足利の血脈 書き下ろし歴史アンソロジー

  • PHP研究所
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569848402

作品紹介・あらすじ

新書『応仁の乱』がベストセラーになって以降、関心が集まっている「足利氏」は、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』でも注目された。
本書は、戦国を語る上で欠かせない「足利氏」をテーマに、7名の歴史時代作家が書き下ろした短篇小説を収録したアンソロジー。
著者は、2020年上半期の直木賞を受賞した川越宗一をはじめ、大人気シリーズ「口入屋用心棒」の著者の鈴木英治、2020年の中山義秀文学賞を受賞した木下昌輝など、ベテランから新進気鋭まで、実力派ばかり。
これまで戦国史を語る上で、メインで書かれることがなかった「足利氏」を軸に、この時代の画期となる出来事を時系列で描いていくことによって、“もう一つの戦国史”が浮かび上がる。

■目次
第一話 早見 俊◎嘉吉(かきつ)の狐--古河(こが)公方家誕生
第二話 川越宗一◎清き流れの源へ--堀越(ほりごえ)公方滅亡
第三話 鈴木英治◎天の定め--国府台(こうのだい)合戦
第四話 荒山 徹◎宿縁--河越夜合戦
第五話 木下昌輝◎螺旋(らせん)の龍--足利義輝弑逆(しいぎゃく)
第六話 秋山香乃◎大禍時(おおまがとき)--織田信長謀殺
第七話 谷津矢車◎凪(なぎ)の世--喜連川(きつれがわ)藩誕生
コラム 喜連川足利氏を訪ねて--栃木県さくら市歴史散歩

収録作品は、いずれも書き下ろし!

感想・レビュー・書評

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  • 古河公方 足利家と、忍び さくら一族を描いた歴史小説 アンソロジー、連作短編集

    史実の裏側では、こういった暗躍もあったかも知れない。時代に想いを馳せました。
    巻末の系図が有難いです。

  • 足利尊氏とかが出てくるのかと思ったら、「足利の血脈」という、室町幕府全盛期のその後から江戸時代に至るまで、足利の血脈がどう受け継がれていったのかが描かれている。7人の作家陣によって時系列に沿って、まるでバトンを受け渡しながら連作のような作りになっている。
    内容的には戦国時代の初期、室町幕府の関東本社といえる、足利家の分家となる古河公方、堀越公方から始まり、それらを守護する関東管領の扇谷上杉家、山内上杉家、さらにそれらを飲み込もうとする北条家がメインキャストとなる。
    前半の数編はたしかに面白い。なるほど、足利の血脈って、ここにも繋がってるのね、とか。
    が、後半はなんだか急に忍びの突拍子もない技が出てきて、忍びの暗躍が中心となる。なんでそうなった?

  • 戦国史を足利一族の視点から描くアンソロジー。
    古河公方発足から、喜連川藩誕生までの200年余りが物語の舞台となっています。

    室町から戦国にかけて関東一円の戦乱の原因は、鎌倉公方・管領の足利一族のいざこざのせいだと思っています。なんというか、関東だけに限らず、足利は血族の争いが多い気がする。尊氏と直義から始まってることですし。それでも、240年近く幕府として続いたことは珍しいことでしょうね。

    時代を下りながらのアンソロジー7話。一つの流れとして、関東公方家に仕えた忍びの「さくら一族」の存在があります。「足利の血脈」というタイトルですが、「さくら一族」伝でもあります。
    『嘉吉の狐』『螺旋の龍』『大禍時』の3話では、足利義教、義輝、織田信長の暗殺に関わったと配役。特に『螺旋の龍』は伝奇色が強くて好きです。

    足利一族。特に関東の公方と管領の関わりは、いま一つ把握ができていません。
    公方も管領も多いのですよ。そして、それぞれの陣営が頼りにする長尾も北条も関東豪族も、多い!しかも、長い間争うから、代替わりしていて家系図の把握が大変!なまじ、権威はあるだけに、誰がどこの養子になったり、実質管領職は誰々で、とかごっちゃになるんですよ。
    それを把握しながら、読む進めるのは楽しいのだけど大変。大変だけど楽しい。
    このアンソロジーの「さくら一族」のように、物語に一つの幹があると理解がしやすくていいです。

    歴史小説楽しむには、まだまだ精進が必要です。

  •  著名作家のアンソロジー『足利の血脈』ですが、副題で、さくら一族の聖戦と付け加えたい。鎌倉公方〜古河公方・堀川公方の興亡と支える忍者の物語。読後としては足利の歴史よりさくら一族の伝奇。面白い企画かと思いますが、個人的には各作品の波が合わず、一人の作家の連作の方が読みやすかったのでは思います。しかし第七話は最終話にふさわしく感動しました。本作は二度目の方が良いかもしれません。

