女優の娘

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591163399

作品紹介・あらすじ

泣かないで。こんなことぐらいであなたの価値は下がらない。
アイドルグループ「YO!YO!ファーム」の一期生・斉藤いとに届いた、突然の母親の訃報。現役アイドルの母親が一世を風靡したポルノ女優・赤井霧子だった、というニュースは瞬く間に広がり、いとは一躍時の人になる。そんな中、著名な映画監督から、霧子の半生を追うドキュメンタリー映画の案内人に指名されてーー。
「マリー・アントワネットの日記」シリーズで全女性の共感をさらった著者が、世界の不条理とたたかうすべての人に贈る、真摯な希望の物語。


◆吉川トリコ
1977年静岡県生まれ、名古屋在住。2004年、「ねむりひめ」で女による女のためのR-18文学賞大賞・読者賞を受賞。著書に、映画化された『グッ
モーエビアン!』ほか、『しゃぼん』『ミドリのミ』『ずっと名古屋』『光の庭』『少女病』「マリー・アントワネットの日記」シリーズなどがある。

感想・レビュー・書評

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  • 現役アイドルの斉藤いとが、元ポルノ女優である母の赤井霧子の死を機に、映画監督と二人三脚で母の追悼ドキュメンタリーを制作することに。その制作過程で、母の知られざる一面を垣間見、母娘の関係を顧みるとともに、元メンバーのAV転向、現メンバーの熱愛スキャンダル等を経て、アイドルとしての自身の立場と信念を確立してゆく。

    母と娘という血縁の関係性について、「離れていてもつながっている。それはお守りでもあったし、呪縛でもあった」という一文は深いなと思った。

    また、まいまいのスキャンダルのくだりで、たった一人の大好きな人と一緒にいることと、大衆からの支持を得てみんなのいちばんになるの、どちらが幸せなんだろうと思った。現実にもアイドルを職業としている人はたくさんいるが、自由恋愛禁止というのは本当に大変だろうなと思う。

    女優やアイドルという、自分の置かれた環境とは無縁の世界ということもあったからか、物語の世界観に入り込めないまま読了した感があった。

  • 泣かないで。こんなことぐらいであなたの価値は下がらない。
    アイドルグループ「YO!YO!ファーム」の一期生・斉藤いとに届いた、
    突然の母親の訃報。
    現役アイドルの母親が一世を風靡したポルノ女優・赤井霧子だった、
    というニュースは瞬く間に広がり、いとは一躍時の人になる。
    そんな中、著名な映画監督から、霧子の半生を追うドキュメンタリー映画の案内人に指名されてーー。


    母親は伝説のポルノ女優。
    そのことが知られたらアイドルではいられない。
    そう思って隠し続けてきたいとに何年も会っていなかった母の訃報が届く。
    昔、母を撮った事のある大物監督の依頼で母の痕跡をドキュメンタリー映画として
    追う事になったいと。

    いとの父親が誰かもわからない奔放な男性遍歴や
    ぶっ飛んだ言動で世間を騒がせた赤井霧子。
    いとと監督は生前の霧子を知る人々を訪ねてインタビューが始まっていく。
    いとの伯母で霧子の姉・共演した事のある大物女優・マネージャー・二番目の夫…。
    色んな人が自分の中の自分の思う霧子を語るが、
    それはそれぞれの人の物語であって真実ではない…。

    母親が亡くなったときいても悲しいと思わなかった。
    迷惑だとすら思った。
    ドキュメンタリーを撮った今もそんなに悲しいとは思っていない。
    でもつまんなくなったと感じている。
    それは会いたい…って事だよね。

    自分の母親がひとりの人間だったのだと認識したのでしょう。

    平凡な家庭の平凡な母親に育てられ、母娘問題もない私。
    沢山の母娘問題を抱えて悩まれている人がいる事は知ってはいます。
    このお話の世界は全く違う世界のお話だったからか
    私には理解も共感も得る事は出来ませんでした。
    多くの女性問題、女性の生き方やアイドルの問題
    投げかけているように感じました。
    不思議な読後感でした。

  • 親から独立する為の手段として始めたせいかグループの人気投票では20位前後をうろうろしている現役アイドル斉藤いと。そんな彼女に母親の訃報が届く。母赤井霧子はかつて一世を風靡したポルノ女優。追悼ドキュメンタリー映画の企画が自分の父親かもしれない監督から上がり、いとは案内役として指名される。撮影が進む中で女優としての母、アイドルとしての自分を見つめ直していく。母娘の葛藤部分より女優とアイドルの対比、光輝く時期を容赦なく搾取され(主に男に)幻想を背負わされる理不尽さ、それでも立ち続けるステージの魔力等芸能世界を垣間見る部分が興味深かった。いとの変化が終始淡々としている中でじわりと熱が発生する形なのが今時かな。劇的じゃなくても気付きはあるのだ。

