ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492532706

感想・レビュー・書評

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  • ビジネス・サービスを展開するときにどのようなストーリーがあるのか、必要なのか?ということを、トヨタ、サウスウエスト、アマゾン、スターバックス、ガリバー、馬渕モーター、様々な企業の事例を挙げながらトクトクと説いている。

    上記の企業は成功しているので、それら固有のストーリーがあったから成功したというものではなく、成功している企業には何かしらの一見非合理だが全体的に見るとは非常に優れた戦略・ストーリーがあるということ。

    サービスを展開するときに、どの分野で戦い、どのように自社の強みを育てていくかということが大切。そんなことも書かれておりますな。

    500ページというボリューミーな内容なので非常に骨だが、読んで損は無い本。
    何度も読み返し、戦略ストーリーを頭にしみこませながら、色々考えていく必要がありますな。

    久々の良本ですわ。

  • 500ページの大作だし、じっくり読みたかったから時間かけて読みました。

    「競争戦略におけるストーリー」、確かに非常に必要なものです。
    このメッセージだけ伝えたい本だと思うのですが、このフレーズだけ聞いて、本を読まなければ、誤解する人も出てきそう。

    うわべだけのストーリーではなくて、キラーパスを組み込んで、以下にストーリーを良いものにしていくか。

    これは、それぞれ自分の状況に照らし合わせて、自分のアタマで考えなくてはならないのだろう。

    企業の経営戦略だけでなく、自分自身の与えられた仕事の中でも有効なんだろうな、と考えました。
    自分の今の仕事に「ストーリー」はあるのか、それは「効果的」な方法をとっているのか、ちゃんと考えて、それで初めて価値が出てくると思います。

  • 近年読んだビジネス書ではNo.1

  • 長い本だけど、面白くてぐんぐん読めた。戦略を語る際に、本来は面白いストーリーとして動画的に語られるべきもののはずなのに、ただの無味乾燥な静止画の羅列になってしまっているのではという問題意識により書かれた本。勉強になった。

  • 500ページという半ば凶器ともいえる存在のため、長らく積ん読の山に刺さっていた本書ですが、読み出すとページを埋める諄さが逆にとても分かりやすく感じ、面白く読み進める出来た。

    なぜ戦略にストーリーが必要か、競争戦略をロジカルに考えるとは、戦略ストーリーとな何か、コンセプトの重要性など、サウスウェスト航空やスターバックスの事例なども含めて懇切丁寧に解き明かし、「キラーパス」を組み込めと説く。

    顧客や社会に喜ばれるサービスやプロダクトが考えるとして、それが何故喜ばれるのか、自社のノウハウや技術、強みは何か、それぞれを徹底的に論理的に考えつくし、キラーパスで前者と後者を繋ぎ、登場人物(顧客や社員など)が生き生きと輝き出すストーリーを作ること。超圧縮で纏めるとこんな感じでしょうか。

    ちきりん氏の「自分のアタマで考えよう」を読んだときと妙に被った読後感、このデジャブな感じは「考えろ」ってことですね。

  • 上司に貸してもらいよみましたが、まぁ非常に面白い。

    分量は多いですが競争戦略の真髄を丁寧に、事例豊富で語られています。
    競争戦略を策定するにあたっては、フレームワークに従って考えるだけでは十分ではないとのこと。

    この本のエッセンスは、以下の通りですが、この本を読んで強く意識したことが、ビジネスマン個人としての成長戦略や、法務部などの一組織の戦略の策定にあたっても本書に記載の内容は十分に当てはまるのであろうということ。
    経営者(経営戦略の担当者)でなくても色々考えたくなりました。

    【以下、本書のエッセンス】

    競争戦略の策定において、一番大事なのはゴールを定め、またコンセプトを決めること。
    経営上の競争戦略におけるゴールは詰るところ中長期的な利益の獲得であり、利益の獲得のためには、一言でいうと付加価値を増加させるか、コストを削減するかのいずれかしかない。

    そして、このいずれかの手段でゴールを達成するために、とるべき考え方(=誰に何を売るのかに関する考え方)こそがコンセプトであるとのこと。

    コンセプトが決まったら、時系列的に「打ち手」を示し、それぞれの「打ち手」と「打ち手」の因果関係をしっかりとつないでやる(=因果関係のない打ち手は打つべきではない)。

