禁書売り: 緒方洪庵浪華の事件帳 (双葉文庫 つ 8-11)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575663631

作品紹介・あらすじ

蘭学塾・思々斎塾で勉学の日々を送っていた緒方章(後の洪庵)は、師匠の依頼により禁制の蘭学書を購入するため、禁書売りとの取引きを始めた。ところが、その男が殺され、困惑する章の前に、大坂の町を陰で支え守り続けてきた「在天」の一族で左近と名乗る男装の娘が現れる。若き日の洪庵と左近が大坂の町で起こる難事件に挑む、新シリーズ第一弾。

感想・レビュー・書評

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  • 2008年に『土曜時代劇 浪花の華~緒方洪庵事件帳』(NHK)で放送があったのを思い出して。
    放送当時、まだそこまで読書に熱心じゃなかったから、ドラマを観ただけで満足していた。本書を手に取った際も窪田正孝くん演じる主人公緒方 章(のちの洪庵)のヘタレっぷりが、まだ記憶の隅に残っていた。(「武芸に劣る設定なのに何であんなにムキムキ⁉︎」ってツッコミも一緒に笑)

    若き日の緒方洪庵(以下、章)が、大坂の町で巻き起こる難事件を謎の男装の麗人 左近とタッグを組んで挑むという謂わゆる推理もん。ドラマでは左近を栗山千明さんが演じられていたが頭がキレるところやアクションが本当にそのまんまで、栗山さんをイメージして読んでも違和感がなかった。
    章も医学を志す身でありながら未だ武士の矜持を捨てきれずにいるところが、ドラマ同様見どころの一つになっている。その未熟さ故に「章くん」と呼びたくなるのも著者の計算の内か。(そしてこちらも「窪田くん=章くん」の図が出来上がっている笑)

    武士の道理が通用しない大坂が舞台なのも個人的に好き。武家出身者がひょんな事からかの町に住み、なにわのあきんどや彼らの商売テク・マインドに戸惑い感化される図はコミカルだし、江戸とはまた違った面白さがある。
    当初はおぼつかなさが目に余る章だったが、左近と行動を共にするにつれ大坂に愛着を持つようになる。将来は必ず大坂に戻ると宣言したのも、事件を一緒に追ってきた読者からしたら(史実関係なしに)当然の流れだった。

    本書もドラマ同様、やはり一話完結型。計四話それぞれで事件が発生する。ストーリーも良いけれど、明らかになっていく左近の出自が一番興味深かったりする。
    そのキーワードの一つが「難波宮」。「難波宮跡公園」は通っていた学校からそう遠くはないが、別段利用していた訳でもない。でもその三文字を目にした途端、懐かしさでみるみる心が穏やかになった。自分も二人みたいに余所者だが、同じくこの町への縁を感じていたいのかも。

    推理もんとは言え、血も凍るような凶悪事件が軒を連ねている訳ではないから読みやすい。(いくら一話完結型でも、全話が猟奇殺人だったら身が持たん笑) それに読後こうして温かい気持ちになれたのは、章や左近、そして自分にとっても思い入れのある大坂(阪)に触れることが出来たからだと思う。

    「緒方洪庵事件帳」はあと一作続く。
    一文一文を踏みしめて、彼らを、変わりつつある大坂を、追っていきたい。
    「走り出してしもたら、もう、迷たらあかんで」

  • 土曜時代劇「浪花の華」の原作となった小説。
    主人公の左近を栗山千明さんが演じていて、その男前&ツンデレぶりにほれぼれしてしまい、思わず原作を読んでみたくなったのですが、ドラマの面白さもさてことながら、それ以上に原作の世界の方が魅力的でした。後の大蘭学者になる緒方章(洪庵)と架空の存在である闇の一族在天別流の紅一点左近のコンビが大阪市中で発生した様々な事件のからくりを解いていくというミステリー仕立ての短編集と言う体裁です。
    その短い話の中に大阪市中の情景、商人たちの動向や考え方といった時代背景・考証が緻密に配置され、まるで章と左近と共に大阪市中を駆けまわっているような気になるのは築山さんの面目躍如たるところでしょう。
    文章のテンポも軽快で、スリリングな展開やドラマではあまりクローズアップされなかった部分の挿入のバランスも違和感なく、また若狭や上総といったサブ・キャストの彩りもまた短い話の中で生き生きと描かれていて、その楽しさのあまりにあっという間に読み通してしまいました。
    左近が男装の剣士であり、相方を務める章が頼りないヘタレ男子といった設定はおそらく築山さんが女性だからということもあるのでしょうが、このある種王道をゆく凸凹コンビぶりは次作の「北前船始末」でもいかんなく発揮されています。ドラマでは神がかり的なツンデレぶりだった栗山左近だったのですが、、この原作では結構人間臭く章と鰻を食べたり、酒を呑んではクダを巻いたりしているのもまた魅力的なのです。

