教室マルトリートメント

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  • 東洋館出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784491042626

作品紹介・あらすじ

マルトリートメント:不適切なかかわり・養育

“教室”マルトリートメント:教室で行われる子どもの心を傷つけるような不適切な指導を示す造語

「教室マルトリートメント」。本書のタイトルであるこの言葉は、筆者である川上康則先生(東京都立矢口特別支援学校)の造語です。教室内で行われる指導のうち、体罰やハラスメントのような違法行為として認識されたものではないけれども、日常的によく見かけがちで、子どもたちの心を知らず知らずのうちに傷つけているような「適切でない指導」を取り上げています。

例えば、事情を踏まえない頭ごなしの叱責、子どもたちを萎縮させるほどの威圧的・高圧的な指導などは分かりやすい例です。しかし、本書ではもう少し掘り下げて、褒めるべき時に褒めないとか、「子どもにナメられるから」という理由で笑顔を見せないといったことについても、教室内を重い空気感で包んでしまう指導として取り上げたいと思います。

「マルトリートメント」という概念は、海外ではチャイルド・マルトリートメント( child maltreatment )という表現で広く知られています。mal(マル=悪い)+treatment(トリートメント=扱い)で、マルトリートメント。「不適切な養育」「避けたい関わり方」「行われるべきでない指導」などの意味で使われます。

日本の児童虐待防止法で定められた内容(身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待)よりも広い概念で語られ、子どもの将来を案じてよかれと思って行う「しつけ」や、大人が過去に受けてきたからという理由で行われる指導であったとしても、子どもの育ちにマイナスであれば許されていません。マルトリートメントは、子どもの心にトラウマ(心的外傷)をつくるとされ、脳の一部の萎縮や肥大などの変形につながることも、小児神経科医の友田明美氏の研究によって報告されています。

マルトリートメントは、基本的に親子関係の養育において扱われる概念です。
しかし、不適切な関わり方や本来であれば行われるべきでない指導といった視点から見てみると、教育関係者こそ、常に気を付けておくべき概念なのではないか――。本書では、そのような問題意識のもと、密室空間である「教室」で、「指導」の名の下に子どもたちを傷つけるような関わりが、知らず知らずのうちに行われていることがないか、検討していきます。

本書では、違法行為の一歩手前のレベルの「行き過ぎた指導」から、これまでは当たり前に行われていた指導だけれども、改めて考えると子どもの心を傷つける要素をもつ指導まで、幅広く「教室マルトリートメント」として整理し、教室マルトリートメントに陥らないための予防と知識を押さえていきます。さらに、自分が「教室マルトリートメントをしてしまっているかもしれない」という場合に、今すぐに実践したい立て直しから、常に行いたい教師としての自己検証のやり方まで、その改善方法を具体的に提案していきます。

感想・レビュー・書評

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  • 教室マルトリートメントとは?
    どうしたら居心地のよいクラスができるのかを考える。

    ①分からない、ことについて安心して表明できるようにしましょう。
    「正直いうとピンと来ていない人?」
    「え?あれ?と思っている人」
    「もっと考えるヒントが欲しい人?」
    「一人では無理だという人」
    「みんな助けて!の人?」
    「なんだかすっきりしないなあ、の人?」
    「今、指名されたら困るなあって人?」
    ☆いろいろ言い方がある。
    こういう言い方をもっておくことが大切だと思う。
    引き出しは多く。

    ②理解の自信度をはっきりと表現してもらうような工夫を行います。
    「自信があるという人?自信がないという人?」
    「絶対こうだという人?たぶんこうだという人?もしかしたらこうだという人?」
    「間違いない、と断言できる人?ちょっと待てよ?の人?」
    「100%言い切れる人?50%くらいの人?10パーセントくらいの人?」
    ☆これも同じ。

    そもそも、教師がわに余裕がないと、
    教室を居心地よくなんかできないと思う。
    休むこと、人と比べないこと。
    職員室を居心地よいものにすること。

  • 教育現場にいたら当たり前なことが、少し離れた位置でみるととてもおかしいことになるのだなと改めて思った。

  • どうしたらいいか…
    気にしすぎてしまいそうで…

  • 指示の通らない他の学級の様子を見て、どうすればいいのかを答えを探すように読んだ。ハウツー本ではないものの、適切ではない関わりをする教員側の意識が大切だと感じた。分からないを言える学級作りを目指し、毒語を意識的に使わないようにしていきたい。

  • 学校や教室はある種密室的だ。
    学校は入試の時は外部に開かれるが、それも3割程度。その実態は内部に入って初めてわかる。
    教室もしかり。30余名を相手に教員は密室での授業を行う。他の教員からはその実態はなかなかわからない。
    対個人となればそれはもっと不明瞭だ。

    自分の発した言葉、見えているのに見過ごしてしまったもの。数えればきりがない反省は日々山積している。

    学校が嫌いな学生だった私にとって教室は戦場、教師は敵だった。
    だからこそ学校に不信感を抱く生徒の気持ちはよくわかる。
    「こうでなければならない」という固定観念に当てはめずに
    個人に対してみれば教師は意固地にならなくてもできる仕事だ。
    周りに染まらないこと。ステレオタイプにならないこと。
    それが大事なのではないだろうか。

