憧れの女の子 (双葉文庫)

  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575518733

作品紹介・あらすじ

「次は女の子を産むわ」そう宣言して産み分けに躍起になる妻。そんな妻の決断に淡い違和感を抱く夫。互いに心揺れる日々を経て、夫婦がたどり着いた先は-。思いがけないラストが深い感動を呼び起こす表題作「憧れの女の子」。男女の心の行き違いから浮かびあがる人間の本質を鮮やかに掬いとった物語、全5編収録。

感想・レビュー・書評

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  • ある男女を取り巻く風景

    は、自分がいかに性役割が潜在意識にあったのかを感じさせられた。
    口では男女平等だとは言うけど、根底の意識ってなかなか変わらないもんなのかな

  • 典型的な帯買い(帯を見て惹かれて買った)した本。そして帯を信じて買ってよかった、と思った本。

    「次は女の子を産むわ」と宣言して産み分けに必死になる妻を、言い表せない違和感を持ちながら見つめつつともに暮らす夫が主人公の表題作。その他四編。
    全てにおいて、ハッピーエンドではないけれど希望が見えないわけでもないラストが秀逸で、独特な読後感だった。
    ちくりと胸が痛むけれど、泣きたいのとは違うような。

    “普通”な人間なんてこの世の中にはいないのかもしれない。一見何の問題もなく、何の悩みもないように見えても、その実はわからない。
    そして“普通の関係”というものもない。
    それぞれ個性がある人間同士の関係には、それぞれの進み方があり、それぞれ様々な出来事がある。
    危ういバランスながらもうまくいくこともあるし、努力をしてもうまくいかないこともある。

    ほんの些細な心理描写や登場人物の言葉が、胸に刺さったり、こういう感情ってあるなぁと思ったり。

    いわゆる叙述トリックの物語もあるのだけど、本当に騙された気分ですごく楽しかった。
    えっえっ何なに?(戻って読み返す)そういうことか!巧い!一本取られた!みたいな。笑
    叙述トリックの小説ってけっこう話題になるから事前に知っちゃってて疑いながら読むパターンが多いけど、まったく知らなくてしかも巧いと本当に楽しいんだと思った。

    朝比奈あすかさん。初めて読んだ作家さんだけど、他のもこんなに面白いのだろうか。

  • 表紙可愛い、中身しんどい。でも、現実。

    だけど、愛がいっぱい。しんどい環境で、物語の登場人物たちは、深い愛を感じながら生きてる。

  • 前回長編の作品を読んで面白かったので読んでみました。
    短編でここまで面白いのはなかなか無いのでとても良かったです。
    さくさく読めてすぐに読み終わりました。

  • 巻末の解説で宮下奈都さんは絶賛して再読のたびに違う感動が味わえるようにあったけど自分はすんなり理解できない部分もあったり…短編の中にいろんな世代のいろんな人の人生が垣間見れて楽しめた。『弟の結婚』には感情移入して読んでしまった。

  • ふつう、と、ふつうじゃない。
    当たり前、と、当たり前じゃない。
    大丈夫、と、大丈夫じゃない。
    境目はあいまいで、自由で、不自由だ。
    強く美しく生きるってなんだろう。

  • 記録

  • 穏やかな文体で語られる、おんなのこ、女性、男性性をテーマにした短編集。
    短編集だけど、自分はさて、、と、思わず省みてしまう。
    良い本でした。

  • 女の子がほしい敦子と、男児2人で満足している俊彦。男女として愛し合っていた2人のかたちがどんどん変わっていく作品。女の子を産むための感情のないセックスが生々しい。

  • それぞれがそれぞれに想う事があって、それぞれに愛がある。
    自分の中に芯があって、それはそれは硬い芯なんだけれども、ふとした瞬間にそれは硬くないのかもしれないと思える。
    それが早かろうが遅かろうが、きっと思える。

  • 「ある男女をとりまく風景」は種明かしまで勘違いしたまま読んでたからびっくりしたし、無意識でフィルターかけてたんだなということに気がついた。

  • 宮下奈都さんの解説が全てを物語る。素晴らしい文才だなあと。「ある男女をとりまく風景」は秀逸。やられたと思わざるを得ない。

  • 表題作をはじめとする、短編5編からなる作品集。たしか、本の雑誌の年間ベスト10からだったか。各主人公たちには、それなりの試練が降りかかるんだけど、最後はハッピーエンドとはいかないまでも、救いのある結末、といった結構。それぞれに味わい深いものがありました。

  • 実際にいるんだろうな、このような悩み、ありそうな人間模様。
    ゆえにすんなり入ってきた。

  • 「次は女の子を産むわ」と宣言して、産み分けに躍起になる妻、違和感を覚えながら異を唱えられない夫。様々な葛藤を経て夫婦がたどり着いた先は・・・「憧れの女の子」を含む5つの短編。

