ナイフをひねれば (創元推理文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488265144

感想・レビュー・書評

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  • 〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ4作目。いま最も刊行が楽しみなシリーズの一つである。

    本書の魅力は、何といっても、現実と虚構がごちゃまぜになったメタ性にある。作者のホロヴィッツが探偵ホーソンのワトソン役で登場し、ホロヴィッツの周囲の人物や出来事がことごとく実名で描かれるのである。

    お世辞にも良好な関係性を築けているとはいえないホーソンとホロヴィッツだが、今作ではホロヴィッツがホーソンに契約の打ち切りを宣言するところから物語が始まる。しかし、このシリーズでは毎回悲劇に見舞われるホロヴィッツ。今回はなんと殺人事件の犯人に仕立て上げられてしまうのだ。こうなっては頼れるのは、あの男しかいない。そうホーソンだ。

    ミステリのお手本のようなレッドへリングの数々。解決編では何度も「おお、あれはそういう意味だったのか」と思わされた。翻訳も軽快で読みやすい。ますます円熟味を増している本シリーズだが、ホーソンの秘密も小出しにされつつある。まだまだ続刊の予定のようで、今後が楽しみだ。

    ちなみに、本作は現実の出来事も織り込んでいるので、私はホロヴィッツのお顔をネットで確認し、脳内で補って読んでいる。架空の人物であるホーソンの顔については、英国の俳優ゲイリー・オールドマンを当てはめているがいかがだろう。

  • わたしの中ではこれまでいまいちコンビ萌えが感じられず、ピンと来なかったホーソーンとホロヴィッツのシリーズ。
    今作はいかに?

    思いがけず殺人事件の被疑者の汚名を着せられたホロヴィッツを全力でサポートし、犯人を探し出そうと躍起になるホーソーン…は、今回ももちろん登場しない。
    相変わらず飄々と、時に図々しく、秘密主義で、しかし確実に真実へと辿り着く、クールな男、それがホーソーン。

    数人の容疑者たちの元へそれぞれ訪れ話を聞く手法は、
    「さあ、君ならどう考える?」と、読者のわたしたちにも平等に推理を働かせる機会を与えてくれていてワクワクした。
    殺人の証拠が明らかにホロヴィッツに向いていること、
    過去の事件が絡んでいること、などからミスリードを誘い、今回も見事に騙された気分だ。

    最後の種明かしを舞台上で行うのも、なんだか王道のミステリー小説らしくて良かった。

    ラストの犯人が明かされる場面は
    少し切なく悲しい気持ちになる。

  • ホーソンのシリーズ。今までとは違い、2人の掛け合い漫才の様なやり取りが面白い。ミステリーとしての内容も伏線回収もとても良く出来ていて、シリーズの中では1番好きかも。次回作も楽しみ。

  • ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第4弾。安定の読みやすさと面白さだった。今回は他でもない、語り手のホロヴィッツが序盤から大ピンチに陥って、ホーソーンの助けが必要になるという、これまでとはちょっと違う展開だった。
    このシリーズは実在の場所も多くて楽しい。事件の舞台になるボードヴィル劇場(Vaudeville Theatre)も検索すると出てくるし、ホロヴィッツが犬を連れて散歩するセント・ジョンズ・ガーデン(Saint John’s Gardens)もGoogle Mapで発見! ロンドンに行きたくなるなあ。

  • <ホーソーン&ホロヴィッツ>シリーズの4作目。

    アンソニー脚本の舞台公演初日をこきおろした劇評家が自宅で殺害されました。
    十分な動機に加えて、凶器はアンソニーの短剣であったことから、彼は逮捕されてしまいます。
    窮地に陥った彼はホーソーンに助けを求め、真犯人を見つけるべく2人で捜査を開始します。

    本書冒頭で、アンソニーは当初の契約どおり、3冊でホーソーンを主人公にした本の執筆を終わりにする、とホーソーンに告げます。
    でも、現にこうして読者が4冊目を手に取って読めているということは、本書でアンソニーを救ったホーソーンが自身の要求を通したのであろうと思われ、それだけでなんだかにまにましてしまいます。
    そして案の定のラストシーンに改めてにんまり。

    しかし、事件の真相にはやるせなさが残ります。
    なんかこう、その出来事に関わった人間全員の汚いところが、ベン図の一番重なった部分に集まった感じ。
    悔しくて、悲しくて、胸糞悪い。

