軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492223802

感想・レビュー・書評

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  • Yahoo!ニュース|本屋大賞 2018 ノンフィクション本大賞ノミネート作品。

  • 良くも悪くもビジネスノンフィクション

  • あの日のことは、覚えているが、事故の原因追求を被害者が中心となってやっていたとは知らなかった。時々利用する乗客としても色々と考えさせられた。

  • 最後の井手会見はよかったが、全体的にパンチのない内容。
    瑣末な事項と、著者自らの推定や想定を並べ立て、なんとかJR西日本を悪者に仕立てようとしているように見えた。事故の真実は事故調査報告書にあると考えるべきである。真実の追究は、物的証拠と、双方からの聞き取り、専門家からの意見から行うしかないのに、遺族と反政府・反巨大組織を訴える市民からの一方的な一方向からの意見によって覆そうとしているとしか思えない。
    JR西日本は株式会社であり、社会インフラの中核を担う組織である。JA西日本がどのようなビジョンをもって平素から営業活動を行っているのか、その利益追求のために、安全はどのような位置づけにあったのか、そのバランスはどうだったのかというような基本的なビジネスの始点に立って分析するのが基本であるのに、その配慮に欠けている。
    被害者に対する謝罪や、補償は大事である。事故の再発防止も極めて大事である。ただし、本作品は、被害者という一部の市民にスポットライトを当て、世論の力をかりて巨大組織に衝撃を与え、自らの手柄とばかりに自慢するマスコミの常套手段をそのまま使って本にした作品のように思える。私はJR西日本とはまったく関係ない人間だが、この手の日本社会に対し無用に亀裂を生じさせるような活動には、断固反対したい。
    私には、カリスマ井手社長や裁判官の言葉の方が、容易に理解できるし納得できる。著者が批判する「個人の意見より組織論理を重んじる」こと、「安全より利益を重んじる」ことのどこが悪いのか。著者の方がはるかに視点が低く、事故調査や裁判結果に即さず自論を展開しても議論が成り立つわけがない。本書の内容は、井手氏が要請した「事実だけを書いてほしい。憶測を交えたり無用な修飾語をつけないでほしい」ということを、巻末だけでなく、本全体に適用すべきだったのではないか。

  • JRの体質は全然変わってないね.職員はだらけてるし,20分遅れたって平気.また大きな事故起こるわ.

  • 2005年4月25日 福知山線事故
    2008年9月8日 兵庫県警が山崎社長ら10名を書類送検
    2009年1月 遺族が歴代3社長を告訴
    2010年7月8日 神戸地検が山崎を在宅起訴
    2009年8月21日 歴代3社長の不起訴を不服として遺族が神戸第一審査会に審査申し立て
    2009年10月9日 歴代3社長に対して検察審査会が「起訴相当」を議決。二か月後、神戸地検が再び不起訴処分に。
    2010年3月26日 歴代3社長に対して、検察審査会が「起訴議決」
    2010年4月23日 検察官役の指定弁護士が歴代3社長を業務上過失致死傷罪で強制起訴
    2012年1月11日 神戸地裁が山崎に無罪判決。神戸地裁は控訴を断念。同26日に無罪確定
    2012年7月6日 歴代3社長の公判が神戸地裁で始まる
    2013年9月27日 神戸地裁が歴代3社長に無罪判決。指定弁護士は控訴
    2915年3月27日 大阪高裁が歴代3社長に対する控訴を棄却。一審を支持し、無罪とした。指定弁護士は最高裁に上告
    2017年6月12日 最高裁は歴代3社長に対する上告を棄却。指定弁護士は異議を申し立てず、無罪が確定

  • 被害者遺族の代表の一人浅野氏に寄り添う形で,丁寧に聞き取り調査をして,JR西日本の体質歴史に切り込んでいるのは見事.ただ批判するだけではなく,これからどうすれば事故を防げるかにポイントを置いて,身勝手な井手天皇をも冷静に分析している.福知山脱線事故の本は興味があって何冊か読んでいるが,これが一番心にグッときました.