    とにかくどの作品も良くできている。
    それぞれに微妙なテーマを扱いながら決して重すぎず、心に引っ掛かりを残すもののラストは小さな希望があって読後は決して悪くない。
    「ある男女をとりまく風家」では絶妙な叙述トリックにまんまとしてやられ、「リボン」では人との関わり方の難しさをしみじみと感じ、「わたくしたちの境目は」ではがんで妻を亡くした夫の後悔の念を思い泣いた。

    5つの作品はそれぞれに違う年齢、境遇の男女の機微をうまく描いているから、読み手はいずれかを自分の人生に引き寄せて感じ入ることが出来るのかもしれない。

  • はじめての作家さんの短編集。
    すごい。なんというか、話のつくりもテクニックも文章も上手で衝撃を受けた。自分の中にある男女の固定観念を突きつけられたり、色んな意味で男女の違いを考えさせられたり。女性を書くにあたっての視点も面白い。
    「ある男女を取り巻く風景」のテクニックに圧倒され、「リボン」のメッセージに泣きそうになった。あえて好きなのあげたけど、本当に全部良かった~~。

    人間のマイナスの感情がプラスに働く瞬間を丁寧に的確にリアルに書いてるのもすごい。共感してしまう人は多いのではないかなあ。

    シンプルに、年を取るのもいいな、どんな生き方になってもその時々で幸せがあるんだなと、前向きな気持ちになれる。本当に良い小説を読んだ。満足感というより幸福感を感じられる一冊。

  • どうしても女の子が欲しくて、産み分けに躍起になる妻に戸惑いながらも協力していく夫の揺れる心情を書いた「憧れの女の子」
    普通の男女の話と読み進めていくと、えっ!そうだったの?びっくりさせられた「ある男女をとりまく風景」他3編

  • ほのぼの系。
    休日の昼間に読むのにちょうどよい。

  • 女の子をどうしても産みたい、その一心で産み分けに躍起になる妻を描いた表題作を含んだ全5篇の短編集。

    「ある男女をとりまく風景」は秀逸!やられた!
    「弟の婚約者」も、女性の狂気じみた感情が細かく描写されててゾクゾクしながら読んだ。
    リピートしたい一冊。

  • 男女を取り巻く5つの短編集

    次こそ女の子を産む、と産み分けをはじめる妻
    主夫と働く妻のすれ違い
    弟から紹介された彼女とヨガインストラクターの姉
    カフェ経営者の男性とリボン
    妻に先立たれた祖父と混浴温泉の家族旅行

    どの話もすきだった、特に1つ目と最後の話がすき
    読みやすくテンポも良い

  • 人生を二人で歩んでいこうとしている、または歩んでいる人たちの話。

    最初の
    ムダうちしないで。

    が強烈に残っている。

  • 朝比奈さん初読みです。5編のお話からなる短編集、理想と現実の間のギャップに困惑したり、悩んだりしながら、前向きに生きている人達の話が面白かった。どの話も主人公の背景がきちんと描かれているので時に共感したり感情移入して読みました。うまい作家さんだなあ……『憧れの女の子』の意味はそっちか、そして『ある男女をとりまく風景』はすっかり騙されました。ゲスなDV男だと思っていたのに……やられたーって感じ。他の作品も読んでみたい。

  • 表題作は、どうしても女の子の母になりたがっていた妻を見下していた夫が、物語の後半にいくに従い女の子の父になれない寂しさに気持ちが変わっていくのが意外性があり怖くてリアル。

    出産前の検査も生み分けも個人の自由だと思うが営みそのものや、命の芽生から神々しさが失われるのは確かかも。

    他の短編もどれも身近に感じられる物語で、ラストが爽やかな光が想像出来るのがとても良い。
    もがいてあがいて、何かが終わって見えてくるものがあるという事を教えてくれる。

  • しあわせのかたちは人それぞれ

  • 年末恒例の「おすすめ文庫王国」が出たので早速購入。
    お金を払う前にそのまま手にして載っている面白そうな本を物色するが、棚に刺さっているものがなく、ようやくこの本を見つけた。
    “憧れの女の子”って、お話を読んでみれば、ああそういうことかと分かるのだけど、あまり惹かれないタイトルね。

