黒い塔の恐怖 (創元推理文庫―カー短編全集 5  (118‐21))

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118211

感想・レビュー・書評

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  • 本書はカーの長編小説以外の精華を集大成したものです。
    傑作怪奇譚、ラジオドラマ、ホームズもののパロディ、推理小説論等、多方面の業績を集め、巻末に詳細な書誌を付した本巻はカーの足跡を辿る上で逸する事の出来ない1冊でしょう。

  • ラジオドラマ脚本、オカルト小説、ホームズパロディ(戯曲)、エッセイ、乱歩のカー問答など、寄せ集めではありますが、どれも満足度高いです。
    エッセイの「地上最高のゲーム」ではカーの本格ミステリ論が展開されてて良い。今でも通用する。この中で、『平均的な推理小説のパターン』としてカーが述べてる内容があまりにズバリ過ぎて、笑いが止まらない。
    ホームズパロディーの悪ふざけっぷりや、オカルト小説の『いかにも』な演出など、やっぱり凄いですよ、カー。
    (初心者がこれから入ると「なんじゃこりゃ」な短編集ですがね…マニア向けですな…)

  • カーの読了本については『死者のノック』を以って全て感想を挙げたと思っていたら、これを忘れていた。東京創元社が独自に編んだ短編集。構成はカーによるラジオドラマ脚本とノンシリーズの短編、エッセイと多岐に渡るが、なんと云っても本書ではミステリ書評家に今なお語られる江戸川乱歩によるエッセイ『カー問答』が収録されているのが目玉だろう。

    さて独自に編んだ短編集というのはごった煮感が強く、マニアのためのコレクション・アイテムのような趣があるが本書もそうで、カーが世に発表した諸々の文章を完全網羅するという意義は買うが、作品としてどうかと問われれば、玉石混淆だろう。なぜならば今までの短編集でもそうだったが、カーは(というよりもほとんど昔の作家はそうなのだが)短編のアイデアを基にした長編作が多く、本書では「死を賭けるか?」や「あずまやの悪魔」がそれに当るし、また既出の短編の別ヴァージョンという作品もあり(「死んでいた男」、「黒い塔の恐怖」)、何度も同じ話を読まされているような感じがしてしまう。
    さらに本書では当時のアメリカ推理作家協会の面々で催されたシャーロック・ホームズのパスティーシュを題材にした寸劇の脚本、そして乱歩によるエッセイ「カー問答」が収録されていることからも短編集というよりも彼の功績を残すための資料的価値の方が勝っている内容である。私にしてみればこの事に対して否定的な立場ではないが、では作品としてどうかと問われればやはり出来栄えは悪いとしか評することが出来ない。

    しかしこの余分な収録物と思っていた「カー問答」が本書では最も面白かったのは確か。これが収録され、読むことが出来たことが評価を2ツ星から3ツ星に上げている。つまり私もマニアということなのだ。
    散文的になってしまったので纏めると、貴方がコレクターならば、もしくはミステリの求道者ならば本書は必携の書であろう。しかし単なるカーの、ミステリの一読者であるならば本書はお勧めできない。そういった意味で勉強のための1冊と云っておこう。

  • 2008/12/16購入

  • 『死を賭けるか?』
    遊園地のアトラクション幽霊水車場でベティの乗るゴンドラに乗り込んだペンダレル。継父のデストリーとの賭け。半年以内にペンダレルを殺害すると予告したデストリー。最後の1日に死体となって発見されたデストリー。毒殺か?

    『あずまやの悪魔』
    30年前に起きた射殺事件。被害者はジェリー・ケニヨン。あずまやで殺害されたケニヨン。事件当時弁護士のパーカーと会話をしていた妻イザベル。イザベルと対立する女中キティ。

    『死んでいた男』
    病気療養の旅行から帰国したニコラス・レッシングが見たのは自分の死亡記事だった。自分の家に帰宅するまでに何者かに尾行されるニコラス。弟のスティーンブンの陰謀。

    『死の扉』
    旅の途中に雨に襲われ森に迷ったピーター・メイナード。途中であった2人の農夫に教わった宿屋に向かったピーター。彼を止めることを拒否する宿屋の主人。死の伝説の残る宿屋。夜中に襲われるピーター。翌日死体となって発見された宿屋主人の夫婦と100年前の死体。

    『黒い塔の恐怖』
    トムの婚約者ルイーズの姉アンの婚約。婚約した娘が泊ると目をつぶされて殺されるという伝説の残る黒い塔。死体となって発見されたアン。屋敷の主人ヘンリー・モーントレイク。トムと友人のフェンウィック卿の捜査。双眼鏡に隠された秘密。

    シャーロック。ホームズのパロディ
    『コンク・シングルトン卿文書事件』
    グラッドストーン首相の暗殺未遂を捜査するように依頼する書簡と女王の親書を受け取ったホームズ。死者としてやってきたシングルトン卿の謎。

    エッセイ
    『有り金残らず置いてゆけ!』

    『地上最高のゲーム』

    『ジョン・ディクスン・カー書誌』
     ダグラス・G・グリーン編

    『カー問答』
     江戸川乱歩

    船橋図書館

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著者プロフィール

別名にロジャー・フェアベーン、カー・ディクスン、カーター・ディクスン。1906年、アメリカ生まれ。新聞や学生雑誌への寄稿を経て、30年に「夜歩く」で作家デビュー。長年の作家活動の業績から、63年にアメリカ探偵作家クラブ賞巨匠賞、70年には同特別賞を受賞した。1977年死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョン・ディクスン・カーの作品

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