毒 青酸カリからギンナンまで (PHPサイエンス・ワールド新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569802855

作品紹介・あらすじ

わずかな量ですぐに人を死にいたらしめる毒もあれば、じわじわと効いて長い時間をかけて毒性が現れるものもある。ある事件では、急性のトリカブト毒にフグ毒をまぜることで、毒性の発見を遅らせることが行われた。この本では、毒の基本知識から、毒の分類、毒にまつわる歴史、毒と食べ物、犯罪や事件と毒、麻薬と覚醒剤まで、様々な毒を取り上げる。毒は、使い方次第では薬になることもあり、その不思議さに迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 毒の解説書。フグやキノコのような食べ物の中の毒から麻薬と覚醒剤のような依存性ドラッグまで様々な毒を幅広く紹介する。

    大麻は立派な毒である。大麻のタールは発がん性物質は煙草の3倍から4倍もある。この点でも大麻のような依存性ドラッグを煙草と同レベルに扱って相対化することは正しくない。しかも、この大麻の毒は遅効性である。すぐに効果が出ないために大麻は有害ではないという勘違いが出やすくなる。大麻の煙から発がん性物質を吸うことになる。大麻を吸引する本人だけではなく、周囲の人も発がん性物質を吸いかねない。やはり大麻は有害である。

    人の味覚は五種類ある。甘味・塩辛味・苦味・酸味・旨味である。これらは五味と呼ばれる。辛さは味覚ではなく痛覚である(123頁)。辛い味で喜ぶことは痛くて喜ぶようなものである。辛さを売りにするメニューがあるが、味で勝負していないことになる。素材を味わいたい向きには辛さは余計である。辛いメニューと辛くないメニューでは辛くないメニューを選択したい。

  • 様々な毒について詳しく書いてあるだけでなく、毒が絡んだ事件などについても触れてあり非常に興味深く読ませて頂いた。

  • 請求記号:491.5||F 89
    資料ID:C0038317

  • 新書文庫

  • ジャンルの棚に入れるなら『科学』ではなく『社会』。毒と人体についてではなく、古今東西の毒が関与した事故や事件のエピソードの紹介が中心。それでも毒性や症状を切り口にしていればまだ知見を得られただろうが、書き口からはどうしても毒が用いられた背景の物語の方に目がいってしまい、あまり残るものがない。「色んな毒物が色んな使われ方をされてるなぁ」といった程度に眺める分には楽しめるので、気軽に臨むなら悪くはないかもしれない。

  • 「毒」という言葉だけで、なんとなく分かった気になっている毒の定義や薬との境界が解りやすかったです。
    麻薬や毒を使用した犯罪の話が面白かったです。

  • 体に悪いのに、人が魅了されて止まないモノ「毒」。人の歴史も毒とともに…。「毒とともに生きる」我々の人生のための毒の教養。


     現代人だって、タバコ、薬、食べ物、毒と紙一重の物とつきあっている。毒から目をそらさず、正面から向き合うために読むべき一冊だと思った。

    _______
    p33 LD50
     毒の強さを表す有名な単位。半致死量(Lethal Dose)の意味でこれを与えられた動物の半数が死ぬと想定された量。これが小さいほど毒素が強い。

    p48 毒の種類
     Poison=全ての毒に対する意味、Toxin=生物由来の毒素の意味、ポイズンより一段階狭義、Venom=動物由来の毒素のうち、蛇やサソリなどの刺咬毒の意味。一番狭義

    p56 トリカブトは生薬になる
     トリカブトの根は毒矢の毒薬になるが、加熱処理すれば「附子」と呼ばれる漢方の生薬になる。

    p61 アルカロイド
     アルカリ性を司る化合物。毒素はこのアルカロイドに分類されるものが多い。

    p65 マリリンモンローは最期もセクシー
     マリリンモンローは直腸に睡眠薬を浣腸して自殺したといわれている。マニアック・セクシー

    p65 青酸カリはガスがヤバい
     青酸カリの毒薬を飲んで、胃酸で発生した青酸ガスを吸い込んで死に至るらしい。

    p79 藤原薬子も毒で死んだ
     早良親王の祟りを恐れて嵯峨天皇に譲位し上皇になった平城上皇が、寵愛した愛妾:藤原薬子に煽られ天皇復帰を図って嵯峨天皇と対立した「薬子の変」で有名なあの薬子。嵯峨天皇に追い詰められ、平城上皇は出家し、薬子は毒を仰いで死んだ。ちなむに薬子は毒見役の役職名らしい。薬子が毒で死ぬとはなんか皮肉。

