ヒトの心はどう進化したのか: 狩猟採集生活が生んだもの (ちくま新書 1018)
- 筑摩書房 (2013年6月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480067203
感想・レビュー・書評
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第一部、第二部と、人間の特徴や歴史的経緯といった人類学の入門書としての趣が強い。
教科書レベルのことから、初めて読むにはちょうど良くもあるのだけど、若干物足りない感。
個人的には山極寿一、尾本恵市の『日本の人類学』という同じ筑摩から出ている新書の方が面白かったので、紐付けておく。
タイトルから想像したのは第三部で、人間の心と言葉、記憶がどんな風に結び付いているかということが書かれている。
ここが中心だったら良かったかな、と思う。
「ほかの霊長類と比べてみても、ヒトの平均寿命は、抜きん出て長い。ほかの動物の場合、生殖能力を失う時期が生物としての役目を終える時期にほぼ相当することがほとんどなのに対し、ヒトの場合には、たとえば女性は閉経しても、その後数十年は生きる。」
で、著者は祖母が娘の出産子育てに関わるからだという仮説を紹介し、ツッコむのだけど。
「イクメン」ならぬ「イクババ」?
というか、動物にとって生殖が生きることの最大目的なら、人間が生きるってなんなんだろうと結構深く悩む。
政治家が、産まない女はどうのこうの、と顰蹙買うようなセリフをのたまっていらっしゃったが、そういう人がこの「イクババになり得るから、閉経しても生きてんだよ」説を支持するんだろう。
「狩りをする動物や社会を構成する動物、なかでも一人前になるのに時間がかかるような動物は、よく遊ぶ。……つまり、子ども時代に、狩りのしかたや狩りの対象を覚え、仲間とうまくやってゆくための、あるいは敵に対処するためのスキルを習得する。」
怪我をすることや、傷付くことも、こうしたシミュレーションの中で学んでいく。
初めて聞いたことではないけど、そう考えると今の遊びって「本能的」ではないことになるのか。
いや、シミュレーションがそもそもヴァーチャルな世界に向けられていることが間違いなのか。
それとも、一人であることが問題なのか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
300円購入2020-03-08
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ふむ
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新 書 S||467||Suz
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心理
サイエンス -
「サピエンス全史」を読む前の肩慣らしのような感覚で読んだ。
人間の脳が300万年間の石器時代-狩猟採集時代に最適化されたスペックのまま、かくも複雑で大規模な社会を(問題は多いながらも)何とか運営しているのはすごいことだと改めて思う。 -
ラスコーの洞窟などに書かれた壁画は、社会の教科書で見る限りは、小さな落書きかと思っていたが、実際にはヒトの身長の何倍かの高さに描かれた大きなものだった。いったい、誰が、何の目的で、どうやってそんなものを描いたのか。男女の差は、我々の祖先が狩猟採集生活を送っていた数万年から数百万年の間に培われたものだった。いくらこれだけ環境が大きく変化している時代と言えども、ヒトの運動能力、つまり脳のしくみはそれほど一気に変化するものでもないのだろう。ヒトをヒトたらしめているもの、それがいわゆる「心の理論」というものだろう。相手の気持ちや、相手のおかれた立場を理解できる能力。それは、4、5歳ころから身につくものという。それ以前は、まだヒトとは呼べないのかもしれない。「心の理論」があるからこそ、ヒトは文学を楽しむこともできる。登場人物に感情移入ができる。演劇や映画も同じことだろう。この当り前と思っていることが、他の動物にはできない。人間独自の能力なのである。こうしたことをきちんと理解していくことで、ヒトはいかにヒトになったかが分かってくるのだろう。
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ヒトの心的特徴をヒト以外の生物との比較の中で的確に指摘し、その進化的背景をまとめた書籍。心的特徴といっても、運動や形態とも関係があることが多いので、生物としてのヒトの特徴とその進化をわかりやすく紹介した本だと言える。やや総花的なきらいはあるが、教科書的な意味でよくまとまっている。ひとつひとつの特性については記述が淡白で少し物足りないが、教科書として使うには悪くない。