    本書より
    笑顔 これだいじなり

  • 確かな知識に裏付けされた様々な現場での経験から発せらる川上先生の言葉には重みがあり、「マルトリートメント」について危機感を持って本書を書かれたことに強く惹きつけられました。川上先生は『子どもへの「無理解」「誤解」から誤った評価が生まれる。』と書かれています。例えば姿勢が保持できない、授業に参加しようとしないといった子どもは怠けているのではなく、ボディイメージの未発達や感覚のつまずきなどが原因かもしれないという、子どもを理解するための「正しいものさし」を現場の教師は持つことが必要です。
    一人ひとりの子どもの実態は多様なのに、これまでの指導経験や出会ってきた子ども達からステレオタイプ的に認知バイアスをかけてしまうことがないか、改めて気をつけなければいけないと思いました。
    『子どもは「金平糖」のようなところがある』と心に留め、伸び代を埋めていくような指導観を大切にしたいです。
    そして子ども達とラポールを築き「内面世界の代弁者」になれるよう、日々笑顔を絶やさず子どもたちが安心できる場を作っていきたいです。

    • workmaさん
      アボカドさん
      はじめまして。

      マルトリートメント、友田医師のインタビュー、著書とDVD(NHK プロフェッショナル)を見て、自分も注目...
      アボカドさん
      はじめまして。

      マルトリートメント、友田医師のインタビュー、著書とDVD(NHK プロフェッショナル)を見て、自分も注目し学んでます。神奈川県中高一貫校の校長、工藤勇一さんの著書も、お読みになったことがありますか?「校則・試験なし」「当たり前を疑ってみる」姿勢。「目的と手段」を見分けるなど、目から鱗が落ちる感じです。
      ブクログ上ですが、応援してます( ´ ▽ ` )ノ
      2023/02/26
    • アボカドさん
      workma様
      はじめまして(o^^o)コメントを下さりありがとうございます。工藤勇一さんの著書はまだ読んだことがないので、読んでみます。
      ...
      workma様
      はじめまして(o^^o)コメントを下さりありがとうございます。工藤勇一さんの著書はまだ読んだことがないので、読んでみます。
      またオススメのものがありましたら教えてください。
      こうして繋がってくださったことに感謝しています(^^)
      2023/02/27
    • workmaさん
      わぁっ~(‘0’)
      こちらこそ…アボカドさんのお役に立てられたみたいで…うれしいです(*^▽^*)
      アボカドさんのおすすめ本などあり...
      わぁっ~(‘0’)
      こちらこそ…アボカドさんのお役に立てられたみたいで…うれしいです(*^▽^*)
      アボカドさんのおすすめ本などありましたら、教えてくださいね
      アボカドさんの本棚にも時々遊びに行きますね~( ´ ▽ ` )ノ
      2023/02/27
  • 子どもに高圧的な指導をしてしまって、怒り過ぎたかなと思ったのことのある人は、手にとってみてほしい良書です!「子どもにかかわる人は、子どもたちの前で笑顔で穏やかな気持ちを絶やさないでいてほしい亅そんな著者の願いが込められた本です。私もそういう教師や大人が増えて、子どもたちが守られてほしいと願って、この本をおすすめします。

    これくらいできて当然という子ども観を見直し、子どもが自信をなくすような強い叱責や脅し、見捨てるといったかかわりから、子どもの安全基地になるようなかかかわりへ。この考え方がすっと入っていきました。自分の子どもとのかかわりにも共通していて、まずは子どもの存在そのものを温かく認めるようにしたいと思いました。

  • 身につけていきたい教育技術五選

    ①待つ ②受け流す ③目をつぶる
    ④力に頼らない ⑤言葉を選ぶ

    心に留めておきます。

  • 教師の教育観を見直せる良書。
    脳科学からみた指導のあり方や児童への対応方法が具体的にまとめられている。
    また、教室マルトリートメントが大人の方に影響する点も面白い。ダブルバインドが起こる要因やこじらせ教師についてなどが書かれている。
    発達段階による児童の学びの速度の違いをデータで証明している。
    後半には、教師の成長について書かれている。成長ステージや成長に向けての体質は、自分の教師としての立ち位置を客観的にふりかえるツールとなる。

  • 読んでいてかなり自分のことを振り返った。

    圧を圧として使えるようになってしまった自分。
    力のあるところに本当の学びは生まれないという
    言葉を思い出す。

    圧、大きな声を出さないとしても
    声色を変えることも圧になるんだろうなぁ。
    自分の指導はどうだろうかと考えるきっかけになった。

    「未解決の問題にせっかちに帳尻を合わせず、宙ぶらりんのままもちこたえる」
    という言葉には
    あぁ、これいいなと思えた。
    中途半端の強さというか。
    完璧な人なんてこの世に誰もいない。
    だから例え中途半端でも、自分が自分ならそれでいいじゃないか。

    肩の力を落として
    子どもも自分も一人の人と思って笑顔で過ごしたい。

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著者プロフィール

東京都立矢口特別支援学校主任教諭
公認心理師、臨床発達心理士、特別支援教育士スーパーバイザー。NHK Eテレ『ストレッチマンV』『ストレッチマン・ゴールド』番組委員。立教大学卒業、筑波大学大学院修了。肢体不自由、知的障害、自閉症、ADHDやLDなどの障害のある子に対する教育実践を積むとともに、地域の学校現場や保護者などからの「ちょっと気になる子」への相談支援にも携わる。著書に、『こんなときどうする? ストーリーでわかる特別支援教育の実践』(学研プラス)、『通常の学級の特別支援教育 ライブ講義 発達につまずきがある子どもの輝かせ方』(明治図書出版)、『子どもの心の受け止め方』(光村図書出版)など。

「2022年 『教室マルトリートメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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