動物農場: 付「G・オーウェルをめぐって」開高健 (ちくま文庫 お 67-1)
- 筑摩書房 (2013年9月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480431035
感想・レビュー・書評
-
『1984年』が面白かったので、こっちも読んでみた。
社会は権力を必要とし、権力は牽制機能が無ければ堕落していく、という理を、寓話として語る傑作。
今読むと、豚の独裁者ナポレオンが示す人物として思い浮かぶのは、スターリンであり、北隣の独裁ファミリーであり、毛沢東であるわけだが、本作が発表された時点で共産主義独裁者として存在していたのはスターリンだけなので、スターリンへのあてこすりかなのか。
七誡がちょっとした変化でグロテスクに本質を変えていく様が、何だか生々しい。
例、
第五誡
オリジナル: いかなる動物も、酒を飲んではいけない。
改正後: いかなる動物も、酒を飲みすぎてはいけない。
第六誡
オリジナル: いかなる動物も、他の動物を殺してはいけない。
改正後: いかなる動物も、理由なくして他の動物を殺してはいけない。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とても面白かった!動物達による理想国家建国から次第に恐怖政治へと変貌していく過程がとてもスリリングで一気に読んでしまった。豚達体制側の詭弁にイライラしたけど、民衆も自分で判断する頭を持たなければいいように利用されてしまうことが非常にリアルでした。
-
再読。
大人の寓話、いろんな読み方ができる。個人的には作者の意図とは違うかもしれないが、社会主義体制への批判の書として読んだ。
権力の腐敗がどのようにして起こるかを、それこそ中学生にもわかりやすく描いている。
本書の半分以上を占める、開高健のオーウェル論は「1984」を読んでないと理解が難しい。 -
半分くらいで読む気起きなくなって、ベッドの横に投げ飛ばした
-
1984より小説としての完成度は高いとみんなが言うのに納得
ソヴィエトを超えて全ての革命に当てはまる -
開高健をして、全体主義・独裁の完璧な風刺とまで言わしめるクオリティ。
どう読んでもソ連の風刺なんだけど、それだと読みが一歩及んでいないらしい。もっと普遍的な全体主義的特性を読み取れなければいけない。
革命後レジームの中で栄達する者、翻弄される者、悲劇的最期を迎える者、動物に与えられる役割のすべてが現実と符合する。国家経営がおかしな方向に向かっていることに気付いても封殺されるか、統制を甘んじて受け入れるかしかないから自浄しない。物語は諦観を見せつつ幕を閉じるが、結局ナポレオン体制も行き着くところまで行くのだろう。
本書が完璧すぎる裏返しに、開高の情熱は「失敗作」である『1984年』に向いていた。彼の語るニュースピークの話にすっかり心を掴まれてしまったので、いずれそちらも読んでみたい。 -
なるほど。こわい話だ。
そしてメルヘンでも他人事でもない。