大人への条件 (ちくま新書 117)

著者 :
  • 筑摩書房
3.15
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本棚登録 : 74
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480057174

感想・レビュー・書評

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  • 求めてたものとは違ったけれど、これから大人になっていく上で、今まで歩いてきた道のりを見直すきっかけとなった気がする。

  • 背ラベル:371.47-コ

  • 子どもが大人になるということは、単なる個人心理学的な自我の発達・完成ではないと著者は主張します。こうした考え方は、人間を他者から切り離された個人とみなす先入観から生じたものです。大人になるとは、個人としての自覚を深めていくことであり、社会人としての責任や義務がわかるようになることであり、さらには、親や友達、異性との情緒的ないしエロス的な関係を再構築するということを意味していると、著者は主張します。

    かつてさまざまな社会のなかには、子どもが大人になるための通過儀礼が存在していました。しかし、近代社会はそうした明確な通過儀礼をそなえておらず、子どもが大人へと成長することは、個人の内面的な発達にゆだねられています。この事態を著者は、「隠された通過儀礼」と表現します。しかし、それが隠された内面的な過程だとしても、人間の重要な課題であることには変わりがありません。むしろ内面化され隠されていることで、そうした成熟を遂げることに困難を感じている現代の若者たちの問題が見えにくくなってしまっているのではないかと著者は指摘します。

    本書ではこうした考えに基づいて、子どもから大人へと向かう内面的な成熟のプロセスが分析されていきます。著者は、宮崎駿の『となりのトトロ』や芥川龍之介の『トロッコ』、つげ義春の『紅の花』、大江健三郎の『不満足』などの作品を例に、幼年期から青年期にかけてひとが経験する内面的な成長のテーマを抽出しています。

  • 大人になれない子供について論じた本。なぜ、大人になれない子供が、近代においてでてきたのか。そして、この時代に大人になるためには、何が必要なのか。そうした問いに、筆者の自身の体験を掘り下げ、答えようとしている。この問題には、たとえば、家庭内暴力や拒食症といった精神病理がある。そうなってしまう理由は、この前まで実家に暮らしていた私にとってなんとなく理解できる。ややもすると、 家庭での団欒は、閉鎖的な空間において一挙手一投足を監視されているような気分になる。それは愛という感じもあるのには間違いないが、こと自立という観点においては、障害になりうる。家事洗濯がされること、金を使うことが当たり前という何かを与えられるという感覚が植え付けられる。その結果、他人に何かをしてもらうことを軽んじてしまう。この社会性のなさは、家族外の人との軋轢を生むことになる。
    ところで、クリエイティブな人は子供っぽいというが、他人に依存しっぱなしでは、なにかをつくることはできない。精神病という観点から創造性について検討した話の中で、河合隼雄は、創造的な人は意外と他人にどうみられるかを意識していると述べていた。ユーミンも歌っているときに、もう一人の自分が空中から眺めている感覚だそうだ。イチローも同様のことを言っている。つまり、他者からどう見えるかという他者意識と創造性は関連が強いのだ。
    本書では大人への条件を、対人コミュニケーションスキルを指していたが、私の考えでは他者意識をもつことだ。社会で一人前と認められるには、他人に対して何らかの付加価値を提供することが必要だ。その付加価値は創造性から生まれる。創造性を発揮するには、他人からみた自分の振る舞い方を把握し、それに対してアクションをとっていくことが大事なのだ。大人への条件は、私なりの考えでは、自身の行いを客観的に評価できる目をもつことだ。

  • 被災ぶりに小浜さんの本を読みました。
    理解しようとすると、読むのに時間がかかります。
    それでも、きちんと理解できているのか???ですが、面白かったです。
    大人への変容について考察されています。

  • 難しいけど面白い。

  • [ 内容 ]
    子どもから大人への境目が曖昧ないま、「大人になる」とはどういうことなのか。
    人はどのように成長の自覚を自らのうちに刻んでいくのか。
    子どもが成長していくなかでの親との関係、思春期の性の目覚めや自立の問題などを、文学的素材や社会的テーマを通して考え、現代社会において大人になるということにどんな意味が潜んでいるのかを浮かび上がらせる。
    自分はなにものかを問い、大人になりきれない思いを片隅に抱くすべての人におくる、新・成長論。

    [ 目次 ]
    序章 子どもへの接近
    1章 成長のとらえ方
    2章 記憶と身体
    3章 成長の自覚―気づくということ
    4章 成長の逸脱―思春期・青春期の問題

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  • 恥ずかしいレビュー削除、2件目。
    評論文は嫌い(マテ

    評論を読んで自分が大人だという自覚を持てるようになるものなのか。

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著者プロフィール

1947年、横浜市生まれ。
批評家、国士舘大学客員教授。
『日本の七大思想家』(幻冬舎)『13人の誤解された思想家』(PHP研究所)、『時の黙示』(學藝書林)、『大人への条件』(ちくま新書)、『日本語は哲学する言語である』(徳間書店)など著書多数。自身のブログ「ことばの闘い」においても、思想、哲学など幅広く批評活動を展開している。(https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo)

「2019年 『倫理の起源』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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