  • 関係者などをはじめ、かなり調べて書かれている本書。
    その熱意には頭が下がる。
    が、技術的な専門用語が多くてかなり難しい。
    失礼ながら、その辺りはちゃっちゃっと飛ばし、淺野氏やJR西日本関係者の話やエピソードの辺りを読む。
    事故ると確かに大惨事になる鉄道だが、全国で毎日運営されている鉄道数を考えると、その数は非常に低いといえるだろう。考えてみれば、それってすごいことだ。
    過去の事故からたの「学び」が生かされているのだろう(と信じたい)。
    「人間がかかわるものはミスが起こるもの」と想定して備えておかないといかんな。

    まるで見当違いの感想だが、「一番前の車両に乗って運転士と同じ視線で景色を楽しむ派」の私だが、本書を読んで一両目に乗るのが怖くなったかも(汗

  • 建物の1階部分にひしゃげた車両がめり込んでいる。脱線事故とは
    言え、これはどういう状況なのか。2005年4月25日に発生した
    福知山線脱線事故のニュース映像だ。しかも、テレビ画面に映し
    出されていた車両は2両目だった。

    この事故で妻と妹を失い、次女が重傷を負った都市計画コンサルタント
    淺野弥三一氏が巨大組織JR西日本を相手に組織としての原因追求と
    安全対策の改善を求めた記録が本書である。

    淺野氏は被害者遺族であり。被害者家族である。その人が被害者感情を
    優先するのではなく、組織事故としてJR西日本に真摯な対応を求める。

    誰もが出来ることではないと思う。大規模事故に自分が、または身内
    が巻き込まれたのなら、私だったら被害者感情が先に立ち安全の確立
    を求めることまでには考えが至らないだろうと思う。

    国鉄の分割民営化後のJR西日本が優良企業となって行く過程、その
    なかで育まれてしまった上に物が言えぬ組織風土。それをJR西日本
    自身に見つめ直されるのには、事故後に社長に就任した山崎正夫氏
    の登場を待つしかなかった。

    残念ながら山崎氏は自身の不祥事と福知山線脱線事故での在宅起訴
    で社長の座を去ることになったが、彼がいたことで淺野氏たち被害者
    組織との対話の実現への突破口になる。

    あの事故を運転士個人の責任として済ませてしまうのは却って簡単なの
    だろう。では、何故、ヒューマンエラーが起きるのか。その背景を洗い
    出した記録として本書は貴重な作品だと感じた。

    一貫してJR西日本の組織的責任を追及し続けた淺野氏は勿論のこと、
    JR西日本関係者の多くに取材し、丹念に描かれた良書である。

  • 運転手も含め107名の犠牲者を出した2005年4月25日に発生した福知山線脱線事故。その事故で奥様を亡くし、娘さんが大けがを負った浅野弥三一氏が、JR西日本に対して事故原因の追究を訴え、被害者と加害者という立場を超えて再発防止に取り組んできた日々を追うノンフィクション。
    当初JR西日本経営陣は事故原因を運転手のミスと主張していました。しかし、浅野氏は運転手のミスは原因ではなく、運転ミスを厳しく罰する懲罰主義やミスに対する厳しい日勤教育をはじめとする精神論などの企業体質にこそ原因があると考え、JR西日本の企業体質の変革を目指しました。
    当初、専ら組織防衛に徹する経営陣とは議論がかみ合わない中、新たに社長に就任した山崎正夫氏との出会いが事態を動かすきっかけになりました。山崎氏はJR西日本初の技術系出身の社長であり、技術コンサルタントであった浅野氏と技術者同氏として語り合うことができたからです。浅野氏が山崎氏と初対面の時の印象を「彼は技術屋でしょう。彼となら対話ができるかもしれない。事務方の用意した官僚答弁ではなく、自分の言葉で本音を喋る人だ。」と述べ、「責任追及はこの際、横に置く。一緒に安全の再構築に取り組まないか」と語りかけています。
    鉄道など公共交通機関は安全が最優先とはわかっていながら、利用者である私たちは「より速く、より快適に」という要求を過度に求め過ぎていないでしょうか。「原発には反対だが、快適な生活は手放したくない」といった要求とよく似た構図がみられる気がします。鉄道の安全を確保するのは確かに鉄道を運行している企業であるのは当然ですが、その企業に過度なプレッシャーを与えていないか、再考させられる1冊でした。

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著者プロフィール

1970年、大阪府生まれ。神戸新聞記者を経て、現在はフリーランスのライター。関西を拠点に、政治・行政、都市や文化などをテーマに取材し、人物ルポやインタビュー、コラムなどを執筆している。著書に「第41回講談社本田靖春ノンフィクション賞」を受賞した『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(東洋経済新報社、のちに新潮文庫)をはじめ、『誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走』(140B、2016年度日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のひたむきな生き方』(講談社)、『ふたつの震災――[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(西岡研介との共著、講談社)などがある。

「2021年 『地方メディアの逆襲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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