かわいい女 (創元推理文庫 131-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488131029

感想・レビュー・書評

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  • 多少わかりにくいかもしれません。

  • 本が売れない時代に多少なりともネームバリューがある作家の力を借りて売り出すという意図は理解できる。だが、長年ファンに親しまれたタイトルを排して「水底の女」などという思わず虚脱してしまう邦題を付けるセンスには辟易する。「長いお別れ」を「ロング・グッドバイ」という捻りの無いカタカナ表記にし、「さらば愛しき女よ」を「さよなら、愛しい人」と変えてハードボイルドの硬派なニュアンスを殺す。この統一感無きふやけた一連の改題に、新訳を担当した〝文学者〟がどれだけ関わっているかは不明だが、「僕の愛するチャンドラー」を全面に押し付けけてくる〝村上春樹〟というブランドの驕りが表出しており不快だ。いくら原文に忠実であろうとも、翻訳者の柔な顔が見え隠れする文章を、我慢して読み進めることなど到底出来ないため、今後も硬質で上質な清水俊二らの「旧訳」を堪能するしかない。
    のっけから私的な愚痴を並べてしまったが、現在の出版界で海外の名作/古典を新装版/新訳として「新しく」売り出す量が以前と比べて特に目立つのは、読書という娯楽が既に一部の「マニア」向けでしかないことの証左なのだろう。小説の新作はベストセラー入りしなければ読まれない。映画やテレビドラマの原作でなければ見向きもされず、そもそも例え読まれたとしても、後が続かない。ハードボイルド小説の立役者であるチャンドラーの諸作が、この国では著名な〝村上春樹〟が関わることで新規読者を獲得すること自体は喜ばしいことだが、他の秀れた作家/作品に繋がることのない一過性のイベントとして終息するのが落ちだろう。村上の推薦する海外作家を読んでさえすれば、いっぱしの〝通になれる〟という極めて狭く貧弱な読書体験にどれほどの価値があるというのか。こなれていない旧訳を現代語に直し、スマートな改訳を施すことは歓迎するが、ことチャンドラーの作品に関しては、上記の如き思いが強い。

     本作は村上版でいえば「リトル・シスター」となる1949年発表の長編第5作「かわいい女」。ファンの間でも最も人気のない作品だが、チャンドラー自身が気に入っていないことも要因の一つなのだろう。割と知られていることだが、最大の欠点は、読み進めていく中で明らかとなる構成上の破綻にある。依頼者とのやりとりの中で、その後の展開に繋がる重要なシーンが欠落しており、完全な推敲が為されていない作品となっている。要は不完全なままに上梓された作品なのだが、そこは腐ってもチャンドラーで、物語の流れを気にしなければ結構楽しめるというのも、やはりハードボイルド小説ならではの人物設定や芳醇な味わいの情景描写などに惹かれてしまうからだろう。
    いわば、本作にはチャンドラーの長所と短所がはっきりと表れているため、その特質を掴みやすい。
    ハリウッドの脚本家としては大成せず、恐らくはこの時期スランプに陥っていたチャンドラーがマーロウの台詞を通して自己憐憫ともとれる嘆きを物語後半で吐いているのも興味深い。

  • 私立探偵フィリップ・マーロウの五作目。

    田舎から出てきた娘が兄を探してくれと頼みに来る。
    女優が登場し華やかなハリウッドをさまよう。

    なんかすべてに淡々と書かれているので、
    重要なシーンも読み飛ばしてしまうことに気がついた。
    途中で話がわからなくなるぐらい。

    かわいい女の変化が怖い。

  • 話が追えない……。事件は入り組んでいて一言では言えない。ついでにオファメイとメイヴィスが後半まで同一人物だと思ってしまってたことも人には言えない。ていうかリーラって誰だよ……。とか思っても言わない。そう、雰囲気を掴むことがこの本を読むための冴えた方法だ。タフな男は警察の尋問には負けない。美女に迫られてもたぶらかされない。死体を立て続けに発見して心が参っても、薬を盛られても、ウイスキーをあおらなければならないのだ。

  • 学生時代以来、久々に読んだチャンドラー。時は1940年代末、ところはハリウッド。行方不明の男を追って飛び込んだ映画の都に渦巻く愛憎と欲望。当時の米国やハリウッドの雰囲気も、マーロウの独白の端から感じられ、時代や米国社会への批評も読み取れるのも楽しい。