    そして、この打ち手の中に「キラーパス」(=一見して非合理的ではあるけれども、全体の打ち手からすると合理的な打ち手。常識に反することや、一見すると損するが全体としては得するといった策)を埋め込んでやると、その競争戦略は究極の優位性をもつことになり、他者の追撃を許さない状態になるとのことだ。

  • すごく腑に落ちる経営戦略の本のひとつ。

    良い戦略には面白いストーリーがある。

    それが本書の考え方である。
    経営戦略本でフレームワークやツールなどの点を意識するのではなく、シンセシスという考え方として、論理や流れ、関係を重視する。
    いわば、サッカーの流れ。
    パスで結んで、ゴールをする。

    点だけを意識してるだけでは企業の競争優位は得られないということ。

    本書の流れは、ポーターのポジショニングビューの観点とバーニー他のリソースベーストビューの観点を兼ね揃えた考え方で論じられている。
    そこから企業の持続的競争優位を導くための総合的な流れ、「ストーリー」について成功した企業の例を用いながら語られるわけだ。
    決して、書いてある企業のストーリーは新しくない。よく経営戦略の本でも登場するケースがほとんどで新鮮なものではない。
    ただ、話の中に納得する視点がこの本には盛り込まれている。そう、腑に落ちる。
    それがストーリーというもの。思わず、感心する、そんなストーリーの数々。

    話的に非常に日本的な考え方でもあり、現在の製品マーケティングのひとつである感情を訴えるナラティブ的な側面を要している。非常に面白い議論と流れになっていて、読み物としても面白いのが本書の特徴である。

    経営戦略系の本、特にフレームワークやツールに頼る(点を活かすためにも必要であるが)ものが多い中、この本で総合的な面を生かす必要があると再認識させられる。

    沼上教授の著書を読むとより一層深めることができると思う本である。

    戦略本の中で、非常にオススメ!

  • スターバックスコーヒー、ガリバーインターナショナルはたまたコギャルなど様々な事例の戦略ストーリーを平易に解説しており、大変読みやすい良書。
    それぞれの業界の従来の常識にとらわれず、普通の人が普通に考えることを実践することの大切さを学びました。
    最初から「ぶれないゴール」を設定するまでは、時間がかかるが、ゴールを設定してからは、それを実行し続ける意思の強さも垣間見られました。
    作品の中で紹介されている成功者は、皆個人の利益を追求することのみにとらわれておらず、各人が抱える「切実なもの」を解決するために、行動しています。
    最近、私の周りを見渡すと、私の職務である地方公務員に誇りを持っている職員が減っているように感じます。
    どんな職務であれ、地方公務員の担任する職務にはそれぞれ「やりがい」、「魅力」、「達成感」があります。
    今の私に出来ることは、今与えられた職務に誠意を持って忠実に遂行し、同じ職務を担任する多くの同僚に、この素晴らしさを伝えていくことです。
    それが今の私を突き動かす「切実なもの」です。

  • 久しぶりに会心の一冊を読んだという満足感がある。いわゆる「ベストプラクティス」「テンプレート」「法則」といったものが横行する競争戦略・経営戦略に対して、「本当はそんなんじゃなくて、最後までしっかり描かれたお話が有るか無いかが競争優位を決めるんだぜ」ということを、それ自体を細かく論理で紐解きながら全体のつながり、まとまりを説いてくれる本著。
    文体や着想は私の好きな神田昌典氏と通ずるところがあるように感じた。

    企業内で戦略策定に関わる人間のみならず、ビジネスに関わる人は全てこの本からストーリーとしての競争戦略という考え方を学ぶべきだ。

    私はこの本から学ぶことが山のようにあった。実際に学んだ言葉や考え方を使って日々の仕事に浸透させることで、時間をかけて身体に理解させたい。

    ■学んだこと
    ・ビジネスモデルは戦略の空間的配置、戦略ストーリーは打ち手の時間的展開
    ・戦略は利益の源泉
    ・「天国に行くための最良の方法は、地獄に行く道を熟知すること」マキャッベリ
    ・SP(種類の違い)、OC(程度の違い) 競争の基本原理
    ・戦略ストーリーの5C
    ・一貫性、一見して非合理→模倣困難→競争優位の持続性
    ・コンセプトとは「誰から嫌われるか」である
    ・「こうなるだろう」という予測ではなく、「こうしよう」という主体的意図