  • アンソニー・ホロビッツは毎回裏切らない。
    ただ今作は僕の苦手な舞台のことが散りばめられていて、読了に時間がかかってしまった。

  • 今回はホラー・コメディの脚本を手掛け、その舞台初日の酷評を原因とした殺人事件が起き、その容疑者としてホロヴィッツが逮捕、という幕開け。
    劇場型という形式とも思われるが、ホーソーンにまたしても振り回されながらの謎解きにページを捲る手が止まらない。
    悲しい犯人、同情すべき過去という納得の着地点で、ホロヴィッツの無罪は得たものだったけれど。

  • 物語、とりわけミステリに出てくる事象や物に関して、無関係なものは少ないと、頭では理解しているつもりだったけど。

    これも「真実」という名のパズルのピースのひとつだったのか!と思わされることが、特に本書は多かった気がする。
    もちろん、プロットの名手であるホロヴィッツのこれまでの作品でも、大小とわず驚かされた点は枚挙に暇がないとはいえ。

    あらすじを一言で言うならば、"アンソニーが書いた脚本の舞台が上映され、酷評した劇評家が殺され、アンソニーが逮捕される話"。
    その骨格にこれ程の肉がつけられ、最後に全てが明らかになるという、まあミステリでは当たり前かもしれないのだが、何度味わっても爽快だ。

    ちなみに、私はある証拠物件について、入手したタイミングはこの時ではないかな〜という予想をしていたのだが、ホーソーンに最後に否定されてしまった。

    ミステリの様々な要素がふんだんに盛り込まれた幕の内弁当のような本書、鮮度が落ちないうちにご賞味あれ。

  • シリーズ4作目
    相変わらず自虐ネタ満載の作品
    ついに著者が殺人容疑者に

    ミステリーとしては、ちょっとパワーダウンかな
    良くも悪くも古臭さを感じる展開
    容疑者を一堂に会して犯人が明かされますが、後でホーソーンがその意図を・・・

    少年犯罪に関しては国の違いを感じるも、どこの国も課題を抱えているものですね

    著者がまた一歩、ホーソーンの謎に迫るのは期待が膨らみます
    謝辞までに、虚実が織り交ぜられるとは

    後書きによれば、次作は新たな展開になるようですね

  • このシリーズ、ずっと鉄板に面白い。凄い。

    ごく真っ当に、奇抜な手段を使わずにシンプルな謎解きミステリをやっているだけなのに、ぐいぐい読ませるし、驚かされるし、無駄なく洗練されたプロットに感動する。毎回こうなのだから、ブラボーというしかありあません。

    今回は探偵役のホロヴィッツが犯人に疑われるという、これもまたミステリの王道なパターンを行くわけですが、どこかふてぶてしいホロヴィッツ氏のキャラクタもあって、悲愴さよりもさてどうこの窮地から逆転していくのかな、というワクワク感のが募りました。ぎくしゃくしているホーソーン氏との「相棒」関係もまた楽しめました。この辺の人間関係のリアリティが良いなと思います。

    作中では事件の端緒となる劇評や、実在の事件をネタにして作られた本といった、実際の人物を題材として私益を得ようとする「仕事」に対しての、きっと作者自らの警鐘・問題提起が含まれていて、ただの事件解決物としない苦味があり、とても読み応えがありました。

    次作も期待を充分にしつつ待ちたいと思います。

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著者プロフィール

Anthony Horowitz
イギリスの作家。1979年、冒険小説『Enter Frederick K. Bower』でデビューし、YA(ヤングアダルト)作品「女王陛下の少年スパイ!アレックス」シリーズ(集英社)がベストセラーとなる。ドラマ『刑事フォイル』の脚本、コナン・ドイル財団公認の「シャーロック・ホームズ」シリーズの新作『シャーロック・ホームズ 絹の家』(KADOKAWA)なども手掛ける。アガサ・クリスティへのオマージュ作『カササギ殺人事件』は、日本でも「このミステリーがすごい!」「本屋大賞〈翻訳小説部門〉」の1位に選ばれるなど、史上初の7冠に輝く。続く『メインテーマは殺人』『その裁きは死』『ヨルガオ殺人事件』(以上、東京創元社)も主要ミステリランキングで首位を取り、4年連続制覇を達成した。


「2022年 『ホロヴィッツ ホラー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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