わらの女【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488140281

作品紹介・あらすじ

大資産家の妻を目指して、知性と打算の見事な結晶の手紙を送ったドイツ人女性ヒルデガルト。手紙が功を奏してカンヌに呼ばれた彼女は、資産家の妻の座を前に秘書の男から、ある申し出を受ける。そこには、思いも寄らぬ企みが隠されていた。これ以上ないほど精緻に仕組まれた完全犯罪小説。これからこの一冊に出会う皆さんは幸せです。素晴らしい楽しみが待っています。ミステリ史上に燦然と輝くフランス発の傑作ミステリを新訳で。

感想・レビュー・書評

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  • 新聞の求縁広告で大富豪との結婚をはたしたヒルデガルト。第二次世界大戦のハンブルグで親兄弟を失い、たったひとりで翻訳の仕事でかつかつの生活をしていたヒルデガルトは経済的に安定したい、という夢がかなったかにみえたが・・  後半からの急展開にページをめくるのももどかしいくらいだった。

    「わらの女」とは藁人形、操り人形の意味。題名が中身を暗示していた、と最後のほうでわかるのだが、!!それはないよ、みんな幸せになってほしいんだけどな、悪者は誅されなければ、と思わずにはいられなかった。著者カトリーヌ・アルレーは1924年パリ生まれ。発表は1954年、まだまだ戦争の残禍がのこっていたのだろう、それに主人公と年齢も同じような設定。カトリーヌ自身が戦争で感じた思いを作品にしたのかな、とも思った。

    1964年にジーナ・ロロブリジータ、ショーン・コネリーで映画化されている。小説でヒルデガルトは毅然とした感じを受けるのだが、配役とあっている気がする。ショーン・コネリーは富豪の秘書役。これもあってるかも。小説では富豪とは他人だが映画では甥になっている。

    1954発表
    2019.7.31初版

  • 1954年に執筆されたということで、古典としての普遍的な良さも感じつつ、ミステリーとしてだけでなく、人間ドラマとしても、良くできた作品だと思いました。

    皮肉にも、主人公「ヒルデ」の人生は、本人が望んでいたようなストーリーに展開していき、これを教訓として反映させるには、あまりにも遅すぎた感があるとも思ったが、私的には複雑な心境もある。

    これは小説だから、後から冷静に再読すれば、確かに突飛な事態で夢のような出来事だと認識できたかもしれないが、気付かなかった場合も充分にあると思う。
    これに関しては、犯罪者側の、人の心理状態につけこむ巧みさも感じられ、正直、寒気を覚えた。

    また、ヒルデの終盤の展開について、丁寧な内面の描写や、戦時下のドイツの事情も合わさりながら、上記のこともあって、自らの人生であるかのように入り込んでしまった。

    「どんな出来事も、それを体験した個人にとっての真実があるだけで、普遍的な真実などありはしない。」
    の一文に、考えさせられ、人生、先はどうなるか分からないなあと感じるのは、色々な状況があることを、改めて思い知った。

  • 一気読み まあ細かいことは気にせずに

  • 半世紀ほども前の作品ですが翻訳が新しくなっているそうで、読み易くテンポの良い会話を楽しく読むことが出来ました。
    それにしても主人公・ヒルデには同情を禁じえません。確かに彼女も褒められたものではありませんが、私だって騙されるよ…

  • ★4.5
    始まりは新聞の求縁広告、「当方大資産家、良縁求む」。今では考えられない設定だけれど、本書が執筆された1954年当時の文化が知れて面白く読めた。が、ヒルデが担わされる役どころも、黒幕の本当の狙いも、かなり序盤から分かってしまう。それでも、ヒルデが絶体絶命のピンチから大逆転を見せてくれるだろう、とページを繰る手の進むこと進むこと。そんな中、迎えたラストの絶望感たるや!ただ、見事なまでに完成されたラストで、これ以上のラストはないと思える。会話のテンポが小気味好く、流れるような文章も魅力的。新訳に感謝。

  • 1954年発表
    原題:La Femme de paille

  • 結末全く覚えていなかった。今となっては成立しないだろうが。

  •  偶然にも生まれる前の小説を続けざまに読んでいる。こちらはピエール・ルメートルの訳者・橘明美による新訳がこのたび登場。古い作品ほど、新鮮に見えてくるこの感覚は何なのだろう?

     1960年代にフレンチ・ノワールが日本の劇場を席巻したのも、下地としてこのように優れた原作があったからなのだろう。少年の頃に劇場や白黒テレビで触れたそれらの映画を、大人になって改めて映画、小説などでノワール三昧の一時期を送ったものだ。本書はノワールでありながら、それだけではない。言わばノワール・プラス・アルファな作品なのである。ノワールの特徴である「救いなき結末」を描き切るのか? という行き止まり感に加え、見事に構成される完全犯罪の機微をも小説の題材としている故である。

     ページを開いた瞬間から、読者はヒルデガルト・メーナーというヒロインの視点で、救い亡き現実からの脱出願望にとことん付き合うことになる。ぱっとしない日常から脱出するために、大富豪の妻の座を夢見て、新聞の求縁広告を日々探す女性の視点で。知的に。微に入り細を穿って。

     とある広告主をヒルデガルトは捕捉する。相手も乗ってくる。しかし面談にこぎつけたはずの相手は、当の大富豪本人ではなく、結婚候補者を見極めるタスクを背負った秘書であった。二枚目で紳士然としたアントン・コルフである。

     様々な事情を、知らされてゆく。大富豪の扱いづらい性格。秘書の真の目論見。罠をしかける側なのか仕掛けられる側なのか、見極めのつけにくい複雑なコンゲームが展開する舞台は、大富豪の乗る航海中の豪華客船。

     地中海から大西洋へ彼らの野望を乗せて船は進む。そしてニューヨークへの上陸。大富豪の夢のような屋敷に足を踏み入れるヒルデガルト。その直後のあまりに思いがけぬ急展開。運命に翻弄されるヒロイン。謎にさらに謎が重なる。罠にさらに罠が重なる。それぞれの運命が転がる。警察の介入。追及者たち。

     現代でも十分に通用するであろう、見事な仕掛けだらけのプロット。全編を貫くヒルデガルトとアントンの野望と絶望。この物語はどこへ行き着くのか? 救済は? 命は? 

     日常に転がるちょっとした欲望から、こんなにも遠いところまで連れてゆかれるストーリーテリングを含めて、まさに時代を超えてきた名編と言えるスリラーが本作である。

     この作品は、ジーナ・ロロブリジータとショーン・コネリーが主演で映画化されている。ぼく自身は、ずっとこの二人の役者をイメージして読んでゆくことができた。誂えたようにぴったりの役柄であったと思う。フレンチ・ミステリのある意味、完成形ともいうべき本作に、是非触れて頂きたい。

  • 怖い話です。

  • 久しぶりのメシマズ作品。読みやすかった。読んでいる最中、音沙汰のない紀州のドンファン事件の続報が気になった。

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