- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582855302
作品紹介・あらすじ
占領期以後、アメリカは日本の何に注目し、どこに導こうとしていたのか。保守合同、日ソ国交回復交渉、再軍備、内閣情報調査室の設立…。「戦後体制形成」の重要局面に、アメリカはどのように関わったのか-。二〇〇〇年代に公開されたCIA文書を基に、戦後体制形成の舞台裏を探る。
感想・レビュー・書評
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戦後史におけるCIAの活動について,重要なトピックスをテーマに記述した本。網羅的ではないので期待とは違ったが有益だった。
テーマ:
重光葵の日ソ交渉(北方領土)
野村吉三郎による海軍再建(海上自衛隊)
マイクロ放送網(当初:日本TV 結果:電電公社)
緒方竹虎の諜報機関創設(内閣調査室)
特に有益だったこと:
CIAの協力者とは,エージェント(自己の利益のために協力する者)だけではない。
高級官僚が対米交渉etcの円滑のために協力する場合。国益に反すると判断すれば協力しない。
マスコミ関係。日頃のつきかいの中で情報提供者となる。(米国視察で協力的になる事例多し)
政治家・実業家・旧軍人 自己の目標のため,目的が一致する範囲でCIA等に協力。CIA等も,米国側に望ましい政策に向けて活動する政治家等を支援することにより,目的を果たす。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「児玉誉士夫」を読んで、アメリカが国益をかなえるために日本で行なっていた活動に興味を持ち本書を読んだ。
米航空産業の世界的競争力を維持すると同時に、対日貿易赤字を減らすために、児玉を通じて日本に民間航空機、軍用機の売込みを行なったこと。
日本で共産・社会主義勢力が政権をとらないよう(反共産・親米政権、アジアにおける反共防防波堤)に保守政党に献金を行なったなど。
うーん。野村吉三郎の日本海軍再建とのかかわりは日本の国益(野村の個人的な宿願でもあるが)ともかなっているように思えたが、重光葵の失脚や、日本テレビ(正力)のマイクロ波通信網建設支援中止などは、自業自得の部分もあるように思えるが、それでもアメリカさんのいいようにあしらわれたとの印象が強い。
著者は、戦後の日本とアメリカの隠された歴史に関する著作が多い。そのため、一冊だけ読んでも、そのテーマに関しては何となく分かるのだが、関連する全体像までは分からない。何冊か読んでみてようやく全体像がわかってくるような気がする。
以前、「昭和史を動かしたアメリカ情報機関」を読んでもあいまいにしか分からなかった、正力・日本テレビのマイクロ波通信網建設支援中止もことがようやく理解できた。
関連書として(日本は戦後アメリカに支配されてきたとする)孫崎享「戦後史の正体」も読んでみたい。 -
一つの史実として読む価値あり
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昭和史の舞台裏が見えて面白い。
あと、第二章を読んで前に読んだ重光葵関連の本では、もっと凄腕だと思ってたけどCIAが文書で残していた重光評は人望も無いし集金力もないカリスマ性もない官僚丸出しって言うことに驚いた。
いろいろ、昔の政治家の方が気骨があって凄いのかなぁ~っておもってたのが修正された。 -
占領期以後、アメリカは日本の何に注目し、どこに導こうとしていたのか。保守合同、日ソ国交回復交渉、再軍備、内閣情報調査室の設立…。「戦後体制形成」の重要局面に、アメリカはどのように関わったのか―。二〇〇〇年代に公開されたCIA文書を基に、戦後体制形成の舞台裏を探る。
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サブタイトルは、<保守合同/北方領土/再軍備>
日本の戦後史はアメリカの軍事占領から始まっている。このことを見ても戦後史に落とすアメリカの影が大きいことが解る。
しかしそんな程度ではなく,戦後史は占領下でもそれが終わって従属国としての日本でも、アメリカの思いのままに作られて来たということを、改めて実感出来る一冊だ。
CIAという謀略組織が,松川事件に関わっていたのではないかという噂は前々からある。あれも日本をアジアに対する反共の砦とする狙いがあったと思われる。しかしそれよりももっと政府ぐるみでアメリカの謀略に操られていたのだ、ということが具体的に解る。
CIAの文書を丹念に読み解き,アメリカの謀略の切り口で見る日本戦後史。
内容は大雑把に以下の目次のとおり。
「重光葵はなぜ日ソ交渉で失脚したのか」
「野村吉三郎と日本海軍再建計画」
「CIAはなぜ日本テレビ放送網建設支援を中止したか」
「緒方竹虎がCIAに送った政治リポート」
戦後米ソの世界制覇の野望の間での小国日本。その日本の指導層のアメリカの謀略にべったりとそい、あるいはそれを利用する姿勢が鮮やか。
今日,沖縄のアメリカ基地ひとつすら撤去させられない日本政府の「伝統」はこの時代から全く変わっていない。 -
岸は一部のメディアからCIAのエージェンシーと決めつけられているが、事実はそんなに単純なものでない。アメリカ側が彼を支援したのは、彼が折り紙つきの反共産主義者で再軍備の必要性を認め、そのために憲法を改正することに熱心でこれらを実現する力を持っていたからだ。この点からいけば、岸はエージェントどころか協力者とさえいうことはできない。岸から見るならば協力したのはCIAや国務省などアメリカ側の遺憾であって、自分の方ではない。
台湾でも韓国でもテレビが導入される前にはまず軍事通信網としてのマイクロ波通信網が建設されている。そのあと、その国の安全保障体制が整い国民が豊かになってテレビ受信機を買えるようになったとき、この軍事回線は民生用、つまりテレビ放送用にも使われるようになる。
日本テレビのマイクロ波通信網建設をさせないで電電公社に実施させるなど政治的圧力が赤裸々に書かれている。