日本の音 (コロナ・ブックス)

制作 : コロナ・ブックス編集部 
  • 平凡社
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本棚登録 : 67
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (127ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582634587

作品紹介・あらすじ

季節の始まりを知らせる"春雨の音"、雨の恵みを喜ぶ"蛙の声"、夏の夕立"驟雨の音"、波音を枕に聞く"さざ波の音色"、静寂を深める"虫の声"、冬の訪れを告げる"凩の音"…四季の移り変わりを音で知り、音に生きる日本人の暮らし。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の伝統音楽をたどる本かと古書店で手に取ったら、自然のあるいは人工の音が聞こえてくるような日本の美術作品を集めた本なんだね。

    雨音、雷鳴、虫の声、雪の声、渓流の瀬音、滝音、波音、潮騒、櫂の音、風音、松籟、鳥獣の鳴き声、花火、鬨の声、矢音、砧や機の音、楽の音、歌声、衣擦れ、と枚挙にいとまがない。

    たしかに、ページをめくるたびに聞こえてくる。こういう楽しみかたもあるのかと新鮮な驚き。面白い"縛り"だと思う。
    日本美術についてもっと知りたいと思いつつ、特定の画家から入っていくには無知すぎるため足踏みしていた。本書を置き石として、いずれ探索してみようかと思う。というのも、けっこう良い絵が揃っている。

    以下気に入った絵。
    菱田春草「落葉」「紅葉山水」(渋いクリムトみたい)
    、小林柯白「那智滝」(アンリ・ルソーを思い出した)
    竹内栖鳳「潮沙永日」(ブルー!)「雨霽図」(うせいず)
    村上華岳「二月の頃」
    長谷川等伯「松林図屏風」「恵比寿大黒・花鳥図」
    酒井抱一「夏秋草図屏風」
    田中訥言「若竹鶺鴒(せきれい)図屏風」
    歌川広重「梅に鶯」
    鈴木其一「流水千鳥図」
    岸連山「秋草群虫図」
    中村大三郎「ピアノ」
    上村松園「春宵」

    とりわけ中村大三郎の屏風絵「ピアノ」は、花鳥風月を題材にした絵とはまた別のインパクトがあった。これ好き。紅白の着物をきた女性がグランドピアノを弾いている姿。解説によるとシューマンの「小さなロマンス」を奏でているそうだ。

  • 日本人にとって身近でありながら、現代社会の中で忘れがちになってしまう「音」を、日本画や陶磁器作品などとともに紹介している一冊。日本人は昔からずっと、風や生き物の声に季節の移ろいを感じていたんですね。風の音や水の音にもたくさんの名前がついていることを知りました。いつまでも忘れたくない感性です。

  • 想像でもいい
    耳を澄ますと、こころが静かになる

  • 歴史
    暮らし

  • 「自然の音」「鳥獣の音」「歴史と生活の音」「年中行事の音」の章立てで、日本画・着物・皿などなどから音をすくいあげる。
    見て心で聴く本。(CDがあってもよかったのになぁ)
    コラムとして音に関するエッセイも6編。
    最後に画家略歴のまとめページもあり。

    装幀・レイアウト / SPICEdesign 谷平理映子

  • 絵を見てる時に視覚以外の感覚、特に聴覚忘れてる…という事に気がついた。

  • 私が一番好きな音は雨の音です。それから、朝起きて小鳥がさえずっていると聞き惚れます。

  • 心の琴線に触れる音の風景。

    本の中には色んな絵画作品が載せてある。
    まるで「美術音楽本」。

  • 著者・編者が明記されていない本は、文責の所在がはっきりしないため、どこか疑うような気持ちが出てきてしまうのですが、この本はそんなことも気にならなくなるほど、わかりやすくそして抒情豊かな内容でした。

    形に残らない音をどうやって文章で表現するのだろうと思ったら、日本画に示された音を紹介しています。
    自然の音、鳥獣の音、歴史と生活の音、年中行事の音に章分けされ、さらに細かく音別にまとめられているため、漠然と見ていたような絵画から、確かに音が聞こえてくるような感じがしてきます。

    随所に、著名な芸術家の音に関するエッセイも掲載されており、雰囲気たっぷり。
    日本語は語彙が豊かで、雨にしろ風にしろ雪にしろ、さまざまな表現があります。
    それをさらに絵で表現しようとする繊細さに気がつきました。

    音そのものも、わかっているようで知らなかったことがいろいろありました。
    「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋はかなしき」のように、鹿の遠音は哀れを誘うものとして歌の主題になっていますが、実際には他のオスを威嚇している雄鹿のうなり声なのだとか。

    孔雀の鳴き声は甲高く「イヤーン、イヤーン」と聞こえて、格調高い絵の雰囲気を壊してしまうとか。
    真雁の鳴き声はグヮーン、雁金はカリカリと聞こえるから雁になったのだろう、とか。
    鶉のオスはグァックルルル、メスはヒヒ、など、鳥の鳴き声が詳細に記されているところに、音へのこだわりを見ました。

    「砧の音」の項目があったことに驚きました。砧とは、公園の名前でしか知らず、どんなものかわかりませんでしたが、衣類用の布を打った木や石の台とのこと。
    打ちつけられる布のくぐもったかすかな音を、絵に入れる画家。
    その絵から音を連想しないのは、鑑賞する上でやはりなにか足りないのです。

    「囁き」の項目では、上村松園の『春宵』が、上品ながらもとても艶めいていて印象的でした。
    自然の大きな唸り声や爆音も紹介されていても、全編を通じて感じられるのは「耳をすませる」ことで体感できる、日本の光景の静けさ。
    これは、空間や空白をよしとする、日本人独特の美的感覚に繋がるものでしょうか。
    改めて、日本画の繊細さと奥行きの深さが感じられます。

    一つ一つの絵にきちんと解説がついているため、広重の「白雨」も大観の「緑雨」も、どんなものか理解でき、胸のすくような観賞を楽しめました。
    一冊丸ごと風流な本。
    絵画を鑑賞する時には、ただ平面的な美しさや構図だけでなく、その質感から立ち上ってくるように連想される音や温度までも、五感をフルに活動させるべきだと気付かせられます。

    広重は「風景の抒情詩人」と言われるとのこと。
    これまで眺めるだけだった東海道五十三次の宿場を、今度は音を感じて楽しんでみたいと思いました。

  • 自然の音
    鳥獣の音
    歴史と生活の音など

    特に
    水や風の音、木々の葉音
    鳥の気配や人のささやき

    そんな静寂の中での音を感じさせる
    日本画、着物の柄の数々

    音の本なのだけれど
    静けさが際立つ
    それが 日本の感性なのだろう

    しみじみと味わいたい

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