  • ❇︎
    母がポルノ女優だという出自を隠して
    アイドル活動をする「いと」は、
    母の死を元夫のフィーからの連絡で知る。

    自由奔放な母を捨ててアイドルになったいとは、
    母の追悼映画の案内人を務めることになる。

    いつも当たり前にそこにいた母、
    いとの知らない母、いとが見てき母。

    女優は優れた女、娘は良い女、だから娘は
    女優に勝てないと言った一人の女。

    一人の女優の生き様と母の死と向き合いながら、
    様々な感情を昇華させていく女優の娘の物語。

  • 伝説のポルノ女優である母・赤井霧子が突然亡くなった…その娘は、アイドルグループ「YO!YO!ファーム」の斉藤いと。母の存在を隠してアイドルになった彼女、霧子の死により「女優の娘」であることが明らかになり、世を騒がせる。母のことも、アイドルとしての自分のポジションにも、どこか距離を置いているような、いと。彼女の元に、霧子のドキュメンタリー映画のナビゲーターの依頼が。監督は、未婚の母として彼女を生んだ霧子の相手と噂される、小向井。彼との取材行脚をきっかけに、霧子の足跡を辿りながら、いとは自分のアイデンティティーを確認していくこととなる。
    タイトルから、芸能界を舞台とした母娘関係がメインテーマなんだろうと漠然と思っていた。非日常な世界に生きる女優の、奔放な人生。そんな母に振り回されてきた娘。複雑な思いを抱くのは当然と思って読んでいたが、その「複雑」さが予想を軽く越えていた。そして、予想以上に興味深く読んだのが、いとの在籍する「YO!YO!ファーム」のアイドル達の描写だ。ランキング、卒業、恋愛…リアルで衝撃的な展開に、思わず息を呑む。
    ‘’かけられるだけの負荷をかけて搾り取った生命のきらめきを一滴もあまさず啜り取り、味がしなくなったら道端に吐いて捨てる。みずみずしく甘酸っぱい次の実が、新しく生りはじめているから。''
    アイドルの光と影を容赦なくあぶり出し、醜い本音も時にこぼれ出る。そして、ジェンダーについても考えさせられるところが多々あった。
    登場人物が多く、とにかく情報量が多くて面食らうのだけど、過去と現在のクロスが絶妙で、エピソードの一つ一つが胸を刺す。なかなかにエグいけどどこか爽やかで、少しずつ少しずつ自分の足元を確かにしていくいとの変化の過程は読み応えがあった。
    本書から受け取ったものがあまりに多すぎて、うまく言葉にならない。それほどにずっしりくる一冊であった。

  • 女はこうしなくてはいけないの?母娘はこうあるべき?アイドルってかわいくてきらきらしてないといけない?そんなことを知らないうちに突きつけられ息苦しくなりまた。お話は突然死んだポルノ女優だった母とアイドルの娘が、自分と母のあり方を見つめ直しながら、母の半生を探すような展開になっていますが、それよりも主人公「いと」の、女性の生き方を問うような疑問や後悔などが、きりきり胸を刺し最後まで気が抜けません。ラストには希望が。彼女が成長した姿をまた見たい気分です。

  • 霧子さんの物語が読みたい。

  • 寮に住みながらアイドルとして働いているいとの元に、母親が死んだという報せが入る。
    父親の名を明かさずひとりでいとを生み育てた母親は、往時、日本中の男たちを焦がれさせたポルノ女優だった。

    自分の父親が誰なのかも知らず、好き放題に生きる美しい母親へのコンプレックスを抱き、最後は母親から離れて距離をおいていたいとは、生前の母親を知るひとたちの話を聞き、改めて女優だった母親の存在について考える。

    女優であっても、アイドルであっても、欲望の対象として消費され続ける存在である女たち。
    消費されるとわかっていても、注目されたいと願う気持ちや、若く美しいことや、女であることの旨みも辛さもそのままに加飾されず描かれている。

    後半は、朝井リョウの「武道館」が脳内によぎった。

  • 吉川トリコさんの新刊。現役アイドルの母親が死んだ。母親は伝説のポルノ女優だった。この母親の自伝的なノンフィクション映画を有名監督が作ることになる彼女がインタビュアーワーとして抜擢される。作品を通して母親と重なったり離れたりしていく様はとても興味深い。アイドルの生き辛さ。ポルノ女優の辛さが良く表現されていて面白かった。

  • ロマンポルノ女優の娘で、それほど有名ではないアイドル。
    第一線でテレビにガンガン出るほど有名ではない、会いに行けるアイドル。しかも年齢制限まであと一年。
    本当ならこの先どういう道に進むか悩んだり、少しでも現状を良くしようとあがいたりする状況なのになんともいえずあっさり淡泊な主人公。アイドルに未練はないのか…でも、その主人公いとの母親が自殺とも事故とも思える状況で発見されてから物語は大きく動きだす。
    トリコさんの小説にはいつも運命とか環境とかに流されない、自分の足でしっかりと歩いている女性が出てくる。その強さに私たちは共感し惚れこむのである。今回も主人公いとの淡泊だけど折れない立ち姿にいつの間にか心から応援し、応援されている自分に気付く。
    女優、だけどロマンポルノ出身のちょっとエキセントリックで、すでに過去の存在となった母親への複雑な思い。それをいったんバラバラにしてから組み立てなおしていく過程に、多分私たちの誰もがどこかで経験する自立の問題が投影される。
    そしてこれもまたトリコさんの小説によく登場する「血のつながらない家族」の存在。母と娘の問題をほぐして編み直すには少し離れているけどでも身近な存在が必要なのかもしれない。

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著者プロフィール

1977年生まれ。2004年「ねむりひめ」で<女による女のためのR-18文学賞>第三回大賞および読者賞を受賞、同作収録の『しゃぼん』でデビュー。著書に『グッモーエビアン!』『戦場のガールズライフ』『ミドリのミ』『ずっと名古屋』『マリー・アントワネットの日記 Rose』『女優の娘』『夢で逢えたら』『あわのまにまに』など多数。2022年『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞。エッセイ『おんなのじかん』所収「流産あるあるすごく言いたい」で第1回PEPジャーナリズム大賞2021オピニオン部門受賞。

「2023年 『コンビニエンス・ラブ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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