    p87 華岡青洲の麻酔薬
     一時期NHKのドラマで有名になった華岡青洲。『華岡青洲の妻』に詳しい。必読

    p90 シーボルト事件
     シーボルトが帰国する際に土生玄硯が送った葵の紋服や高橋景保の送った『大日本沿海輿地全図』(伊能忠敬)が不正輸出されるところだったと検閲で見つかり、土生や高橋は処罰され、シーボルトも国外追放になった。
     この一連の事件は、シーボルトが土生にベラドンナという毒草(人の瞳孔を開く薬の原料となる薬草)を分けたお礼に葵の紋服をもらい、それが見つかったということ。ここにも毒(薬)が関わっている。

    p96 賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ
     化学兵器、原爆、人の科学は危険とともに進化してきた。この毒の知識も歴史に学ぶか、経験に学ぶか、

    p98 覚せい剤「ヒロポン」
     かつてヒロポンという名前で合法覚せい剤として日本でも売っていた。しかし、1951年に覚せい剤取締法で禁止された。現代ではSとかSpeed何て名前を変えている。
     ちなみにヒロポンは「疲労にポン!」ではなく、「philopons」という仕事を好むというギリシア語の意味である。

    p115 フグ毒には人工呼吸
     フグ毒の救命で最も大事なのは、呼吸の確保である。人工呼吸をしっかりやれば致死率は6%程度になるらしい。

    p119 銀杏は歳の数まで
     言い伝えで「銀杏は歳の数まで」といわれる。銀杏を食べすぎると、GABAと呼ばれる鎮静作用のある脳内物質の分泌を抑え過剰興奮状態になる。度が過ぎて痙攣状態になる。

    p124 umami
     味覚の旨味(L-グルタミン酸ナトリウムなど)は日本人が発見した。だから海外でも旨味はumamiである。

    p124 苦みと年齢
     酸味は果実の未成熟や腐敗、苦みはアルカロイド系の味、つまり毒素を意味する味覚と言える。だから子供は苦いものや酸っぱいものを嫌うのかもしれない。歳とれば耐性がつくから好むようになるのかな。

    p127 猫にアワビ
     言い伝えで猫にアワビを与えると耳が落ちるという。アワビには餌の海藻に含まれるピロフェオフォルバイドaが含まれており、これを猫が食べて日光浴すると化学反応が起きて皮膚炎を起こす。食べ過ぎるとついには耳を落としていうということだろう。

    p147 ドライアイス
     400gのドライアイスは室温1時間で200㍑のCo2になる。室内が2000㍑の車内でこの量のドライアイスを溶かして、一時間締め切っていると中毒を起こす。

    p180 ブルガリアの事件カッケー
     ブルガリアから西側世界に亡命したブルガリア人作家の暗殺がすごい。1978年、バスを待っているところでこうもり傘に仕込まれたガス銃で毒針を飛ばされて死亡した。この時の毒はリシンだった。

    p197 日本もアヘン戦争をやっていた
     1931年の満州事変の時期に関東軍は満州と華北でアヘンを流行らせていた。関東軍は極秘に芥子を栽培して麻薬を製造していたようだ。アヘンで人民を骨抜きにして、さらに外貨も巻きあげた。

    p199 兵隊病
     クリミア戦争、アメリカ南北戦争、普仏戦争で医師はこの頃から使われ始めたモルヒネを使いまくった。その結果、戦傷者にモルヒネ依存症が多数出た。これを「兵隊病」といった。

    p231 葛根湯
     葛根湯には生薬のマオウが含まれており、そのエフェドリンはドーピングにひっかかる。

    ____

     毒は教養である。

  • 自然界に元からある毒から人間が作り出した毒まで載ってますが
    やはり一番の読みどころは毒を使った犯罪の説明でしょうか。
    毒と薬は表裏一体、というか医毒同源。
    さじ加減によって薬にも毒にもなる、
    病原菌やウイルスと同じく
    人間にとって毒でも他の生物には全く影響を現さない
    結局毒というのは人間の都合によりけりってところでしょうか。

  • 斜め読み。

  • 古今東西の「毒」について記した書。過去には日本でトリカブト毒にフグ毒を混ぜ、毒の発現を遅らせた事件もあったとか。恐ろしい。ちなみに私、ガラかめの中では「毒」のパントマイムが一番好きです。

    The book introduces poisons and accompanying stories of all ages and countries. I got a chill...

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著者プロフィール

日本薬科大学教授,薬学博士,薬剤師。
1951年生まれ。東北大学薬学部卒業,東北大学大学院薬学研究科博士課程修了。天然物化学専攻。米国イリノイ大学薬学部博士研究員,北里研究所室長補佐,東北大学薬学部専任講師,青森大学工学部教授などを経て現職。日本薬史学会常任理事。著書は,『アルカロイド』(共立出版),『アミノ酸』(東京電機大学出版局),『毒と薬の科学』(朝倉書店),『毒と薬の世界史』(中央公論新社),『〈麻薬〉のすべて』(講談社),『カラー図解 毒の科学』(ナツメ社),『民間薬の科学』(SBサイエンス・アイ新書),『毒! 生と死を惑乱』(さくら舎)など多数。

「2017年 『毒と薬の文化史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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