- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488254070
作品紹介・あらすじ
かつて隆盛を極めながらも、第二次世界大戦終了後まもない今日では、広壮なハンドレッズ領主館に閉じこもって暮らすエアーズ家の人々。かねてから彼らと屋敷に憧憬を抱いていたファラデー医師は、往診をきっかけに知遇を得、次第に親交を深めていく。その一方、続発する小さな"異変"が、館を不穏な空気で満たしていき…。たくらみに満ちた、ウォーターズ文学最新の傑作登場。
感想・レビュー・書評
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面白くて、上下一気に読了。イギリスのジメッとした暗い雰囲気、答えのわからない不気味な事件、少しずつズレて狂っていく人間関係…じっとりとスリリングです。原文で読みたいな。
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上巻は正統派ゴシック・ホラーの雰囲気。
没落していく地方の名家、怪しげな洋館、訳アリの登場人物、歯車が狂っていく感じ。
丁寧な情景描写がなされていて、廃墟と化していくハンドレッズ領主館のさまが美しく描かれている。滅びの美学的なものを感じる。
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描写が細かいので、かつて栄華を極めた屋敷が今では落ちぶれていることが目の前に浮かぶ。
下巻でどう終わるのか全然想像がつかない。
この著者の本はsnsでおもしろいと言っている人をたまたま見つけて、初めて手に取った。
本筋には関係ないものの、この本を読んで、イギリスで戦後配給制が取られていたことを初めて知った。戦勝国なので意外。
ちなみにその関係で少しググったところ、配給制がとられていた当時、少ない食料でなんとか拵えられたイギリスの家庭料理を食べたアメリカ人が「イギリス料理はまずい」と吹聴し、今でもそのイメージが払拭できていないと主張するブログがあった。
その当時まずかっただけで今ではそうではないし、配給制がとられる前もそうではなかったということらしい。 -
古典的なゴシック怪奇ロマン。その要素は全部盛りで、とにかくコテコテ、看板に偽りなし。すなわち、ハッピーエンドや論理的解決は求めてはいけない。
じわじわと救いのない破局へと収斂していくさまが、上下2巻をかけてじっくりと描かれる。そこは圧巻のひとこと。わかっちゃいたけど、ああ、やっぱりこうなるのか…と、ため息をつきながら巻を措くことになる。そういう意味では予定調和というか、こちらの予想を裏切るところは皆無なのだが、そういうものを求めるのもやはり、違う。
この淡い寂寥と静かな絶望にどっぷりと浸る、それが本書の正しい読みかただと思う。
2019/6/5~6/6読了 -
医師のファラディーは子どもの頃にエアーズ家の園遊会に出席してからこの一家に憧れを抱いていた。メイドの急患で呼ばれたファラディーはエアーズ家の人たちと知り合いになり、当主のロデリックの足の治療に通ううちに、一家とも親しくなった。しかしこのエアーズ家には小さな異変が続く。ハンドレッドズ領主館が不気味だ。
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ジップゥゥゥ。。。。
はっきりと幽霊が現れる描写はないけど(唯一下巻の最後にだけある)小さな異変が積み重なっていく。陰鬱な屋敷でくらすエアーズ家の面々を、ちょっとずつちょっとずつ追いこんでいく恐怖。察しのいいひとなら、上巻でその犯人がだれかわかるはず。
サラ・ウォーターズ。素晴らしい作家を知ることができて良かった。 -
ホラーなのか??
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最初に明言しますがこの物語の真の主人公は人間ではなく「館」です。
「レベッカ」「ねじの回転」さらには「ずっとお城で暮らしてる」など館を舞台にしたゴシックホラーは枚挙にいとまがありませんが、本作もまたその系譜に連なる意欲作。
主人公は田舎の中年医師。
子供時代に訪れた領主館に憧れを抱き続ける彼が、ふとした事から一家と知り合いになり……
中年医師と不器量な令嬢の初々しくもじれったい恋愛模様などロマンス要素もあるのですが、最大の見所はやはりこれでもか!と詳細な館の描写。
時代がかった洋館の外観・内装・調度の様子が作者の美質である流麗な筆致で綴られ読者を陶酔に誘う。
洋館で連続する怪奇現象、徐徐に精神に変調をきたしていく住人たち。
ネタバレになるので詳細は省きますが、きちんとした解決を望む方にはお勧めしにくいかも。
ジャンルボーダーと言いますか、読み方によって全体の印象はおろか結論そのものがガラリと変わってしまう。最終的な解釈は読者に委ねられます。それがまたじわじわと恐怖を演出する。
英国・洋館・一族・騒がしい霊。
これらのキーワードに魅力を感じる方にお勧めです。 -
起伏の多いストーリーでは無いが、描写が丁寧で読みやすい。読んで行くうちにだんだんと仄暗さが漂ってきて、続きを読まずにいられない。
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人物描写が丁寧で、なかなか面白い。ロデリックの苦しみが読んでいて辛いくらい。この先どうなるのかなぁ