  • 無意味と嘘の間に位置するのが論理

    「違いをつくって、つなげる」一言で言うと、これが戦略の本質

    戦略は、因果関係のシンセシスであり、それは「特定の文脈に埋め込まれた特殊解」という本質を持っている。優れた戦略立案の「普遍の法則」がありえないのは、戦略がどこまでいっても特定の文脈に依存したシンセシスだから

    戦略とは、持続的な利益を生み出すための基本方策

    競争戦略は2通り いかに競争圧力を回避するかが本質

    SP(Strategic Planning) ポジショニング戦略 アウトサイドインの発想 他社と違ったことをする=何をしないか、レシピ

    OC(Organization Capability) 組織能力 他社と違ったものを持つ、競争に勝つために独自の強みを持つ その会社固有のやり方 インサイドアウトの発想、厨房・包丁の研ぎ味、

    SP-OCマトリックス

    競争構造
      SP 競争優位    持続的な利益
      OC

    戦略ストーリーの5C
    ①競争優位 ストーリーの「結」 利益創出の最終的な結論
    ②コンセプト ストーリーの「起」 本質的な顧客価値の定義
    ③構成要素 ストーリーの「承」 競合他社との違い、 SPもしくはOC
    ④クリティカル・コア ストーリーの「転」 独自性と一貫性の源泉となる中核的な構成要素
    ⑤一貫性 ストーリーの評価基準 構成要素をつなぐ因果論理

    根本的な利益の定義
    WTP-C=P
    WTP(Willingness to pay):顧客が支払いたいと思う水準
    C:コスト
    P:利益

    ストーリー構想の第一歩としてどちらにシュートの軸足を置くかを決める
    ①WTP優位の戦略
    ②コスト優位の戦略
    ③ニッチ特化による無競争 ex. フェラーリ

    パスを出す
    他社との違い=ストーリーの構成要素

    パスをつなげる
    ストーリーの一貫性 ストーリーの強さ、ストーリーの太さ、ストーリーの長さ

    数多くの因果論理が着実に積み重なって戦略ストーリーの一貫性が出来上がる。ストーリーの一貫性の正体は、「何を」「いつ」「どのように」やるのかということよりも、「なぜ」打ち手が縦横につながるのかという論理にある

    静止画を動画にするのは論理

    業界の競争構造(When、Where)\
               SP(What)\戦略ストーリー → 競争優位 → 持続的な利益
               OC(How)/

    Ⅱコンセプト
    コンセプトとは、その製品(サービス)の「本質的な顧客価値の定義」=「本当のところ、誰に何を売っているのか」
    →見たままではない。PCを売っているのではない、◯◯を売っている

    コンセプトは顧客に対する提供価値の本質を一言で凝縮的に表現した言葉。それを耳にすると、我々は本当のところ誰に何を売っているのか、どのような顧客がなぜどういうふうに喜ぶのか、要するに我々は何のために事業をしているのか、こうしたイメージが鮮明に浮かび上がってくる言葉でなくてはならない

    優れたコンセプトを構想するためには、常に「誰に」と「何を」の組み合わせを考えることが大切。「誰に」と「何を」を表裏一体で考えることによって「なぜ」が初めて姿を現す
    「誰に」「何を」だけでは静止画になってしまう。「なぜ」についての因果論理は「動き」の中にしかない
    ex. 「明日来る」の価値 アスクル

    誰に嫌われるか ex. スターバックス
    誰からも愛されようと思うと、ストーリーに無理が生じて、筋の良い因果論理が損なわれ、一貫性が失われる。それを聞いた途端に「えっ?そんなの僕はいやだね..」と言いそうな人々がはっきりと思い浮かぶような言葉の方が、コンセプトとしてはむしろ筋がいいといえる