  • 「緒方洪庵シリーズ」の二巻。数か月前にこの前振りとも言える「遠き祈り-左近 浪華の事件帳 」(双葉文庫)を買って読んだのだが、男装の美少女の佐枝が如何にして宮中・公家に舞楽を奉納する在天別所の裏武闘集団の一員になるのかを描いたもの。

    そして今回買った「緒方洪庵シリーズ」はこの美少女が在天別所では官名・東儀左近将監として、大阪で医者の卵として修業中の緒方章(後の洪庵)をある写本を巡る事件から助けるところから始まる謎解き物語だ。左近が縦横無尽に剣を奮い、大阪の庶民の暮らしを脅かす事件を解決して行くさまはエンタメ時代小説として上級でこれに続く「北前船」も一気読みしてしまった。

  • 大坂の修行時代の緒方洪庵を主人公に、町の闇の実力者たち一族を描き、読み応えのある一冊だった。医学の道に真面目に邁進する章(若き洪庵の名)と、謎の女性・高麗屋のお佐江(在天の左近)のじれったい恋話も好ましかったしね。

  • 2010年9月12日義理の妹に借り。

    左近に萌え。
    大阪の地理に詳しかったらもっと楽しめるんだろうなあ…。

    ドラマ版では栗山千明が左近役を演じたそうで。
    ちょっと観てみたかった。

    タイトルに「緒方洪庵」とついているので、どこに出てるの?と思ってたが、ああそういうことなのかー。

    続編が出たらまた読みたい。

  • ドラマが面白かったので読んでみた。
    ドラマですでに筋書きを知っているため、オチは分かった状態なのだけど、それでも面白く読めた。
    「ラノベっぽい」「キャラクター重視」などと聞いていたけれど、あまりそのような感じはせず、さくさくと読みやすくて面白かった。

    ドラマから入った所為か、人物のイメージがドラマで固定されてしまっていた…(笑)

    続きの巻も買ってこようと思う。

    やはり時代ものは面白い。

  • NHKでやってたドラマが面白くてつい最後まで見てしまった。
    築山さんの名前は知っていたけれど、こんなタイトルの本はあったかな?と思っていたら文庫になったのは最近だったのか。
    人気なのか本屋さんでは一冊面陳で残っているくらいで状態がどうにも……;
    amazonさんで買おうかなあ。

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    結局図書館で。
    地の文・会話文ともに説明口調が多い文章に若干抵抗は感じましたが、当時の出版のことなんかが題材になっててそれなりに面白く読めました。
    わりとライトな感じで今時の時代小説だと思います。
    時代劇が好きだけど、時代小説は少し敷居が高いと思ってる方にはお薦め。

    緒方洪庵はとてもヘタレだと思います(キリッ)
    NHKドラマのキャスティングは非常にはまり役だったと読み終えた後に実感(笑)

  • 主人公は若き日の緒方洪庵。大阪を舞台に展開される事件は社会の暗部へと拡がるが「在天別流」の左近が義を以って解決に乗り出す。
    封建社会の身分制の枠に入らず大坂の街を陰で支えている「在天別流」の存在がこの小説の肝。

    フィクションだと思うが、史実も織り交ぜ、当時の世情もうまく表現されていて歴史小説としても読み応えがある。

    以下引用~
    ・この福沢百助は、五年後、とうとう念願の「上諭条例」を手に入れ、それを記念し、同日生まれた末の息子に、表題から一字とって、「諭吉」と名づける。

  • NHKのドラマ『浪花の華』があまりにも面白かったので、普段時代小説なんて全く読まないのに購入してしまいました。
    原作も予想を裏切らない面白さ!

    特に第三話「異国びと」はミステリとしての出来もかなり良く、ミステリファンも愉しめる作品です。

  • 蘭学塾で学ぶ緒方章(後の洪庵)が、左近と名乗る男装の娘に出会う。
    ドラマ浪花の華の原作。

    事件を通して左近と知り合い解決していく連作短編。
    あまり時代背景を知らないので、楽しく読める。
    左近を含め、登場人物たちが魅力的。

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著者プロフィール

作家

「2015年 『未来記の番人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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