  • よくよく人物関係を整理しながら読まないと、結末が少しわかりにくかったかもしれない。
    この一連の事件のマーロウは、どちらかというと『プレイ・バック』に近い気がする。
    というより、きっと気のせいだ。

  • ずいぶん前に買いおいた古典のハードボイルド小説。雰囲気はよかったけれど、台詞が誰のものか分かりにくかったり、話が無駄に複雑な印象を受けた。外人名を覚えにくいということもあったとは思うけれど。

  • 今ひとつ人物関係と殺人の動機がわかりにくかった。全体に切れが無かった。

  • マーロウが見せた、派手な活躍という意味ではこの作品が一番・・・なのかなぁ。ハードボイルドではあるけれど、既存の探偵者を半分くらい含んだ感じ。

  • うーん、記憶にない。

  • 『大いなる眠り』から『湖中の女』までチャンドラーはほぼ年1作のペースでコンスタントに作品を発表していたが、本作は6年と非常に長いスパンを空けて発表されている。
    これには理由があって、その間、チャンドラーは脚本家としてハリウッドに招かれ、働いていたのだった。この頃の経験について、チャンドラーはあまりいい印象を持っていないことをエッセイや自伝で吐露しており、それがこの作品に影響がもろに出ている。

    余談になるがエラリー・クイーンもハリウッドの脚本家をした後、やはりハリウッドを舞台にした作品をいくつか書いている。やはり当時の作家にとってハリウッドというのは「事実は小説よりも奇なり」を地で行く特殊な世界であり、作品の題材として書かずにはいられない物があったのだろうと思われる。
    本書は今までLAを舞台にしながら一切触れる事のなかったハリウッド映画界の内幕が舞台となっている。

    若い娘の依頼で兄の捜索を引き受けることになったマーロウは兄のアパートに行くと、そこで管理人が殺されていた。知らない男から電話がかかり、男が指定するホテルに行くと電話の相手と思しき男は殺されており、サングラスをかけ、銃を持った女に気絶させられる。
    女の正体はホテル探偵が見ていた車のナンバーから判明する。売り出しの若手女優だった。マーロウはその女優の許を訪れて問い質すが、女優は全てを一切否定する。
    事務所に帰るとギャングが訪れ、事件から手を引くように脅される。体よく撃退するが、いつの間にかマーロウは自身がきな臭い事件にどっぷり浸かっていることに気づく。

    とにかく複雑な内容の作品。場面転換も多く、プロットも二転三転するのでストーリーを追うのに苦労し、内容について十分理解していない。メモを取りながら再読する必要がありそうだ。
    上に書いた内容どおり、どこにでもありそうな探偵を主人公にした映画のような展開を示す。特にハリウッドに関する筆致は終始異様で常識外れな連中が跋扈することをあげつらう形になっており、チャンドラーにとってハリウッドは伏魔殿のようにどうやら映ったようだ。

    作品の出来はあまりよくない。本を読まない人がイメージだけで描くハードボイルド小説の典型のような作品である。ただ本書でも隠された人間関係の歪みが最後に解る。今までロスマクへの影響と繰言のように述べていたが、逆にロスマクはチャンドラーの後継者たらんとしたことが解る。
    読んでいる最中、本書が一番詰まらなかった。早く終らないかと思いながら読んでいた。確か最後に読んだ長編が本作で、既に飽きが来ていた事もある。でもそんな作品でも最後に琴線に触れる名文が出ることで評価が凡作から佳作へ上がるのだから、まさにこれはチャンドラーマジックと云えるかも。単純に私がチャンドラーの文体が好きなだけだから、万人がそうだとは云えないけれども。

  • アメリカンジョーク、はぐらかすような会話、誰が何を言っているか分からない。この手の話は慣れが必要だ。

  • フィリップ・マーロウ・シリーズ

    兄を探して欲しいとやってきた依頼人・オファメイ・クェスト。兄のオリンの住んでいたアパートを訪れるが・・・。謎の住人ヒックスとの会話中に殺害された管理人クローゼン。死の直前クローゼンが電話をかけた医者を訪ねるが・・・。殺害されたラガーディ。ラガーディの正体。ハリウッドの女優メイヴィス・ウェルド。彼女とオリンの関係。殺害されたオリン。

     2010年10月16日読了

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2024年 『プレイバック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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