- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492223802
感想・レビュー・書評
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2005年JR西日本福知山線脱線事故で、妻と妹を失った浅野さんをモデルに、事故を起こした運転士よりもその会社体質正すことに費やした10年間。重大事故の対応として江戸の大火の昔から変わらずの個人責任追及主義、無関係者からの誹謗中傷を読んで憂鬱になった。
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JR福知山線脱線事故のルポルタージュ。
読んでいると、どうしても人に焦点を当ててしまいたくなった。
「会社の体質」が見えにくいものだからこそ、形を取る個人に責任を求めていってしまう。
淺野さんは「なぜ起きて、どうすれば起きなくなるか」を、この見えにくいところから見えるところに持ってきた方なんだと思う。
日勤教育についても、焦点は「その人が更生するか」にあり、「なぜその過失が起きたか」ではなくなっていた。
そして本質が見えないままの「更生」は、ただの懲罰でしかなく、権威を持つ人ほど、自分がそこに晒されないため手離したがらなくなる。
これだけ凄まじい事故が日本で起きることに、当時の私はただ震撼したというか、大きな会社であっても致命的な事は起きるんだと思っていた。
けれど、大きな会社とか、凄まじい事故という形容を外した時に見えるものは、自分にも分かるような「体質」と呼ばれるものだった。 -
事故後13年以上もたって、初めてこの事故についての詳細な事実を確認することとなった。とにかく安全システム、安全設計について多くを考えさせられる本。リスクアセスメントの学習を始めたところで本書を知ったのは良かった。まずは浅野氏の凄さにひれ伏すのみ。せめてその足元でもがける程度にはなりたい。
本書に示されるJR西日本安全フォローアップの資料をJR西日本のサイトから入手した。こちらもじっくりと読んで学習し、今後の糧としたい。 -
遺族を少し変わった視点から描いたドキュメント。
妻と妹を亡くし、娘は重症。
考えただけで気が遠くなります。
読み応えが重すぎて読むのが辛くなるほどです。 -
【2本のレールが交わるところ】2005年4月25日に発生し、107名の死者と562名の負傷者を出したJR福知山線脱線事故。当初の会社側の無機質な対応に風穴を開け、JR西日本と共に事故の原因究明と安全対策に乗り出した遺族を軸に、事件のその後を描いた作品です。著者は、神戸新聞の記者を経てフリーランスで活躍している松本創。
月並みな表現ですが、組織や社会の根幹はやっぱりどこまで行っても人なんだなと教えてくれる一冊。JR西日本と遺族との話し合いを通じ、読み手の側も、組織論や危機管理論を超えて幅広い教訓を得ることができるかと。
〜「被害者と加害者の立場を超えて同じテーブルで安全について考えよう。責任追及はこの際、横に置く。一緒にやらないか」〜
事前の前評判を裏切らない素晴らしい作品でした☆5つ -
2018/10/22
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2021年1月11日読了
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事故で大切な人を失った遺族について生々しい現実を教えてくれた。読んでいて本当に胸がつまる思いだった。同時に当時のJR西日本という企業に対しての不信感も込み上げてくる。
不幸にも遺族となった浅野氏の懸命な行動が凝り固まった官僚主義の企業に変化をもたらした。自身も辛い中にあっても「遺族の責務」といい、ここまでの事をやってのけた。
安全と利益追求のバランス。鉄道会社には強く求められること。安全なしでは鉄道を走らせる資格はないが、安全に投資するためには稼がなくてはならない。そのバランスを崩すと事故が起こる。安全が最も重要なことは当たり前なのだが経営者にとってこの両立は難しい事なのだろうと思う。
しかし、安全に対する意識を磨くことは金がなくても出来る。本書で語られた元トップ井出氏の安全に対する考えは、現在の鉄道業界では非常識である。ヒューマンエラーは起こるものという前提に立たなければ事故は決して減らない。その前提がなければ人がミスしないでやれば良いの一言で片付いてしまう。だとするとヒューマンエラーをバックアップするハードメンの投資も行われるはずもない。
鉄道マンは決められたことを正確に行うことを常に求められている。一方それを逸脱する事を躊躇してしまう。しかし、異常を感じた時、安全に対して不安に思った時、勇気を出してそれができるか。それができる鉄道マンであって欲しい。