興味深いですね。
作品の舞台が武蔵野ですから、文学的な面影があります。
おっしゃる通り、とても人情味豊かな作品です。
「菜の花和え」は私も好きです。いいお母様ですね。
よかったら読んでみてください。