     足利義輝弑逆から織田信長謀殺はもっと盛り上げて欲しいところです。しかし敵城に大胆に忍びこめる信長の忍びは、どうして光秀の京洛進入を安々と許したのか?疑問のままです。某歴史の専門家は本能寺の変に即応した秀吉は忍びを信長の周辺においていた(史料なし)と匂わせていますが、光秀も本能寺進入の前に忍びを使っていたのではと(実際に変に参加した本城惣右衛門の覚書によると、最初に門は抵抗なく開いています)この辺の暗闘があるかと期待していました。

    ※以下、本作とは関係の無いものですのでスルーして下さい。

    義輝の弑逆についてはフロイスの日本史が詳細で面白い(三好の兵、約1万の中には数百人のキリンシタンがおり、情報元かと)
    『この目的(義輝殺害)をもって、三好殿(義継)は飯盛(城)から一方弾正殿(松永久秀)の息子右衛門佐(久通)は奈良から出発し、両者は約1万2千名のきらびやかで装備をよく整えた兵士たちを伴って都に向かい、市民を悩まさないようにと彼らは郊外半里のところに居を定めた』 
    『三好殿(義継)と右衛門佐(松永久通)は、自らの意図をより巧みに隠そうとして、約70名の騎馬の者とともに出かけ、慰安のために市街から半里距たった清水(寺)という名の僧院に赴くよう見せかけた。彼らはしばらく道をたどったが、突然向きを転じ、急遽公方様の宮殿に騎行した』
    『(義輝は)長刀を手にし、まずそれで戦い始めたが、数名を傷つけ、他の者たちを殺戮した…敵に接近しようとして長刀を投げ捨て刀を抜き…彼の胸に一槍、頭に一矢、顔面に東傷二つを加え、彼が傷を負って地面に倒れると、敵はその上に襲いかかり手当たり次第に斬りつけ殺害』 

     そして最近注目されている『乙夜之書物』では本能寺の変で光秀は鳥羽にいたとのこと。確かに信長や寺近くに宿所をとる家臣に見つからずに1万超の兵士が侵入するのは不自然。斎藤利三が精鋭数百でまず奇襲したか。光秀は先例として永禄の変で成功した義輝殺害を当然頭においていたはず。永禄の変も、本能寺の変も通説では1万を超える兵が京の街を奇襲したことになっているが、あの街路を大軍で気づかれず奇襲とは作戦として矛盾している。

    ■目次
    第一話 早見 俊◎嘉吉(かきつ)の狐--古河(こが)公方家誕生
    第二話 川越宗一◎清き流れの源へ--堀越(ほりごえ)公方滅亡
    第三話 鈴木英治◎天の定め--国府台(こうのだい)合戦
    第四話 荒山 徹◎宿縁--河越夜合
    第五話 木下昌輝◎螺旋(らせん)の龍--足利義輝弑逆(しいぎゃく)
    第六話 秋山香乃◎大禍時(おおまがとき)--織田信長謀殺
    第七話 谷津矢車◎凪(なぎ)の世--喜連川(きつれがわ)藩誕生
    コラム 喜連川足利氏を訪ねて--栃木県さくら市歴史散歩


  • 室町時代、なかでも鎌倉公方〜喜連川藩の流れは歴史の中で自分が一番興味がある部分です。さくらの里という元ネタバレバレのはじまり方ですが、アンソロジーでそれが貫かれているのがまたいい。「足利の血脈」というからには、いっそのこと足利義兼あたりまで遡ってもよかった。

  • 足利義教は時宗の阿弥を諜報網のように使っていた
    と明石散人先生が書いていた気がする(未確認)

    万寿王丸主役、自分を囮にして赤松満祐邸に義教を
    呼びつけ暗殺した
    本作において阿弥は踊念仏の集団として万寿王丸の
    潜む郷に乗りこみ、義教の手で一緒に斬殺された
    証拠隠滅らしい
    しかし、諜報網を早く手放したツケが自分の死を防
    げない事につながる

  • 書評はブログに書きました。
    https://dark-pla.net/?p=1353

  • 足利氏の血脈を7人の歴史作家が紡ぐアンソロジー。
    ただ単に足利氏を描くだけでなく、忍びの血脈も同時に描かれており、重層感があった。

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著者プロフィール

1968年福岡県生まれ。活水女子短大卒業。2002年『歳三往きてまた』でデビュー。2017年『龍が哭く河井継之助』で第6回野村胡堂文学賞受賞。柳生新陰流居合道四段。主な著作に『伊庭八郎凍土に奔る』『密偵』『獺祭り白狐騒動始末記』などがある。

「2022年 『氏真、寂たり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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