    男の子ふたりを授かっているところに、妻が3人目にどうしても女の子を産むのだと頑張る夫婦の姿を描く第1話。
    私のところは男の子ばかりで、元々男の子が欲しかったので満足なのだけど、大きくなってくるとむさくるしさも増すので、女の子がいたらなぁと思ったこともないではない。だけども、これは天の配剤だからなぁ。
    というように思っているところに、この話、作りとしてはなかなか巧みだと思うけど、私自身の3人目の子供が出来た時の出来事や職場恋愛の経験からすれば、事実はとてもベタでも余程劇的だったという思いもあって、ああいう風にまとめられると綺麗事に過ぎるように感じた。

    最初の話もそうだけど、第2話以降もこの本を貫いているのは個人の価値観をもとにしたすれ違い。
    2話目の彼の言っていることは尤ものように聞こえるけれど、相手のことを思った役割分担とか現状に満足しない努力などを放棄しているように思え、3話目の母親のあの態度に共感するところはないけれど、周りには理解しにくい弟の結婚はうまくいかないのではないかという気持ちとしては良く分かる。
    古いか新しいかということだけでなく、色々な視点があると思うのだけど、この本の作者は何に重きを置いているのか、良く感じ取れなかった。

  • 男女の心の行き違いから浮かび上がる人間の本質を鮮やかに描く5編の短編集。他人事のようで、実は私たち自身の物語。
    ある男女の特殊な状況を、斜め目線から捉えるような印象を抱くが、いちいち心に小さな棘が刺さったような気持ちになる。まさに、痛いとこ突かれたという感じ。男は男の、女は女の考えと感情があり、関係がうまくいくかどうかは、たとえ同姓でも分からない。その微妙な心うちを作者は捉えるのが非常に巧い。

  • 「憧れの女の子」
    男児二人の母親が、女の子を産みたいと必死になる話を、夫目線で綴る。女はいつまで経っても見栄っ張りでマウンティングの世界から抜けられない。男は無神経で無責任。
    結果、三人目も男の子だったことにケロッとしていた彼女は、前向きでで強い女性だなと思った。

    「ある男女をとりまく風情」
    ジェンダー論モリモリ。男と女と社会、結論なんてきっと出ない。

    「弟の婚約者」
    過去の婚約者とは姑問題で破綻し、趣味に毛の生えたような仕事で実家暮らしをしている主人公。
    弟の婚約者が気に入らない主人公は結婚に反対したい気持ちと弟に嫌われたくない気持ちでエゴ空回りする話。
    個性的で社会性はないかもしれない婚約者の女の子、幸せになれるといいね。
    主人公はエゴゴリラだよ。

    「リボン」
    イケメンでゲイのカフェオーナーの身の上話。
    壁を作って生きていく。

    「わたくしたちの境目は」
    息子と嫁と孫と、亡き妻との思い出の温泉へ旅行する話。
    病気の話は苦手だ。

  • かわいい表紙とは裏腹に、居心地が悪くなるような、リアルな描写にもぞもぞ。ある意味引き込まれました。
    憧れの女の子、弟の婚約者、リボンにもぞもぞ。ある男女を取り巻く風景の叙述トリックには騙されました。面白かったです。
    2016.07.20

  • リボンやわたくしたちの境目は、が考えさせられる。産むこと、女性、っていうのは、生きてく上で忘れてはいられない、一生ついて回る問題だと思う。

  • 初読み作家さん。なかなか読み応えあった。
    表題作は展開が意外というか・・・、敦子の女の子への並々ならぬ想いと、結果を受け止める強さの振れ幅に目をみはる思いがした。そしてさらに、先へ進もうとする強さ。親心とはまた少し違う、ひとりの人間としての思い、考え方を見た気がした。
    夫の俊彦目線だから感情的になりすぎることなく、その強い思いを感じられる。

    「わたくしたちの境目は」も味がある。妻を亡くした老人・勇造が、息子夫婦と孫とともに、妻とよく行った湯治旅館へ行く話。
    ガンで乳房をなくした妻、初子とあちこちめぐった温泉の記憶をたどりつつ、孫としりとりするという微笑ましい現実を交えつつ。
    混浴場で弾みから嫁の体の輪郭を目の当たりにし、その美しい曲線に息を呑む勇造。なぜ、乳房を再建したいという初子の願いを聞いてやらなかったのかと、後悔に襲われる。
    年老いてしわだらけになっても、そのしわひとつひとつに、彼女の生きた時間が凝縮されていた。体とはつまり生きた証なのだ。そう気付く場面が印象的。

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著者プロフィール

1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2000年、ノンフィクション『光さす故郷へ』を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作を表題作とした『憂鬱なハスビーン』で小説家としてデビュー。その他の著書に『彼女のしあわせ』『憧れの女の子』『不自由な絆』『あの子が欲しい』『自画像』『少女は花の肌をむく』『人生のピース』『さよなら獣』『人間タワー』など多数。

「2021年 『君たちは今が世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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