    あからさまに肯定的な形容詞をなるべく使わずにコンセプトを表現することが大切。顧客価値を定義すると、どうしても「最高の品質」とか「顧客満足の追求」とか、それ自体で肯定的な意味合いを持つ形容詞を使いたくなる。しかし、そういってしまうと、誰に嫌われるかがはっきりしなくなる。「最高の品質」はそれ自体であからさまに「良いこと」なので、よっぽどのひねくれものでない限り、誰にとっても好ましいこと。ということは、本当のところ誰が喜ぶかがぼやけてしまう。しかも、肯定的な形容詞でコンセプトを片付けてしまうと、そのとたんに思考停止に陥りがち。結果的に品質が最高になったり、サービスがきめ細かくなったりするのは、もちろん良いこと。しかし、ストーリーを語り起こす起点にいきなり肯定的な形容詞が出て来てしまうと、それに続くストーリーが「よし、頑張ろう..」という短い話で終わってしまう。サウスウェストの「空飛ぶバス」にしてもスターバックスの「第3の場所」にしても、肯定的な形容詞はどこにも見当たらない。だからこそ、面白いストーリーの発火点になった。コンセプトはできるだけ価値中立的な言葉で表現するべき

    人間の本性を見つめる

    人間の本性は変わらない

    筋の良いコンセプトを構想するための3条

    ③コンセプトは人間の本性を捉えるものでなくてはならない
    なんとなく耳障りの良い「良いこと」を羅列するだけではユニークなコンセプトにはならない。人間の本性とは、人はなぜ喜び、楽しみ、面白がり、嫌がり、悲しみ、怒るのか、何を欲し、何を避け、何を必要とし、何を必要としないのか、ということ
    ex. スターバックスの「Third Place」、サウスウェスト航空の「空飛ぶバス」

    コンセプトは、自分の頭でじっくりと考えるしかない

    ごく日常の生活や仕事の中で、嬉しかったこと、面白いと思ったこと、不便を感じたこと、頭にきたこと、疑問に思ったこと、そうしたちょっとした引っかかりをやり過ごさず、その背後にある「なぜ」を考えることを習慣にする。回り道のように見えて、これがコンセプトを構想するために最上にして最短の道

    Ⅳクリティカル・コア
    戦略ストーリーの一貫性の基盤となり、持続的な競争優位の源泉となる中核的な構成要素
    クリティカル・コアの条件
    ①他のさまざまな要素と同時に多くのつながりを持っている
    ②一見して不合理に見える

    戦略ストーリーの骨法10か条
    ①エンディングから考える
    エンディングを固めるためには、実現するべき「競争優位」と「コンセプト」の2つをはっきりとイメージする
    目標=長期利益 手段=競争優位 目的=コンセプト
    目標は、長期利益だが、目的がないがしろにされて目標だけが前面に出て来てしまうと、戦略が一方的に到達目標を示すだけで、無理強いの手段になりかねない。実現しようとする顧客価値がコンセプトに凝縮され、それが組織の人々の共通の目的になっていなければストーリーは動かない。
    ストーリーの中で登場人物を自然と動かすためには、本当のところ「何を」提供するのか、それを「誰が」「なぜ」喜ぶのかを突き詰めなければならない。コンセプトが「誰に」「何を」「なぜ」の3つにこだわったものになっていることが大切。

    ②「普通の人々」の本性を直視する
    「誰に嫌われるか」という視点が大切
    できるだけ価値中立的な言葉を使う

    ③悲観主義で論理を詰める

    ④物事が起こる順序にこだわる
    因果論理の組み立てに不可欠な条件は、共変関係だけでなく、時間的先行性があること

    ⑤過去から未来を構想する

    ⑥失敗を避けようとしない

    ⑦「賢者の盲点」を衝く
    ベストプラクティスの戦略論は「あからさまによいこと」の集大成
    賢者の盲点を衝くためには、その業界の内外で広く共有されている「信念」なり「常識」を疑ってみるという姿勢が大切

    ⑧競合他社に対してオープンに構える

    ⑨抽象化で本質を掴む

    ⑩思わず人に話したくなる話をする
    ビジネスも総力戦。「何を」「どのように」も大切だけど、それ以前に「なぜ」について全員の深い理解がなくては実行にかかわる人々のモチベーションは維持できない。

    思わず人に伝えたくなる話。これが優れたストーリー


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著者プロフィール

経営学者。一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社)などがある。

「2023年 『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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