「見せかけの勤勉」の正体

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569779881

感想・レビュー・書評

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  • 社会人になった20年前から、一般的に日本人は残業が多くて有給休暇を使わないほど勤勉であると認識されていると思います。実際にはそれ以上前からそうだったと思いますが、特に派遣社員が多くなるまでは、正社員の数が多くて、部署によっては暇を持て余しているところもあったように記憶しています。

    この本では、「そのような日本人の姿は見せかけであって、その正体は異なるのでは」と、太田氏が述べています。この本の内容を読んで耳が痛い人がいるかもしませんが、成熟社会となって黙っていても成長していた10年以上前の日本や今の中国とは違っているので、成熟社会にあった働き方、更にはそれを評価するシステムを確立すべきだと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・日本人は決まった仕事を決まったメンバーでこなすのは得意だが、新しいプロジェクトを新しいメンバーで進めていくのはダメ(p22)

    ・日本人の「やる気」はもともと強くなかった、組織と仕事を取り巻く環境が大きく変わったことで、今それが表面化しているに過ぎない(p27)

    ・「見せかけ」でなく「本物」のモチベーションは、本人の自発性から生まれる(p32)

    ・能力を発揮させるための能力=メタ能力、の発達度合いに差がある、つまり、物事に取り組むモチベーションの質が違う(p36)

    ・サテライトオフィスや、評価者が離れた本社にいる営業所のスタッフはおしなべて帰りが早い(p47)

    ・目標がかえってモチベーションを引き下げる作用を及ぼしている(p63)

    ・退職理由をきかれた場合には、表向きには「周りの人が認めてくれなかった」「相手にしもらえなかった」とは答えずに、キャリアや仕事内容、待遇といった答えをするもの(p84)

    ・評価要素としては、能力面・業績面・情意面の3側面から評価する、情意とは、積極性、規律性、協調性である(p103)

    ・苦労すること、汗をかくことだけが尊いという社会は暗いし、恐い(p115)

    ・「やる気主義」は、その位に反して必ずしもやる気のアップに結びついていないばかりか、むしろ逆にそれを低下させている(p118)

    ・「やらされ」モードと、「所有」モードとのモチベーションの違いは、当然、仕事の成果に大きく影響する(p161)

    ・未来工業の社員にやる気を出させるポイントは、1)社員をラクにさせる、先にアメを与えてやる気にさせる、2)管理をしない、である(p169)

    ・日本人の低いモチベーション、生産性をもたらせている要因として、1)終りの見えない残業と休みにくさ、2)上司からの理不尽な要求、3)過剰な管理、4)人間関係の歪み、5)処遇の不公平感、がある(p170)

    ・人間の認知能力を理解している欧米企業は、成果主義の評価は3段階から4段階を採用している(p177)

    ・モチベーションが高すぎるとパフォーマンスが落ちる要因として、1)視野が狭くなる、2)不安が生じる、である(p187)

    ・上司は、部下の管理以外のことに大きな目標を持つと良い、片手間(無責任と異なる)にやるから良い妥協点、解決策が見つかる(p193、200)

    ・スイーパーリーダーとは、1)部下が直面する障害を取り除き、2)目標へ向かう動きを見定めて、3)成果が挙げられるように支援する、が役割(p210)

    2010/09/26作成

  • まあ、そうかなと同意するところは多い。本当のやる気のある人が楽しんで仕事ができて、そうでない人たちが邪魔さえしないなら、別に問題ないのではないか。

  • レビューはブログにて
    http://ameblo.jp/w92-3/entry-10770495724.html

  • ビジネス書ではあるけれど、モチベーションを扱った本なので学習について考えることもできる。要旨としては、おおよそ以下のような主張だ。

    ・日本人は残業するなど「やる気」に満ちていたように見えるが、それは見せかけのものであり、もともと仕事へのモチベーションは低かった。
    ・それは、「やる気」をなくす要因が様々にあるからである。
    ・その要因を取り除くことで、「やる気」を出すことができる。

    社員に「所有感」を持たせることで自発的なモチベーションを引き出すとか、上司はプレイング・マネージャーであったほうが「片手手間」に社員を管理するようになるのでかえって良いとか、わりと自分が共感できることが書いてあった。

    ところが、そうであるにもかかわらず、読んでいてあまり説得力を感じない本でもあった。それはきっと、主張の根拠が全て具体例で、いわば事例主義に陥っているからだろう。おそらく、反対の立場の人であれば、反対側の事例を同じように集められてしまうからだ。具体例だけで人を説得することのむずかしさを感じた本でもあった。

著者プロフィール

同志社大学政策学部教授

「2022年 『何もしないほうが得な日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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